異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1287話 【逆神六駆は我慢できない・その3】逆神六駆VS逆神人殺助・肆と伍と陸
第1287話 【逆神六駆は我慢できない・その3】逆神六駆VS逆神人殺助・肆と伍と陸
前回のあらすじ。
六駆くんがもういい加減にして欲しいと苛立ち始める。
今回のあらすじ。
いい加減にしろ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
焼け焦げた人殺助・肆の魂。
これはいかんと少しだけ虚空を彷徨い、致し方なしとすっ飛ばされた大吾の肉体に憑依する。
なにゆえ人殺助の本体に戻らないのか。
答えはうねうね蠢いていた人殺助(?)の体が人の姿を成していたからだと分かる。
「お前ぇぇぇぇぇ!! ふざけるなよ!! なんで出て来たぁ!? 伍ォォォォォ!! よしんば出て来るとしてぇ!! お前が
大吾の体で再起動した人殺助・肆。
魂の状態で焼き払われたのにまだ死んでいないのは賞賛に値する。
厳密には死んで魂になっているので、2度目の死を迎えていないのは、と言い換えるべきか。
「馬鹿め。何故分からんのか、肆!! 今、我らが2人同時に掛かれる絶好機ぞ!! 先のヤツらがなぜ死んだか!! 答えはスィンプル!! タイマンにこだわったからよ!! 我らはタッグゥで相手をすれば! 敵が何十人、何百人しようが物のカウントゥではないッ!!」
「じゃあ場所変われよ!! お前がこっちの体に入れ!!」
「ノォーセンキュー!!」
「腹立つなぁ!! そのきたねぇ発音!! オリジナル似非横文字をヤメろ!!」
なんか良い発音しようとするあまり、勢い余って何言ってんのか分からないこの男。
人殺助・伍である。
肆が魂となって出て行ったので「ワァァァオゥ!! 空いてるぅ!!」と椅子取りゲームを1回早く制覇することになった。
別に特典はないが、人殺助の中の魂たちは基本的に外に出たいので表層人格がうっかりするとこんな感じの下剋上が起きる。
「くそっ!! もういい! せめて名乗らせろ!! ……私は人殺助・肆!! 昭和生まれの平成没年!! 職業は」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!! 『
「ひげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? いや、おまっ!? お前ぇぇぇぇ!! お前もォォォォォォ!! 味方には私の出番を取られるし!! 敵の名乗りを聞かずにチョップして来るバカが敵だし!! 気にならんのかねぇ!? 私の正体が!!」
六駆くんが「今の加減じゃ死なないのか」と自身の手刀の切れ味を悔いながら答えた。
「えっ!? 今から殺す敵の情報に興味ってあります!?」
「……こいつ、どっちかと言うと私たち寄りじゃないか? お前、六駆と言ったな? 人殺助の中に入るか?
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」
「おい、ちょっと待て!! ちょ、待てよ!! これから伍のヤツと私が良い感じのヤツをなんかしゃべ」
「『
「ゔぇぇぇぇエェェェェ!? あ゛!? え゛!? そんな!? あぁぁぁ……ぁぁ……」
人殺助・肆の魂が大吾の体から天へ昇って逝った。
「くそぉぉぉぉ!! 親父の肉体が遺ったぁぁぁぁぁ!! ちくしょう!! 僕は無力だぁぁぁぁ!!」
大吾が静かに倒れた。
死んだのである。
人殺助・肆の魂は死んで終わったのに、大吾は死んだところが新しいスタート。
とりあえず秒殺まではいかずとも、分殺で1体片付けた六駆くん。
今は悔しそうに地面をドンドン殴っている。
◆◇◆◇◆◇◆◇
穏やかではないのが人殺助・伍である。
たった今、人殺助の魂の中ではお隣さんで、結構長い時間を隣人として過ごして来た肆が雑に処理された。
伍の能力は割とシンプル。
接近しての体術を得意とする、
だが、それを使うのはいささか躊躇いがあった。
「やった瞬間にオレは消されるのではないか……」という予感。
もうその予感が数行先の未来と見分けがつかない。
ならば、やらない方が良い。
奥の手としてそれはそれ、温存しておいてである。
まずはこの逆神六駆とかいうヤバい敵を油断させる、何かいい策を考えよう。
そう思っていた矢先の出来事であった。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
死を呼ぶ「ふぅぅぅん」が聞こえるではないか。
まだ、人殺助・伍は何もしていない。
本当に何もしていないのだ。
