第1253話 【本当に最後のはずの日常回・その6】塚地小鳩お姉さんのインナー姿でお送りする「通信機はどこですの!?」 ~今は戦時下じゃないからラブラブテレフォンできるはずですわ!!~

 塚地小鳩Aランク探索員。

 彼女は焼け落ちた皇宮を探索していた。


 戦いが終わったからとて敵拠点をあんな所もう知らんと無視キメこむのはいかがなものか。

 敵の拠点だった場所から得られるものは多くある。


 ちなみに小鳩さん、白い鎧は電脳ラボに預けている。

 戦いの中でいくつか砕けたパーツがあり、鎧というものはバランスが損なわれると思わぬところから壊れる事もあるので定期的なメンテナンスは不可欠。


 ちなみにこれまでの戦いや、ダンジョン攻略、その他の任務が終わってからも小鳩さんはしばらく鎧を着用していた。

 チーム莉子は任務が終わると南雲監察官室に引き上げてシャワーを浴びるのがルーティーンになっているが、こちらのお姉さんはそれも最後まで待っていた。


 もちろん、装備製作が名物の南雲監察官室。

 シャワー設備も完璧であり、パーティーメンバーが増える度にすぐ増設している。

 乙女にとっていつでも清潔な身体を保つ事は何よりも肝要。


 汗を流すだけではない。

 モンスターの体液や溶解液やドロドロしたナニか。

 ダンジョンを潜る乙女にとってその辺の汁は何故か絶対にぶっかかるのだ。


 それでも小鳩さんは「皆さんお先にどうぞ。わたくしは最後にシャワーを使って、お掃除もいたしますわ」と最年長メンバーらしく振舞っていた。

 半分は嘘である。


 南雲監察官室のシャワールームは手前から莉子ちゃん、クララパイセン、芽衣ちゃん、小鳩さん、ノアちゃんと加入した順番に並んでいる。

 おわかりいただけただろうか。



 立地上、莉子ちゃんの前を、乳を晒して通過しなければならないのである。

 そんな芸当は命知らずのおっぱいか、あるいはどら猫にしかできない。



 しかし、莉子ちゃんもついに乳と和解した。

 よって、今の小鳩さんは乳に重圧をかける時間がかなり減っている。


「あんな重い装備、戦いが終わったら付けていられませんわ! 蒸れるんですもの!!」


 製作者の久坂さんが聞いたら泣きそうなセリフだって言っちゃう。

 現在の小鳩さんが身に纏っているのは黒いインナーのみ。

 全身タイツみたいなヤツである。


 ギニュー特戦隊だとリクームが着ているタイプである。

 とても通気性に優れており、敵地を歩いているのにこんな解放感とジャズれる感覚、小鳩さんも初体験。


 軽快な足取りで無警戒に皇宮を歩く。

 目指すはただ1つ。


「皇宮にはたくさんメカがありましたもの!! だったら、あるはずですわ!! 通信機!! 現世に繋がるヤツが!! やっと戦争終わりましたのよ!? それなのに、今度は過去1番訳の分からない方と戦うんですのよ!? ……あっくんさんとラブラブテレフォンくらいしたって許されるはずですわ!!」


 許されるかと思われた。

 ただし、と注釈が付いている事を、このピュアお姉さんはまだ知らない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 喩え戦いが終わったとしても、知らない場所を闇雲に歩くのは危険。

 そのため、小鳩さんは自身が破壊工作をして歩いた皇宮入口付近から東側に向かっている。


 結論から申し上げよう。

 小鳩さんの『銀華ぎんか』で動力配線がズタズタに寸断されているため、仮に通信機があっても使用にはとても耐えられない。


 そんなことは知らない、知っていても認めたくない小鳩さんの足元で、カチッと音がした。


「なんですの? ぷぇぇ!?」


 煌気オーラ矢が飛んできて、小鳩さんが莉子ちゃんみたいな悲鳴をあげながらギリギリで躱した。


「な、なんなんですの!? どうしてトラップが作動してるんですの!? おかしいですわよ!?」


 配線をズタズタにした結果、最初に放棄されたのが小鳩さんが今歩いているエリア。

 放棄されたため、動力は流れっぱなしの漏らしっぱなし。

 なにせ安全に動力を停止させるにも人手が必要。


 今、バルリテロリにそんな人手はない。

 敗戦国の辛いとこなのよね。


「ま、まあ……。たまたまという事もありますわよ……ね゛」


 再び響く、静かな皇宮に。

 カチッというシンプルな音が。


「ぴゃあああ!!」


 可愛い声でなくとも、お清楚な声は小鳩さんの十八番のはず。

 それなのに、先ほどから出て来るのは莉子ちゃん属性の悲鳴ばかり。


 おわかりいただけただろうか。


 小鳩さん、鎧を全部置いて来ている。

 今はものすごく身軽な格好で、インナーの他にはもう下着しか残っていない。


 たかが煌気オーラ矢だって喰らったらえらいことになる。

 小鳩さん、まだ煌気オーラ回復をしてもらっていないのである。


「ひっ!? こ、これ、わたくし……やってしまって!? も、戻るにしても、どこにどんなトラップがあるのか分かりませんわよ……? それに、煌気オーラ感知できませんわ!! どうしてですの!?」


