第1216話 【決めようか、誰が最もピュアなのか・その2】愛を取り戻せ。たらいいな。 ~ガツガツするのはピュアじゃない~

 花の命は短くて。

 乙女を花に喩えて楽しく若い時代はすっげぇ速さで去っていくという、令和のご時世では軽々に引用するともうそれがてめぇの命を短くする可能性を孕んでいる、ならば新しい慣用句や諺、故事成語、それらを授けて頂きたい的なヤツであるが、この場合の花は此度の戦場でただ1人。



 莉子ちゃんを指しているので、じゃあ花の命なんかクソ短い。

 うっかりお水あげ忘れた真夏のアサガオくらい短命である。



 アルティメット莉子ちゃんが現状、3分の1メット莉子ちゃんくらいになっていた。


「……なんでなんですか!? わたし、何もしてないのにぃ!!」


 せっかく長い長い初期装備のショートパンツちゃんとノースリーブジャケットちゃんの組み合わせから、ドレス装備というメインヒロインにしか許されバージョンアップをキメたのに、ほんのちょっと、僅かな乳盛りぎそうのせいで、本当にほんのちょっと、先っぽだけ欲を出したせいで、わずか数分でピュアドレスちゃんがオーバー・ザ・莉子ちゃん。


 「えっ。これ偽物なんです? 私の仕様書読まれました? この所有者、ちょっとピュアじゃないな……」と要審議モードへ。

 一度疑いが芽吹くとその成長速度は凄まじいこと、もはや説明の必要すらなく。


 悟飯ちゃん、桜木花道、康一君のエコーズ並の成長速度で猜疑心がぐんぐん伸びていく。


「ふん。逆神(鬼嫁)、お前の偽りのむn」


 コミュニケーション能力がないという事は怖いもの知らずという事になり、ある側面から見れば無敵。

 しかし他方から見るとノーガード戦法。


「よさんか!! サービス!! 言葉は選べ!!」

「ふん。……チュッチュ、高みンガイル。俺の名を呼ぶか。……これを使え」


「こいつ……!! やっと来た同性がこれだと!? チュッチュした後の練乳を差し出して友好アピールをするな! お前と私に練乳の間接キスをするほどの友誼があるものか!!」

「ふん。……チュッチュ、高見沢がいる」



「どうしてこの男は私の隣から動かんのだ!? お前の時間停止で戦局をどうにかしろ!! 私に構うな! なんだ、高見沢とは!?」


 御年70歳のギタリストです。

 時間の超越者年取らねぇ人としてGACKT様やhydeさんに並ぶ猛者なのはあまりにも有名。



 サービスさんの他にもう1人、いやさ1匹、獣魔人の単位は人なのか匹なのか未だに正解が分からない男がいる。

 彼はもう動いていた。


「なんと吾輩としたことが!! 縫い合わせに手抜かりを!! しばしお待ちくださいまするか、莉子殿!! 今! すぐに新しいヌーブラを吾輩が繕いまする!!」

「ふぇぇぇ……。ダズモンガーしゃん……。あの、気持ちは嬉しいんですけど……」


「ええ、ええ! 分かっておりまするぞ!! 今度はもっと盛りまする!!」

「…………………………ふぁっ!? ダズモンガーしゃん!! 違うんです!! あんまり盛るとかそーゆうのは言わないで欲しいなって!!」


「何を申されまするか! 小鳩殿並みに盛りましょうぞ!! 莉子殿には盛り盛りの盛りが似合いますれば、このダズモンガー!! 命を賭けてグアルボンの外皮を縫いまするぞ!! ぐーっはははははははは!!」

「…………………………ふぁぁ」


 ピュアドレスちゃん、両肩のフリルが全て離脱。

 「盛るって聞こえた」との事。


 既に人語を理解する程度には留まらず、スタイルの盛りにも造詣が深くなったピュグリバーの国宝。

 恐らく製造年月日は令和に入ってからのもの、それ以前であろうと少なくとも平成後期以降かと思われる。


 「やっぱり偽りだ!!」と、莉子ちゃんの胸周りを中心に離反が始まった。

 もう莉子ちゃんは両手を胸から離すと大惨事に。


 もうその大惨事は見たと申される事なかれ。

 これまでの大惨事はキャミソールないし、最低でもおブラは残っていたが、ピュアドレスちゃんはオフショルダー仕様。

 つまり、肩紐が見えるとせっかくドレスなのに気品が損なわれるため、莉子ちゃんもドレスコードに忠実な着こなし。


 ゆえのヌーブラ。

 ゆえの盛り盛りの盛り。


 そのヌーブラが落下しており、胸周りのパージが進んでいる状況を踏まえて結論を出すと、こうなる。



 真っ裸アルマゲドン



 これはいけない。


「仁香さん! 聴こえておられましたら応答願いますわ!!」

『……ぁ。……失礼しました。あまりの惨劇に言葉を失くしていました。私、オペレーターの経験はないので。ええと、この赤いボタンを押したらいいんでしょうか? えっ? リャン、なに? これ押すとダメな気がする? でも、光ってるし!』


