第1194話 【融合戦士チンクイント・その3】『練乳・苺光閃』
これまでのサービスさんと莉子ちゃん。
莉子ちゃんは「六駆くんと戦った事はちょっとモヤモヤするけど、六駆くんがもう気にしてないみたいだから……まあ……うん……」と未だサービスさんに対して思うところあり。
ここに至るまで結構なレベルで主に莉子ちゃんがお世話になっていたりするのだが、かといって遺恨をサラッと流せるかといえば、それは別問題。
18歳女子高生は急に大人へ成長できないのだ。
六駆くんの事は好きだし、六駆くんの考え方もかなり馴染んで来てはいるが、根本的な魂が彼ピ色に染まり切るにはまだ時間がかかる。
なにせ、優等生の莉子魂は誕生してから16年と少しの期間存在している。
こうやって「産まれてから〇年の間ずっと」という表現をすると「えー。お前、1歳の頃の記憶とかあんのかよー」とからかって来るのが男子。
莉子ちゃんだってそんな時分の記憶はないが、ちゃんと優等生だったとこちらで太鼓判を押すとしよう。
催した際にはおぎゃーと泣いて、1度としておむつに仕事をさせた事がない。
これはもう絶対に優等生。優等赤ちゃん生。
なぜ間に挟むのか。優等生赤ちゃんではダメなのか。
適切なツッコミに対する防衛が脆弱な正しい日本語ではダメなのだ。
対してサービスさん。
氏がまったく改心していない事実についてはもう口酸っぱくCCレモン飲んでも甘く感じるほどなので割愛する。
莉子ちゃんに対してサービスさんは「……こんなヤツいたか」という認識である。
ピース御滝ダンジョン侵攻作戦の際には六駆くんとやり合っている間に「その辺のみんなを連れてダンジョンに行ってくれる?」と旦那の命令で莉子氏は御滝ダンジョンへ突入、知っての通りサービスさんはそのまま六駆くんに倒されているためメインヒロインと直接的な対決がまったくないまま戦いの幕が閉じている。
ミンスティラリアで収監されていた処分保留期間、六駆くんとみつ子ばあちゃんが交代で監視していたため旦那にくっ付いて莉子ちゃんが魔王城横のドームに来ることもあったが、普通に世間話をする程度の仲。
サービスさんにコミュニケーション能力が欠けているのもご存じの通り。
結果、サービスさんが莉子ちゃんを逆神(嫁)と認識したのはついさっき。
バルリテロリへやって来て、最初に覚えた
それまでは「ふん。……ミンスティラリアの子供か」と思っていた。
対人関係に興味を抱かないと、知り合いの知り合いの認識なんてその程度。
結果、両者が手を取り合って戦うこの局面において。
「……あんまりこっち見ないでもらえますぅ!? 見えても良いヤツ穿いてますけど! それでもなんか見られるの嫌です! サービスさんとわたし、仲良しじゃないもん!!」
「ふん。興味がないものに興味を持つなと言われる。無為だな。虚ろに立つか。逆神(嫁)」
相性が最悪のままであった。
莉子ちゃんにとっての旦那。
サービスさんにとっての好敵手。
あろうことか、人の話聞かねぇおじさんとして未だに君臨している六駆くんをつなぎにしないと莉子×サービスのハンバーグは完成しない。
このままだとフライパンにドーンした瞬間ミンチになって「……よし。やっぱりそぼろご飯にしようか。晩ごはん!」と机上のハンバーグは消える。
「ぶーっはははは!! ああ! イケる!! 高笑い、イケる!! 良いなぁーこれ!! 良い!! さいっこうに良いぜ!! どっちからやるか……! どっちも同時にやるか!! 皇敵、許すまじ! なんつって!! いやでもまあ? オレの幸せスウィートフォォォォォムをキメるバルリテロリがなくなっちまったら困るんだわ!! 行くぜ!!」
一方、ハンバーグとして完成しているチンクイント。
チンクエがひき肉からつなぎまで全てをこなす物言わぬベースとなり、それを仕上げるクイントの濃厚ソース。
濃厚ソースぶっかけたせいで仕上がりはクイント一色だが、その強さは本物。
「しゃぁぁぁ!! 『
「ふぇぇぇっ!? やだ! そうだった! この敵さん、変態セクハラ犯だった!!」
莉子ちゃんが身に纏ったピュアドレス、早速仕事を開始。
強い嫌悪感が「使用者の危機」と判定されたらしく、ざっくり開いた背中から天使の羽のような形状の防壁が自動展開。
莉子ちゃんの
「…………ふぁー。わたし、天使になってる!! はっ!! ダメだよ! 相手はわたしのおっぱい狙いだもん! 天使の羽とおっぱいを合わせると……! 天使のブラになっちゃう!! ふぇぇ! 来ないでー!!」
サービスさんの胸部にチンクイントの伸びる掌が触れるとすぐに爆ぜた。
「……わゅゃ!!」
「へへへへへっ! オレのこの掌はチンクエがくれた力を搭載している!! 揉みがいのあるおっぱいを自動追尾すんだわ!! ……今のはどっちかな?」
どっちかな。ではない。
♂と♀しかいないのに、♂のおっぱい狙うヤツがいて堪るか。
「……ふ、ん。……やる。……悪くない」
いるのだから仕方がない。
穏やかではないのが莉子ちゃん。
