第1341話 【エピローグオブ電脳のテレホマン・その2】テレホマン、よその異世界へ行く ~八鬼衆を訪ねて~

 電脳のテレホマン、ついに職場が異世界へと拡張されるに至った。


 偉大なる喜三太陛下の転移スキルによってすっ飛ばされて来たのはまずこちらの異世界。

 ミンスティラリア。


「みみっ! テレホマンさんです!! みっ!!」


 魔王城近くの丘で修業中だった芽衣ちゃん、最初に四角い男が転移して来た事に気付いて、可愛く美しい敬礼をキメた。

 喜三太陛下の転移スキルは対象の煌気オーラを目印にダイレクトな転移を繰り出す偉大な御業。


 つまり、よく知ってる煌気オーラを目標にしたはず。

 芽衣ちゃんの煌気オーラは可愛いけれど、陛下はそこまで密接に御関わりなされてはいない。


「はい! ノア!! 今日こそ『太刀風たちかぜ』を覚えよう!! 頑張って!! まずは煌気オーラを掌から放出させて!! なんでそこに穴が空くの!! うわぁ!! 僕、自信なくしそう!!」

「ふんすー!! ふんすふんす!! ふんすー!!」


 本日のミンスティラリア魔王城・スキル修練場にいたのは芽衣ちゃんとノアちゃん、そして六駆くん。

 全員が体操服という庶民的な装いで最強の男の指導を受けていた。


「みみみみっ! 六駆師匠! お客さんです! みみっ!!」

「えっ!? テレホマンさんじゃないですか!! うわぁ! 全然気付かなかった!!」


 最終決戦を終えてなお、六駆くんの煌気オーラ感知はざるのままだった。

 テレホマンが静かに跪く。


「ひ孫様。宸襟を騒がせ奉り恐縮にございますれば。このテレホマン、まずは御許しを得て申し上げたい儀がございます。ひとまず、こちらを……。スーパーテレホマン・水着エディションでございます」


 スーパーテレホマンとは、テレホマンが座興で創る金塊人形を指す。



「テレホマンさん。あなたのために、僕は何ができますか?」


 とてもいい顔でスーパーテレホマンを受け取って、手慣れた感じでそれを溶かし始めた六駆くん。

 せっかくの水着エディションなのに。



 テレホマンは「八鬼衆を回収したい由にございます。まずはひ孫様のお許しを得てからと考えた次第にて」と跪いたまま続けた。

 六駆くんがスマホを取り出す。


「あ! もしもし! 南雲さんですか!! あの、八鬼衆って人たちいたじゃないですか! どこにいるか教えてもらえます? テレホマンさんに返すので! えっ!? 何人かほとんど死んでる!? そうなんですか!! 大変ですね!! じゃあ、とりあえず今、自分の足で立ってる人たちで良いです! はい、はい。はーい」


 半年経っても仮死状態の八鬼衆が結構いた件。

 日本本部も色々とぶっ壊れされて、やっと再建されたタイミング。

 戦争してた敵国の将官を引き取られる予定もないのに懇切丁寧に生き返らせたりはしていなかったらしい。


「じゃあ、行きましょうか! テレホマンさん!!」

「は? ……ははっ。ひ孫様が御身から私を導いてくださるのですか!?」


「僕たちの仲じゃないですか! 言いっこなしですよ! うふふふふふふふふふふふ!!」


 六駆くんの左手には綺麗に延べ棒として成型された金があった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらは異世界スカレグラーナ。

