第1293話 【かつての強敵がピンチに駆けつける激熱なヤツ・その4】ぽっと出のラスボスがよォォォ!! ~章ボス軍団「我々は! 負けてからの方がもう長い!!」~

 前回のあらすじ。


 六駆くんに人殺助・漆か捌のどちらかの煌気オーラをまるっと転移させたら回復しないかしら作戦が発動されて、それを察知した要救助者が逃走を開始。

 作戦責任者は喜三太陛下。


 果たして、六駆くんはちゃんと回復してくれるのであろうか。

 現在は莉子ちゃんのおっぱいに掴まったと宣言したところ、そこがお腹だったのでナンシーの家の敷地内であっちこっちに吹っ飛び散らかしている。


 惨劇はリアルタイムで進行している。

 リアルタイムで進行しない事態ってあるのだろうか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「くっそ!! ひ孫ォ!! 戻って来い!! ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! あ゛あ゛あ゛もう分かった、くそが!! この辺一体にものっすごくデカい煌気オーラ力場造ったる!! ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 喜三太陛下、六駆くんと莉子ちゃんのイチャコラを追う事、その無意味さにお気付きになられる。

 それはチーム莉子のメンバーが随分と前に通過して来た、試しの門。


 陛下、最終決戦後の仲良しこよしが捗りますな。


「うわぁ!! すごく痛い!! 莉子! 聞いて!! 違うんだよ!!」

「ふぇ!?」


「僕、ほら! 中身はいい年だけどさ! そういう経験ないから!! あの、アレだよ! ちょっとおっぱいの場所が分かんなかった! そう! そうなんだよ!! 分かんなかったの!!」

「ふぇぇ……」


 現在、六駆くんは吹っ飛び続けており、莉子ちゃんがそれを超高速で追いかけております。

 2人の安全はチーム莉子のメンバー全員が死守する構え。


 そんなもん死守するんかいと言われることなかれ。


 命くらい賭けないと、この2人のやり取りに介入できるはずもなし。


「じゃあ……六駆くん?」

「うん!! ちょっと1回僕の体を止めてくれる!? いつの間にか煌気オーラ力場が出来ててさ! その中でピンボールみたいになってるの!! 誰だろう、こんなところにこんな強力な煌気オーラ力場造ってる人!」


「あのね。わたしも、ちょっと六駆くんに対してね、その。甘えてたって言うか。年上だって思うあまり、色々と身を任せ過ぎてたなって思ったりする……かもだよ」

「えっ!?」


 唐突に始まるラブコメ。


「六駆くんってちゃんと18歳の男の子で。その、ぴゅ、ぴゅぴゅぴゅ、ピュアドゥティーなんだよね……!! じゃあ、クララ先輩とか小鳩さんとかを見ても、どこからどこまでがおっぱいなのか! 分かんないんだよね!? だったら説明がつく!! わたしのおっぱいとお腹を間違えたの!! だよね!?」



「えっ!? ………………………………そうだねあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! 遅かったね!! 今の僕のリアクション!! うん! ごめん! あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 また吹っ飛び始めたひ孫とロリ子を見て「……ひ孫回復させんでロリ子を上手いことコントロールした方が勝つの早いやろ、これ」と思われた、偉大なる皇帝陛下。

 それが出来たらやっております。



 みんなが戦っている。

 これが最終決戦。


「フハハハハハハハハ!! 取り戻したぞ!! 我が身体!! 待たせたな、うぬら。我が人殺助・捌だ。冥土の土産に教えてやろう。うぬらは我に勝て」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」

「あ。ごめんなさい。僕が悪いのか分かんないですけど、とりあえずごめんなさい」


 六駆くんが吹っ飛んできて、顕現したての人殺助・捌の頭に直撃した。


 これが最終決戦。

 その深奥。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ナグモさんとバニングさんが相手をしている人殺助・漆は不敵に笑う。


「ハハッ!!」


 甲高い声だが、不敵に笑っている。


 これは戦場のパワーバランスが一気に傾いた事を「ハハッ!!」で知らしめる、クソガキムーブ。

 漆の没年齢がちゃんと8歳くらいなのかは判然としないが、「うわ! こいつハゲてるぅ!!」とハゲたおっさん指さしたり、「うわ!! こいつブスだ!!」とギリギリブスじゃないお姉さんをブス判定したりするのが許されるのは、このくらいの年齢まで。


 などと言う事はなく、喩え80歳が60歳を指さして「ハゲとるのぉ」とディスっても、クソガキが同じことをしても罪は同じ。口に出してディスるんじゃねぇ。

 子供のやったことですからと親が出てきたら「じゃあ今から決闘デュエルの相手はおめぇだな。早くデュエルディスクを装着しな」となるので、1度でも口から出したディスは虚空を彷徨うことはなく、当人に返って来る。


 割とすぐに。


「ハハッ……? ハッ……」

「ワオ! 動きが急に鈍くなったね!! これはどういう事かな!? セニョール・バニング!!」


「ナグモ殿。平時に戻ったあかつきには、2度と古龍の戦士にならぬと誓って頂きたい。これは私のわがままですが、これから貴殿が率いる探索員全ての者の代弁とも言えます。この先はひとり言ですゆえ、悪しからず。……腹が立つッ!!!」


