第1171話 【きっと最後の日常回・その7】ノア隊員の! 穴通信!! ~盛り上がりそうな女子先輩と絡む。これがメタ空間の正しい運用なんです!~

 前回のノアちゃん回のあらすじ。

 瑠香にゃん回と構成が丸被りした。


 責任の所在はどこにあるのか分からないが、今回もノア隊員はモノローグを乗っ取っていつも通りの進行をキメる。

 我々は穏やかな心で見守るのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 どうもこんにちは。

 おはようございます。

 こんばんは。


 みんなの後輩、平山ノアです。

 ボクは失敗から学ぶ後輩です。


 前置きが長くなると観測者先輩たちは飽きる傾向があるというデータがここにあります。

 ボクはジャーナリストでもあるのです。


 ————探索員では。


 1つの事しかやってはいけないという固定概念に囚われるともう若い思考は取り戻せない。ボクは知っています。

 そんな先輩を見つけたら、優しくスルーしてあげるのが情けですね。


 早速穴ちゃんを使って、安全かつ楽しそうな場所と中継しようと思います。

 こんな時のためにせっせと穴ちゃんを配置してきたのです。


 では、ふんすです。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ————こちらはどうやらミンスティラリア魔王城のようです。


『仁香先輩! ボクです!! 水着でお仕事中だと聞いてやって来ました!!』

「え゛……。ノアちゃん……? 嘘だよね? 私、いつもの順番だとこの次でしょ!? なんでもう酷いことされるの!? ごめんね? 帰ってくれるかな?」


 魔王城に住んでもう何か月になるとお思いですか。

 ボクの煌気オーラ総量はザコザコのザコですが、お忘れの先輩方に穴ちゃんレクチャーです。


 逆神先輩の『ゲート』と同じ構成術式なのです。

 つまり、出して放置しておく事も可能なのです。

 ずっと放置しておいた穴ちゃんは今や、各所に存在してます。


 これがボクのジャーナリズムです。

 ふんすですね。


 ————いよいよ何も悪い事してない芸能人のプライベートに踏み込む週刊誌みたいになりましたが。好感度的に大丈夫ですか。


 万人に受け入れられようとするよりも、3割程度の先輩方に溺愛される方がボクとしては面白いかもしれない。

 今回はその実験なのです。


 ————今回で日常回は終わりますが。



 どうせ終わりません。

 ボク、知ってます。


 ————ヤメてください。お腹が痛くなります。



「ノアちゃん? あのね、私、何かした?」

『あ、いえいえ! 仁香先輩はとってもいい先輩です!! ボク、大好きです!!』


「うん。……うん? そうなんだ? あの、とりあえずその穴? それを私の真上から移動させてくれないかな?」

『仁香先輩。ご存じですか? 最近、ゲームのフォトモードはローアングルにできないんです。大人先輩向けのゲームならできると思いますが、ボクは子供なので普通のゲームでローアングルにしたいんです。それが叶わないなら、上から見る!! これもなかなか乙なものです!! 仁香先輩! そのためのビキニですね!! 興奮します!!』


「くぅぅぅ! ノアちゃんからなんだか宿六の気配を感じる……!! そういえば結構仲良かったんだよね……」

『仁香先輩! ボクがここで水戸先輩ムーブをキメる事で、仁香先輩回が安全になると思いませんか!?』


「ど、どういうこと!?」

『この世界の意思はポンコツなので! 2話続けて似たような話をやりがちです! が!! 先にボクが水戸先輩のやりそうなことをやっておけば!! さすがに連続ではできません! なぜなら!! この世界は水戸先輩に怯えています!!』


「ちょっとごめんね! 整理させて!? あと、ちょっとずつ穴を私に近づけて来るのヤメてもらっていい!?」

『仁香先輩! 本当に日常回が今回で終わるとしたらです! ……出て来ますよ! 水戸先輩! 確実に仁香先輩の回で!! これまでやられて来た酷いことを思い出してみてください!! クリスマス回とか、仁香先輩は危うく致しそうになりましたよね!! ボクとしてはふんすですけど!!』


 ————落ち着いてください。



「ノアちゃん! 今、ちょうど休憩してたところなの!! ゆっくりしていってね!!」

『ふんすっす!! 観測者先輩方! 仁香先輩のビキニ、ホルターネックです!! 首の後ろで紐を結ぶヤツです!! これ上から見ると興奮ふんすですよ!!』


 ————誰か、助けてください。



 これは救済なのです。

 仁香先輩だけがひどい目に遭うなんて、後輩のボクは我慢できません。


 ならば、ボクが敢えて泥をかぶって仁香先輩をお助けする。


 哭いた赤鬼作戦です。

 ふんすっすです。


 ————哭いてますが。


『リャン先輩! ザール先輩!! こっちでお話しましょう!!』


 こうなれば盤石です。

 出来立てホヤホヤのニューカップル情報もゲットして、ジャーナリズムとエンターテインメントを兼ねる。


 ボクのやり方も進化するのです。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「了! ノアさん! お久しぶりです!!」

『リャン先輩! ふんすです!!』


「了! ふんすです!!」

『ちなみにリャン先輩とは楠木先輩監察官室にかなりの頻度でお邪魔しているので、仲良しです!!』


 ————仁香さん。後輩が危ないですよ。


「……リャンのために! 私は上から穴に覗かれてるよ!! だからごめんね!! 私、宿六が目の前に来ると多分……放っておけない!! だったら目の前に来なかったら良いって気付いたの!! もうアレだよ! この首の紐を外す構えだから!!」


