第1318話 【エピローグオブオタマさん・その2】己がおっぱいを賭して新たな時代の乳ずえとなるか。それともそれはただの愛と言う無償のおっぱいか。 ~続く、更新告知ツイートするのが恥ずかしい系タイトル~

 ちょっと前、具体的には6月のバルリテロリ。

 電脳ラボを訪れたオタマさんがテレホマンに相談をしていた。

 ラボメンは仕事中の時間。


「おい。貴官。手が止まっているぞ」

「そういう貴官もな。聞き耳を立てる事もあるまい。同期してもらおう」


「いや、無理だろう。テレホマン結構心が心が堅いから」

「呼び捨てすんなよ。うちの総参謀長様だぞ。あと心が堅いってなに? 見た目?」


「知らんのか、貴官。テレホマン様は意図せぬ同期を一切なさらない」

「あー。それな。我々は結構やっちゃうもんな。お漏らし同期」


「あれはそんな名前だったのか。まあ、咄嗟に思ったことが同期されるからな」

「私、この間レッドウィングのブーツでガム踏んだ時、お漏らし同期したわ」


「それ先週か? 氷や保冷剤やレシートに食器用洗剤。山ほどラボに届いたな」

「何の話だっけ? ああ、そう。テレホマンの心が堅いって話だ」


「呼び捨てヤメろって。あれは生来の素質じゃないのか?」

「あー。四角いもんな。見た目からして堅そうだし」


「友達少ないから同期する相手いなかったんじゃないのか?」

「あるあるだな。同期が下手なヤツ、クラスに1人はいたよな」



「みんなー。コーラ持って来たよー」


 誰一人として「もしかしてテレホマン様、オタマ様と……!?」とか噂してくれない電脳ラボのメンバーたち。



 テレホマンが丸みを帯び始めている頭をかいて「騒がしく、申し訳ありません」と謝罪するが、「こちらがお邪魔しているのですから、お気遣いなく」とオタマさんは感情を込めずに応じた。

 全臣民の8割が同期できるバルリテロリにおいて電脳ラボは秘匿性の面から見ても内緒話には打ってつけであり、それは戦争時に大本営も兼ねていた事が証明している。


 時々はお漏らし同期もするけれど、物理的に聴き耳立てている時はそっちに集中しているので意外と心は空っぽらしい。


「しかし、クイント様とご一緒になられるおつもりとは。ああ、いや。これは差し出口を。失礼いたしました」

「いいえ。テレホマン様。そう仰るお気持ちはよく分かります。クイント様は二言目にはおっぱい、おっぱいと、三言目まで兼ねてしまう御方。私のような者が20代前半女子の代弁者のような顔をするのは厚かましいですが、いささか生理的に辛い瞬間が8割ほどございます」


 「結構あるな……」とテレホマンは思ったが、すぐに「ん? 残りの2割は?」と思い至り、何を口に出すべきか逡巡した後で「今日はいい天気ですな」とバルリテロリにも梅雨はあるのに6月の曇り空を見上げてミステイクをキメた。


