第1240話 【最終決戦、その後で・その1】逆神喜三太の「殺される前にワシらの使命について語ってもええやろ!!」 ~長くなると困るので短めでお願いします~

 ついに戦争を無事故無違反で完走した電脳ラボから。


「まずいな。勝ちはしなかったが、これ最良の敗北ではないか?」

「そうだな。で、なにがまずいんだ? バルリテロリ消えてなくならないっぽいじゃないか」


「2点ある。貴官、忘れたのか? おばば殿と皇太子殿下を喜三太陛下記念館へ半ば強引にお誘いした事を」

「いいじゃん。我らの安全マージン確保できてるじゃん」



「なんか陛下が御自身で使命について語る流れじゃないか。この場で語られるということはだぞ。結果として、我々はおばば殿と皇太子殿下に無駄足を強いたことになる」


 バルリテロリの危機が終わっていない事実を察したラボメンたち。



「……あっちの3人が上手くやるだろ。で? もう1つまずいって言うのはなんだ?」

「お茶もお茶請けもない。今、完全に講和のタイミングだろう。そしてひ孫様を見ろ。御ロリ様に制されているものの」


「あ。右手にすげぇ煌気オーラが集約されてる」

「然り。ちょっとカッとしたら、またおヤりになられるぞ」


「なるほど。そこでお茶とお茶請けか。……チョコボールがあっただろう!!」

「さっき食べたよ! キャラメルだけほんの少し残ってるが?」


「バカ野郎! ハイチュウで私たちメンバーの内、2名。歯の詰め物が取れたんだぞ! 仮にひ孫様が奥歯銀色だったらどうする!! 皇国が亡国になるきっかけだぞ!!」

「いや。しかし。こう言ってはアレだが。アレだが、我々が言うしかないのでアレだが。……陛下の昔語りは始まると長いぞ」


「よせ。貴官。不敬だぞ」

「仰ぐ旗はちゃんとバルリテロリのお米粒皇旗だよ。だが、仰ぐ御方は考えるべきだろう。国あっての皇帝陛下だぞ。国なくなったら死なない不思議な人だぞ」


 電脳ラボはテレホマンを介して会話も同期しているため「陛下の残機が多分あと1機」という事情も把握しており、ならば今優先すべきはうちの皇帝の長話を聞かせられるであろう敵だった、今後は進駐軍になるであろう現世のお歴々。そのご機嫌。

 激闘を終えて喉も乾いているだろう。

 小腹も空いているだろう。


 イライラする要素が揃っている。



「みんなー。コーラ持って行くよー」

「「「それだ!!」」」


 バルリテロリにコーラがあって本当に良かった。



 電脳ラボのメンバーは半数を皇宮の消火作業確認へ。

 残った者たちでキンキンに冷えたコーラとピザポテトの用意を始めた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「ぶーっはははははは! ひ孫ぉ!! そして四郎も! あと名前も存在も結局知らんまんまやった! 孫ぉ!! お前ら、なーんも知らんで崇高な使命を遂行しとったんか!! 馬鹿め! ぶーっははははははは!!」


 コーラは間に合うだろうか。

 喜三太陛下、六駆くんに半殺しにされてから『時間超越陣オクロック』で巻き戻されたため、命への危機管理シミュレーションがちょっと欠如しておられた。


「莉子?」

「……ダメだよ」


「ぶーっははははははは!! ……ワシが伝えてないからや!! だって、転生して周回リピートして現世に戻るはずが! なんかバルリテロリから戻れんかったんやもん! 仕方ないやんけ!! はよ迎えに来んのが悪いんや!!」


「莉子?」

「……我慢だよ」



「ぶーっはははははははは!! やっぱ話してやんねぇ!!」

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!」


 これが喜三太陛下の皇道である。

 退かぬ事はないけど、媚びぬ、省みない事もない。



 南雲さんがテレホマン飛行ユニット形態の背中に乗って飛んできた。

 これ以上のぶち殺してから時間巻き戻しは見ている方も辛い。


 みんな疲れているのだ。

 とっとと帰りたい。


「逆神くぅぅぅぅぅん!! いいもの貰って来たから! ちょっと! その手刀から煌気オーラ出してる、ここに来て新形態の発現は一旦ヤメてぇぇぇぇ!! なにそれカッコいい!! ベジットがやってたヤツじゃないか!!」


 南雲さんがテレホマンの背中から飛び降りて、六駆くんの肩をガッチリホールド。

 いつでも命がけ。

 これが南雲修一の監察官道である。


 続いて、テレホマンが飛行ユニットを解除してガシャンガシャンいわせながら跪いた。

 そしてすぐに両手を差し出す。


 そこには、光り輝くものが鎮座していた。


「なんですか? ええと、テレホマンさん?」

「はっ。こちら、一昨年に座興で造りました。純金スーパーテレホマンでございます」


「これが? なにか?」

「いや! 逆神くん!? 君の欲してやまなかった金だよ!?」


 六駆くんが顔をしかめた。


「だって南雲さん。こういうのって加工したら価値が下がるんじゃないんですか? なんかほら。親父が言ってましたもん。テレホマンカードは未使用じゃないとメルカリで売れないって」


 南雲さんが煌気オーラ爆発バースト

 まだ余力がある監察官一の知恵者。

 「ええ……。何してるんですか」と六駆くんを呆れさせる事に成功。


 逆神六駆との交渉は序盤が不調の場合、1度リセットすると良い。

 放出型のフィンフィンってなる煌気オーラ爆発バーストで汚れた白衣をヒラヒラさせながら南雲さんが言う。



「純金だったらね! 溶かしたら良いの! この純金スーパーテレホマンでも、君のイメージしてる金の延べ棒でも! 同じ価値なの! 見て! このスーパーテレホマン!! 5キロくらいあるんだって!! このスーパーテレホマンだけで……金額が細かいと逆にアレだな。じゃあね、だいたい50000000円くらいになるよ!!」

