第17章

第1165話 【きっと最後の日常回・その1】逆神六駆のお悩み解決コーナー ~本編時空では敵の大本営で臨戦態勢につき、ついにメタ空間へと赴く最強の男~

 【ご注意ください】


 最終決戦の真っ最中ですが、当然のように日常回がしばらく差し込まれます。


 前章の日常回から物語時空では恐ろしいことに約20分ほどしか経過しておりません。


 そのため、メタ世界に飛んだりします。ナニする展開も多くなります。

 そのくせ本編時空とジャズった回の方が多いとかいう、もうこいつら何してんのか分かんねぇな状況になる可能性がございます。


 きっとベテラン探索員の皆様も諦めてお付き合いくださる期待と希望を勝手に抱いておりますが、万が一こんな訳の分からん時空にいられるかという常識をまだ持っていらっしゃる場合はお手数ですが日常回時空を飛び越えて、その先から再突入して頂ければ幸いです。


 ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 五千円札の束が自爆テロした結果、逆神六駆がかなり仕上がった。

 このテンションで南雲さん辺りを相手にお金の話をさせると、死んでしまう。


 南雲さんかナグモさんか、あるいは両方。


 よって、超法規的措置を取られる旨がこの世界で採択された。

 今、おっぱいの話はしていません。


 六駆くんは意外な事に、かつてピースとの攻防の際お正月メタ空間にみんなで飛ばされたパターンを除くと1度もメタ空間に行っていない男。

 日常回時空でも、どんなシチュエーションでも構わずにほとんどお金の話をして、たまに婚約者の悩みを似た者メンズに打ち明けて過ごして来た。


 そんな彼が、ついに参考人招致される。

 いくらなんでも皇宮攻略中に、しかもちょっと覚醒した直後に日常回をぶっこむのは無理があったのである。


 有能なアシスタントも付けるので、メタ空間でも元気にやって欲しい。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな訳でこちらは瑠香にゃんリモート。


「帰っても良いですかね! 僕、こういうおふざけって嫌いなんですよね!! 内輪ネタみたいなヤツ! 芸人さんが芸人さんしか分かんないネタでうへへってやってるヤツ!! だって僕、テレビあんまり見ないんですもん! 特にバラエティはね、タレントさんの名前覚えられないんですよ! あ、この人あれだ! ローラさん! って言ったら、ローラさんの亜種が山ほどいるじゃないですか! 気になって調べてたら番組終わるんですもん!!」


 早くアシスタントを出さなければ。

 おじさんの呟きでこの回が終わってしまう。


「ふんすです!! 日常回順の関係でボクが呼ばれました! リモート空間での立ち回りには一家言あります! ノア隊員です!!」


 心強い味方が来た。


「瑠香にゃんは充電が切れそうなので、至急コンセントの近くまで運んでください。ステータス『人気が出たからってやたらと擦るから最終的に全部出涸らしになる』を獲得しました。観測者の皆さまに差し上げます」


 チーム莉子の新人と準新人のフレッシュなコンビがアシスタントとして頑張ります。


「…………? 瑠香にゃんが進行をさせられるのですか? これを読めと命令されるのならば、実行します。瑠香にゃんは兵器です」

「逆神先輩にお悩み相談が届いています! これぞおじさん世代のメタ!! キャラとキャラが謎の掛け合いを始めたら、もう若者先輩たちの離脱カウントダウンも2くらいまでキテます!!」


 やっぱ、どう考えてもこの世界が助かる道はこれしか思いつかなかった。

 最強の男の最強の頭脳で問題を解決するのだ。


 この世界は悩んでるヤツしかいない。


「それが終わったら帰っても良いですか? 日常回とかいう期間、休めるので僕は好きなんですけどね。絶対にこれ以降は呼ばないでくださいね!!」


 一昔前、こういう幕間のお話にも全盛期はあったのだ。

 らっきー☆ちゃんねるとかご存じないだろうか。

 ご存じなければそれはそれで結構。


「A山マスターからのお悩みです。瑠香にゃん、感情を殺して読みます。せっかく感情が芽生えたのに、こんなもの邪魔なだけでした。……気付いたら私だけがずっとセクハラされっぱなしなんですけど、どうしたらいいですか。だ、そうです」



「無視すれば良いんじゃないですか!!」


 六駆くん個人の見解です。



「ボクも読み読みしちゃいます! N雲K華先輩からのお悩みです。……いつ出産回をさせられるのか心配で震えているのだが。どこぞの痴れ者の検索履歴にマタニティ関連が増えていて本当に震える。私は40過ぎで初産だぞ。センシティブだ。それをエンタメにさせるな。助けてくれ。……だそうです! ふんすですね!」

「瑠香にゃんはよく分かりませんが、ステータスを獲得しました。『どうせ時間経過で誤魔化す』です。グランドマスター。どうぞ」


 六駆くんが笑顔で頷いた。


「そうなんだ! すごいね!!」


 解決しました。


 この辺りはジャブ。

 最強の男にとってはいなすまでもない、ただの連撃。

 涼しい顔で身体に何発か当てさせたらもう仕事は終わる。


「瑠香にゃんのターンでした。グランドマスター回なのにグランドマスターがまったく何もしていない動きを検知。動いていないのに検知してしまいました。人工知能が壊れそうです。D門マスターからのお悩みです。……今度こそ致してもいいですか。との事です」

