異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1381話 【エピローグオブ小坂莉子ファーストステージ・その3】彼氏不在時のメインヒロイン ~お留守番編~
第1381話 【エピローグオブ小坂莉子ファーストステージ・その3】彼氏不在時のメインヒロイン ~お留守番編~
「じゃあ僕は1限からだから! 莉子、先に行くね!」
「ふぁーい! いってらっしゃーい!!」
もともと早かった六駆くんの朝が大学生になってからは本当に早い。
月曜日から金曜日まで全て1限から講義の予定を入れており、さらに大学へ行く前には弟子たちの修業にも付き合っている。
現在5月の中頃。
依然として時系列を乱してお送りしております。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆くんが出掛けて行った。
莉子ちゃんは大学生らしく遅めの朝ごはんをモグモグタイム。
「みみみっ! 芽衣も学校です!! 行ってくるです!! みっ!!」
「ややっ! 芽衣先輩! ボクもご一緒します! ルルシス学院の前を通ってから御滝高校に行きます! これをやるのとやらないのでは1日のふんすが違います!! ふんすっ!!」
「みみみっ!」
「ふんすー!!」
女子高生コンビも登校のお時間。
思えばこの世界の高校生も随分と少なくなってしまった。
「今朝の莉子さんはゆっくりですのね」
エプロンを外しながら小鳩さんが食堂の厨房からテーブルへ移動。
彼女の担当は朝と晩なので、ここで交代。
「ぐーっはははははは!!」と猛々しい咆哮が代わって厨房にイン。
「そうなんです! 今日はわたし、2限からなんですけど! 3限が休講なので、お昼前には……ふぇ? 六駆くんからラインが来てる?」
それは「世界史も今日は休講みたいだよ!」という旦那からのホットライン。
するってぇと莉子ちゃん、本日の予定が変わって来る。
「大学に行く用事がなくなっちゃいました」
「たまにありますのよ、そういう事。わたくしが大学生の頃を思い出しますわ。……いいえ。現在進行形で思い当っているのでそんなに懐かしくはなかったですわ。わたくし、ダズモンガーさんが朝ごはんを作ってくださるまで、猫たちのお世話して来ますわね」
小鳩さんがクララパイセンの部屋に向かった。
すぐに「瑠香にゃん、起動しました」と、恐らくコンセントから引っこ抜かれたであろうメカ猫の鳴き声と「まださっき寝たばっかりだにゃー!!」と今日も大学なんか知らねぇスタイルを貫くであろう、あられもねぇ恰好であろうどら猫の鳴き声が聞こえて来た。
平和な魔王城の朝。
しかし困ったことになった。
小鳩さんの言ったように、大学生にとって「なんか知らんけどいきなり講義が2つ、あるいは3つ一気に休講になりやがった」という僥倖は稀に発生する。
休みがちな講師や教授の担当講義だと、のちに補講が出現して全然嬉しくなかったりするのだが、教授都合の休講は基本的に突発的なお休みと考えて良い。
だが、莉子ちゃんにとってそれは初めての事だった。
高校生の頃から学校を休むのは探索員の任務の時だけ。
風邪や体調不良で休んだこともない、健康優良児、失礼、健康優良乙女の莉子氏。
「ふぇぇ。やる事がなくなっちゃた。どうしよ。大学生になってから南雲さんがお仕事セーブしてくれてるから、ホントに予定がないよぉ。それはそれで、何したら良いのか分かんなくて困る……」
とはいっても、六駆くんを追いかけて行って「えへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ!!」と左腕をへし折るは良しとしないデキた嫁。
途中から隣に莉子ちゃんが参加しても「いいよ! 一緒に受けよう!」と言ってくれる事は疑うまでもないが、彼女としては六駆くんの邪魔になる可能性がちょっとでも存在してしまうのならばそれをしたくない。
「うーん。どうしよ……。モグモグ……」
莉子ちゃんがダズモンガーくんの出してくれた、今朝の余ったパンをカリカリに揚げたラスクをモグモグしながら小首をかしげていた。
