異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1309話 【エピローグオブ塚地小鳩・その3】「お友達の皆様にもお手伝いして頂きますわ!!」 ~それは男子が気まずくなるヤツ~
第1309話 【エピローグオブ塚地小鳩・その3】「お友達の皆様にもお手伝いして頂きますわ!!」 ~それは男子が気まずくなるヤツ~
あっくんの家と言う名のラブホテル。
が、建っている敷地は久坂家の庭。
山間にある大きな土地に母屋があり、庭は伝説となる前、在りし日の久坂剣友が探索員として修業をするためにむちゃくちゃ広く確保され、ご近所迷惑を考慮してお隣さんとの距離はだいたい5キロ。
その一角にショッキングピンクのお城があるのだが、そこから少し離れた場所にアパートが4棟建っていた。
アパートの裏手には畑があり、角の生えた男たちが日々耕している。
「ひょっひょっひょ。精が出るのぉ。ガムの」
「これは大御所様。本日は……なるほど、委細承知いたしました。内科の受信日でございましたか。では、こちらを。きゅうりが実りましたので、どうぞどうぞ。お持ちください。大御所様には待合室できゅうりをもってマウントとして頂きたく。先日高杉さんのお宅より頂戴したキンカンのはちみつ漬けには負けておられません」
八鬼衆がひとり。
爽快のキシリトール。
この子、まだ現世にいたのである。
部下たちと一緒に久坂家の庭に住んでいる。
八鬼衆は忠義に厚すぎてちょっと面倒くさいタイプと、手の施しようのないクソ野郎で大別される。
その中でも忠義心を拗らせているのがこの爽快のキシリトールと、哀愁のムリポ。
彼らは「皇国の危機に!! なんか知らんけど、何もしてなかった!! これでは陛下に合わす顔がない!!」と自戒を繰り返しているうちに正月が終わり、冬が終わり、春が来て、その春が行ってしまいそうになる時分まで考えた結果、侵略しようとしたポイントに現地民から許可を頂いて名義上、形式上、便宜上の駐屯地として住まわせてもらうことになった。
まだ自戒が続いているので皇国には帰れぬキシリトール。
自治会の清掃活動には率先して参加、全てを吸い取る眼の能力『スッキリ』を駆使して「久坂さんとこの留学生さんはよぉ働いてじゃねぇ」と野菜を頂く日々。
そしてついに彼らも農耕を始めるに至り、「もうこのままここに住みゃあ良かろうが」と久坂さんにも言われるくらいに現地に居ついていた。
そんなキシリトールが言う。
「大御所様。浄汰様が本日、致されるとの由に。先ほどから大きな声で軍議しておられますれば、我々、一晩山の中で山菜でも採って参ります」
「ほぉ! そりゃあいけん! ハゲにも言うちょこう! 五十五は……。今日、帰るんかのぉ? あやつ、意外とマメじゃからのぉ! ひょっひょっひょ! ん!? こりゃあいけん!! 内科が閉まる!! すぐに帰るけぇ、お主ら!! よう聞き耳立てちょけ!!」
久坂さんに向かって跪くキシリトール隊。
「現世では随分とオープンに子作りをなさるらしい」と呟いて、キシリトールは汗を拭った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
あっくんサイドの足は速いようでその実、致し方戦力が足りない。
和泉さんはあっくんに焚きつけられてアレがナニした後らしいので今回に関してはズッ友であろうと、いやさズッ友であるからこそ「ごふごふ……。おめでたいので紅白の赤は小生の血で賄いましょう」と、四の五の言わず致せばええやん派。
六駆くんはもう「うわぁ! 麻雀って奥が深いや!!」とアカギで麻雀の造詣を深めるという、ある意味では正門入学、ちょっと道を踏み外すと裏口入学で致すとかどうでも良いです派になった。
多分、次のミンスティラリア麻雀大会では河から白と發と中を抜いて来て大三元を誰かからロン上がりするのだろう。
また戦争が起きる。
唯一のあっくんにとって味方が意外にもノアちゃん。
彼女、パパラッチである。