 バニングさんの血圧が上がりそう。

 だが、1度だけ「くそが!!」と叫ぶと人は割と冷静になれるもの。


 ちょっとだけ冷静になったバニングさんが目配せした。

 その先には。


「ふん。……チュッチュチュチュ。……マイフレンド。……チュッ」

「ふざけるなよ、お前。サービス。ちゃんと練乳は全力チュッチュしろ。ちょっとだけ口を潤すためにチュッチュするな。投げキスみたいになって不愉快さが増す……!!」


 既に仕事を終えたラッキー・サービス氏の姿が。

 もう練乳を好きなだけチュッチュしていても良いかと思われる、大仕事を済ませていた。


「ハハッ!?」

「お前はもう取り込まれている。『メルティーキッス・サービス・タイム』にな。……おい! キッスじゃないか!! お前、サービス!! 究極スキルの名前はよく考えて付けろ!! そして何故! バルリテロリでぇ!! ライアン殿が音もなく厠へ行って帰って来られなかったのかよーく分かった! お前と休息時間を過ごすんじゃなかった!! 全部私が説明させられる!! 監察官一の知恵者もこのざまだ!!」



「ワオ☆彡 チャーミングに笑ってくれるかい? セニョール・バニング!!」

「このざまだ!! くそが!!」



 サービスさんの『ピンポイント・サービス・タイム』は光線型の時間停止スキル。

 皆さんそろそろお忘れの頃であろうと思われるが、もう1つサービスさんが得意としているスキルに腋から管を伸ばして接触させる事により発現される『サービス・ジャック』というものがある。


 その両方の特性を合わせたのが究極スキル『メルティーキッス・サービス・タイム』である。

 管は地中を掘って進んでおり、つい今しがた人殺助・漆に接触した。

 そこから放たれる『ダイレクト・ピンポイント・サービス・タイム』が効果を発現。


 人殺助・漆の動きを停止させた。

 霊媒体質の主人格、その肉体を操っている魂が元なので口と思考は動くが体の自由が利かない。


 薄い本が厚くなる展開であった。


「フハハハハ!! 漆ぃぃぃ!! なーにをしておるか!! 我の肩に乗れ!! 最強のマックスバトルフォームへと成るのだ!! うぬ!! 薄ら笑いしたままで時間を停められるな!! 腹立たしい!! ようやく我の番が来たというのに!!」

「ふっ。最後の人殺助。こいつ、意外と俗っぽいと見た。我という一人称やその喋り方!! さてはキャラ付けか!! クララの寄越して来た本で読んだぞ!!」


 クララパイセンの蔵書がこの世界の猛者たちの基礎知識となったのはいつの頃からか。


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 煌気暴走オーラランペイジさせておられた喜三太陛下、一瞬だが戦場の空気が弛緩したタイミングを見逃されなかった。


 一瞬だっただろうか。

 ずっとではなかったか。


「捉えたぁぁぁ!! くっそ、苦労させられたわ!! 子供の方!! 言っとくがな、ええと、なんや。……名前忘れた! やっぱ子供の方!! おいぃぃ!! ロリ子は呼んでへんやろ、こっち睨むなや!! ワシ、自分の幼年期のクローンを構築スキルで創り出して! そいつを躊躇なく自爆させる偉大な皇帝やぞ!! ……たいして可愛くもないお前に躊躇すると思うなよ!!」


 すごく説得力のある御発言であらせられるが、バルリテロリの皇帝支持率がちょっと下がりそうな御発言でもあらせられた。


「ハ、ハハッ!! 僕と一緒に遊ぼうよ!!」

「ぶーっははははは!! なんか聞いた事ある気がするかもしれんけど!! ワシ、現世から離れて何十年やと思っとるんや!! 元ネタが分からん!! それ、昭和の頃にヒットしとったキャラか!?」


 人殺助・漆が何のキャラのモノマネをしているのか、こちらでは皆目見当も付きません。

 が、昭和の時代にも存在はしていたものの、多分そこまで甲高い笑い声とかは擦られていなかったはず。


 喜三太陛下の両手が輝きを増していく。


「ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ひ孫ォ!! 準備ええな!?」

「うわぁぁぁ!! なんかされるぅ!! 助けて、莉子!!」



「知らないもん……」

「えっ!?」


 乳と和解した莉子ちゃんでも、旦那に乳と腹を間違えられたら拗ねる。



 六駆くんの体も喜三太陛下の造り出された煌気オーラ力場に囲まれる。

 転移と言う名の輸血っぽい煌気オーラの受け渡し、その準備が整う。


「うわぁぁ!! これ、僕がよくやってるヤツだ!! い、嫌だ!! その小さい人から、煌気オーラを僕の体に入れるつもりだぁぁぁ!!」

「ふぅ……。逆神くん。君、さんざん女の子の太ももに変な色のナイフ挿して煌気オーラ回復させてきたじゃない。たまには君が回復させられなさいよ」


 ナグモさんが南雲さんに戻った。


 これはつまり、もう自分がチャオる必要などなくなったということ。


 次回。

 逆神六駆、復活。


 デュエルスタンバイ。

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