ほらもう可愛い。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃の南雲上級監察官室。
「逆神くんは隠居して、小坂くんはまだ大学生活に慣れてないだろうからって仕事を減らしてたらさ。山根くん。人手足りないよね」
「南雲さん、ガルドワンダンジョンの攻略申請しときましたよ。南雲さんだけで」
お忘れの方のための南雲(上級)監察官室。
ここは所属している部隊がチーム莉子オンリーで、他の探索員は1人もいない。
元々は研究と装備製作を請け負っていたところにチーム莉子が飛び込んできて、そのままあっちこっちで戦争対応してたら昇進しちゃった結果、今更新しい、特に若手の探索員などを引き受ける余力なんかなくなったからである。
チーム莉子が所属する前は南雲さんが単騎で任務に出る事もあった。
そして今、「南極大陸に新しいダンジョンが生えて来たので誰が手の空いてる人いるー? どこかの監察官室ー? なんで返事してくれないのー?」と声をかけたがスルーされて「じゃ、うちで引き受けとくっすねー」と山根くんが申請したところ。
「やぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁぁぁねぇぇぇぇぇぇ!! 私だけで行くの!?」
「自分がついて行ったって役に立ちませんよ」
「役に立つだろ、君ぃ!! 山根健斗Aランク探索員だろ! 君ぃ!!」
「無理っすよー。自分の『
「あれ君のじゃないからね!? 私のだよ!! そうだね! バルリテロリから帰って来たら壊れてたね!! 誰なんだろうね、壊したの!!」
屋払さんと加賀美さんが逆神五十鈴と交戦した際にぶっ壊しました。
両名ともしっかり反省しておりますが、致し方なかったと思われます。
あと、山根くんは知ってます。
その時もオペレーターとして現場に指示出してました。
「じゃあ、逆神くんにでも聞いてみるっすかねー。カタカタターン、と」
「あの子、今は大学に夢中おじさんだからどうせいないよ。他の子に緊急で頼むのも申し訳ないし。いや、椎名くんか塚地くんならイケるか? ちょっと聞いてみて?」
「あ。そうっすか。助かるっす。じゃあ、はい。現場は南極なんで。温かくして来てくださいね。こっちで準備進めとくっすから。よろしくお願いします。はーい」
ミンスティラリア常設サーベイランスとの通信を終えた山根くんが親指を立てる。
南雲さんの顔もほころんだ。
「えー!? 申し訳ないなぁ! 椎名くんと瑠香にゃんくん? それとも塚地くん? どっちもかな!? 助かるー!! 地名じゃなくて変な名前ついてるダンジョンって攻略難易度高いことが多いから、不安だったのよー」
山根くんが笑顔で応じた。
「小坂さんが来てくれるらしいです。大学が休みになって、なんかむしゃくしゃしてて? あ、むしゃむしゃしてたのでちょうど良かったって言ってたっすよ」
「山根くん。私ね、今回は独りで頑張ってみるよ。見ていてください、京華さん。お腹の中の子供たち」
それから莉子ちゃんと南雲さんのコンビでガルドワンダンジョンは攻略された。
南雲さんは無事だったし、ダンジョンも無事だったし、言う事はない。
ただ、莉子ちゃんが『
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ただいまー!! いやー! 好き勝手に知りたい事を勉強できるって最高だなぁ! 今日はごめんね、莉子! 寂しい思いさせて!」
夕方になって帰って来た六駆くん。
「んーん!! お仕事に行ってたから平気!! えへへへへ! 2人の貯金がまたちょっと増えたよ!!」
ニコニコ、リコリコスマイルで旦那を出迎えるデキた嫁。
これが彼氏不在時の過ごし方、その一例である。
しかし、この2人は大学生になったのだ。
ならば、サークルの1つくらい入らないのか。
諸君の疑問に答えるのも、要望に応えるのもエピローグ時空の仕事。
次回。
出禁だ、出禁だ。逆神と小坂。全サークルが震えた日。
ぜってぇ見てくれよな。
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