天使の羽みたいなピュアドレスの機能をお披露目して、さらに、さらにである。
ダズモンガーくん製作『タイガーヌーブラ』は盛り盛り仕様。
現在、莉子ちゃんの胸部装甲はBランクまで向上している。
こんなに揺れるのは去年の夏以来な莉子ちゃん。
それを今、無視された。
あろうことか「揉みがいのあるおっぱい」と指定された上で、ちゃんとここにおっぱいがあるのに、隣の逞しいおっぱいを自動追尾しやがったチンクイントの掌。
許せねぇ。許せねぇよなァ。
久しぶりの戦場で、莉子ちゃんの闘争本能に火が付いた瞬間であった。
「サービスさん。共闘しましょう。敵は同じですもん。ね? わたしたち、仲良しになれると思うんです。……ね゛?」
「ふん。なにを今さら殊勝な事をぬゃれゅ!? …………ふん。悪くない!!」
ものすごいプレッシャーがサービスさんの心をほぐした。
胸部を揉まれて爆ぜた後で優しく強圧的にほぐされる。
「ふん。ペヒペヒエスの言っていた死の気配とは……これか」と、呉の名物「殺意」を確かに莉子ちゃんのニコニコした笑顔から感じ取ったラッキー・サービス氏。
「……ふん。莉子。お前に合わせてやる」
「わぁぁぁ! ありがとうございますっ!! ……気安く呼ばないでください!!」
サービスさんが逆神の嫁だった少女を、戦鬼もとい戦姫・莉子として認めた瞬間でもあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
チンクイントの戦型は1周回って極めてシンプル。
腕を伸ばす。
接着と同時に発現する。
ミドルレンジから繰り出せる上に自動追尾なので2本の腕を別々に扱える、標的を確実に捉え、時間を停めるサービスさん相手でも割とダメージが通るとなればこれを繰り返すのが無難。
融合したチンクエの狡猾さがひっそりと仕事をしており、チンクイントはベストではなくベターな方法で戦局を動かす。
これを片付ければ次の部隊を殲滅し、行き着く先はバージンロード。
栄光の道を見据えた男は迷わない。
道すがらおっぱいがあればタッチくらいするが、一時停止はしない。
「へっへっへ! まだまだ行くぜぇ!! 今度は2本同時じゃい!! 『
極大スキルを使わないとは言っていない。
今のチンクイントは
プラチナ色ってなんだろうと見る者に少しの不安を与える双椀が甲冑部屋をヘビのように這い回る。
しかし、悲しいかな。もう蛇使いはお腹いっぱい。
古くはピッコロさんが魔族時代に繰り出しているし、最近でも佳純さんがわんさか繰り出している。
なんか見たことあるなというスキルは猛者相手に2度通じない。
「ふん。れぅけゅつゅ!! 『ピンポイント・サービスタイム』!!」
「まーたそれか!! じゃあ片方の腕はやるわ!! おめえ! このロン毛白髪!! それ使うと次までのタイムラグがあるだろ!! ぶーっははは!! もらったぜ!!」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
おっぱいを狙うスキルなのに、無視され続けた。
これはもはや、合戦に出た武士が一騎討ちを挑み「やあやあ我こそは!!」と口上キメてなお無視、そのまま自陣目掛けて敵大将が突っ込んでいくが如き屈辱。
心清らかな乙女だって、傷つくと牙をむく。
「……あれ!? いつの間にこのちびっ子戻って来てんの!? えっ!? 言えよ!!」
「ずっといたもん!! やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ピュアドレスの胸にプリントされた莉子の文字が金色に輝き始める。
サービスさんがニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィをキメた。
「ふん。俺にはもう使えるスキルがないと言ったか? 答えは。……ピンクインチ? ……その身をもって確かめろ。『サービス・ホワイトミルク・スプラッシュ』!! 莉子! これを使え!」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ……ふぇ!? 変なことしないでください!! こっちも準備できてるのに! 止められないですっ!! 『
サービスさんのとっておきスキルは練乳ビーム。
それを援護のために、莉子ちゃんを基点にして発現させた。
天使のブラモードのピュアドレス。
その周囲でスキルが発現できる部分は1か所のみ。
そう。莉子ちゃん自身がスキルを発現しているポイントに限定される。
胸部である。
胸の前で組んだ手から放たれた『
ひとつ問題があるとすれば、莉子ちゃんの両胸から白い練乳光線が発射されたように見えることくらいだが、命を賭けた血戦においてそれは些細なことである。
今、ここに合体スキル『
甲冑部屋に轟くは逆神奇数代のアイデンティティ。
虚しき戦争におぎゃるか、チンクイント。
あるいは。
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