 魔王城から後方司令官代理しながら後方指令をついに実行させられた仁香さん。


 彼女は機械音痴。

 見えないけど多分隣で控えている水着コンビのリャンちゃんも機械音痴。

 今頃「私でお役に立てますか!!」と爽やかに颯爽と駆けつけているであうザールくんも機械音痴。


 シミリート技師は聞かれないと答えないシチュエーション。

 興味深いので、知的好奇心を優先する。

 あと「くくっ。ダズもいるからどうにかするのだよ。現場で」と、親友に対する信頼感をこんなとこで解放、あるいは快報しているので、率先しては答えない。


 そして機械音痴は「まずやってみよう!!」という前向きタイプが多いので、今は赤い点滅するボタンを押すか押さないかで思案中。

 言うまでもないが、点滅中の赤いボタンは通話のオンオフ機能。



 押したらサーベイランスがコトッと地面に力なく落下する。

 ヌーブラに続いて。



「押さないでくださいまし!!」

「ふぇ!? 幼くないですけど! 小鳩しゃん!! わたし、18歳です!!」


 ピュアドレスちゃんの脇腹部分のレースがちょっとパージした。


「ああ……。もうむちゃくちゃですわ……。莉子さんはとりあえずお胸を庇って、お口にはチャックでお願いいたしますわ。……念のため、確認だけしますわね。……『銀華ぎんか』!! 一枚咲、『雑レーザー』!!」


 小鳩さんが六宇ちゃんを狙って威力をかなり抑えた煌気オーラ砲を放つ。


「ぎゃー!! もう多勢に無勢とかそーゆうレベルじゃなくない!? ひゃわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!! ……あれー? なんか美人さんの攻撃が反射されてるんだけど?」


 カンッと乾いた音を残して、天井に向かって軌道を変えた小鳩さんのレーザー。

 大半の戦士が現状を把握した。


「……どなたですの!! こんなお完璧な装備を持ち込まれたのは!!」

「ふぇぇ! 急に来たんですぅ!! あ! サービスさんの背中から出てきました!!」


 ピュアドレスちゃん、動かず。

 嘘を言わなければ、当人が嘘をついている自覚があろうとなかろうと、ピュアドレスちゃん判定はセーフ。


 ピノキオの鼻かな。


 キノピオはピーチ姫とセットで攫われる方。

 どっちも変換できて困る。


「ふん。……チュッチュ・高見沢・バニング」

「私に答えを求めるな。そしてバニングが私の名前だ。尻に持って行くな。それでは名前がチュッチュになっているだろうが!!」


 六宇ちゃんが装備してもピュアドレスちゃんの効果は持続。

 つまり、誰が装備しても効果は発揮されるということ。


 これがSDGsか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 お隣の猫と猫と秘書の戦局。


「では、ぽこ様。参ります」

「ぽこ。参られます」

「に゛ゃ゛ぁ゛ー!! この2人、割とセリフが被ってるしテンションも被ってるから分かりづらいぞなー!! 参られるのは参るぞなー! あ! 今、あたし上手いこと言ったにゃー!!」



「はぁ! 『暴行アサルト玉杓子ドライブ』!!」

「に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! ついにオタマお姉さんがオタマ飛ばして来たにゃー!!!」



 こちら、一瞬でパイセンと瑠香にゃんの劣勢に。

 クララパイセンが単騎で戦う仕様でない事は周知の事実であるし、瑠香にゃんはおっぱいの配り過ぎで煌気オーラが全然足りておらず、今の攻撃も『瑠香にゃんバリア・ハーフ&ハーフ』で防いだため、また少しエネルギー残量が減った。


 動力炉を保持したアンドロイドもスマートフォンも充電する時はアプリを立ち上げずにケーブルにぶっ挿したら放置推奨。


「これは!? ……六宇様!!!」


 これはトドメを刺せる状況まで瑠香にゃんを消耗させて、パイセンのおっぱいを避けての一撃で決着か。

 あるいは瑠香にゃんのおっぱいもお持ち帰りするか。

 もう詰みの形は見据えて、どう詰ませるか、王手する前に隣の飛車も取ろうか考える段階だったオタマが噴煙を玉杓子おたまで切り裂いて猫たちを無視。


 身体強化で移動力をアップさせて、戦場をほんのちょっと移動した。


「助かったにゃー!! もう絶対に向こうでなんか起きとるもんにゃー!!」

「ぽこますたぁ。残念なお知らせがあります。開封しますか」


「しませんにゃー!!」

「近くからプリンセスマスターの反応を瑠香にゃんは確認してしまいました。命令権序列はぽこますたぁよりも高いです。瑠香にゃん、プリンセスマスターの元へ駆けつけます。ステータス『にゃん権の実装まだ?』を獲得。ぽこ。早くしてください。間に合わなくなっても知りません」



「あ。じゃあ、あたしはここで降りるぞなー!!」

「ステータス『ひとりぼっちは寂しいもんにゃ』を獲得。瑠香にゃん太ももサンドイッチを発動します。目標、ぽこ。安心してください。おっぱいが緩衝材になってぽこにはダメージありません」



 「に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」と聞き慣れた鳴き声を響かせながら、オタマを追う形で猫たちも移動開始。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 混乱の渦中にいる六宇ちゃん。

 なんか急にフリフリしたアクセサリーが自分の体にくっ付いて、ちょっと光っている。


「サイリウムってヤツだ、これ! クラスの子が持ってた!!」

「はい。六宇様。違います」


「オタマぁぁぁぁぁ!! 待ってたよぉぉぉぉぉぉ!! なんで独りにすんのぉ!?」

「六宇様、お見事です。敵の装備を奪われましたか」



「敵の装備、誰に奪われたの?」

「はい。六宇様。違います。この戦いが終わったら、喜三太ゼミを一緒にやりましょう」


 日本語は難しいと外国人たちの声とそれよりも多くの日本人の声が聞こえる。



 合流したバルリテロリ乙女たち。

 だがしかし、数的有利はまだ現世サイド。


 それ以外は特にポジティブな要素がない。

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