「六宇様が彼ピをお作りあそばされました。つまり、現世にお嫁ぎになられる可能性があります。そうなりますと、お分かりですね? テレホマン様」

「は? ……ははっ。高校を卒業できるように皆で千羽鶴を折ります」


「はい。テレホマン様。違います。皇位継承権を持たれる皇族がおられなくなります。分家による御家騒動が起きます」

「は? え? え、あっ。……あー。………………………………ああー」


 そうなのである。

 バルリテロリ皇族逆神家。

 あんなにいたのに、今はもう六宇ちゃんを除くと皇族離脱しているクイントとチンクエくらいしか残っていない。


 田吾作とか兵伍とか十四男とか五十鈴とか孫六とか、他にもいっぱいいたのに。

 誰もバルリテロリに生きて帰ってきていない。

 皆、元気だと良いが。


「陛下は今や、四郎殿下の胸先三寸で御隠れカウントダウン、いえ、カウントアップが進行中でございます」

「ほっほっほ」


 6月時点だって四郎じいちゃんは電脳ラボにいる。

 そして肯定せずに笑うだけ。

 その理由はバルリテロリのエピローグにて語られた通りである。


 「ほっほっほ」が「ハーッハハハハ!!」になるまであと1ヶ月。


「つまり、オタマ様? 御自身を犠牲にして皇位継承権を持たれるお世継ぎを……?」

「はい。テレホマン様。違います」


「と、申されますと?」


 オタマさんの難しい肯定に対して「つまりどういうことだってばよ?」と即座に聞けるのは1つの才覚。

 テレホマン、仮に次代の皇帝が誕生した際にも総参謀長は続投確定か。


「はい。テレホマン様。私は意外と面食いでございます」

「は? ……は?」


 「ははっ」とテレホマンが応じられなかった。

 これは事件であった。


「という訳でございますので。新築の中古アパートのご用意をお願いいたします。完成は7月を目途にできますでしょうか。クイント様に気取られると困りますので、餅まきは行わないでいただけると幸いです。それでは、失礼いたします」


 オタマさんが丁寧に頭を下げてから退室して行った。

 その2房のおっぱいが残像となってラボメンの記憶中枢を支配している間にテレホマンが厳命を下す。


「貴官ら。……絶対に漏らすなよ。絶対だ。これは今や形骸化した軍規とする。違反者はNテェテェによって発酵ののち、銃殺刑だ。代わりに大変不敬ではあるが、オタマ様のおっぱいを貴官らの脳に刻み込め。そののち、不敬を詫びるぞ。私に続け」


 電脳ラボのメンバー全員が皇宮に向かって跪いた。

 その敬意は誰のどの部分に向けられていたのか。


 そののち、「新築の中古アパート建設ミッション」は電脳ラボによって静かに進行する事となる。

 終ぞ1人として「くそ。クイント様があのおっぱいを」などと恨み言を口に出さなかった、得難き男たちである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 時間は巡り、再び7月。

 オタマさんがバルリテロリB地区の復興現場にやって来た。


「クイント様」

「オタマぁぁぁぁ!! オレぇ! 家建てて、家建てて、下水管創って、家建ててました! クイントは勃ててません!! 褒めてくれ!!」


「はい。クイント様。素晴らしいかと」

「ぐへへへへ!! この調子であと20年くらい働きゃ、オタマと手ぇ繋げるってもんだ!! そんなお買い得な話ってねぇよなぁ!? チンクエぇぇ!!」



「……ぅぃ。……とても……ぅぃ」


 滂沱の涙を流すチンクエである。



 オタマさんがバルリテロリの皇室御用達オフィシャル手拭いを差し出した。

 キラリと輝くお米粒が目印であり、バルリテロリ皇宮で1つ200円にて販売中。当たりには本物の米粒が乾燥してくっ付いている。


「どうぞ」

「オタマが使ったヤツか!? 匂い嗅いでいい!?」


「新品でございます」

「じゃあオレの匂い付けるわ! 匂い嗅いでくれる!?」


「いえ。結構です。僭越ながら私が汗をお拭きいたします」

「ひょぉぉぉぉぉわぁおぅ!! チンクエぇぇ! これどうなってる!? オレのスリーポイントおっぱいダンク、キマった感じ!?」


「……ぅぃぃぃぃ」


 チンクエはこの何でもないけれど人生で最も特別な夏の1日の事を、生涯忘れる事はなかったという。


「ところでクイント様。今にも崩れそうな中古のアパートがございます。私と一緒に中を見て頂けますか?」

「おっしゃらぁぁい!! 任せとけぇぇ!! そんなもん、オレがおっ建ててやるぜ!!」


 オタマが歩き始める。

 クイントはそれに続く。


 オタマの後ろ姿をローアングルから眺めるために、映画『エクソシスト』で悪魔に憑りつかれた女の子みたいなフォームで歩き始めたクイント。


 クイントとはスペイン語で5を指す。

 逆神大吾にの名前も5が入っている。


 大吾の嫁さんはアナスタシア元王妃。

 おっぱいデカくて超美人。


 おわかりいただけただろうか。

 歴史はおかわりいただけるだろうか。

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