第1236話 【慟哭・その3】生き返れ、逆神!! ~ナグモさんと瑠香にゃんのゆっくり(してる場合じゃねぇ)解説~

 前回のあらすじ。

 喜三太陛下が異常者に絡まれて、最後は莉子ちゃんかわいい女子にぶっ飛ばされた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 これまで莉子ちゃんは接近してからの『苺光閃いちごこうせん』をほとんど使って来なかった。

 何故か。


 おっぱいを敵に近づけるのが嫌だったのである。


 だが、今回はほとんど接着している状態からの『零距離えいえんのぜろ苺光閃いちごこうせん』をキメた。

 何故か。



「ふぃー! 手応えはあったけど……なんかギリギリで避けられた感じがする!! ピュアドレスのおかげで敵さんに近づいても平気! あと、わたし、胸がなかったから!! これなら敵さんにものすごく近づいても……えへへへへへへへへへへへへへへ!!」


 乳との対話が済み、乳と和解したからである。



 お年頃の女子は相手が野郎だろうと同性だろうと、知らねぇヤツに乳見られるのは当然として、触られるのは言語道断、意識されるのも嫌なもの。

 たまに希少種が「うにゃー」と発生することもあるが、だいたいみんなそうなのである。


 しかし莉子ちゃんはハイパーアルティメット状態。

 まずピュアドレスちゃんの能力でスキルを弾くため、接近しても相手が繰り出してきたものが煌気オーラによる攻撃であればおっぱい、ノータッチ。


 仮に手を伸ばして来て「ちっちゃいお嬢ちゃん。可愛いねぇ」とか言って来たら、今の莉子ちゃんはその手をへし折って話も終わる。


 喜三太陛下はお得意の転移スキルで致命傷を避けており、それは莉子ちゃんも承知しているが、今はこれで良い。

 まずは味方の立て直しが急務。


 ここでもまたピュアドレスちゃんが大活躍するのだ。

 よそ見していても敵の攻撃を勝手に弾いてくれるため、距離さえ取ってしまえば燃料となる煌気オーラ総量お化けな莉子ちゃんの防御力は実質無限大へ。


 乳における無限の可能性は潰えたが、戦士としての可能性が無限になった。


「ふぇっ! そだそだ、南雲さん! 無事ですか!? あ、違う! ナグモさん! 無事で良かったです! ごめんなさい! 遅くなっちゃいました!!」

「ククククククク! この混沌(カオス)を身に纏った私の俺が、真なる闇へと誘うブロッコリーのようなカリフラワー……!! つまり、フハハハハハハハハハハハハ!! この世界を闇に染める能力(ちから)は私の右腕に! し、鎮まれ……!! 制御してやるぞ!! フハハハハハハハハハハハハ!!」



「……………………そうなんですね! すごいですね!!」


 そうなんだ、すごいね!



 莉子ちゃんは少しだけ考えてから黒ナグモさんに近づいた。

 続けて、軽くスキルを発現した。


「やぁぁぁぁ!! 『ジェネリック・いちごパンチ』!!」

「フハハハハハハハハハハハhひゅんっ」


 黒ナグモさんが地上に叩き落とされた。

 指示を飛ばすのはヤった後。

 逆神流の基本である。


「ノアちゃん!!」

「ふんすです!! とおー!! 『ホール』!!」


 地面に衝突する前にノア隊員の穴で再び上空へ。

 上空から墜落する黒ナグモさんを再び穴に吸い込む。

 そしてまた上空へ。

 そのうち勢いが弱くなるので、それを確認したらば地面へ転がす。


 『ホール』の可能性は未だに無限大。

 逆神流なのかは疑わしいが、黒ナグモさんを無事に救助。


「ノアちゃん! ナグモさんを正気に戻してから、六駆くんを助けてあげて!!」

「うあー! 莉子先輩がSSRですね、これ!! そしてとても難しいミッションを投げられています!! ボクもSSRになる時が来たようです! ふんすっす!!」


 ノアちゃんが小さい穴を2つ発現する。


 地上には芽衣ちゃんと六宇ちゃんがナグモさんを介抱している。

 六宇ちゃんは普通に利敵行為おてつだいを真心でやっているので、これは良いバカでセーフ判定。


 クララパイセンと瑠香にゃん、そしてオタマは爆炎で視界が不鮮明な上空へ向けて矢と玉杓子おたまと瑠香にゃん砲で牽制中。



 牽制と呼ぶには余りにもクライマックスな布陣。

 牽制で一体何人の命が奪えるのだろうか。



「えー。なんか、マジ? あ、芽衣ちゃんだよね?」

「みみっ! 芽衣で分かる事ならお答えするです! 六宇さん!! みっ!!」


「おー。敬礼だ。ビシッとしてるー。あたしの4つ下なのに、すごい。あのさ、そっちの子はなんで小さい穴を出して、フハハハハさんの乳首にハメてるの?」

「み゛っ! 芽衣、子供だから分かんないです!! みみっ!!」


 大人でも分からない治療が始まろうとしていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ライアンさんが「ヨシ。ノアちゃん」と頷く。


 なにがどうなってヨシなのかは分からない。


「ふんすっ! あ! 六宇先輩! ボクはノアです! 六宇先輩にとっても良き後輩としてこれから頑張るので、よろしくお願いします!」

「おおー。こっちの子も礼儀正しい。……なんでフハハハハさんの乳首に穴空けたの?」



「ややっ! お目が高いですね、六宇先輩! これはですね! 黒ナグモ先生の身体に溜まった良くないチャオを吸い出す『健康健全穴デトックスホール』です! 良くないチャオが吸い出されると、黒ナグモ先生がナグモ先生になって、ボクの査定が大幅アップでふんすという訳です!」

「へー。……そうなんだ!! すごいじゃん!」


 そうなんだ、すごいね!!



