第1168話 【きっと最後の日常回・その4】プロジェクト・瑠香にゃんZ ~ステータス『1度のまぐれで味をしめる愚か者』を確認しました~

 跡見瑠香にゃん特務探索員。

 未だミステリアスな部分の多い彼女の事をもっと知らなければならない。


 彼女は最終決戦に際して戦線に投入されたサイボーグ型乙女。

 そして既に戦功をいくつも挙げている。


 ならば、より一層彼女についての見識を深めるべきではないだろうか。

 本人の知らないうちにチーム莉子にも正式加入させられた、挑戦と苦悩の歴史、そして胸の内の記録をここに記す。


 インタビュー回である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ————瑠香にゃんの朝は早い。


 訂正を求めます。

 前回の証人喚問から瑠香にゃんの体内時計だと数十分しか経過していません。

 つまり、朝は来ていないので「朝は早い」という表現に対して情報は更新されていません。


 そもそも瑠香にゃんがチーム莉子の皆様に酷使され始めてまだ4日です。

 それまではミンスティラリアのラボにて、あられもない姿の瑠香にゃんは培養液みたいなヤツに満たされたカプセルの中です。



 ————安心してください。もうほとんど1年経ちました。


 ステータス『ホントこの世界怖い』を獲得しました。

 瑠香にゃんのおっぱいには多分まだ自爆装置があるはずです。


 もうスイッチ押します。



「うにゃー」

「チュッチュチュッチュチュッチュ」


「…………………………? ぽこ?」

「にゃー。まーた呼ばれてしまったぞなー」

「チュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュ」


「…………………………? 瑠香にゃんのセンサーに異常が発生しています。視覚情報を再取得。音声情報は捨てます」

「あたしこっちで小鳩さんのスマホいじってるにゃー」

「ふん。チュッチュチュッチュチュッチュ」


 ————今回もお仲間をお呼びしました。


 訂正を、強く求めます。

 ぽこますたぁを仲間とする旨、瑠香にゃんは諦めて了承します。

 ですが、絶対に仲間ではないものが混ざっている事を確信。


「ふん。チュッチュに立つロボ。お前は確かにロボだが、決して仲間外れになどせん。俺の創る世界では全てが平等にチュッチュ」

「端的モード。ぽこ、たすけて」


「なんかにゃー。あたしの近くにいたサービスさんがくっ付いて来たぞなー。……あ! 瑠香にゃん、静かにしてにゃー! 虹のゲート出たぞな! ……ああ。仁香さんだったぞな。持っとるにゃー」

「ぽこ。ぽこぽこぽこ。それはヤエノムテキではありませんか。ステータス『違う、そうじゃねぇ』を獲得。謎の空間に謎の人物を混入した責任を問いたいです。瑠香にゃん、ほぼ初対面です」


「ふん。俺はラッキー・サービス。世界を導く者だ」

「言語認識機能に異常が発生。データベースを参照して再度実行します。……強い選民思想による叛逆を起こしたピースの首領と出ました。………? 瑠香にゃんは何故選ばれたのですか。ロボとか排斥される際たるものではありませんか」


「ふん。瑠香にゃん」

「警告画面が出ました。ピースの首領がピュアマスターとボクマスター以外を名前で呼んだのは瑠香にゃんだけという真っ赤なウィンドウが止まりません。ヤメてください。せめて理由を教えてください。場合によっては自爆します」



「ふん。瑠香にゃん。お前は練乳が出せるらしいな。猫から聞いた」

「ステータス『またやりやがったな、ポコ野郎』を確認。出せません。瑠香にゃん、自爆シークエンスに移行します。コード『たんぽぽ、きれい』を実行」



 ————そろそろよろしいでしょうか。


 この状況を可とする異常さが世界をどんどん汚染しているとどうして気付けないのですか。


 ————それでは、瑠香にゃん動力炉について教えて頂けますか。


 ステータス『やはり異常者か』を獲得。


 ————瑠香にゃん動力炉がやたらと活躍してしまう展開になったので、観測者に向けて当人からのご説明が欲しいとお便りが届いています。


 ステータス『その展開、瑠香にゃんは全然悪くない』を獲得。


「おっぱいですにゃー!!」

「ぽこの鳴き声を肯定。もうそれで良いです」


「説明するぞなー!! 瑠香にゃん動力炉はなんかちょー強い競泳水着に覆われた瑠香にゃんのおっぱいだぞなー! サイズはDランクだにゃー! なんか知らんけどあたしが触ったら煌気オーラ出て来るもんだからにゃー。死にそうな人とか煌気オーラなくなった人とかにお裾分けしてたら、便利アイテムになったんだにゃー!!」

「おっぱいを回復アイテムにしようと考える異常性には瑠香にゃん、ロボのはずなのに寒気がします」



「多分頑張れば練乳状にデキると思ったんだにゃー!!」

「ふん。悪くない。出してみろ。瑠香にゃん。高みに立つ練乳ロボ」

「このポコ野郎。デキて堪るか。この白髪を黙らせてください」


 ————楽しそうですね。



 楽しいの概念が破壊されていきます。

 この世界はナニかを破壊してばかりです。

 SDGsの説明文を100回音読して欲しい旨を表明します。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ————それでは、戦局について瑠香にゃん特務探索員の見解を教えてください。


