異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1185話 【互いにバッドエンカウント・その3】ラッキー・サービスVSチンクイント
第1185話 【互いにバッドエンカウント・その3】ラッキー・サービスVSチンクイント
バルリテロリの皇宮に立つは、世界を平等に導くという崇高な理想を掲げた組織を興した男。
組織の名をピースという。
平和からインスパイアされたのは言うまでもなく。
その首領は元国協の理事であったラッキー・サービス。
真なる平等を愚民共に与えてやるには強く正しい指導者がいれば良いという、エゴイスティック極まる思い付きによる長い年月と自身の肉体にも多大な負荷をかけた計画であった。
逆神家を無視していたらば、恐らく探索員協会改めピース日本本部が誕生していただろう。
世界を平等にするため強すぎる力は不要。
基本的には忌むべき選民思想なのに「逆神家は世界のバランス崩し過ぎやろ」という割と正しい選民思想によってとりあえず最初に逆神家を追放しようとした結果、逆神家に叩き潰された組織である。
逆神家に叩き潰された組織の一等賞はアトミルカに奪われており、これから逆神家に叩き潰されそうなフィナーレはバルリテロリに奪われそう。
三兄弟の次男坊とかよほど個性を出さないと損するポジション。
しかしサービスさんは芽衣ちゃまに向けられた狂人による凶刃を捌く。
今の氏だって平等の思想を捨てたわけではない。
ただ、芽衣ちゃまを中心にした平等にちょっと思想を創りかえただけ。
本人の許可は取っていないが、こういうのはやっちまった後に報告した場合案外「まあ、仕方ないよね」と許容してもらえることがある、そんなケースを氏は知っている。
国協の理事にはちゃんと地力の自力、実力で成り上がったサービスさん。
しっかりと下積み時代も経験しており、その頃からコミュニケーション能力は欠如していたので大変な努力をして出世したのは想像に難くない。
「ふん。動き始めるか。……よく分からん、高みに立つ者。悪くない」
サービスさんの腋から伸びる管で自由を奪われたチンクイントが『サービス・ジャック』の凍結した時から脱出しようとしていた。
ちなみに『サービス・ジャック』は腋から伸びる管が外れると効力も失われるので、どうして光線タイプの『ピンポイント・サービス・タイム』を使わなかったのか疑問を呈したい。
「ふん。『ピンポイント・サービス・タイム』は弾かれた場合に味方が巻き添えを食う」
ついにサービスさんから「味方」という単語が飛び出した。
まったく改心していないし、日本本部を中心に現世のどこを見ても平等に被害を与えたこの男、「反省するくらいなら最初からしない」という確固たる意志による犯行だったため、繰り返すが本当にガチのマジで改心していない。
バルリテロリにやって来たのも「ふん。芽衣ちゃま、ラブ」という単純極まる理由だったが、ここでついに仲間意識を獲得するに至る。
「チュッチュチュッチュチュッチュ。……チュッチュ」
「なるほど! サービス殿、
「ふん。トラ。勘違いするな。……喉が渇いただけだ」
「み゛っ」
芽衣ちゃんが「それって喉が潤うです?」と可愛く首を傾げた瞬間「あ! 分かりますっ!!」とモフモフした冬毛からぴょこっと顔を出した莉子ちゃんが視界に入って、「みみみみみみみみみみみみみっ」とアラートを鳴らしたのち「みみっ! 分かりみ、みみみです!!」と意見を真逆に変えた柔軟性にも富んでいるみみみと鳴く可愛い生き物。
「おらっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁい!! クソ! この白髪野郎!! 変な事しやがって!! これお前! 悪用する気だろ!! ……オレの六宇にはやらせねぇぞ!! なぁ! チンクエ!! ……兄者。六宇に使えば色々できて良いのにその発想がないところも良い」
喋って練乳チュッチュしている間にチンクイントがサービスさんの管を叩き折った。
「ふん。お前は俺をさらに高みへと押し上げる事ができるか? ピン……ポイント?」
「チンクイントじゃ!! それおめぇのスキルだろうが!! 声聞こえてたんだぞ! てめぇ!! ……良い」
コミュニケーション能力が欠如した者たちの血戦が始まるらしい。
現場には心が清らかな乙女が2人、心が清らかなネコ科が1匹。
そんな中、
「あれ……? サービスさんが勝っても負けても、わたしたち日本本部は特に被害ないんじゃないかな?」
「ぐーっはははは! 莉子殿!! あんまりでございまするぞ!!」
一番弟子をちょっと引かせる二番弟子の意見。
だが、六駆くんは間違いなく同じ思考に至るだろう。
逆神流の門弟では一番を譲っても、旦那の理解者の一番手は絶対に譲らない。
「芽衣ちゃん!」
「みっ! 援護するです!! みみっ!」