 再三繰り返すが、動力である煌気オーラが配線ごとズタズタになっているため、基本に忠実な煌気オーラ感知をする小鳩さんにとって莉子ちゃんの煌気オーラお漏らしにも似た反応を瞬時に察知するには準備が足りない。

 とはいえ集中すればこの程度、造作もない。


 なにせ久坂流の免許皆伝。

 南雲監察官室のお姉さん。

 チーム莉子のお世話係。


 この肩書だけで大概のことは造作もないとハッキリ分かる。

 ただ、「お電話いたしますわ!!」とノリノリでやって来ていたこのお姉さん。


 そんな急にオンとオフを切り替えろと言われても困る。



 恋愛がオンになったら、どうやってオフにするのかこのお姉さんは知らない。



 何度目か分からないカチッという音が響く。


「もう! 嫌ですわ!! わたくし、まさかこんなところでおっぱいポロリさせられるんですの!? 知ってるんですわよ!! 怪我しない程度にインナーが破けるんですわ!!」


 そんな小鳩さんの眼前の空間が歪んだ。

 やって来たのは。


「とおー!! ボクです!! 小鳩先輩!! うっかり矢を吸い込んじゃいましたけど、取れ高的にはオッケーでしたか!?」

「の、のの、ノアさぁぁぁぁん!! ふんすですわぁぁぁぁ!!」


 ノアちゃんであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ノアちゃんのいう事にゃ。

 「ボクの回に備えてバルリテロリの闇に迫るルポライター・ノアちゃんの準備をしていたら、小鳩先輩の声が聞こえたので馳せ参じてふんすっすです!!」との事。


 ついでに事情を聴いて「あ。ふんすですね」と素っ気なく応える。

 誤変換ではない。


「とおー!! 『恋愛穴ラブラブホール』!! 小鳩先輩! どうぞ!!」

「の、ノアさん……?」


「ボク、パワーアップイベントが全然来ないので定期的に自力で構成術式をいじってるんです! 逆神先輩が皇帝先輩を最初に殺しかけたくらいで、時空を超える穴ちゃんを出せるようになりました!! ふんすっ!!」

「つまり、どういうことですの……?」



「あっくん先輩とお喋りをどうぞ!」

「分かりましたわ。おっぱいを出せばよろしいんですわね?」


 これまでの経験が積み重なって、小鳩さんが疑心おっぱいを患っていた。



『あぁ? おぃ、てめぇ。ノアだろうがよぉ。こんな訳分かんねぇスキル使う野郎は。何だってんだぁ? 言っとくが、しょうもねぇ用事だったらこの穴にスキルぶちこんで……』

「あ、あんあんああん! あっくんさぁぁぁん!! わたくしですわぁぁぁ!!」


 疑心おっぱいよ、さらば。

 小鳩さんは信じるおっぱいを手に入れた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 小鳩お姉さんのラブラブテレフォンタイムは可能ならば28時間くらいしていたかったものの、状況を鑑みて22分に留める。

 凄まじい自制心である。


 あっくんに「小鳩よぉ。おめぇ、なんつー恰好してんだぁ? ちっ。んな格好はよぉ。帰って来てから俺の部屋でやりぁあ良いだろうがよぉ」とキュンキュン度数100%のお言葉を賜り、かつてないほど耳と心が蕩けた小鳩さん。

 唇を噛みしめながら穴をノアちゃんに返して、キッと鋭く前を向く。


 これから戦うべき相手を見定めて。

 そして言う。


「ノアさん」

「ふんすです!」


「わたくし、覚悟を決めましたのよ」

「ふんすっすです!!」



「ノアさん回。お供しますわ。わたくし、受けた恩はすぐに返せとお師匠様に学んでいますの。今回は不慮の事故かとおっぱいを諦めたところからの大逆転おっぱいでしたわ。ご恩返しはすぐにいたしますわよ!!」


 今回、小鳩さんのセリフにおっぱいが多用されている現象は、この日常回の裏で犠牲になっているであろう川端おっぱい男爵に向けたレクイエムである。



「おおー!! これは興奮しますね!! ふんすっ!!」


 ノア隊員。思わぬふんす僥倖に沸く。

 ついにモノローグを乗っ取る人数を2人に増やす。


 目を輝かせているボクっ子にとって、むしろ日常回の方が今は面白いのである。

 どうせ人殺助と殺し合いが始まったら面白シーンが減ってしまうのは自明の理。


 ゲットした小鳩さんと一緒に、レッツゲットクレイジーである。

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