第1217話 【決めようか、誰が最もピュアなのか・その3】真っ裸になっていくメインヒロイン ~センシティブ判定はセーフ~

 前回のあらすじ。

 六宇ちゃんが防御力を一気にぶちアゲて長期戦になりそうで面倒。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 戦況を見守る奥座敷では。


 『テレホーダイ・パーフェクトオリジン』によって鮮明な映像がモニターに投影されており、それを見つめるバルリテロリ男子たちがいた。


「ぶーっはははは!! ……勝ったな」

「じじい様よぉ。あんたそれ言って勝ったことあんのかよ」

「……ぅぃ」


 テレホマンが四角い頭をまた少し丸くしながら「陛下とクイント様とチンクエ様……。皇族の方々もたったこれだけに……」と沈痛な面持ちを首を垂れることで見事に隠していた。

 四角いフォルムは90度のおじぎで表情が完全に伺えなくなるのである。


「陛下」

「おっ。テレホマン、宸襟騒がせ奉って来るか? 来い、来い! 濃いヤツ来い! カモーンだわ!!」


「では、御意のままに……。六宇様の身に何が起きているのでしょうか?」

「おお、確かにな。六宇ちゃん、急に肩とかがピカピカし始めたよな。あれはだな、テレホマン」


「はっ。叡智をお授けください」


 「うむ」と頷かれた陛下がテレホマンの期待にお応えあそばされる。



「お祭りの屋台で、ほれ。くじ引きあるやろ? で、外れでもらえるヤツ。光るリング。手首とかにハメてなんかちょっと高い金失った事を忘れさせて、子供納得させるヤツな。家に帰ったら知らん間に光りが消えとるんよ。あれ、なんでなんやろ?」

「は? ……ははっ!!」


 他にもシュッて振るとビューって伸びる紙で出来た謎の玩具とか、ジャラジャラした金属製のヨーヨーみたいなのとか、ございましたね。陛下。



 最終的に電脳ラボへ眼の同期を使って「貴官らには申し訳ない気持ちしかないが、ちょっと調べてくれ」と指示を飛ばしたテレホマン。

 皇族逆神家で眼持ちの者がいなくなったため、眼による同期が裏サイトの掲示板みたいになりつつあった。


 今なら悪口書き込み放題である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな無茶ぶりにも慣れた電脳ラボでは。


「テレホマン様から依頼来たぞー」

「既に解析してるヤツだろ。ほら、チンクイント様がぶち殺された時のヤツな。そっちの端末にデータ入ってる」


「そっちってどれだよ。おーい。砲撃チームはこっち手伝ってくれー。おばば殿との停戦協定は済んだんだからもう必要ないってー」

「そうは言うが、貴官。現世より新たな軍勢が襲って来た場合はどうする?」



「そうなったらどうせ詰みだから、無意味なリソース割くのは私たちが無駄に疲れるだけだぞ。限りある命、疲れるなら有意義に疲れたい」

「みんなー。コーラ持って来たよー」


 電脳ラボに個の意思は必要ないのである。



 莉子ちゃん解析班はとっくに組織されていた。

 彼らに残された仕事は皇国の敵を分析して、現場で戦う兵へと情報伝達すること。


 急に新しい能力に目覚めた莉子ちゃんはモニタリング報告書の中でも優先度が極めて高い。

 そして電脳ラボの解析は意外と有能。


「ああ、腰が痛かった……。砲弾造ってたチームは休みながらで良いよ。中腰の作業とか、普段デスクワークばっかりの我らにとって最も辛い姿勢だ……」

「口を動かしながら手も動かすとは、やるな。貴官」


「そういう貴官もな。ほら、出たぞ。あのちびっ子様も名前が何度か呼ばれていたからな。仮称だが名付けてある」

「はい。ありがとう。……仮称・ロリ子か。思い切った名を付けたな」



「白髪の時間停止マンが呼んでたからな。なんか溜めて。ろ……りこ!! って」


 サービスさんは人の名前を呼び慣れていないため、莉子ちゃんを呼んだ際ちょっと滑舌が悪くなり「莉子」と発音したつもりが「ろりぃこ」くらいの発音になっていたと、電脳ラボの調査によって明らかになった。



「ロリ子の能力は反射、か。斥力の可能性は?」

「ない。斥力スキルの場合はどれほど凄まじい使い手でも必ず、一旦は体の周りに出している煌気オーラ力場で跳ね返すスキルが停止する。対して、ロリ子は一瞬で事が済む。これはもう反射だ」


「それで、貴官は装備にその力が付随されていると?」

「みんなー。コーラとデータ持って来たよー」


 コーラくん、ちゃんと仕事もしている。

 コーラ持って来たよだけでも会社で言うところのお茶汲みで立派な仕事なのに、解析までしていた有能職員。


「あー。本当だ。ロリ子殿、白髪の背中からこの装備をゲットするまではスキルかき消してるな。……陛下、御背中を切り刻まれてないか?」

「切り刻まれてるな」


 だいたいテレホマンが求めている情報は出揃ったので、「うちの皇帝陛下、女児に切り刻まれとるで」という情報が同期され、電脳ラボから奥座敷へと情報が移動した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 奥座敷で陛下が総括された。


「マジかよ、あのちびっ子!! そんなすごい装備持ち込むとか反則やろ!!」

「いかがされますか? 御ロリ様からお召し物、剥ぎ取る由にございますか?」



「えっ!? ワシがやる流れなん!? ちょっと待ってくれよ、テレホマン! さすがにワシも急に転移してからいきなり女児の服をビリビリ裂いて奪うのはアレじゃない!? アレやろ!! イメージが荒れるやろ!! アレで荒れ!! なぁ!?」

