第1345話 【エピローグオブリャンちゃん・その1】子作り!!!!
こちらは日本本部。
季節は7月の中頃。
ちょっとずつエピローグ時空が基点の7月を突破しそうな気配を見せ始めている。
どこかの異世界が、恐らくニポーンという名の異世界だが、
それはさておき、1号館、監察官室の並ぶフロアに可愛い生き物たちがいた。
「みみみっ! お手合わせ、ありがとうです! リャンさん!! みっ!!」
「とんでもありません! 勉強させて頂きました! 芽衣さん!!」
仲良しBランク探索員の芽衣ちゃんとリャンちゃん。
ちょうど本部でBランク探索員を対象にしたミーティングがあったので、その足で2人は南雲上級監察官室に併設されている仮想戦闘空間に寄りトレーニングをしていた。
「みーみーみー。芽衣はパンチばっかりだから、リャンさんみたいにもっと多彩な動きを身に付けないとです! みみみみっ!」
「私は逆です! 芽衣さんのように一撃必殺と呼べるスキルがありませんから! 火力の高いスキルを習得したいです!!」
この2人、描写されていないところでよく一緒に過ごしている。
そもそもの性格的な相性がいいのか、戦型が似ているからか、どちらも向上心が高いからか、小動物っぽいからか、とにかく気が合うらしい。
「いいな……。リャンと芽衣ちゃん。今日は一緒にトレーニングなんだね……」
2人並んで廊下でスポドリ飲んでいたらどんよりとしたお姉さんが通りかかった。
こちらのお姉さんは特に用がない時の方がこのフロアにいる。
監察官室付きの副官が背負う宿命である。
「みみみっ! 仁香さんです!! みっ!!」
「仁香先輩! お疲れ様です!!」
「くぅぅぅ……!! 汗ばんだ2人の笑顔……!! 寝不足の私には眩しい……!!」
仁香お姉さん。
今日はスーツ姿でお仕事中。
午前中に監察官会議があったためである。
遠くの方で「仁香すわぁん! 仁香すわぁん!!」と穢れた声のような何かが聞こえた気もするが、それは無視した仁香お姉さん。
普段はスポーティーな格好の多い彼女がピシッとしたスーツ姿になると、それはそれで最高なんですよ、分かりますか、あなたにも。ふふふふふ。との事。
ちなみにパンツスーツが仁香さん流。
別に今更スカートの中を気にするような事もないが、単純に蹴り飛ばしやすいからだと言う。
何を蹴り飛ばすのかは仁香さんのエピローグできっと明らかになるだろう。
諸君。
まだ早い。
「はぁ……。私も任務に出たいな。デスクワークが多くなると、特に。現場に出てた頃は結構嫌だったのにね。1ヶ月の長期任務とかが懐かしくなるの。って、ごめんね。愚痴っちゃって。2人は何のお話をしてたの?」
「みみっ!! お互いのスキルについてお話です!! みっ!!」
「くぅぅぅ……!! もう、くぅー疲れましただよ、私……!! 参加したい!!」
「あ! 仁香先輩にご相談があるんでした!! 今はお時間の都合、いかがですか?」
「うん。平気だよ。どうしたの?」
「実はですね。子作りについてなのですが」
仁香さんが笑顔のまま、リャンちゃんを見つめたまま、首を動かさずに言った。
誰に。
もちろん、芽衣ちゃんに。
「芽衣ちゃん。明後日とか暇かな? カフェテリアでお茶しない?」
「みみみみっ! 楽しみです!! じゃあ、芽衣は子供だから帰るです!! みっ!!」
物分かりの良いみみみと鳴く可愛い生き物。
後輩の面倒見の良さは日本本部の中でもトップクラスの青山仁香放っておけないお姉さん。
新婚さんのリャン・リーピンちゃん。
じゃあ仕方がない。
新婚の話題なんて「いつ作るの? 今でしょ!!」が5割を占める。
たまごクラブの表紙を見ればもはや証明完了。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「私! ザールさんの赤ちゃんが欲しいんです!!」
「ごめんね、リャン? 違うの。それはとても良い事だし、私も応援したい事なんだけどね?」
「はい!!」
「あのね? よく聞いて?」
「はいっ!!!」
「声が大きいの!! ここ、監察官室しかないフロアだから!! そこにあるの、雷門さんの献花台だから!! 喪に服せとは言わないけど! ちょっと元気を抑えて!!」
雷門さんは死んだことになってもう7ヶ月になります。
なぜ誰も訂正してあげないのかは分からない。
リャンちゃんは既に結婚式を挙げている。
日本で1度、故郷の台湾で1度、ミンスティラリアでも1度。
費用はリャンちゃんのバルリテロリ戦争における一級戦功とザールくんが貰った特別報奨金で工面したが、余裕でペイできたらしい。
それが6月の事。
ジューンブライドはヨーロッパで古くからある言い伝えであり、ヨーロッパ圏生まれのザールくんに合わせたのだという。
決してゼクシィ発祥ではないので、勘違いしてはいけない。
由来はギリシャ神話のゼウスさんちだったり、ローマ神話のユピテルさんちだったりする。
ゼクシィとギリシャの字面が意外と似ているとか、そんな風に気を散らかしているといけない。
婚期というのは逃すと帰っては来ないもの。
今季だけですよと言われたらば、来季にもあるとは思わない事が肝要である。
ザールくんは真面目で実直な男であるからして、婚前に致すことをそれは良くねぇんだよなぁとは言わないが、きっちり避妊をするスタイル。
偉い。
そして結婚式を挙げて、晴れて夫婦になってから1ヶ月。
ザール・スプリングくんとリャン・リーピンちゃんは双方が「リャンさん、子供は何人欲しいですか?」「了!! 子だくさんの大家族がいいです!!」と妊活に前向き。
とはいえ、授かりものである。
寄越せよと言ってどうぞどうぞと寄越されるものでもない。
「……たまごクラブじゃダメかな?」
「私、尊敬する仁香先輩に伺いたいです!!」
リャンちゃん、そのスパート力は佳純さんにも匹敵すると評され、目ではもう追えない速度を見せる事もある。
そして仁香さんの手にはもう負えない領域へと突入した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして夕方になるとリャンちゃんは六駆くんに創ってもらった専用の『
2人目の団地妻である。
「ただいま帰りました!!」
「おかえりなさい。リャンさん。ささやかですが、夕食の用意ができています」
「わぁ! ありがとうございます!! 明日はザールさん、マスクド・タイガー2世の日ですよね? 私、お弁当作りますね!!」
「これは……。お気遣い、嬉しいです。ところで、そちらの袋は?」
「はい!! 仁香先輩に色々とお話を聞いてもらいまして!! とりあえず、体をポカポカにするのが良いとの事でした! それで、運動するための水着をいくつか新調したんです! ビキニなんですけど……。ご飯の後で見てくださいね!!」
仁香さん曰く「放っておいてもそのうちデキると思うから、体力づくりさせておこう」との事。
恐らく正解。
翌日から2人揃ってオフの日には庭に出て水着姿で修練に励むようになったスプリングさんちの新婚夫婦。
アトミルカ団地に黄色いビキニと黄色い元気な声が飛び交うようになった。
それでは、リャンちゃん流ご近所付き合いについて。
次回。拝見する事にしよう。
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