第1294話 【本当に決着の時・その1】復活の逆神六駆 ~究極スキル『ちょっと先っぽだけお願いします・門』~

 今回のあらすじ。


 六駆くんが復活。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 逆神六駆の体が紫色の煌気オーラで輝く。

 この世界では煌気オーラの出力方法を少し変化させるだけで放出された色も簡単に変わる。

 ゆえに、地球人なら白いスパーク、スーパーサイヤ人なら金色、ピッコロさんだけ緑だったり青だったり紫だったりという風に個性や属性によって色分けされる事はない。


 だが、普段の六駆くんは金色に近い黄色の発光ばかりしている。

 それは彼のこだわりだった。


 纏うは黒。

 発するは金。

 流すは敵の鮮血の赤と決めているのだ。


「うわぁぁぁ!! すっごい勢いで知らない子供の煌気オーラが……!! 気持ち悪い!!」


 人殺助・漆の煌気オーラは紫色だったので、六駆くんも紫発光。

 紫色の六駆くんがまず向かった先は、喜三太陛下のところだった。


「ひいじいちゃん」

「なんや? ああー!! 分かった!! お前ー!! なかなか可愛いところあるやんけ!! ついにこのワシに首を垂れて謝意を申し上げながら崇め奉るんやな! この謝意シャイボーイ! なんつって! ぶーっははははははははは!!」



「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」

「おぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 喜三太陛下が六駆くんにガチビンタされた。

 これはあまりにも理不尽。



 御吹き飛びあそばされた陛下はほっぺを手で押さえながら涙目で仰せになられる。


「なにするんや!! お前ぇぇぇ!!」

「えっ!? ……なんか、つい反射的に。サンキュー。ひいじいちゃん」


「おまっ……ええ……? どういう育ち方したらそんな事できるんや……」


 それは確かにそう。


 六駆くんが手を莉子マントで丁寧に拭きながら答えた。


「えっ!? 私怨だけど!? ひいじいちゃんさぁ。ついさっきまで僕たち戦争してたんだよね? そもそもひいじいちゃんが人殺助さんを仕留め損なうからこうなったんだよね? 転生した先で人殺助さんを魂が0機になるまで殺し続けたらさ。僕たち今、こんな苦労しなくて良い訳だし? そもそも戦争とか起きなかったし? 何ならもう今頃はひいじいちゃんも死んでて、その顔を僕が見なくても済んだわけだし?」



 それも確かにそう。



「ええ……。えええ……。お前、それはあんまりやろ……」

「サンキュー。ひいじいちゃん。鬱陶しいからどっか隅っこ行ってて良いよ」


 恐らく六駆くんの中でギリギリ父親>曾祖父だったのが、この瞬間に父親≧曾祖父になったであろう事を喜三太陛下はご存じない。

 そしてそれは親密度が深まった事に違いないが、親密だからと言って仲良しであるとは限らない。


 人って、家族って、難しいや。


「さて……。あ。ダメだ。まだ調整ミスりそう。南雲さーん!」

「ダメだよ!!」


 阿吽のおじさんたち。


 「この辺一帯を焦土にしてもいいですかー」「良い訳ないでしょ。バカ言ってるんじゃないよ」という戦略的会議を口に出さずに済ませる2人。

 ならばと六駆くんが右手を空に掲げた。


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!! 『極光瞬間連続獄門グランゲートグランデ』!!」


 それはこれまで出して来たどの門よりも大きく、煌気オーラが濃縮された構築物であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらはバルリテロリ。


 四郎じいちゃんが電脳ラボの技術開発長官席(さっき作られた)から立ち上がり「でかした!! 六駆!!」と珍しく叫んだ。

 どのタイミングかと言えば、言うまでもなく喜三太陛下が割と理不尽かつ、割とロジカルにビンタされた瞬間である。


 そんな電脳ラボに生えて来る門。

 六駆くんの声が響く。


『じいちゃん! 僕、僕!! 見てた!?』

「最高じゃったわい」


『あ、見てた!? じゃあさ、何でもいいから攻撃スキルとか、兵器とか? 門に撃ち込んでくれる? これね、照準固定式の『ゲート』なの!! じいちゃんなら分かるよね?』

「なるほど、考えたの。愚物キサンタの転移スキルと同じ構成術式とは。これならば、門に叩き込んだ攻撃は全てまとにダイレクトで飛んでいくという寸法か」


『そうそう!! 今ね、サービスさんとバニングさんが頑張って動き停めてるから! まずは小さい方からやろうかなって!!』


 だいたいの事情を会話で我々にも説明してくれる、有能世代の逆神家。

 四郎じいちゃんが少しだけ考えた。


 彼には放出系で高威力のスキルがない。

 ならば、周囲の人を頼ろう。


「お父さん! みんなも準備出来ちょるって言いよるよ!!」


 みつ子ばあちゃんは以心伝心。

 旦那の求めるものならば食卓のお醤油から敵国の戦力まで全部掌握できる。


「殿下! この電脳のテレホマンに御命じくださいませ……!! 皇敵を討てと!! バルリテロリの新たな夜明けのために、撃てと!!」

「ほっほっほ!! ……皆さんをより良い生活へとお導きするのも悪くない余生かもしれませんの。……あの愚物キサンタパパ上の悔しがる顔が見れますしの! ほっほっほ!! やっておやりなされ!!」


