第1430話 【エピローグオブ喜三太陛下・その1】ぶーっはははははは!! 復活の時は近いでな!! ~最近ロリ子と仲良くなったし!!~

 ここは偉大なる皇帝陛下が治められる魅惑の異世界。

 季節はちょっとずつ進んで9月の中旬から下旬になろうかという時分。

 現世と季節感がリンクしている当地ではまだまだクソ暑く、皇営プールは10月半ばまで稼働する予定となっている。


 ちなみに皇営プールは六宇ちゃんが彼ピと水着デートするためだけに造ったヤツである。

 その後「や。あたしだけが使うのって気まず過ぎるじゃん。せっかく造ったんだからみんなで使ったらよくない?」と皇族逆神家の六宇ちゃんが提案したらもうそんなの皇帝陛下の勅命みたいなものであるからして、普通に無料で開放されるバルリテロリのアミューズメント施設が1つ増えた。


 プールのくだりでうっかり言っちゃった。

 そう、ここはバルリテロリ。


「ぶーっはははははは!! プールってええな!! なぁ! テレホマン!!」

「は? ……ははっ。左様でございますか。陛下」


 なんだか久しぶりのバルリテロリ皇帝・逆神喜三太陛下とバルリテロリ総参謀長・電脳のテレホマン。

 皇宮で悪巧みすると四郎じいちゃんにすぐバレるので、本日はバルリテロリ皇営プールからお送りします。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 皇営プールではスクール水着の六宇ちゃんが残暑と呼ぶには厚かましい暑さから逃れるようにプカプカ浮かんでいる。

 ちなみに六宇ちゃんは胸部装甲がBランクと慎ましいが、夏瘦せによって全体的にスリムになったので浮き輪が必須。


 今はまったく関係ないが、莉子ちゃんは浮き輪がなくても割とプカプカできる。

 運動嫌いの彼女だがその中でもプールは割と好き。

 最近好きになった。乳と和解したから。

 現在は六駆くんと一緒に大学で講義を受けており、あっちはあっちで彼ピと一緒のキャンパスライフ。


 いつからこの世界はカップルだらけファイナルファンタジーになったのか。


「キサンタさー。ここに五十五いるから、悪い事しようとしても意味なくない?」

「ぶーっはははは!! 六宇ちゃんはやっぱり可愛ぇなぁ!! そのくらいバカな子の方が愛しがいもあるでな!! 五十五は確かに監視役かもしれんけどな! 実力的にはワシの足元にも及ばん!! あと案外優しいからギリギリのライン守っとったら怒られんのや!! 悪い企画を立案するのはセーフ!! 実行しようとしたらこいつは通報機関になるんや!! せやろ、五十五!!」


 五十五くんが少しだけ考えてから答える。


「確かにそうかもしれん!!」

「ほい来たぁ!! こいつほんまええヤツやで!! 男前やしな!! 六宇ちゃんと結婚してバルリテロリに婿入りしてくれるんやろ!? 現世とのパイプできるなぁ!!」



「は? あたしが嫁ぐんだけど。高校卒業したらすぐに。何言ってんの?」

「ぶーっははははは!! それ実質こっちに婿入りしてるようなもんやで、それぇ!!」


 ちなみに本日は平日である。まだ午前11時である。

 おわかりいただけただろうか。


 彼ピと一緒に登校バフがちょっと弱くなりつつある六宇ちゃん。

 ただいまおさぼり中。



 喜三太陛下、未だ復活のキサンタ。

 あるいは逆襲のキサンタを御諦めになっておられぬ。

 偉大なる皇帝陛下の脳内にはもう綺麗な青写真があるのだ。


「テレホマン。ロリ子がまた来たらな、次はあんころ餅やるから用意しとけ。あいつティラミス食わせたら、あ。苦いから大丈夫です。とか言いよるでな!! まずはロリ子と友好的な国交を築く!! そんで次はひ孫や!! あいつらカップルとワシが仲良しになったらアレやで? もう四郎にデカい面させる事もなくなるで!? どうや、この冴えたアイデア!! アイディア!! なぁ!! ぶーっははははははは!!」