「良いんじゃないですか? 土門さん大人なんだし、見てる人も僕と同年代の人ばっかりでしょうし。何も感じませんよ」


 ジャブで世界が壊れそう。


「ふんすです! Aくん先輩からの督促です! ……逆神ぃ。てめぇよぉ。貸してる漫画とラノベとDVD、とっとと返しやがれぃ。との事です! 逆神先輩! 1つも返してないんですか! 興奮しますね!!」

「だって、金田一少年の事件簿と違ってコナンって長いんだよ。ノアは知ってるでしょ? まずはベルモットが化けてる人に赤ペンで丸付けて! 次はバーボンの候補が出て来たらまた正体に丸付けて! 今はね、ラムが化けてる人に丸付けてるところなんだよ! あっくんさんも読み返す時に楽かなって! ほら、年取るとね、これなんだっけ? ってなってさ、推理ものの伏線確認するために何巻も前のヤツ引っ張り出さなくちゃいけなくなるんだよ! あっくんさんも30代だし、あと5年くらいでそうなるからさ!! 僕、二十世紀少年なんて7冊くらいその辺に置いとかないと読み進められないもん」


 優しさからの行動であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ジャブは終わったので、そろそろ右ストレートを繰り出す時分。

 最強の男はお悩み相談でも無類の強さを発揮するのか。


「ステータス『名前を呼んではいけないあの人』からのお悩みを確認。震え声で読みます。……わたし、もう何か月も恥ずかしい恰好させられてるのに。旦那様が助けに来てくれないんです。これってもしかしてわたしに飽きたんですか? ……と、瑠香にゃんには読めましたが、間違っているかもしれません。瑠香にゃん、0歳児です」

「………………………………えっ!?」


 逆神家の奇数代が持つ特性をこんなところで開眼してしまいそうな六駆くん。

 なんとか聞こえないふりで踏みとどまる。


「ゔあ……。こっちにも来てました。謎の先輩からです。……なんか最近さ。年が明けてくらいから。ううん。もっと前からかな。六駆くん、ノアちゃんと一緒になること、多くない? だそうです! 多くないです! ふんすっすです!! ボクの方に逆神先輩が寄って来るんです!!」

「…………………………えっ!?」


 よく考えてみれば、こうなるのは必然。

 名前を呼んではいけないあの子は、初恋が最後の恋なのでヤキモチ焼きな乙女。

 嫉妬の炎で敵を焼き尽くした回数は未遂も含めると当局でも把握しきれない。



 旦那に対してダイレクトアタックで「ねぇ。なんで……?」と愛が重い感じになるのも時間の問題なのは間違いない問答であり、この世界が抱える最大の問題かもしれない課題。



 リコられている間は良いが、ガチで問い詰められると我らが最強の男はどうなるのか。

 最&強で我々を安堵させてくれるのか。


 六駆くんは初期ロットのメインヒロインをおじさんムーブで振り回していたし、「ふぇぇぇぇ」とスパルタ指導でひぃひぃ言わせていたので、その経験も戦いの遺伝子として脈打っているはずなのだ。

 ちょうどいいので、この邪魔が入らない瑠香にゃんリモート空間で結論を出してしまっても良いのではないか。


「僕、〇子はもう家族だからさ。なんだろう、浮気とかそういう心配はして欲しくないな。家族って何が起きても家族じゃない? 親父とだって縁は切れないしさ。だから莉〇も僕が何をしてたって不安に思わないで欲しいって言うか。うん。ねっ!」


 ボクっ子とメカ猫がシンクロニシティをキメる。



「逆神先輩!! その回答は最悪です!! ボクとしては興奮しますが、女子が彼氏に言われてブチ切れるヤツの中でも第1位を獲得する子です!!」

「パターン『地獄の苺火に焼かれる』を確認。グランドマスター。それはステータス『浮気しても帰って来るのはお前のところだけやで』と同意に見えて同異です。『俺のやることに口出すな。好きなんだるぉ? 俺の事』に該当します。世界の終わりです。ドラゲナイです。瑠香にゃんはスリープモードに移行します」


 ここは完全秘匿が保たれる瑠香にゃんリモート空間です。



 気付くと六駆くんは大粒の汗を毛穴という毛穴からこれでもかと垂れ流しており、本人の自覚がないところでうっすらと涙も浮かべていた。

 最強の男は日常が最大の敵とは、初期ロットの設定ではなかったか。


 否。


 終わりという名のピリオドに近づき、これまで転がっているだけで見て見ぬふりしていた設定や伏線が収束しつつある。

 終焉なるフィナーレを迎えるにあたり、過去と対峙する必要も出て来るのだ。


「僕ね! ひいじいちゃんを殺すよ!! だから出して! ここから!! ねぇ! お願い!! 出たら記憶消えるんでしょ!? ここから出して!! ねぇ! 瑠香にゃん!! ノア!! お願い!!」


 そうなると、最強の男は自身が最強でいられる場に身を置くしかない。

 最強とかもう良いから、隠居したい。


 隠居を平和にするためには、戦わなければならない。


 改めて日常が嫌いになった最強の男は、再び本編時空で最終決戦へと挑む。

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