異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1327話 【エピローグオブ木原クソさん・その2】お久しぶりです、ルベルバック。お変わりないようでなにより。
第1327話 【エピローグオブ木原クソさん・その2】お久しぶりです、ルベルバック。お変わりないようでなにより。
ルベルバックも君主独裁制だったが、その隙を悪かった頃にあっくんにつけ込まれて傀儡帝政へと向かい、偶然の巡り会わせで解放の戦士となったのが莉子ちゃん。
厳密には南雲さん率いる日本探索員協会が解放したのだが、当時はまだまだ六駆くんが「こちらは莉子です!! 莉子が現世からやって参りましたぁ!!」と今の婚約者をスケープゴートにしていた時期なので、ルベルバックでは解放の象徴を「莉子」と呼ぶ。
背中の莉子マントを大々的に活用し始めたのも、アタック・オン・リコを走らせたのも、ルベルバック戦争が初めて。
そののち、あっくんとルベルバック現政権、民主政治へ向かう過渡期を預かるキャンポム代理総督が和解し、「色々あったけど、クソみたいな帝政から脱却するきっかけにもなったし。もういいよ!」と、とある皇帝陛下がバルリテロリで目指したかった結果の1つは今、ここにあった。
戦争の結果がここまで短期間かつスムーズに片付くなんて奇跡である。
奇跡は望んで起こせるものではない。
喜三太陛下。聞こえていますか。
あなたはひ孫に許されていません。
そんなルベルバックは日本本部と同盟関係に。
ピース侵攻の際にはリコタンクを山ほど投入して御滝市を防衛し、戦艦チクワを叩き落とした。
良好な関係は継続しており、ルベルバックの名物「先進的な軍事技術」を借りて雷門さんと木原さんの合体した
そんな訳で、今回も木原クソさんの分離を依頼していたのだが、やって来たキャンポム少佐の表情は暗い。
やったか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「わざわざの御足労。感謝いたします。南雲殿」
「ああ、とんでもないです。こちらがお願いしている立場ですので。代理総督の任もお忙しいでしょうに。ありがとうございます」
敬礼し合う偉い人たち。
「木原クソさん、死んじゃったんですか!? 失敗ですか!?」
「逆神くぅん! 今日はもういいから、君ぃ! 帰ってくれないかな!?」
遠慮しない最強の男。
雷原さん、通称ゴリ門さんの時と今回の木原クソさんのケースでは1つ、決定的な違いがある。
融合適正持ちの雷門さんが勝手に抜けているので、ハンバーグにおけるつなぎがなくなった状態と言い換える事ができる。
つなぎのないハンバーグも存在するし、その味は肉肉しくて美味であるが素人が手を出すとフライパンに投入した瞬間にパーンとなって、ハンバーグの種はひき肉に戻る。
もしかすると、木原クソさんはひき肉さんになったのだろうか。
「いえ。成功はしています。していますが、何と申したら良いか。技術部からの報告ですと。……クソ? これは失礼にならぬものかと言葉を探したのですが。交差点にも夢の中にも答えはありませんでしたので、クソと呼称いたしますこと、お許し願いたい」
「あ。いえいえ。全然、お気になさらずに。私たち、そのクソの部分を知らないので」
木原さんと合体中なのはバルリテロリのスキル使い、氷鬼のガリガリクソ。
ガリガリクソと交戦したのはルベルバック。
当地である。
そこの代理総督が「よく分からん」と言うのであれば、もう誰にも分からない。
「さらに勝手をいたしました事、謝罪せねばなりません。バルリテロリから軍事作戦で当地に侵入した者たちを捕えまして。それがちょうど3日前の事です。ご報告するタイミングを逸しておりました、というのはこちらの都合。何なりと罰を受けましょう」
「ああ! 私たちと交戦した!! あの! ガンダムっぽいメカと一緒に来てた! はいはい!! なんかゼリーみたいな見た目の!! 覚えています!!」
八鬼衆次点、不飲のナタデココである。
ナタデココ隊は終戦したらしいという情報は得ながらも「皇国に帰ってもどう申し開きをすれば良いのか……」と、学校に遅刻して登校したのは良いけど授業中だし教室に入るタイミング分かんねぇよ、な事態に陥り、とりあえずルベルバックでずっと砂塵に紛れていた。
それが先般、ついに発見されたらしい。
「逆神くん。どうせついて来たんだから、連絡してくれる?」
「いいですよ! ちょっと失礼しますね!」
スマホを取り出す六駆くん。
2コールで通話中になる。
「あ! もしもし、じいちゃん? あのさ、ゼリーって人がルベルバックで捕まったらしいんだけど、これどうしたらいい? うん。うん。そう? じゃあこっちで適当に? 分かった、オッケー! ひいじいちゃんには伝えといてねー。はーい」
通話が終わる。
「ルベルバックにあげてもいいらしいですよ! 搾り取れるだけ技術とかそういうのゲットして、後は好きにしてくださいって! うちのじいちゃんが!!」
「ええ……? なにゆえ六駆殿のおじい様が……?」
キャンポム少佐は六駆くんと会うのが半年以上ぶりなので、「そういえばこの人はこういう人だった」と思い出す。
すぐにガブルス中尉を呼んで「ナタデココ殿をお連れしろ」と命じたキャンポム少佐。
本当にすぐ来た。
「えっ。あの、えっ? ……その節は大変申し訳ございませんでした。部下の命だけはどうか、どうか寛大な」
「あ。そういうの良いですよ! 戦争なんてお互い様ですから! ひいじいちゃんの無茶に付き合っただけ偉いですよ! ねっ、南雲さん!!」
「あ。うん。そうね。どうも、日本本部の南雲修一上級監察官です。身柄は保証しますのでご安心を。こちらの無茶苦茶言う子が貴国の皇帝のひ孫です」
「縁は切ってますけど、逆神六駆です!!」
ナタデココが跪いた。
「して、ナタデココ殿。貴国の将官が日本本部の木原監察官と合体しているのだが」
「あ。えっ!? お話は伺って来ましたけど、えっ!? ガリガリクソですよね!? えっ、合体!? 捕虜ではなく!? まだ合体してるんですか!? えっ!? あの、ガリガリクソはクーデター未遂を起こしまして。バルリテロリの法では未遂でも死罪ですので、その、えっ!? まだ合体してるんですか!? お正月の、ですよね? あれからずっと!?」
情報をきちんと伝え直すキャンポム少佐。
ナタデココが「ええ……」と困惑しながらも一応の納得を得るに至ったらしい。
彼は言う。
「あの。それでしたら、ガリガリクソは木原様の中に吸収させる形で処理されてはどうかと……。お聞きした感じですと、自我はもう10割木原様が得ておられるようですので。はい。現状、2人分の
つまりこうなる。
木原さんの
濃いめのカルピスにちょっとレモン汁が垂れたって、よーくかき混ぜればカルピスになる。
だったら、
それでガリガリクソの事は忘れましょう。
どうせ死刑になるので。
こうなる。
「ええと。芽衣くん? それでいいかな?」
「みっ! 芽衣、子供だからもうどうでもいいです!! みみっ!!」
どうせおじ様が帰って来ることが決まったのならどうでもいい。
芽衣ちゃんの本心であった。
次回。
いい加減に帰って来い。木原久光。
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