「よく考えたらタイミングが悪いです! 興奮しますけど、良くないです! もう月刊探索員夏の特大号は印刷済み! 秋の特大号まで引っ張りたいですね! ふんすっす!!」と、スクープされる側はタイミング考えろ派に。
3人が同じ方角を見ようとする気配すらない。
小鳩さんは若手の探索員から人気のあるお姉さん。
あっくんはさらに人気がある。
老若男女問わず、ほぼ全探索員が敬愛しており、直近の男子探索員人気ランキングでは3位に入賞した。
ちなみに2位は加賀美政宗監察官。
1位は2期連続で久坂五十五Aランク探索員である。
さらにちなむと六駆くんは8位。隠居したので大学生が忙しい。
人気者と超人気者の公認カップルが致すとなれば、現場は抑えずとも事後のインタビューは取りたい。
取ったらすぐに載せたいのに、適した場がちょっと遠い。
次の季刊号は10月発刊。7月にとって10月は遠い。
「……ちっ。俺ぁよ。別に拒んでるって訳じゃねぇんだがなぁ。ただよぉ。責任取れる身分かって話になるとまた違うだろうがよぉ。なぁ? そうだろぃ?」
「ふんすですね!!」
「……クソが。ノアしか聞いちゃいねぇ」
結局のところ、受動的な態度が似合ってしまう阿久津浄汰。
ただし、この雰囲気。
小鳩さんの押し方次第ではワンチャンス。
「あぁ? 別にしねぇとは言ってねぇだろうがよぉ……」とぶっきらぼうに始まりかねない雰囲気はある。
小鳩さんサイド、気付けるか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「普通にお誘いするのはどうでしょうか!!」
「ふ、普通に!? 申し訳ありませんわ、リャンさん! わたくし、普通が分かりませんの!! お教え頂けると幸いですわ!!」
「夜になって先にですね、寝室に」
「ヤメて! リャン!! 小鳩ちゃんとあなた、そういう話の相性が最悪!! 小鳩ちゃんが熱出して倒れたらどうするの!!」
「了!!」
「いいお返事!! ……小鳩ちゃん? あのー。まずはデートに行って、ね? それで、良い雰囲気になって。あ゛。……ごめんね。私、この中で1番こういう話を偉そうにしちゃダメな女だった。もうおっぱい出しとけばいいよ……」
仁香すわぁんは何か嫌な思い出がその胸に去来したらしい。
途端に口が重くなった。
「ふぁい!!」
「莉子ちゃん? 揚げパン、それで何個目?」
「ふぁっ!? ……モグモグ。こくん。あのあの! やっぱり探索員なので、デートと言えばダンジョンなのでは!! わたしが六駆くんと良い雰囲気になるのもだいたいダンジョンでしたし!! 南雲さんに頼んで、これからちょうどいいダンジョンを紹介してもらいましょうよ!!」
「みみっ。みーみーみー? ……みみっ」
芽衣ちゃんが察する。
みっ。無理筋を通す流れです。と。
莉子ちゃん、高校生の頃は下校デート。
探索員としては
大学生になったらパリピデートが御所望の臨機応変
小鳩さんとあっくんの共通点を探したところ、真っ先に「探索員だぁ!」と思い付き至る。
別に間違ってはいないのだが、準公務員扱いで国際的な機関の下部組織である日本本部に所属している者として「ダンジョン攻略で彼氏の攻略もしちゃいましょー! おー!!」と張り切るのはいかがなものか。
メインヒロインでなければ危ないところであった。
良かった。ハイパーアルティメット莉子ちゃんで。
莉子ちゃんがスマホを手に取って早速上官に電話をかけた。
「はわわわわですわ!! な、何を着ていけばよろしいんですの!? ……フリルの付いたワンピースとか、狙い過ぎですわよね!? 仁香さん!!」
「うん。南雲さんを通した時点で任務扱いになるんだから、装備で行くべきだと思うよ?」
次回。
小鳩お姉さん、ダンジョンで致すか。
場合によってはアレがナニして、もしかするとエピローグがここで終わるかもしれない。
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