第1348話 【エピローグオブ青山仁香すわぁん・その1】物憂げな放っておけないお姉さん ~地獄の恋愛沼は口を開けて待機中~

 時は7月下旬。

 場所は日本本部1号館、南雲監察官室。


「みみみみっ! 任務完了です! みっ!!」

「今回の見所はスライムタイプのモンスター先輩に莉子先輩が呑み込まれたところでしたね! とても興奮してふんすでした! ふんすっ!!」


「にゃはー。そのせいで莉子ちゃんがシャワー室から出てこないぞなー。小鳩さんがゴシゴシしてたにゃー」

「………………………………? 普通にメンバーカウントされている瑠香にゃん、この場において一体何なのだろうと疑問が溢れ出して止まりません。強制スリープモードに入ります。山根マスター。コンセント貸してください」


 まとめるとこうなる。

 チーム莉子がモンスター討伐任務に赴いた結果、莉子ちゃんがぬるぬるになった。



 現場をお見せする事が出来ずに大変残念。

 メインヒロインのダンジョンあるあるラッキースケベだったというのに。



 現状、莉子ちゃんはぬるぬるしているので小鳩さんが「わたくしは構わないのですけれど……。ゴシゴシやり続けて問題とかありませんわよね? これからお胸の方に取り掛かりますけれど」と女の子同士のシャワーシーンというこれまたサービスシーンを提供中。

 お見せする事が叶わず痛恨の至り。


 これからお胸を中心にゴシゴシされるらしい。


 瑠香にゃんがコンセントに挿さったので、メンバーの半分が離脱した事になる。

 南雲さんが任務報告の書類の確認をしながら別の仕事をこなしつつ言う。


「うん。みんな、ご苦労様。逆神くんが隠居してもしっかり結果が出せるのはさすがだね。……逆神くん、本当に来ない時があるんだよね。それだけみんなを信頼しているってことなんだろうけど。さっきラインしたら家で徹子の部屋見るって返信がすぐにあったよ。……じゃあ軽く任務くらいこなしても良いじゃないの。いや、もう退役してるから文句言えないけどさ」


 ガチのマジで隠居している六駆くんに挨拶代わりの苦言を呈してから南雲さんが総括した。


「とにかく、モンスター討伐はこれで完了。お昼だけど、みんなご飯はどうする? カフェテリア行くなら私の食券あげるよ。もう80枚くらい溜まってるから……。ははは……。監察官室から出てご飯食べてる暇があったら、1枚でも書類の決裁しないとね……」


 クララパイセン、芽衣ちゃん、ノアちゃんの3人は南雲さんの消費していない福利厚生のご相伴に預かる事とした。

 お気付きになられただろうか。


 この3人。

 恋愛ってクソだにゃーの3人である。


 カフェテリアで待ち受けているのは一体誰なのか。

 なにすわぁんなのか。


 これは想像のつかない、未知の展開の気配である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 青山仁香放っておけないお姉さん兼監察官付き副官兼Aランク探索員兼そろそろ水着になって仕事して欲しいお姉さん。

 パンツスーツ姿でカフェテリアにてお食事中。


「はぁ……」


 だがその表情はなんだか物憂げ。

 こんなアンニュイな顔を見せてはいけない。

 どこかの穢れた魂が「あ! おっぱい、よろしいんですか!?」とか言って駆けて来る。


 パブロフの犬と同列に並べたら怒ったワンコに噛みつかれそうであるが、仁香すわぁんがどこかの宿六に「はぁ。さっさとしてください」とナニかをしてあげる時は基本的に物憂げ。

