第1233話 【莉子ちゃん敵国、最後の旅・その3】民主主義(じゃんけん)と言う名の激闘 ~民主主義が嫌いになった、民主国家からやって来たはずの人たち~

 莉子ちゃんwith決死隊。

 既にメンバー入りしているのは逆神六宇ちゃん。


 さらに立候補者が名乗り出る。


「御ロリ……失礼いたしました。莉子様。私の随行も御許しくださいませ」

「はひ……。しゅごい……」


 話をする時は相手の胸を見て。

 小坂家家訓である。


 莉子ちゃんの代で始まったので、六駆くんに嫁いだ瞬間から逆神家の家訓になる予定。


「六宇様がお亡くなりになる場合、私に責があると考えますれば。せめてその最期を看取るのは私でありたいと思い。当然ですが、私の立場は捕虜。お気に召さない事があれば、まず六宇様のおっぱいを貫かれたのち、私のおっぱいも貫かれて結構でございます」

「オタマぁ! ……あれ? なんであたしが最初に死んだの? そこで死んでなくても、あたし、オタマに看取られるって事はどっちみちどこかで死んでない?」


「六宇様……!!!! 良き友に恵まれましたね……!!!!! 短期間でこんなにも小賢しく……!!!!! 失礼しました、御賢く……!!!!!!!」


 バルリテロリ皇宮秘書官・オタマ。

 皇国の行方を見届ける義務があると決死隊に立候補。


「すごいにゃー。オタマお姉さん」

「ですよね! クララ先輩! わたしだけで行くつもりだったのに!!」


「……あ゛!! あたしとしたことが、やっちまっとるぞな! 不用意に近づいちまったにゃー!! 瑠香にゃん、瑠香にゃん!! 来てにゃー!!」

「端的モード。ふざけるなよ、ぽこ野郎。瑠香にゃんを蜘蛛の糸にするな。せめて先に蜘蛛の糸をのぼっているカンダタにしろ!!」



「オタマお姉さん、オタマお姉さん。瑠香にゃんが急にドラクエの話始めたぞなー」

「はい。ぽこ様。ドラクエ3のオルテガは勇者の父なのに、グラがカンダタと同じでしたね」


 瑠香にゃんが「………………………………?」と人工知能を再起動させている間は隙が大きくなる習性を利用されて、どら猫に捕獲された。



 実際のところ、捕虜を2名連れ歩く都合上現世からも人員はある程度出さなければならない。

 莉子ちゃんと一緒にいる状態で今さら叛逆するメリットなんか見当たらないし、メリットのシャンプーは知らない間にちょっと高級品になってるし、検索するとサジェストに「ヤバい」とか「ハゲる」とか不穏なワードが並ぶけど、ぜってぇ半年くらい風呂入ってないだろな見た目のホームレスおじさんは髪の毛フサフサだったりするし、やっぱりメリットはあった方が良いので、メリットの見当たらない行動をとる理由を知りたい。


 とはいえ、探索員は準公務員的扱いのお仕事。

 報告義務がある。


 「捕虜と一緒に旦那のピンチに駆けつけました!!」と莉子ちゃんがリーダーとして報告書を提出したらば、罰せられるのはパーティーメンバー。

 あと南雲さん。


 ならば、猫たちだけに任せてはおけない。


「ねー。莉子ちゃん? 現世って刀剣男子いっぱいいるの? みんなカッコいい白スーツなんでしょ?」

「ふぇ? わたし、あんまり詳しくないんですけど……。それってゲームのヤツじゃ?」


「はい。莉子様。違います。現世にはゾルフ・J・キンブリーがたくさんいます。この認識で相違ないでしょうか。ぽこ様」

「にゃー………………………………。合っとるぞなー!! キンブリーさんいっぱいいるにゃー!! あれ、みんな刀剣男子だにゃー!!」



「瑠香にゃん・ハイジモードをオンします。ぽこのバカ。瑠香にゃんもう知らない。クララなんかもう知らない。どなたか助けてください。今なら瑠香にゃんのおっぱいを差し出します」


 いつからこの世界ではおっぱいが命の単位みたいになったのだろうか。

 どなたか教えてください。



 瑠香にゃんの人工瞳がうるうるしている。

 これは無視できない。


 瑠香にゃんはモデル体型と言う名の平均的な18歳りこちゃんとおなじ女子だが、中身は0歳児。

 これを見捨てて、何が探索員か。


 幼子の捨て方を探索する愚か者になって良いはずがない。


「よろしいですわね。恨みっこなしですわよ」

「待て。小鳩。私は探索員ではない。むしろ、探索員の敵だ」

「ふん。……チュッチュ・高見沢・ナイス。高みに立つか」


「黙れ。お前は本当に黙っていろ。お前の存在が一番面倒くさいのだ」

「……チュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュ」


「みみみみみみみみみみっ。芽衣の拳が真っ赤に燃えるです。勝利を掴めと轟き叫ぶです。みみみみみみみみみみみみみみみっ!!」

「ぐーっはははは! では、吾輩も参加いたしまするかな!! 皆でやった方が面白うございまする!!」


 いざ。

 じゃんけんの時。


 莉子ちゃんが戦闘するため、捕虜の監視に2名。

 多分瑠香にゃんはおっぱい回復タンクにさせられるし、どら猫をカウントしたらカウントしたヤツの責任が真っ先に問われる。


 ゆえに、被害者は2名。

 さあさ、張った張った。

 丁か半か。


 出目は2つに1つ。


 安寧なる休息か。

 苛烈なる灼炎のおかわりか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 小鳩さんが音頭を取ろうとしたが、待ったが入った。