 テレホマンが「御意に」と頷いて、テレホ・ボディを換装させた。

 サイコガンっぽい右手を門に向けるとラボメンたちにも告げる。


「皆!! 四郎殿下の御意に従え!! 『テレホガン』!!」

「はっ。全員で爆発しそうなものをとにかく投げ込みます!!」

「みんなー。コーラ持って来たよー」


 バルリテロリから第一射が放たれた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 同時刻。

 異世界ピュグリバー。


「あららー。まーた便利なスキル作っちゃってー。逆神くんったらー。ところでさ、ここって君のお母さんの故郷らしいんだけどねー? 春休みになったら遊びにおいでよー」

「六駆様!! 莉子様にお伝えくださいませ!! エヴァンジェリンはまたイオンでお買い物がしとうございます、と!!」


『……でも、そこって親父の像が建ってるんでしょう? 何百回も親父に聞かされましたもん。それはちょっとなー』


 もう1体も残っていないし、国民の1割が名前を憶えているかどうかも怪しい。

 そう伝えると、六駆くんが「うわぁ! 遊びに行きます!!」と母方の田舎へ帰省する予定を立てた。


「さて。エヴァちゃん。私たちも頑張ったってとこ見せとこうかー。福田くんはナディアちゃんの背中さすってあげといてー。川端さんも分かってくれるよー。救護だからしょうがないってさー」

「承りました。雨宮いいとこどりおじさん」


 雨宮さんもエヴァちゃんもトマトは美味しく頂いた後。

 師弟で夫婦という六駆くんと莉子ちゃんの一歩先ゆくおじさんとお姫様が煌気を込める。


「よいしょー!! 『新緑の眩しい棘付き緑モリモリグリーン・スパイク』!!」

「はい!! 『桃色の柔らかくて破裂する桃ピチピチピーチ・ラプチャー』!!」


 結局出陣せずに済んだ、にっこり雨宮おじさん。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 同時刻。

 異世界スカレグラーナ。


『なんで喧嘩してるんですか?』


「聞いてくれぬか、逆神六駆! バルナルド様がまるで幼子のように駄々をこねられてな!!」

「卿。卿、卿、けぇぇぇぇぇい!! ナポルジェロ!! 卿!! 余が悪いと!?」


「……はて? 我はそのような事を申しましたでしょうか?」

「……卿とはしばらく一緒にご飯食べぬ。カァァァァァ!! 『コルドブレス』!!」


「キタコレ! 金色の一つ覚え!」

「凍らせるヤツ! 来た来た!!」

「金色、別に氷要素ないのに!!」

「よさぬか。バルナルド様とてお辛い」


 最後のはジェロード親方です。

 気付けば3000年ほど一緒に時を過ごしたけど、3000年ほどずっと先輩面されてた黒いのと金色のよりもホマッハ族と仲良くなった幻竜人。


 その隣には体育座りで皇国を憂う、大柄な男。


「呼び方はバルナルド様に倣うか。卿、ムリポ。今の声の主は卿の国の王のひ孫だ」

「……!? そんな事聞いたら何もしないなんてムリポ! 小さく強き、頑丈な者ども! 我は貴公らに艱難辛苦を……」


 哀愁のムリポ。

 まずは何百度目か分からぬ謝罪を繰り出す。


「いい加減聞き飽きた! ムリポ!」

「ムリポとナグモ! 語感が似てる!」

「だったらムリポ! 友達、ムリポ!! ナグモと友達!」

「ホマッハ族はまだ知り合い!!」

「たかが太陽で死ぬと思われてるとかワロス、ワロス!!」


 ムリポがスカレグラーナ訛りで呼んでもらえた。

 ムリポと呼んでもらえた。


 ムリポは少しだけ自分を許してあげることにした。


「ぬぅぅぅ!! 『メントゥス』!! ……おかしい。バルリテロリの武器庫が……ない!!」


 ムリポの眼『メントゥス』は他方から何かを持って来たり、逆に持って行ったりできる能力。

 散々投げて来た小型の人工太陽は喜三太陛下が御創りになられた煌気オーラ構築物。


「ムリポ! 涙拭け!」

「ここに1つ落ちてるヤツ、ある!」

「もう投げろ! ムリポ、投げろ!!」


 スカレグラーナにはまだ太陽が落ちていた。

 もちろん鎮火しているが、そもそも太陽に鎮火という表現が適しているのかも分からないが、とりあえず着火したら再び燃える太陽。


「ああ、ああ! 嬉しい……こんな感情もうムリポ!! 感謝して投げるぞ、我は!! 『太陽がいっぱいアラン・ドロン』!!」


 帝竜人バルナルド様とムリポの着火した人工太陽が門の中に吸い込まれていく。

 よく分からないけど、なんか大爆発しそうな組み合わせ。


「太陽いっぱいじゃなくてワロス!!」

「ムリポ、言葉ゴミクソ!!」

「ホマッハ族、教える!!」

「卿。ホマッハ族の教えは厳しいぞ。覚悟せよ」


 最後のはジェロード親方です。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして再びナンシーの家だった場所。


「ハハッ!! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァ!!」


 人殺助・漆がちょっとおかしくなっていた。

 やったか。

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