第1180話 【RKDNyaは「今回も座談会させとくにゃー」と鳴いています】 恋愛乙女たちの現在地確認作業会議 ~ぶち込まれた被害者が1名(1匹にするかギリギリまで迷った)~

 日常回の終わりを常に察知できるどら猫。

 今回も「時が来たにゃー」と鳴いた。


 基本的に日常回時空では恋愛乙女たちがあちらではやりたい放題して気持ち良くなり、他方ではやりたい放題されて気持ち悪くなる、そんな無法地帯。

 無法を法で縛るは困難と既に諸君も心得ているはず。


 ならば、無法乙女たちを1か所に集めてお話させちゃえばいいじゃない。

 そんなロジカルな思考から生み出された、瑠香にゃんリモートによる恋愛乙女座談会。


 特務機関『恋愛ってクソだにゃー』のメンバーは現状、芽衣ちゃんは不可侵の存在になっているのでノータッチ。危険が危ない。

 ノアちゃんは南雲隊にいるので、無言で穴だけ寄越して来る横着をキメている。


 だがそんな事は関係ない。

 『RKDNya』の総司令官・椎名クララ非恋愛乙女とその相棒、跡見瑠香にゃん非恋愛ロボ子がいれば事は済む。


「瑠香にゃん。準備はいいかにゃ」

「はい。ぽこますたぁ。万全です。ご指示をどうぞ」


「では、やっちゃえにゃー」

「はい。ぽこますたぁ。瑠香にゃん、やっちゃいます」


 普段はじゃれ合っている猫たちだが、瑠香にゃんも2度目の日常回時空でちょっと心がモニョっとしたらしく『RKDNya』の活動にむちゃくちゃ協力的になっており、この時、この瞬間のみだと分かってはいるものの、ぽこますたぁに対して極めて従順な態度を見せる。


「我々の安寧を守るためなのにゃー!!」

「大義の前に些末な犠牲はつきものだと瑠香にゃんは肯定します。瑠香にゃんリモート、展開完了。ボクマスターが放置していた穴から『脳穴ノア』の発現を確認。実行します」


 そこにやって来たのは南雲さんに次ぐ苦労人番付の常連、西の横綱である歴戦の雄。


「クララ。小鳩のスマホを回収に来た。私もこうして雑用をしている事が安全だと分かって来てな。何をしているのか知らんが、スマホを寄越しt」


 誰かの霊圧が消えた。


「ぽこますたぁ」

「……大義の前には犠牲が必要なんだにゃー!」


 そうは言いつつも、2匹の猫が敬礼した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 瑠香にゃんリモートでは。


「あ。来た。これ、アレだよ。私が進行役させられるヤツ。はいはい。青山仁香です。今回もみんなに恋愛マウントを取られます。誰が最初に来るのかな」


 仁香お姉さんが完全に仕上がっていた。


「了!! 私、色々と語りたいです!!」

「リャン! ダメだって言ったでしょう!! あなたはダメなの! 私が後で聞いてあげるから!! 絶対にザールさんとの話はここでしちゃダメ! 良い!?」


「了!!」

「もう! この聞き分けの良さ!! 本当にリャンって最高の後輩だと思う!!」


 仁香さんとリャンちゃんの位置関係が功を奏して、恋愛乙女たちのラブでラブを洗う抗争を未然に防ぐ。

 さすが放っておけないお姉さん。


「えへへへへへへへへへへへ!! 小坂莉子、現着しましたっ!! あのですね! 今回も六駆くんとは離れ離れだったので! お話聞いて欲しいなって思ってですね!!」



 仁香さんは爆弾処理班に転属するエピローグ世界線もあり得ると全探索員に納得させるだけの危機回避をのっけからやってのけていた。



「……今回は莉子ちゃんが来るのが……速い!?」


 もう全然恋愛乙女の空気ではない仁香さんが鋭く目を光らせた。

 彼女の動きはもっと速い。


「莉子ちゃん?」

「あ! 仁香さん! あのですね!」


「その前に、ひとつだけいいかな?」

「はいっ! なんですか!?」


「……太った?」

「……………………………………………………ふぁ」


 莉子ちゃんがログアウトしました。

 これにて仁香さんのお仕事がほぼ完結。くぅぅ。お疲れさまでした。


「待ってくれ!! 私は本来、ここに来るべき者ではないはずだ!! 何かの手違いだと誰か! クララに伝えてくれ!! 頼む! 後生だ!!」

「あ。……後はお任せしても良さそうですね。リャン。こっちで実はずっと水着姿で放置されているザールさんにラッシュガードでも選ぼっか」


 リャンちゃんが「了! ラッシュガードってなんですか!」と言ってリモート空間の端の方へ駆けて行った。

 なんか薄手のすぐ乾くパーカーとか、そんなヤツである。

 サーファーの擦り傷防止目的に開発されたのが起源とされているが、夏場、冷房のガンガン効いている部屋に滞在する時などに助かる。


「あっくんさんとお話できてませんわ……」

「小鳩か! すまんが私を戻してくれ!!」


「あら。バニングさんがこちらにいらっしゃいますのね。ちょうど良いですわ。あっくんさんが何をしていらっしゃるか調べて頂けます? 今回の日常回であっくんさん出て来ませんでしたの。わたくし寂しくてやってられませんわ」