「にゃーっはははは!! 既に死亡診断書にサインされたあたしが来たぞなー!! 小鳩さん、小鳩さん!! それはいかんにゃー! じゃんけんは掛け声をキメる人のタイミングでアレがナニできちゃうんだぞなー!! ここは! 瑠香にゃんが取り仕切るぞなー!!」

「瑠香にゃん、呼ばれて来ました。瑠香にゃんが今欲しいのは、仲間です。あるいは瑠香にゃんにお前もう船降りろと言ってくれるますたぁです。では、アプリケーション『めざましじゃんけん・ver.シャンクス』を実行します」



「くっ!! ……お殺しになられるとよろしいですわ!!」

「小鳩……。お前、そこまで追い詰められていたのか……」


 くっころが出てしまいました。

 小鳩さんだって莉子ちゃんと猫コンビとバルリテロリ乙女の地獄カクテルをキメたくはなかったご様子。



 抑揚のない声が響く。


「瑠香にゃんじゃんけん。じゃんけん……ぽん。瑠香にゃんはパーを出したぞ。を実行しました」


 シャンクス、ありがとうございました。


「……やりましたわぁぁぁぁぁぁぁ!! わたくし!! チョキですわよ! んもぅ! これが勝利のビクトリーのVサインですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 小鳩さんの頭がちょっと悪くなったけど、その培くらい可愛くなった。

 これではまた「何がピュアなのか論争」が巻き起こってしまう。


「ふっ。……あいこだった。まさか、瑠香にゃんが代表じゃんけん者になりその他が挑むパターンだとは。これでは、負けた者がいなければ勝つしか抜ける術はな……い……?」

「……みっ」


 グーを出しているみみみと鳴くしょんぼりした可愛い生き物がそこにはいた。


「……私の名はバニング・ミンガイル。お前は万を超える軍勢を率いた男。芽衣にこのような重責を背負わせるのか? ぬぅん!! ……私はグーを出していたようだ」

「ふん。……『サービス・タイム』!!」


 ちょっと時間を停めたサービスさん。

 煌気オーラ枯渇状態なので、煌気オーラ供給器官を暴走させてのスキル発現。

 凍った時間の中でダズモンガーくんの手をグーに変える。


 そして時が動き出す。


「ふん。トラ。お前、芽衣ちゃまとお揃いだと。殺すぞ。俺はグーだ」

「吾輩はチョキを出しておりましたが……気のせいでございまするな!!」



「……わたくしをお殺しになられるとよろしいですわ」


 数秒前の小鳩さんの大喜びがもう死にたい黒歴史に仕上がっていた。



 4人で仕切り直しである。


「では、瑠香にゃんじゃんけん。じゃんけん……ぽん。瑠香にゃんはパーを出したぞ。を実行しました」


 シャンクス、ありがとうございました。


「……みっ」

「ぬかった……!!」

「ふん。少し待て。10分もあれば時間を停められる」

「ぐーっははははは! 時の運でございまするな!!」



 芽衣ちゃまとダズモンガーくんが負けた。



 随員オーディションは木原芽衣Bランク探索員とダズモンガー魔王軍総司令官に決定。

 芽衣ちゃま心の拠り所である冬毛タイガーの尻尾がせめてもの救いか。

 「芽衣ちゃんは頑張ってくれたから、お疲れ様!」って莉子ちゃん言ったのに。


「わたくし、やってしまった気がしますわ。これ、最終決戦の裏で面倒な仕事させられる流れですわ。どうしてわたくし、ガッツポーズからのダブルピースをキメてしまいましたの……」

「ふっ。私はもう慣れたが。どうせ死を覚悟しても死なせてすらもらえん」

「……チュッチュチュッチュチュッチュ? 高みに立つ白き女。今、ピースと言ったか? ふん。俺の友となるか、女!」


 多分、逆神老夫婦関連でひどい目に遭う人たちも選任完了。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな訳で、莉子ちゃんwith決死隊が結成。

 ピュアドレスちゃんが輝き始める。


「みんな! わたしに掴まって! ……あ。ごめんなさい。掴むとこなんかなかったですね。えへへへへへへ……」

「えー。莉子ちゃん、先頭でみんなを引っ張るんしょ? ドレスの裾掴めば良くない? 見せパン穿いてるし、このドレスあたしらがちょっと引っ張ったくらいじゃダメージ加工にもなんないと思うけど」



「六宇様……!!!!」

「六宇ちゃんは現世に連れて帰りたいにゃー」

「ぽこますたぁを全面的に支持します」



 ピュアドレスちゃんは意思を持つ国宝。

 「あ゛あ゛!! これで万が一ズルッと抜けたりしたら!! 私、業火で焼かれるんですね!?」と理解完了。


 急にミニ丈のスカートからヒラヒラした紐状のパーツが生えて来た。


「うにゃー。フェニックス一輝の聖衣で見たヤツだにゃー」

「はい。ぽこ様。仰る通りです」

「ステータス『なぜこの2人の波長が合うのか』を獲得。世の中へ放り投げます」


 ピュアドレスから出たヒラヒラを各員が掴んだのを確認して、莉子ちゃんが煌気オーラお漏らしスプラッシュ


「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 『閃動せんどう』!!」


 誰も口を開かない。

 衝撃でうっかり舌を噛んだらそのまま逝きそうだと察したからである。


 莉子ちゃんのヒラヒラについては「フェニックス一輝」でスキル『全知全能グーグルけんさく』を発現してください。

 それでだいたい説明は済みます。


 さあ。

 最終決戦のメンバーは揃った。


 六駆くんの救命措置から再開しよう。

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