「違うよ!! 服を探そう!!」
「みっ! じゃあ援護しないです!! みみっ!!」
どっちが勝っても負けても、何なら相討ちでどっちも死んだところで痛くも痒くもないマッチアップ。
現世サイドからすればこんなにラッキーな事はない。
ラッキー・サービス氏。
現世サイドのハッピーセットになるか。
「ふん。まずはお前からかかって来い。先に仕掛けたのは俺だ」
「なんだぁ? てめ、あ゛ちょ、……良い。……その強者ムーブは良い。……私が相手をしよう」
サービスさんは自身の強さを誇示する事も大好き。
そのために辛いし長いし苦しいしの三重苦をペロペロして、デトモルトの技術により加齢と若返りを何往復もしたのだ。
それなのに、初披露する相手が六駆くんだったという哀しみ。
この世界では敵として「そんなのないよ」の筆頭であり、理不尽過ぎるアカシックレコードに取り込まれた過去を未だに根に持っていたサービスさん。
練乳をチュッチュしながら余裕の挑発。
結果、クイントが引っ込んでチンクエが主人格になってしまう。
血戦の濃度が高まっていくのに、どっちがどうなっても割とどうでもいいという現状。
莉子ちゃんはダズモンガーくんと芽衣ちゃんを操り、甲冑部屋で甲冑じゃない着るものを捜索開始。
おわかりいただけただろうか。
テレホマンの予感が的中しているのである。
現在のバルリテロリサイドにとって無駄に人員と時間を奪われるのは致命傷。
そしてこの血戦は無駄以外に形容のしようがない。
だってサービスさん、重要容疑者だもん。
裁判の準備が整ったら良くてウォーロスト、普通に考えたら極刑を待つ身。
死を待つ白髪の男。
だが、待って欲しい。
次男。白髪。死にそう。
おわかりいただけただろうか。
北斗さんちの次男坊は、かなり強くてとても人気がある。
サービスさん、トキになれるか。
ちなみにトキは死にました。
◆◇◆◇◆◇◆◇
チンクイントが動く。
肉体も
「……良い。……『
初手は奇策。
クイントの顔の形をした
サービスさんはニィと顔を歪めて両手を広げた。
「ふん。……気持ちが悪い」
この人に嫌悪感を抱かせるとは大したものである。
気を取り直して、両手を広げて
「ふん。終わりだ。『サービス・タイム』!!」
サービスさんの時間凍結スキルは全て『サービス・タイム』の派生だが、最も効果的で普通に使えば相手を完封できるのがこの元祖『サービス・タイム』である。
自分を中心に効果範囲こそあるものの、
1度時間を止めてしまえば後はやりたい放題するだけ。
練乳チュッチュしながら『
練乳のお釣りが来る。
「…………!? お前、何故動ける……?」
「……良い。……強者感があって良い。私は強者と戦いたかった。兄者がしょんぼりするのも良いが、あまりやり過ぎると良くない。ただ、この合体形態ならば良い……。兄者の心が曇っても後でフォローすれば良い……。えっ!? チンクエ!? オレのために本気出してなかったみたいな事言い出してない!? ……良い」
「……こいつ。……異常者か。独り言で会話を成立させている。高みに立つか!!」
「……良い」
チンクイントに『サービス・タイム』が効いていない理由をどっちも語ってくれない。
こちらで補完しよう。
『サービス・タイム』の凍った時間の中に入る方法がある事を諸君は覚えているだろうか。
覚えていない方が正常なので、落ち着いて欲しい。
認知機能的にはむしろ適切な取捨選択ができている。優れていて良い。
条件は簡単。
スキルを発現するタイミングで氏の体に触れておくこと、である。
そしてチンクイントになる前のチンクエはサービスさんの戦いを攻城戦で目撃していた。
自身が対象になってしまえば初見殺しのスキル。
六駆くんや莉子ちゃんみたいなお化けでなければ対処できない。
そう。
サービスさんがバルリテロリで最初に時間を止めたのは、バルリテロリの民ではない。
莉子ちゃんである。
ビックリして思わず使った『ピンポイント・サービス・タイム』であった。
それをガッツリ見ていたチンクエ。
スキル使いとして優れた彼はその特性を視認してだいたい把握し、莉子ちゃんがぶち破ったことで完全に理解するに至る。
遠距離で発現すれば
ならば、近距離で発現されたら。
自身も含めた無差別対象スキルでなければ、術者が動ける道理は1つ。
無効化されるのが術者であるという結論にたどり着く。
「……良い」
「……ふん」
そんな頭脳戦を何も語ってくれなかった。
この血戦、長引くとまずい。
主にこの世界が。
コミュ症の2人が何を考えているか延々と解説する。
そんな戦いに魅力はあるのだろうか。
早期決着を望むしかない。
諸君。サービスさんに熱いエールを届けて欲しい。
プリキュアを応援する感じで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます