第1364話 【エピローグオブエヴァンジェリン姫・その2】偉大なる皇帝陛下との外交中 ~お食事に誘われました!!~

 異世界ピュグリバーに動きあり。

 とある最強の男がやって来ていた。


「あららー。ごめんねー、逆神くん。夏休みだってのに呼びつけちゃってねー。おじさん感じ悪いよねー。とりあえずこれね、私の気持ちだよー」

「うわぁ!! 栄一が5人もいるや!! すごい!! これもうみずほ銀行が5個あるのと同じですよ!!」



 この世界のみずほ銀行はフィクションです。



 六駆くんが呼ばれて参上。

 この男、初期ロットでは「切符ってどうやって買うの!? 無理無理! 莉子、僕を独りにしないで!!」とか「スマホって意味分かんないんだよ!! ボタン付いてる携帯ってないの!? 莉子!! ねぇ、莉子!!」とか言っていたのに、今では電車に乗って出かける事もあればスマホも使いこなしている。


 電話ひとつで呼ばれて来たら、待っているのは50000円。

 もうこれだけで何でもデキる気がする。

 それが大学生。


 大学生にとっての50000円は社会人における200000円くらいの無敵感があるとは、モウ・ワカイコロ・ワ・スレタ氏による『1ヶ月毎日1500円余分に使えるとかすごい学』でも提唱されている。


 六駆くんはピュグリバーの大気を『吸引スポイル』で掌に集めた。

 特殊な煌気オーラに満ちているこの異世界、逆に考えると全体の煌気オーラを集めてから異物を確認したらばほんのりと下手人の輪郭が見えて来る。


「あ。この煌気オーラの残滓、ものっすごく覚えがありますよ! これね、ひいじいちゃんの転移スキルで出るヤツです! ひいじいちゃんのスキルって強引なんですよね。同じ構成術式使ってる僕ら逆神流だと一発で分かります。もうこれ絶対にひいじいちゃんの仕業です。雨宮さんの睨んだ通りですね!!」


 そして喜三太陛下の犯行がほとんど秒でバレた。

 「深淵をぶーっはははははする時、深淵もまたこちらをぶーっははははは」とは哲学者のニーチェパイセンが言ったか言っていないかだと多分言ってないけど、似た感じの事は言っていた。


「どうします? 雨宮さん! 僕、もう1回バルリテロリ滅ぼしたらいいですか!?」

「あらららー。大事になって来ちゃったねー。けど、エヴァちゃんは私の大事な妻だからねー。勝手に連れて行かれると困りますよっていうのはハッキリお伝えしたいかなー」


「攻め込むんですね!! じいちゃんに電話します!! 『ゲート』も出しますね! 大きいヤツ!!」

「皆さん!! バーバラ武闘団の出番が来たようですよ!! 六駆様に続くのです!!」


 バルリテロリは現在、家臣によって復興中。

 喜三太陛下はそんな家臣たちから無上の忠誠心を寄せられておられる、偉大なる皇帝。


 如何ほど残るか。

 忠誠心。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃のバルリテロリ。


「ぶーっはははは!! よくぞ参った! ピュグリバーの姫よ!! ここが皇宮や!! そんでもって、これがとっておきスイーツ!! 食堂でもらってきた生キャラメルや!!」