 そして黒ナグモさんの乳首から黒い煌気オーラが排出されたのだが、センシティブ判定に引っ掛かる可能性があるのでその描写、お見せすることできず。

 誠に残念。


「わ、私は何を……。あ。ライアンさん」

「ナグモ監察官。サーベイランスのデータを戦後、確認なさってください。今の貴官には成すべきことがあるはずです」


 転がっているナグモさんが右隣を向くと、白目剥いた六駆くんが転がっていた。


「ナグモ先生! 失礼します! とおー!! 『脳穴ノア』!!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


「うわぁー。芽衣ちゃん? あれは何してんの? なんかヤバそう」

「み゛み゛っ! 芽衣、子供だから分かんないです!!」


 ノアちゃんの特異スキルによって、「黒ナグモさんの記憶はよけて、黒ナグモさん時に起きた事をナグモさんの脳内に叩き込む」という、なんか人道的にはまずいような効果が発現された。

 でも、戦争中である。


 戦ってるんだ。みんな。


「そうか。小坂くんが……。それに芽衣くんも。椎名くんと瑠香にゃんくんもか。ダズモンガーさんもいるね。……あと捕虜が普通に自由にしてるけど、うん。今さらだね! ライアンさんとサービスさんいるし!! 私は私にできる事を成す。ライアンさんの言うとおりだ。瑠香にゃんくん! ちょっとこっちに来てくれるかい!」


 瑠香にゃんが瑠香にゃんウイングで飛んできた。

 ナグモさんはマスター権限とは別に監察官権限で瑠香にゃんに命令できるのである。

 ロボ権の未来はどっちだ。


「オーダーを復唱します。『グランドマスターにハイパーインフレーションの恐怖を払しょくする知識を授けよ』ですね。ステータス『ブラック企業やな、探索員協会って』を獲得。今更なのでバルリテロリの大地に植えておきます。兵装・ファンタスティック瑠香にゃんを起動。幻を投影する兵装なのに、ぽこがやりやがり改名ました。発動します」


 デフォルメされた小さい瑠香にゃんとナグモさんが六駆くんの顔の上に出現した。

 首から上しかないのは何故か。


「よし。時間がない。やるぞ、瑠香にゃんくん!」

「オーダーを承りました。瑠香にゃん、やります」


「ゆっくりナグモです」

「ゆっくり瑠香にゃんだぜ」



「『ゆっくりしていってね!!!』」


 ゆっくりしている場合ではないが、何か始まった。



「瑠香にゃんくん。世界のどんな通貨よりも安定しているものがあると聞いたんだけど?」

「はい。ナグモ監察官。それは金です」


「金ってピカピカしているヤツだよね? 私、あんまり詳しくないんだけど」

「それじゃあ、今日は監察官一の知恵者とか宣ってるのに何も知らないナグモ監察官のために、金の資産としての有用性について解説していきます。恥を知ってください。恥を」



「……辛い」

「お気持ちは分かりますが、瑠香にゃんだって辛いので頑張ってください。瑠香にゃん、こんな茶番させられるために産まれたんじゃないと信じたいです」



 それから2人によるゆっくりしてないゆっくり解説が行われた。

 それを全て書き起こすと「なんやこれ」となりかねないし「こいつ、ウィキペディアをコピペしたやろ」といわれなき迫害を受ける事にもなりかねない。


 ゆえに、瑠香にゃんの能力を行使してここを乗り切る事とする。

 彼女にはミンスティラリアの超魔技術によってチーム莉子のメンバーの能力が標準装備されている。


 つまり、パイセンの初期ロット時にあった「なぜか活躍する時は描写されない」という『不可視の御業インビジブルジョブ』も瑠香にゃんは継承している。


「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「おはよう。逆神くん。気分はどうだい?」


「な、ナグモさん……!」

「うん! 意識不明から回復して直後にきっちりスカレグラーナ訛りで私の名前を呼べるって事は、もう大丈夫だね!!」


「なんだか、とても怖い夢を見ていた気がするんです……。これまでの僕の積み重ねて来たもの全てが崩れ去るような、とても恐ろしい……」

「そうだろうね。君のアイデンティティがすっ飛びそうになったもんね。私たちにとっても悪夢だったよ。では、そんな君に私から1つ、冴えた資産運用を教えてあげよう」


「えっ!?」


 さっきハイパーインフレーションで殺されかけたのに、資産運用の話には釣られてしまう最強の男。

 だが、監察官一の知恵者の異名は伊達ではなかった。



「お金はね! 妻に預ける! これが最強の資産運用さ! 私たちはお金稼げばいいんだよ!! 令和のご時世、こんなこと言うと怒られるって私、知ってる!! でも言っちゃう!!」

「う、うわぁ!! ナグモさんってやっぱり最高だなぁ!! そうですね!!」


 お叱りは日本探索員協会までお願いします。



 逆神六駆、リブート。


 空を見て彼は言う。


「僕ね、金はもらって帰ろうと思うんです! なんかさっき、夢の中で教えてもらったような気がして!! 金のすごさ!!」

「……皇帝に聞くのが早いよ! 彼の家だからね! バルリテロリって!!」


 六駆くんが戦いの空へと舞い戻って行った。


 ナグモさん、山ほどの苦難を乗り越えて。

 任務完遂。





 恐らく。

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