「は? ……ははっ!! では、現場に任せましょう」


 「今さらでございます」と御忠言しようかとも思ったが、ひ孫様を討たれる好機をふいにしてまで命を助けられた事でテレホマンの忠誠心が向上しており、結果として沈黙を貫いた四角い男。



 しかし、ピュアドレスの脅威がバルリテロリサイドにガッツリと露見する。

 結構なディスアドバンテージが現世サイドにのしかかる事となった。


 もう、アルティメット莉子ちゃんを見かけたら攻撃をしないで別の方法による行動不能を狙おうねと情報共有されたのだ。

 そもそもアルティメット莉子ちゃんに戻れるのかという議論もあるが、それを始めると意外とすぐに結論が出てよろしくない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そして戻るは戦地。

 最前線である。


「ひゃわわわわわわわわわわわわわわわわわわ……! みんながあたし狙ってる!! ぎゃー!! 『六宇蹴りムーキック』!!」

「六宇様…………!!!!!!」


 六宇ちゃんの別に望んでないピュアドレスちゃんFA移籍を受けて、「とりあえずあの女子高生が莉子の装備を完全に奪うまでに仕留めるのだ」というバニングさんがみんなに言わされた「最悪のケース」を防ぐべく、この場に集った現世の戦士たちが攻撃を開始。


 莉子ちゃんがピュアドレスを奪われる前提の作戦なので、バニングさんの寿命が再びレッドゾーンへ。


「ふぇぇぇぇ……」

「お待ちくだされぇ! 莉子殿ぉ!! 吾輩がこの世界の誰よりも素晴らしいヌーブラを作り上げまするぞぉぉ!! とことん盛りにこだわった逸品を! 莉子殿のためにぃ!!」


 そしてダズモンガーくんが珍しく利敵行為中。

 ピュアドレスちゃんの離反を防ぐにはありのままの姿見せるのよを莉子ちゃんがキメれば良い。



 ピュアドレスちゃんが普通に愛想尽かす可能性はまだ残っているが、それはそれ。



 しかしダズモンガーくんが隣で「盛りまする! 盛りまするぞぉぉ!!」と吠えている以上、考えるドレスは「……ウソばっかり!!」と莉子ちゃんからどんどん離れる。

 まるで浮気がバレたのにまだ取り繕おうとして非を認めぬ彼氏と、これまで散々嘘を見て見ぬふりして来たけれどもついに限界が訪れた彼女の様相。


 そのケースの最適解は「もう別れろ」なので、瞬間、莉子ちゃんが真っ裸アルマゲドン


「ぬぅぅん! 『投擲魔斧フライングベルテ』!!」

「ふん。チュッチュ・バニング。お前、そんなスキルでどうにかなると思うのか」


「黙れ! お前が来るまでに極大スキルを2度使っているのだ、私は!! 牽制でこれ以上の煌気オーラを消費できるか!!」

「ふん。……高みに立つか、高見沢!!」


「せめてどこか原型を残せ!! もう私が高見沢ではないか!! 誰なのだ、それは!!」


 偉大なるギタリストです。

 仲間に桜井と坂崎もいます。


「みみぃ! 『太刀風たちかぜ』です!! みみみみみっ!!」


 バニングさんのハンマーブロスとサービスさんの構ってちゃんムーブを隠れ蓑にして、芽衣ちゃんが斬撃スキルをこっそり発現。

 反射スキルに対して効果的なのは斬撃スキル。


 反射よりも切る力が上回ってスパッとイケるかもしれない。

 スパッとイケた場合も莉子ちゃんは真っ裸アルマゲドンになるが、もうそれはそれ。


「ぎゃー!! ごめんなさい、ごめんなさい!! オタマのスマホ! あたしお菓子食べた手で触りました!! しかもチョコレート系です!!」


 芽衣ちゃんの放った『太刀風たちかぜ』が完全に方向転換して使い手の元へと帰って来る。


「み゛っ!!」

「ふん。……よゅぬゃ!」


「お下がりになってくださいまし!! 芽衣さん!! 『銀華ぎんか』!! 十六枚咲!! 『シルバーウォールド』!!」

「みみみみっ。ごめんなさいです。小鳩さん」


 芽衣ちゃんはみんなで守るもの。

 小鳩お姉さんだって芽衣ちゃま大好き勢である。



「ふん。…………………………チュッチュ」

「私の肩を気安く触るな。そして寂しそうに練乳を吸うな。ライアン殿はこっちに戻らんのか!?」


 せっかく芽衣ちゃまをお助けできる機会だったのに逸したため、タイムリーエラーの反省会をバニングさんの肩に手を当てて行うサービスさん。



 六宇ちゃんの体に移籍したピュアドレスちゃんは増えていないが、反射の力は増している。

 何故か。


「六宇様…………!!!!!」

「ごめんて!! 謝ったから許してとは言わないけど、ごめんなさい!!」


 六宇ちゃんの肩が輝きを増す。

 オタマは理解し始めていた。


 「まだ仮定ですが、六宇様がおバカであられる事。いいえ。正直である事が関係ありますね」と。

 バカ≒ピュアの方程式を早く完成させなければ、ピュアドレスちゃん(莉子氏)とピュアドレスちゃん(六宇氏)のお家騒動でアルティメット女子が2人になってしまう。


「うにゃー」

「にゃーです」


「……大惨事だぞなー。これ、あたしたちも参加しないといかんのかにゃー?」

「にゃーです。現在、瑠香にゃんはぽこますたぁのモノマネモードを起動中。思考力はゼロになっています」


 現着した猫たち、物陰から様子を伺う。

 猫は大きな音がすると隠れがち。


 誰がこの混沌とした戦いに光を射すのか。


 誰が1番ピュアなのか。

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