 令和と同期はしたけれど平成の香りもまだまだ色濃いバルリテロリ。

 生キャラメルとは「どの辺が生なん?」とみんなが思っていたが、とりあえずメガヒットした平成19年のでぇブレイクスイーツ。

 生って頭に付いているのでものすごくドロッとしているのかと言えばそんな事もなく、なんかとりあえず美味しいキャラメルである。


 生キャラメルはその魅力で子供たちからおっさんおばさん、じじいにばばあまで、全ての世代の歯の詰め物を根こそぎはぎ取って来た。

 ちなみにとあるネットニュースの「平成を感じる食べ物ランキング」では第3位にランクイン。


 参考までに申し上げておくと、2位がナタデココ。

 1位はタピオカ。



 諸君。

 タピオカは平成なのである。



 令和元年のブームは第3波という事実から目をそらしてはならぬ。

 特にでぇブレイクした第二次ブームは平成20年。

 恐ろしい事に生キャラメルとほとんど同時期。


「美味しいです!! キサンタ様!!」

「ぶーっはははは!! そうやろ!! これむっちゃ美味いよなぁ!!」


 エヴァちゃんのハートはキャッチできた模様。

 物理的にハートという名のおっぱいもキャッチしたい喜三太陛下だが、エヴァちゃんは19歳。


「キサンタさー。なんでいつも食べてるオヤツ出すん? もっと特別なヤツ出してあげなよー。エヴァちゃんに気を遣わせてるじゃんか」


 隣には20歳の女子高生。

 現役合法女子高生のひ孫、六宇ちゃんがいる。


 ひ孫よりも若い娘に手ぇ出して良いのか。

 喜三太陛下の御心がちょっとだけ右往左往しておられた。


「六宇ちゃん! なんてこと言うんや!! 急に皇宮に連れて来たから、食堂におばちゃん全然おらんかったんや! 仕方ないやんけ!! あとは焼きそばパンとペプシコーラならあったで! ほら、エヴァちゃん! これも食べてええでな!!」


 ピュグリバーはこの世界に多数存在する異世界の中でも、一般的に「異世界と言えば」で想像されがちな中世ヨーロッパ感がかなり濃い。

 エヴァンジェリン姫も王族として普段はなんか緑色のスープとか、よく分から容器にハマったゆで卵とか、オシャンティーな形のパンにバター塗ったヤツとかを食べている。


「モグモグ……。わぁぁ! この焼きそばパンという食べ物! すごく美味しいです!! どうして麺類をパンに挟むのですか!? エヴァンジェリンには分かりません!! コーラにも種類があるというのは初めて知りました!! 順平様の飲んでおられるコーラは赤い缶に入っています!! キサンタ様!! おもてなしありがとうございます!! 感激です!!」


 喜三太陛下が目をお細めになられて、満足そうに頷かれた。

 そして仰せになられる。



「同じモグモグしとるだけなのに、なんやろうな。このロリ子とは違う、愛らしさ。ロリ子の方が小動物っぽいフォルムなのにな。テレホマーン!! ちょっと来てくれ!! ワシ、どうしても自分だけじゃ解決できん疑問と相対しとるでな!!」


 喜三太陛下、2つも同時に御ミスを犯される。



 1つ。

 テレホマンは現在、4:6くらいの忠誠心割合で四郎じいちゃんに仕えている。

 どっちが4でどっちが6なのかは言及しない、できない、するのは気の毒。

 いずれにしても、仮に4割の忠誠心だったとしても、四郎じいちゃんがこの事態を問題とした瞬間に喜三太陛下の忠実なる総参謀長ではなくなる可能性が高い。


 それなのに喜三太陛下が御自ら、うっかり呼んじゃった。


 2つ。

 これはシンプル。


 莉子ちゃんをディスった。


 諸君。

 なにも莉子ちゃんディスは代償としてリコリコされるだけのワンパターンなものではない。


 夫婦であれば。妻が。夫が。

 カップルであれば。彼ピが。好きぴが。

 不当にディスられる。


 許されるだろうか。

 許されるかもしれない。

 だが、許されないかもしれない。


 思い出して頂きたい。

 現在、六駆くんが喜三太陛下の御乱行を察知済み。


 そして六駆くんは喜三太陛下に転移スキルの1点においてはやや後塵を拝しているものの、総合的な戦闘能力に関して言えば完全なる上位互換。

 そんな逆神六駆の彼女リコリコ婚約者リコリコ、逆らえない嫁さんリコリコは誰か。


 分かりきった問答に対して、賢し気に答えをひけらかすのは愚者の行いである。

 問答の末というものは、結果として発現されるべきではないか。

 教科書で習う幕末の動乱よりも、無双の維新志士に撫で斬りされた方が絶対によく分かる。


 次回。

 喜三太陛下、死す。


 エヴァンジェリン姫の外交は実るのか。

 成ったとして、その果実は食えるのか。

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