「う、うう、うわあああああああああああああああああああああああ!! そのスーパーテレホマン、ください!! スーパーテレホマンさん!!」



 テレホマンが「はっ」と首を垂れた。

 もう小ぶりな純金スーパーテレホマンに名前を乗っ取られたけど、それがどうした。


「……ワシ、話してええんけ?」

「ああ。別にいいよ? 好きに呟いてて?」


「ひ孫? なんかお前、急に口調が砕けすぎじゃないか? さっきまでは一応敬語の方が多かったやんけ?」

「いや。ひいじいちゃんって親父のじいちゃんでしょ? そこ考えると敬語遣う意味が分からなくなったから。これからは親父のように扱わせてもらうよ」


「ぶーっはははははははははは!! 実の父のようにワシを敬うとは!! なかなか見所があるクソガキじゃないか!! ひ孫ぉ!! その割にゴミを見るような目で転がっとるワシを見下ろしてんのはなんでや!!」


 陛下は大吾ときっとどこがで出会うのだろう。

 そう思っていた時期が、この世界にもありました。


 出会いませんでしたね。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「みんなー。コーラ持って来たよー」


 そしてコーラが届いた。

 似たような一本角が生えた、同じ服を着た電脳ラボの職員が大挙して押し寄せ、ピザポテトのパーティーパックと1リットルボトルのコーラを生き残った戦士たちに配って歩く。


「にゃはー!!! キタコレにゃー!! あたしバルリテロリに住もうかにゃー!!」

「ぽこ。ルベルバックでもほとんど同じことを言っていましたが。そしてそれは今日という1日の中での出来事ですが」


「瑠香にゃん、瑠香にゃん。10ヶ月くらい前の話されても困るぞなー」

「………………………………?」


「あ! ちなみにこの瑠香にゃんが………………………………? ってやっとるのは、宇宙猫ですにゃー!! スペースキャットとも言うぞなー!!」

「………………………………? 瑠香にゃん、コーラを摂取します」


 芽衣ちゃんとダズモンガーくんが率先して「みみっ! お疲れさまです! 芽衣もお手伝いするです!」「吾輩、配膳は得意でございまするぞ!!」と電脳ラボの補助を開始。

 早速みみみと鳴く可愛い生き物とぐああと鳴く丈夫な生き物がバルリテロリ中枢のハートをキャッチした。


 こちらにもコーラが届いた、六駆くんと莉子ちゃん。

 南雲さんとテレホマン。

 後は転がっている喜三太陛下。


 喜三太陛下はなにゆえ転がっているのかと言えば、起き上がろうとする度に六駆くんが煌気オーラ手刀を発現するからである。


「あー! 美味しい!!」

「……ぷはー!! 今日は頑張ったから、コーラ飲んでも良いんだよね! えへへへへへへへへへへへへ!!」


 ネクターは激戦で消費されたので、可とします。

 今の莉子ちゃんは初期ロットからプラス3キロ程度の健康的なスタイル。


 男子ってちょっとムチムチしてる子の方が好きなんでしょ。に、ギリギリ収まるか収まらないか、ちょっと土俵割ってるかなくらいの程度。


「ひいじいちゃん」

「おっ。コーラ飲んでええんけ!?」


「いや、ダメでしょ? 立場分かってる? ひいじいちゃんって典型的なアレだよね。年取ってる人の方が偉いってマウント取るアレ。確かにね? 真っ当な年齢を重ねた人は僕だって尊敬するよ? 僕の知らない事を教えてくれるんだから。僕、知らない事の方が多いし。でもね、ひいじいちゃん? 犯罪者だって年取ったらじじいになるんだよ。なに? 僕は自分の住んでる世界で、これから隠居しようと思ってワクワクしてたのにさ。そこを侵略して来た親玉に? なに? まさか、年取ってて偉いですねーって? 気を遣わないといけないの?」

「ぶ、ぶーっは」



「僕の『時間超越陣オクロック』で受精卵まで時間巻き戻すよ?」

「ぶ、ぶーっは、ぶは……はぁぁぁぁ! はぁぁぁぁぁぁいやあ゛ぁ゛あ゛!! テレホマン! テレホマぁぁぁン!! やっぱこのひ孫、クッソ怖いで!? なんやこいつぅ!! どんな育ち方したら、人を受精卵に戻すって脅迫ができるんや!? 嘘やろ!? 常人の発想じゃまずたどり着けんで!? ……なんか言って? テレホマン?」



 テレホマンが「陛下。御早く使命についてお話されなければ。恐らくですが、陛下の御仕置回が永遠に続く由、このテレホマン察知いたしてございます。確実な事を申し上げられず力不足を嘆く無能な近習を御許しください」と跪いた。


「ぶ、ぶーっははは! よぉし! 良く聞け! 現世の侵略者ども!」

「莉子?」


「こくこくこく……。ふぃー!! ぁ。なくなっちゃった。テレホマンさん。コーラ、もう1本良いですか!?」

「……命拾いしたね。早く話してくれる? たいして興味もないから。もう帰るんだよ、僕たち」


 小遣いくれないと分かった途端に親戚の集まりから離脱したい気持ちを隠せなくなる現代っ子ムーブを見せ始めた六駆くん。


 彼は見た目18歳である。

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