第1692話 【エピローグオブあっくん監察官への道・その6】阿久津浄汰監察官、爆誕!! ~他にも色々爆発した~

 前回のあらすじ。


 あっくんが監察官に全会一致で承認されて、南雲さんがサプライズゲストに小鳩さんを呼んでドアの前に置いておいたら「俺ぁ仕事とプライベートは分けるんだよなぁ」とか言い出して修羅場。


 果たしてちゃんと綺麗に纏まるのだろうか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「南雲さん……」

「修一そりゃあいけんと思うで?」


 とりあえずフォローしてくれそうな楠木さんと久坂さんに見捨てられた南雲さん。

 だが氏はこれまで何十、何百のトラブルを乗り越えてきた男。

 南雲さんが大きな声で叫んだ。



「逆神くぅん!! ケーキ持って来るのはキャンセルで!! 今は場の空気が悪すぎるの!! あとで2人で食べよう!!」

「えっ!? 名前呼ぶから持って来ちゃいましたよ! 花火に火つけていいですか?」


 チョコレートのプレートに「おめでとう浄汰くん&小鳩さん」と書かれているホールケーキと一緒にサプライズ登場した六駆くんである。



 もうどうしようもないので南雲さんは謝った。

 見積もりを誤りましたと謝った。


「ごめんね! 阿久津くん!! 逆神くんと一緒に計画したんだけど! どこで間違ったんだろう!! ごめんね!!」

「ちっ。逆神と一緒になってあんたがはしゃいじまった時点で間違いは始まってんだよなぁ。……止めろぃ!! クソがよぉ!!」


 昨日の夕方に「あっくんさんに監察官就任決まった瞬間、サプライズでケーキあげましょうよ」「それいいね! 小鳩くんの名前もチョコソースで書いてもらおう!!」2人でシコシコ考えた企画だったのに。

 どこで間違ったのか考える時点で、その人はもう取り返しのつかないところにいる場合が多い。


 あっくんが涙目プルプル小鳩さんのところに駆けよった。


「よぉ。小鳩ぉ。ちっと話させてくれぃ」

「いいんですの! いいんですのよ!! わたくし、お仕事のお邪魔はしたくありませんもの!!」


「違うんだよなぁ。邪魔だなんて言ってねぇだろぃ」

「違うんですの……?」


「ただよぉ。俺ぁ協会から金もらって仕事してる訳だろぃ? その状況で仕事に楽しみを得るのは違うんじゃねぇかって思うんだよなぁ。お前と四六時中一緒とかよぉ。むしろ俺が金払って然るべきって話じゃねぇかぁ?」



「ごふぁぁぁぁぁっ」

「おおっ!? しっかりせぇ!! 和泉の!! なんでさっきからお主が死にそうなんじゃ!?」


 心当たりがあったので。



 もちろん向かいの席では仁香すわぁんが程よいサイズの胸を押さえて「宿六の用意したコスプレ衣装で任務に出てごめんなさい……」と呻いている。


「それはそうですけれど……!! わたくし! わたくし、ちゃんと分別のある副官になれますわ!!」

「ちっ!! 俺が分別付けらんねぇって言ってんだよなぁ!! 家で乳繰り合ってる女と一緒にマジメな仕事なんかできるかってよぉ!!」



「………………………………」

「………………………………」

「和泉の!? おお、こりゃあいけん!! 仁香ちゃんもか!? 誰か医療班呼んでくれぇ」


 将来を嘱望される有能な監察官が2人、静かに息を引き取った。



「じゃあ休み時間だけ乳繰り合えばいいじゃないですか!!」

「逆神ぃ! ちっと黙ってろぃ!!」


「そうですわ! そうですわ!! 休み時間にお乳繰り合うのは禁止されていませんわ!!」

「……なんで俺ぁこんなところで話を始めちまったんだぁ? どうかしてたぜぇ。せめて小鳩と二人きりになってから話始めりゃあよぉ」


 小鳩さんがわがままワイフモードに突入した模様。

 隣に逆神六駆と言う名の着火剤がケーキ抱えて立っているので仕方ない。


「浄汰さんはわたくしと四六時中一緒なのが嬉しいんですわよね!? 浄汰さんのお仕事の流儀に反するんですわよね!?」

「……まぁ。そうは言ったがよぉ」


「じゃあ月水金はお昼休みにお乳繰り合う日にして! 火木は我慢する日にすればよろしいんじゃありませんこと!?」

「小鳩さん、それ名案ですよ!!」

「逆神はもうそのケーキ食って良いからよぉ。どっか行ってくんねぇか!?」


 もう涙目でプルプルしていた小鳩さんはいない。

 ついでに普段の常識的な小鳩さんもいない。

 ルベルバックで悪の限りを尽くしていた頃のあっくんを思い返せば、どこで間違って、いやさどこで正解ルートに突入してこうなったのだろうか。


「わたくしだってワガママ言っちゃいますわ!! じゃあダブル副官体制でいいじゃありませんこと!! 春香さんに火曜日と木曜日はお譲りしますわ!! 月水金はわたくしがメイン!! これならどうですの!?」

「阿久津くん! なんかごめんね!! 私はそれで良いと思うよ!!」

「南雲さん。あんたにゃ恩義を感じてるけどよぉ。今は気絶しといてくんねぇか?」


 六駆と南雲の仲良しおじさんコンビがいちいちうるさくて話は纏まる気配を見せない。

 そして小鳩さんが禁止カードを繰り出した。

 煮え切らなかったあっくんが悪いのか、それはもう誰にも分からない。


「んもぅ! 浄汰さんのこと、わたくし! 嫌いになっちゃいますわよ!!」

「あぁ!? よし、じゃあもう小鳩の案でいいぜぇ!! 俺ぁお前によぉ! とやかく言える立場じゃねぇんだよなぁ! 毎日うめぇ飯作ってくれてよぉ! 愛してるぜぇ! 小鳩ぉ!!」


 南雲さんの戦況を読む力が、経験が、「ここしかない」と氏に閃きを与える。



「木原さん!! 歌ってください!! 打ち合わせ通りに!!」

「うぉぉぉぉぉん!! 任せとけぇぇぇぇ!! エンダアアアアアアアアアアアアアアア! イヤァアアアアアアアアアアアアアアアア!! ウィルオオオオオルウェイズラアアブユウウウウウウウウゥゥアアアアアアアアアアアァァァうぉぉぉぉぉん!!!」


 ミスターゴリラも一枚嚙んでいた。



 シンディさんから「アメリカではおめでたい事があればこの歌よ!!」とホイットニー・ヒューストンの『I Will Always Love You』を習得済み。

 雷門さんが抜けた部分は木原さんがカバーする。


 これが新生日本探索員協会の監察官たち。


 あっくん監察官、爆誕する。

 「月水金のお昼休みは二人きりにするべし」という辞令も南雲さんと久坂さんの連名で出された。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 1月の最終週。

 元川端監察官室。

 現阿久津監察官室では。


「あっくんさん、今日の分の書類はこっちに置いておきますね」

「あぁ。……春香さんよぉ。そのとびっきりのスマイルなんだけどなぁ。引っ込めてもらえねぇかぁ?」


「監察官会議って議事録が残るのに! あらあら、うふふですねー!!」

「……今からでも遅くねぇか。南雲さんと逆神をぶち殺してよぉ。日本本部を俺の勢力下に置くしかねぇよなぁ」


「ちょっとあっくんさん!! 他の子もいるんですから! 朝から性欲がどうしたとか独り言はヤメてくださいね!!」

「……勘弁しろぃ。小鳩ぉー。俺ぁ今日も頑張るぜぇー。見ててくれぃー」


 今日が火曜日か木曜日である事は分かった。


 小鳩さんはチーム莉子にも引き続き籍を置くことになり、月水金はあっくん監察官の副官として勤務する。

 これまでも任務のない時は仁香すわぁん監察官室や加賀美監察官室の若手指導などをしていたし、そもそもチーム莉子に任務が来ること自体、かなり数も減ったし。


 監察官たちが、そしてあっくんが平和を維持し続ける限り、チーム莉子の出番は少ないままなので、月水金のお昼休みはさぞかし濃厚なものになるだろう。

 最後に元川端監察官室は1号館7階の廊下の端っこにある、という事を周知徹底して、あっくん監察官誕生を祝おうと思う。


 おめでとう、阿久津浄汰監察官。

 これからも頑張って、阿久津浄汰監察官。

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