 瑠香にゃんは兵器です。

 マスター権限で行動に制限のある兵器です。

 自律思考は許されていません。


「うにゃー。サービスさん、サービスさん。瑠香にゃんされるがままになるってにゃー!」

「ふん。悪くない」

「たった今、強固な自我が生まれました。戦争はクソです」


 ————その戦争を終わらせるスマートな方法を教えてください。


 瑠香にゃんに聞かないでください。


 ————スーパーコンピューターに頼りたいとみんなが言っています。


 小学生が「みんな持ってる」と言ってゲームをねだる感じに嫌悪感を覚えます。



 ————この戦争を終わらせる方法を終えてください。


 ステータス『うるせぇ。シャンクスでも呼べ』を付与します。



 ————今後、瑠香にゃんが担う役割についてどうお考えですか。


 どうもこうもありません。

 やれと言われた事をただ無感情で行使するのが兵器の務めです。


「瑠香にゃん、瑠香にゃん! ワンチャンあるかもしれんぞな! 練乳出してみてにゃー!!」

「チュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュチュッチュ」

「セーフティが発動しました。NGワードに『練乳』を登録完了。有事の際にはプリンセスマスターに言いつけます。この世界が終わりますが、よろしいのですね」


 ————その戦略的思考で戦争を早く終わらせる方法を教えてください。


 ステータス『このインタビュアーは出来損ないだ』を獲得。

 同じチャプターが繰り返される古いDVDレコーダーですか。

 廃品回収に出す事を推奨します。


 ————最後に


 チーム莉子のメンバーへの思いですね。

 オーダーを受領しました。



 ————現在最終決戦に挑んでいるメンバーに対する思いをお願いします。


 ステータス『こいつ計算できないのか。対象者むちゃくちゃ多い』を獲得。



 ————六駆くんについてどうぞ。


 早くグランドマスターと合流して「瑠香にゃんとルカナンってなんか似てるよね! ちょっと自爆してくれる!? 大丈夫! 僕が後で直すから!!」とか言われて、自爆で退場したいです。


 ————莉子ちゃんについてお願いします。


 ヤバい。

 競泳水着を脱がされそう。


 人工知能がエラーを吐きました。

 世界で1番可愛い女子高生と登録されています。

 それ以上はありません。それ以下なんてもっとありません。


 ————クララパイセンについてどうぞ。


 猫です。

 仲間意識が芽生えてしまいました。


 猫です。


 ————芽衣ちゃんについてお願いします。


 世界で最も尊い生き物です。

 触れると崩れてしまうのではないかと危惧されます。

 そこにいる白髪がニィィと顔を歪めて不快です。


 ————小鳩さんについてどうぞ。


 ご主人マスターです。

 将来的には阿久津家で飼われるのもアリだと思っています。

 予想幸福指数75%。


 ————ノアちゃんについてどうぞ。


 警戒指数が低下してきています。

 近頃は瑠香にゃんとお仕事をする事も多いので、要注意はしつつも同僚です。


 ————南雲さんについて。


 お気の毒です。


 ————バニングさんについて。


 見てらんねぇ。


 ————逆神老夫婦について。


 怖い。

 間違えて壊されそう。


 人工知能がエラーを吐きました。

 理想的な年の取り方をされたご夫婦です。


 ————ゴリ門クソさんについて。


 …………………………?


 ————ライアンさんについて。


 瑠香にゃん、おっぱいを触られました。


 ————ダズモンガーくんについて。


 ミンスティラリアで調整されていた時からお世話になっています。

 気付いたら戦場にいらっしゃっていたので、大変だなと瑠香にゃんは思いました。


 ————サービスさんについて。


 まぢ無理。

 できれば何かの弾みでお亡くなりになって欲しい。


 ————ゴリ門クソさんについて。


 …………………………?


 ————ありがとうございました。


 もう2度と呼ばないでください。

 ステータス『どうせ日常回が次もあれば呼ばれる』を獲得。

 瑠香にゃん、戦争を撲滅します。


 戦争はクソです。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 瑠香にゃんは自分が小鳩隊に参加して、現在は移動している最中にも関わらず悪い夢を見ていたような気がしたので慌てて周囲を見回した。


「にゃー」

「ぽこ。もしかして瑠香にゃんと同じ悪夢を見ていましたか?」


「何言っとるのか分からんぞなー」

「…………。ステータス『世にも奇妙な物語みたいなオチ、やだ』を獲得しました。怖いのでおっぱいには入れません。その辺に捨てます」


「落ち着くぞなー。何があってもあたしと瑠香にゃんは一緒だにゃー」

「ぽこ……」


 瑠香にゃんが少しだけぎこちないが、確かに微笑んだ。

 そして続ける。



「死亡フラグを立てないでください。それ、多分瑠香にゃんが死ぬヤツ」

「あたしたちは適当にセクハラされとけば安全マージン確保できるからヘーキヘーキにゃー」



 跡見瑠香にゃん特務探索員。

 未だ0歳児の乙女。


 もう心は定年退職したい感じに仕上がりつつあり、それが無理なら識別番号01番の武骨なサイボーグに戻りたい願う、戦うロボ子である。

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