「……はっ。良き御考えかと存じますれば」


 実はテレホマン、知っている。

 莉子ちゃんがファーストチュッチュによって覚醒ハイパーアルティメット莉子ちゃんに究極進化した事実を。


 先週「暇なので来ました! スーパーテレホマンください!!」と純金製の32分の1スケールフィギュアを接収しに来た六駆くん彼ピから聞いている。

 さらに「なんか莉子がね、ダイエットを本気で始めたんですよ。心配なので見かけたら食べ物あげといてもらえます?」と言われて、テレホマンは驚愕した。


 「は?」と1度確認してから「ははっ」と承服するのはテレホマンの独りダブルチェック、癖みたいなものだが、久しぶりに「は?」の後でもう1度「は?」と聞き返してしまったという。

 「御無礼を御許しください」と四角い頭を下げたところ「良いんですよ! 莉子には無理して欲しくないですからね! だって可愛くないですか? いつ見てもなんかモグモグしてるの! ビーバーみたいで! うふふふふふふふふ!!」と当代逆神家当主が惚気たのを見てテレホマンは悟る。



 どこかのタイミングでこの世界が変わったのだ、と。

 何かは分からないが、何かしらが確実に変化したのだ。

 もうこれまでの常識は通用しないのだ、と。



 そしてプールサイドでこんがり体を焼いておられる喜三太陛下見る。

 そっとチラ見したつもりだったのに視線を気取られたのは流石の一言。

 そんな陛下が仰せになられる。


「どうしたんや! テレホマン!? 安心してええで! ワシ、17やからな!! この肉体が25になるまでにはバルリテロリの軍事部門をこっそり復興させて!! 今一度このワシの偉大さを現世の連中に!! いや、全ての異世界に知らしめてやるでな!! その時に勝利の美酒をワシの隣で真っ先に乾杯するのは……テレホマン? お前やで?」


 野望、未だ潰えず。

 皇営プールに流れている聖飢魔Ⅱのベストアルバムを聞きながら「お前も蝋人形にしてやろうか」の部分と陛下の野望がお被りあそばされて微妙に聞き取れなかったけれども、テレホマンは確信する。


「このままでは……。陛下が本格的に御隠れになられる……!!」


 こちらの四角い電脳戦士、バルリテロリでは屈指の知恵者。

 日本本部の知恵者である南雲さんとお互いに「さすがですね。テレホマンさん。よくこの戦力であんなに粘りましたよ」「いえ。南雲様こそ。どうして頑張って数えても20人くらいの用兵で皇国をお崩しになられましたか。小官、意味が分かりません」と認め合っている。


 つまり、もうだいたい分かっている。



 バルリテロリ回は結構前に消化されているというこの世界の歯車を。

 そして「2周目はない」というエピローグ時空のルールを。


 つまり、2周目に見えてこれは崩壊の序曲リバースである可能性が高いという事を。



「あっつー。ねー。五十五? スク水のこのお腹の部分って必要? ここ切ってさ、ビキニみたいにした方が良くない?」

「確かにそうかもしれん!! だが、六宇!! 貴女の魅力的な肌を積極的に見せるのはどうだろうか!! 私はそのくらいの露出でちょうど良いかもしれん!!」


「え? なにそれ。独占欲的な? 俺の女を見てんじゃねぇ、的な?」

「確かにそうかもしれん!!」


「え。やば。しゅき……」

「申し訳ない!! 逆神四郎に定時連絡をしなければならない!!」


 イチャイチャしている高校生(どっちも20歳越え)カップル。

 もうこのまま毒にも薬にもならない日常回で終わってくれとテレホマンは願う。


「げへへへ!! おいおいおい!! 親父に小遣いもらおうと思って呉を脱出して来たらよぉ!! こんなところにプールあるじゃねぇか!! しかもタダ!! 綺麗な水着のねーちゃんいるか!?」

「ぶーっはははは!! やっぱかき氷はブルーハワイやな!! なんの味なんか知らんけど!! ……なんや、あいつ。どっかで見たな。どこやったかいな」



「あれ!? おめぇ、アレじゃん!! 親父の親父!! あ、じゃあオレのじいさんか!?」

「あ゛!! こいつぅ!! ワシと一緒に人殺助に殺されたはずなのに死んでなかったヤツやんけ!! えっ!? お前、四郎の息子なんけ!? ……ワシの孫なんけ!? しかし、きったないなぁ!! このおっさん!! おい、そこで脱ぐな!! 不敬極まるで、お前!!」



 出会う。

 逆神家の奇数代。バルリテロリの残暑の下で、今。


 テレホマンが「……今日の単四電池は格別だ」と南雲さんのコーヒー占いみたいな事を電池ボリボリ食いながら呟いた。

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