「……どうしろと言うのだ。なにゆえ小鳩が。先ほど私にスマホのお遣いミッションを指示した時には柔和な顔だった小鳩が。割とやさぐれている?」


「土門佳純、入りました!! ここがそういう場所だからだと思います! バニング・ミンガイルさん! はじめまして!!」

「……お初にお目にかかる。……ドモンと言ったか」


「佳純でお願いします! その呼ばれ方だとなんだか強そうなので!」


 あながち間違っているとは言えないのが辛いとこね。

 多分佳純さんはレインじゃなくてドモンだと思われる。


 あと、貴女のレイン和泉さんはちゃんと生きているのかを伺いたい。

 あの人は日常回に限ると死亡回数が恐らく大吾の次席。


「聞いてください、皆さん。私、かなり致したんですけど。これって絶対になかった事にされる流れというか、もうなかった事にされてますよね? あ。ミンガイルさん。お久しぶりです。山根春香です」

「これは……。日本本部のオペレーター。貴女の旦那にはいつもお世話になっている」


 バニングさん、上司が急に仕事辞めて担当してた取引先を全部引き継がされる事になった係長みたいになる。


「えっ。ズルいですよ! 春香さん!! 致したんですか!?」

「そうですわよ、そうですわよ! 致したんですの!? アレですわよね! レスリング!!」


「それはもう致しました。健斗さんの腰を医療班に治してもらって、最終的に前よりも腰が悪化するくらいに致しました。何故だか私の体力が全然減らなかったので。どうしてか分かりますか? ミンガイルさん」



「……察するに。オペレーター。貴女の精神力がこの時空に作用したのではないだろうか」


 アトミルカを率いて来た男はやはり違う。

 なんか日常回の答えまで出してくれた。



 日常回を制するは精神力の強さ。

 皆さん、覚えて帰ってください。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「……今回は隠れてやり過ごすのを控えよう。南雲京華だ。皆、ご苦労」

「京華さん! ご報告ですわ! 既に莉子さんがログアウト済みですわよ!!」


「そうか。小鳩は将来の監察官候補として大事に育てたい。その視野の広さは絶対に逃したくない。……頼むから退役するなよ。産休精度の拡充は私が責任をもって取り組む。あと、阿久津に戸籍を与えたのは私だ。恩を売っていると取ってもらって構わん!!」


 京華さん、動く。

 このままだと恋愛乙女が全員退役して、自分だけスカスカになった日本本部を旦那と死にそうになりながら子育てと兼業する未来がハッキリと見え始めたため、積極的に引き留め工作を開始するご様子。


「…………」

「おい。これは誰の沈黙だ!? 望みを言え!! なんでも叶えよう!!」



「あ。いや。これは失礼。上級監察官殿。私はバニング・ミンガイル。意図せずこちらに放り込まれたゆえ、黙っていたのですが。余計に気遣いをさせてしまうとは」

「え゛。……そ、そうでしたか。これは、いや、私の方こそ、何と申し上げるか。恐らくクララでしょうが。部下の失礼、お詫びする。……お元気でしたか?」


 偉い人と偉い人が久しぶりに思わぬ場所で顔を合わすと変な空気になるヤツも発生するのが瑠香にゃんリモート。



「そういえば、エヴァンジェリンさんはいらっしゃいませんね?」

「そうですね! 確か、ご結婚されたんでしたよね!! 春香さんが把握できていないなら私には分かりっこないですが!」


 日常回時空は精神力の強さ。

 メンタルとは別勘定のヤツが強いと、情報集積を労せずしてこなせるらしい。


「すみません。先に私が、危ないから来ない方が良いですよとお伝えしたんです」

「仁香先輩と一緒にお伝えして来ました!!」


 ザールくんの黒いパーカーを選んだ先輩後輩コンビも戻って来た。


「仁香か。聞いたぞ。莉子を一撃でログアウトさせたと。お前にも監察官の席にゆくゆくは……いや、すぐにでも就いて欲しい」

「京華さん。………………………………その」


「おい。どうした。なんだその間は。悪い冗談はよせ。腹の子に障る!」

「……………………………………………………私」



「おい! クララ!! ここまでだ! 仁香が危ない!! バニング殿! 全力で戻りたいと願ってください!! そしてクララにリモートを停止させてください!! ここを乗り切れば、次はないと聞きました!! 仁香が辞めると言い出す前に!!」

「こ、心得ました! ぬぅぅぅぅぅりゃあぁぁぁぁぁ!!」



 バニングさんが咆哮と共に煌気オーラ爆発バーストを繰り出し、なんか煌気オーラ供給器官までちょっと回復してしまったのち、クララパイセンによって今回の大掃除が終了したと判断されたのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「にゃはー!! もうみんな完全にお互いを把握しとるぞなー!! これならあたしたちは絶対、ぜーったいに安全マージンが……瑠香にゃん、どうしたんだにゃー?」

「ぽこ。瑠香にゃんは見たくない未来の確率を計算しました。シミュレーション完了。『次はぽこと瑠香にゃんがリモートに巻き込まれる』確率、きゅ……。きゅうじゅ」


「にゃー!! もう日常回終わりだもんにゃー! さー!! 戦うぞなー!! やったるにゃー!! あたし、なんかちょー戦いたくなったぞなー!! 瑠香にゃんもだにゃー!?」

「ステータス『やけくそ空元気』を確認。瑠香にゃん、それはおっぱいに格納します。とても大事に」


 こうして最終決戦の舞台へと戦士たちは舞い戻る。

 血と粉塵が煙るバルリテロリ皇宮にて、いよいよ戦いが始まるのだ。


 もうきっと、次に日常を感じる時は全てが終わった時なのだ。


 そうなのだ。


 絶対にそうなのだ。

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