 門が生えて来たので金色と漆黒の竜人が応対じゃんけんを始める。


「こんにちはー! バルナルドさん、いますー?」

「余がご指名されておったとはな……。ナポルジェロよ。卿、たった今まで余の背中をむっちゃ押しまくった事について、後で話がある。覚えておるが良い」


 帝竜人バルナルド様が六駆くんとテレホマンをお出迎え。


「ここにまだいます? 僕たちに太陽ぶつけて来た人」

「卿。軽い雑談すらもカットするそのやり様。……余はいつ出番が来るのかと、常に緊張感をもって生活しておると言うのに」


「います?」

「あっ、います」


 この地には八鬼衆がひとり。

 哀愁のムリポがいる。

 というか、ホマッハ族たちの住居の隣にムリポ隊は家を建ててもらったので、普通に住んでいる。


 ホマッハ族の住居はナメック星人のそれに近い形をしており、太陽の熱にも絶対零度にも耐え得る。

 彼らの鍛冶技術がなんでそんなに発展し過ぎているのかは誰にも分からなかった。


「どうした。小さく硬き者たち。あそこに見えるは竜の者たちか。このムリポ、芋を蒸かす当番がある故、ちょっとイベントに参加するのはムリポ。……ん?」

「あっ」


 呼吸を止めて1秒に満たず。

 お互いそんなに真剣な目もしていないが、そこからは何も聞けなかった星屑ロンリネス。


 鉄をブレスで溶かして鍛冶してた幻竜人ジェロード親方がのそのそとやって来て「ムリポは気まずいからまだ帰りたくないそうだ。ヤツは我の芋当番を代わってくれる。今しばらくそっとしておいてやれ」と言ったので、テレホマンは「ひ孫様。なんか元気そうでしたので、ここは結構でございます」と跪いた。


 哀愁のムリポ。

 まだ帰らず。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そののち、久坂家に立ち寄った六駆くんとテレホマン。

 爽快のキシリトールが充実した顔で畑を耕していたので「あっ。ひ孫様、こちらも結構でございます」と跪く。


 続けてやって来たのは軍事大国ルベルバック。

 この地は防衛システムが結構ガチっているので常に出しっぱなしの門と連結しないまま転移すると迎撃仕様リコタンクの餌食になる。


「ここって誰かいるんでしたっけ? 南雲さんに送ってもらった『イケるかもリスト』には載ってますけど」

「はっ。この地には厳密に申し上げますと八鬼衆ではありませんが、私と同じ技術系に強い不飲のナタデココという男がおりまして。正直、他の八鬼衆を全部諦めてもナタデココだけは回収したい由にございますれば」


 ルベルバックの門を出るとすぐに代理総督府の離宮があり、離宮の隣には役目を終えたゴリ門宮がある。

 現在ゴリ門宮はナタデココ宮と名前を変えて、新しく創設された軍事部門の拠点として運用されていた。


 諸君。木原クソさん分離の際に、割と雑な感じでルベルバック入りを果たしたナタデココの事を覚えているだろうか。

 覚えていなくとも問題はない。


「あっ!? テレホマン!! 貴官、なぜここに!?」

「あっ!? ナタデココ!? 貴官、なぜこの国の軍服を着ている!?」



 テレホマンがだいたい全部、察した。

 「八鬼衆、死んでないヤツらはみんな勝手に居場所を作ってた……」と。



「帰りましょう。ひ孫様」

「えっ!? いいんですか!? 僕、拉致る事も厭いませんよ!?」


 そこは厭うべきかと思われた。

 だって六駆くんはナタデココのルベルバック政権入り、その瞬間に立ち会っていたのに。


 多分きっと絶対、もう忘れているのだ。

 そう。


 諸君が木原クソさんのエピローグ時空の事を忘れているように。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 バルリテロリに戻ったテレホマンはその足で皇宮へと向かった。


「ぶーっはははは!! 戻ったか! テレホマン!! という事は、アレやな! ワシの八鬼衆は揃ったか!! これで四郎にデカい面されんで済むやんな!! よっしゃ! こっそり軍事復興や!!」

「は? ……ははっ。陛下。これからも我らは現体制で頑張って参りましょう。私はより一層の努力をここに誓いますれば。健康に留意しまして、電池を食す回数も週3に調整いたします」



「えっ!? 1人も帰って来んかったんけ?」

「はっ。左様でございます」



 バルリテロリ皇宮からお送りしました。

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