 物憂げというか、ゴミを見るような目をしているのだが、その違いにどこかの宿六が気付けるはずもなく。


 つまり、うっかりアンニュイをキメようものなら安乳あんにゅうキメても良いと判断されてしまう。

 ホワイトな環境とブラックな環境が共存している日本本部において仁香さんの所属している職場がどっち寄りなのか、こんなに簡単な問題はないかと思われた。



 ちなみに安乳とは、「安全におっぱいを見せてもらえる」という好機の事である。

 殴られない。蹴られない。嫌な顔はされる。



「にゃはー!!」

「みみみみっ」

「ふんすー」


 そんな仁香さんの隣を横切っていく特務機関『恋愛ってクソだにゃー』がいた。

 少しだけ「……」と沈黙したのち、仁香さんは我慢できずに立ち上がる。


「ちょ、ちょっと待って!? なんで普通に無視したの!? 私、ひとりごはん中だよ!? 相席してよ!!」


 どら猫が代表して答える。

 さすが、3人の中で唯一の成人乙女。


「うにゃー。仁香さん、仁香さん。あたし、なんだか面倒くさそうな話に巻き込まれたくないですにゃー!!」

「くぅぅ……!! 否定できない……!! クララちゃん! エビスビールをケースで買ってあげる!! 相席して!!」


「はいはいにゃー!! キタコレにゃー!! 芽衣ちゃんとノアちゃんも塩対応ヤメていいぞなー!!」


 どら猫の策略であった。


 芽衣ちゃんは入口で「みっ! 仁香さんです!!」と気付いてたし、ノアちゃんも「ややっ! 芽衣先輩と仁香先輩のスポーティー乙女オフショットの撮影チャンスですか! ふんすっ!!」と興奮していた。

 だが、どら猫脳がフル回転。


 「うにゃにゃにゃー。これ、一旦スルーしたらご飯奢ってもらえる流れだぞなー」と閃く。

 結果、望外のエビスビールをゲット。

 後輩女子でエビスを釣る。


 これがどら猫。

 ビールをケース単位でもらえるなら、クソみたいな恋愛トークにだって応じる。


 まずパイセンが「あたしがみんなの分も注文して来るぞなー」と言って立ち上がった。

 日本本部のカフェテリアはセルフサービス方式。

 いわゆる学食や社食などで広く採用されている形であり、食券出して注文したらその場で料理を受け取る形となっている。


 どら猫、ひとまず離席して面倒な導入部を躱す。


「みみみみっ! 芽衣! 『美味しいパスタ作ったお前』セットが良いです! みっ!!」

「ボクは『トリセツ』定食でお願いします! ふんすふんす!!」


 メニューからなんとなく漂う、恋愛の匂い。

 パイセンは「はいはいにゃー」と立ち去った。


 10分ほど経って戻って来る。

 パイセン、両手で4人前までの料理は持つ事ができるスキルを習得済み。

 これは一人暮らしが長いと覚えがちなヤツで、台所からダラダラスペースへの移動回数を極力減らせる効果がある。


「あ。クララちゃん、戻って来た。あのね、私さ……」

「にゃん……だと……。まだ、始まってなかったというのかにゃ……?」



「あ、うん。芽衣ちゃんとノアちゃんは高校生だし」

「……やっちまったかもしれんにゃー。あたし大学生ですぞなー」


 大学生とか週2で合コンして、恋愛おかずに恋愛が食えるお年頃ではないか。



「はぁ……。あのね。なんだか最近ね。気のせいだったらいいんだけど。私の周りでなんかやたらと……。カップルが成立していってね。そのカップルたちが次のステージに移行してて。だったら私も……全然乗り気じゃないけどね? 次のステージにとか考えた方が良いのかなって。ほら、私、未婚に限ると仲良しの子たちの中でも一番年上だし。どう思う? クララちゃん?」


 パイセンは気付いた。

 「これ。仁香さん回なのにあたしも巻き添えになる流れだぞな? だって水戸さんいないもんにゃー」と。


 そう。

 仁香すわぁん回なのに、今のところ穢れた魂が見当たらない。


 乗り切れるか。

 あと2話。


 仁香すわぁんたちは食事を始めた。


 ずっと飯食ってりゃ勝てる。

 この勝負、意外と勝ち筋は単純。

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