攻撃も防御も回避も挑発だってしていない。
なんならまだ名乗ってもいない。
会話したのは千の風になった人殺助・肆とだけ。
それもほんのちょっと悪態をついただけ。
まだシニカルなやり取りも済ませていないのに。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
大きくなっている。
黙っているのに。
「ふぅぅぅん」が大きくなっているではないか。
人殺助・伍は考えた。
とても急いで考えた。
下手の考え休むに似たりとは言うが、実質的には休めていないので下手な考えもした方が良いに決まっている。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん」
そうしている間にも迫る、「ふぅぅぅん」と哭く死神。
冗談ではない。
人殺助は長い間、とてもとても長いこと、壱を表層人格として異世界に閉じ込められていたのである。
たまに他の魂が交代してもらえることもあったが、基本的には壱から順番に表層人格が回って来るので、5番目ともなればその機会もなかなか来ないし、後ろにも6と7と8がいるので「えっ。ごめん。ちょっと待って。すぐ済ませるからマジごめん」となんか急かされてる気分になるし、悠々と表層人格を満喫したのは何年、何十年前だったか思い出せないほど昔の事。
そしてそれを思い出した頃には「ふぅぅぅん」され終わるだろう。
人殺助・伍は覚悟を決めた。
「よし! 逆神六駆!! 良い事を教えてやろう!! オレの倒し方だ!!」
「あ。大丈夫です。知ってますから」
返事があった。
イケる。手応えはある。
歩みを止めてはならぬ。
「違う、違う違う! ダァァァウトゥ、違うぅぅ!! オレというのは逆神人殺助の事だ!! 実はな! オレの中にある魂をまとめて」
「あ。それおじゃるモードの時だったかな? その次だったかな? なんか聞いたから、大丈夫です」
「ノォォォウ!! それははったりだ!!」
「えっ!? 嘘つくんですか!? 最低だなぁ、この人!! ふぅぅぅぅぅん!! 『
「アイキャンドゥーって言ってんだろォォォォォォ……ぁぁ……ぁ……」
「えっ!? すみません! もう1回言ってもらえますか!?」
人殺助・伍が消滅した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ナンシーの家の中で六駆くんのガチラストバトルを観戦中のチーム莉子。
あと川端さんとジェームズ。そしてナンシー。
「あぁ……。男爵。あなたの腕、少しだけ抱き寄せてもいいかしら。違うの。勘違いはよしてちょうだい。私、軽い女じゃないの。ただ、あまりにも怖くて。あの子、なんなの? これまで
「いかんな。混乱しているようだ」
混乱しているようです。
だが、ナンシーが混乱するほどの事態が起きていた。
六駆くんがやって来て、なんか本気で「ふぅぅぅん」したら4番目と5番目が霧散した。
特に5番目は会話もろくにさせてもらえずに消えていった。
こんな事が許されていいのだろうか。
訴訟起こされないかしらとナンシーは心配なのである。
「うにゃー」
「ぽこ。端的モード。危険が危ないです。瑠香にゃん、おうち帰りたい」
「聞きたくにゃいぞなー。なんか不吉な事を瑠香にゃんが言うとにゃー。割とそれが起きちゃうもんにゃー。ロボ子って善し悪しだぞなー」
「ステータス『瑠香にゃんだけ知ってるの怖い』を発動します。グランドマスターの
「あたしのおっぱいが火を噴く時だにゃー!! 瑠香にゃんをおっぱいに沈めるぞなー!!」
「ステータス『悪いな。瑠香にゃんはおっぱいじゃ溺れない』を獲得。あ。今、タコっぽい形の人殺助・陸が消し飛ばされました。そしてグランドマスターの
人殺助・陸は瑠香にゃんのナレーションで死にました。
窓から猫たちが見つめる最強の男。
「あ゛。ダメだ……」と呟いてから両膝をナンシーの家の庭について、手でお腹を押さえる。
「ま、まだ大丈夫だにゃー!! ああいう時は胸を押さえて、はぁはぁ言うもんだぞなー!!」
「………………………………? 瑠香にゃんサーチを開始します。完了しました。端的モード。このぽこ野郎。グランドマスターはウイルス性の心臓病を罹患してない。完全に
「にゃー。……じゃあ、あの新しいうねうねはどうするんだにゃー?」
「瑠香にゃんに策があります。シークエンス『たんぽぽ。きれい』の実行準備に入ってもよろしいですか。ぽこますたぁ」
それは自爆シークエンスではなかったか。
しかし、六駆くんが予定通りガス欠になった今、それはそれで正解ルートなのかもしれん。
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