 人質ならぬ乳質です。

 ボクは健全な精神を持つ良識派先輩たちと今回に限り少しだけ距離を取ります。


 ゴシップネタがわんさか載っている週刊誌がもてはやされるのは何故だか考えた事がおありでしょうか。

 これはジャーナリズムの検証なのです。


「ノア様。リャンさんにはどうか手を出さないでください。私の首でしたらお好きなように……!!」

「ザールさん! そんな事ばっかり言うのでしたら、私も首を差し出してお揃いにします!!」


「……はっ。ではノア様! お望みをどうぞ!! このザール・スプリング!! いかなる責め苦にも耐えましょう!!」

『ふんすですね! リャンさんのどこがお好きですか!!』



「我が師、バニング様。これがあなた様を蝕んでいた……日常回……!!」


 ————日常回が悪みたいな空気を出さないでください。

 ————否定しづらいです。



『むふふー。早く答えてくれないと、ボクも今回はやっちゃいます! 悪ノアちゃんなので!!』

「な、なにをなさると申されるか!?」


『穴ちゃんを! どんどん仁香先輩に近づけます! ふっふっふーんす!!』

「ザールさん! 私の事は気にしないで!! そんな新婚さんいらっしゃいの下世話な回みたいな圧に屈しないでください!! 良いんです! 私のおっぱいなんて、もう生で宿六に見られたり触られたりした……汚れおっぱいですから……!!」


 ————ノアちゃん回なのですが。


「……特筆するとしたら。……笑顔です」

『ほほう! とってもフレッシュで良いと思います! もう一声!!』


「……私、実はリスが好きでして。ヴァルガラにはリスに似たモンスターが生息しており、バニング様の目を盗んで餌をあげておりました」

『つまり、リャン先輩はリスっぽいという事ですね!!』


「ああ、いえ! とんでもない!! リャンさんはリャンさんです!! ただ、時折見せられる所作に小動物のような可愛らしさを感じる事も……くっ。肯定せざるを得ません!! 申し訳ありません、リャンさん!!」

「私、とっても嬉しいですけど!! 今度からご飯を頂くときは前歯でカリカリして食べますね!! 見ていてください!! ザールさんが喜んでくださるなら頑張ります!!」



『観測者先輩方。思ったよりもお二人がフレッシュで、ボクが負けそうです。力を貸してください。こんな空気ではリャン先輩に質問できません』


 ————今のノアちゃんには誰も力を貸さないと思います。



 誤算でした。

 ボクとした事が、想定よりもこのザール先輩×リャン先輩、ピュアピュアです。

 小鳩先輩とあっくん先輩が喰われるレベルです。


 むしろ、相対的評価先輩によって小鳩先輩のピュア度を低下させてしまったような気がします。

 これは後輩として大失策です。


「ノアさん! ザールさんはですね、私がちょこまか動いているので面倒を見てくださるんですよ! さっきも水着の肩紐がずり落ちていたところを、無言で直してくださりました!! 私がはしたなかったのにものすごく恐縮されて! ステキですよね!!」

『うあああー!! ダメです! リャン先輩!! 困りました! ちょっと勝てません!! 芽衣先輩が恋愛乙女に入ってくれない以上、ここまで綺麗な恋愛結界は多分この世界で今、ここにしかありません!! これ以上ボクが踏み込むと……ノアちゃん回が新婚さんいらっしゃい回になってしまいます!!』


 ————もうなっていると思います。


 ここはノアちゃん脳内会議で戦略的撤退を採択します。

 ですが、第二、第三のノアちゃん回は必ずやって来ます。


 ゆめゆめお忘れなきよう、諸先輩方にはご留意いただきたいです。


 ————やられた大魔王の負け惜しみそのものですが。


 これにて今回のノアちゃん回は終了です。

 くぅぅ。やれませんでした。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 管理権限を回収しましたが、どうしたものか。


「リャン! ザールさん!! 私が引き付けているうちに逃げて!! いいの! どうせ私のおっぱいなんてこの世界では使い捨てだから!!」

「仁香先輩! ノアさんは帰られましたよ!!」



「……えっ?」

「仁香様。ノア様がメモを落として行かれました。読み上げます。……次、仁香先輩です。水戸先輩の出現は防ぎました。新しい恋を見つける回にしてください。ふんすです。……とありますが」



 仁香さんが一瞬だけ見た事のない感じの笑顔になり、すぐにいつもの凛とした表情に戻ってから、誰に言うでもなく確認した。


「あの。私ってもう絶対に誰かと結ばれないとダメなんですか? 私、元々は仕事人間で。最も色気とかない女子探索員として出て来たはずなんですけど。……答えてもらえます?」


 ノアちゃん回からシームレスに仁香さん回へ。

 これは確かに新しい形だったかもしれん。


 ちなみにノア隊員はバルリテロリに戻り、今、小鳩さんの耳元で「ピュアお姉さんの権威が失墜しそうです!! ふんすです!!」といらん事を吹聴している。

 ノアちゃんは南雲隊なので、『ホール』を無駄遣いしてないで南雲さん回に備えて頂きたい。

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