異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1139話 【魔王城から「頑張れ芽衣ちゃま!」・その2】ドリンクバーが無料開放されたミンスティラリア、芽衣ちゃまの勝利に沸き立つ ~一部のメンバーは別の乙女に警戒中~
第1139話 【魔王城から「頑張れ芽衣ちゃま!」・その2】ドリンクバーが無料開放されたミンスティラリア、芽衣ちゃまの勝利に沸き立つ ~一部のメンバーは別の乙女に警戒中~
ミンスティラリアではパブリックビューイングにて「芽衣ちゃま殿下、大勝利!!」の字幕と共に芽衣ちゃま隊の初陣を振り返るプレイバック動画が早速編集され、配信されていた。
見所はもちろん芽衣ちゃんの極大スキル。
ドッペル芽衣ちゃんが重なって1人になるシーンは芽衣ちゃま信者垂涎の映像。
シミリート技師が2分でやってくれました。
BGMは『栄光の架橋』が流れており、諸々の権利関係にも精通しているシミリート技師の依頼によってバッツくんが歌唱を担当。
彼はスキル発現の際に「ボンバァァァ」と叫ぶので、ボイストレーニングを常にしているようなもの。
とても歌が上手い。
「魔王様。準備が整ったのだよ」
「うむ。妾もあとわずか。魔王としての役割を果たすのじゃ!」
ファニコラ様は依然として王位を芽衣ちゃんに継承する気満々。
バルリテロリ捕虜チームはバルリテロリの新皇帝に芽衣ちゃんが即位する事が決定事項になっているので、この戦争が終わったらまた新しい戦争が起きそう。
人はどうしてこんなにも争うのか。
『皆の者! 芽衣の戦いを見てくれたのじゃ? 妾、とても興奮したのじゃ! あと、ダズモンガーも頑張っていたのじゃ! 帰って来たら皆で褒めてやって欲しいのじゃ!! きっと次の戦いも芽衣が勝つのじゃ! 勝どきはまだ挙げぬのじゃ!! 我らがミンスティラリア代表の芽衣を引き続き応援するのじゃ!!』
ファニちゃん様のお言葉によって人族の収容地域に駐在している魔王軍の兵士たちが対立し続けて来た種族の垣根を超えて手を取り合い、なんか興奮したという。
僻地勤務の屯所には福利厚生としてドリンクバーが設置されているが、今日ばかりは無礼講と人族のテロ組織にもファンタを振る舞う。
人は分かり合える。
「あの。芽衣ちゃんっていつからミンスティラリアの人になってるんですか? 彼女の本籍地って御滝市にある遠藤さんのお宅のはずなんですけど」
「仁香先輩! 芽衣さんは日本本部でもアイドルみたいなものなので、これってアレですよね! ええと! そう! 大岡裁き!!」
「リャン……。それ、芽衣ちゃんが両腕掴まれて引っ張られるヤツだよ……。そのシークエンスに移行した時点で暴発する人たちがたくさんいるんだよ……。私が守ってあげなくちゃ!!」
1番連れてきやすかったという理由だけで水着のまま後方司令官代理に就任させられた仁香さんだが、この人事がズバピタでハマっている事に一部の者が気付く。
放っておけないお姉さんが放っておけない対象は今、芽衣ちゃん一択。
宿六が異空間に消え失せたおかげで、本来の面倒見の良さが正しい形で発揮され始めていた。
「仁香。少し良いか」
「アリナ様。じゃなかった、アリナさん。すみません。壁を作っているつもりはないんですけど、アトミルカの事情を伺った後だと気安い感じで接するのが私にはなかなか難しくて……」
「ふふっ。良い、良い。人それぞれというものであろう。仁香は仁香らしさを大事にすると良い。妾はそれもそなたの長所だと思うが」
「そう言って頂けると光栄です! なにぶん、縦割りの部隊で副隊長をしていた期間が長く、どうしても身分とか階級を気にしてしまいまして! ととっ。お話を伺います!」
アリナさんが小声で仁香さんに耳打ちした。
大きな声では話せない内容だとすぐに察した放っておけないお姉さん、拝聴する。
「莉子が画面にチラりと映っておったが……。妾がかつて莉子と本気の戦いをしたことがある事は知っておろう? ……あの時に匹敵するほどの仕上がり方をしておるのだが。芽衣は大丈夫であろうか……」
「……私の不徳の致すところです。帰って来たらビシビシしごきます。なんであんなにムチムチしてるんだろう。お正月に会った時には痩せてたのに……」
2人の危機意識に乖離が生じているのは気のせいか。
アリナさんは莉子ちゃんマックスバトルフォームの被害者1号。
あの時は愛のドーピングで一時的に六駆くんよりも強くなるという、最強の座までゲットしていた莉子ちゃん。
抹消スキルを苺色の悪夢で逆に抹消するという、本当の悪夢を見せられたアリナさんは以降の関係こそ良好だが、夜寝る前に目を閉じると恋愛モンスターとの激闘がフラッシュバックして、隣にいるバニングさんに抱きつくことで心の平静を取り戻す事が割とよくある。
現在のカロリー莉子ちゃんは当時の彼女と同等だと、形式上未だにクロイツェルさんと呼ばれるが実はもうミンガイルさんちの嫁が慄く。
仁香さんは仁香さんで、目視によって体脂肪率の計測が可能というスポーティースキルを保持しているため、バルリテロリで何が起きたのかは知らないが「うちの生徒がまた暴飲暴食してる……」と頭を抱える。
ならば訂正しなければならない。
何が起きたかは知っていて、ブラックボックスの中身は「何食べて何飲んだの! 莉子ちゃん!!」だけだった。
アリナさんと仁香さんの危惧するものは違えど、最終的に到達する不安のゴールは同じ。
「この戦い。荒れるやもしれぬな」
「いえ。多分ですけど、もう荒れてます。莉子ちゃん、装備のショートパンツが裂けてましたから。探索員装備って滅多な事じゃ破損しないんですよ。……あれ? なんかキャミソール姿だった気もしてきました」
ミンスティラリアのパブリックビューイングにて放送されている芽衣ちゃま応援実況は日本本部のサーベイランスから映像を直通で配信するシステム。
不自然に莉子ちゃんが映っていないのは山根くんが仕事をしているから。
「いやー。いくらデータ取得って言っても、これは無理っすよ。自分、腰だけじゃなく全身がバラバラになっちゃうんで。フレームアウト推奨っす」と、サーベイランスを駆使して莉子ちゃんからなるべく距離を取っていた。
どうしても映り込むシーンはあるが、それはわずかな時間。
有識者にしか気取られない。
「仁香。莉子は得難き娘であると妾は思う。……そこで心配事がひとつ」
「太ったこと以上にですか?」
「う、うむ。……太ってもすぐ痩せるであろう、莉子は」
「くぅぅぅ! 痩せさせる苦労は分かりませんよね! 良いんです! 私が頑張りますから!!」
「人を殺めた事がないはずの莉子であるが。仮にその時が訪れたら、あの清らかな心の娘に耐えられるであろうか」
「あ。大丈夫じゃないでしょうか。だって、逆神くんが殺傷を気にしないので。莉子ちゃんの清らかな心は基本的に逆神くん色ですから。彼氏が、気にしないで! って言ったら。そっかぁ! えへへへへへへへへへへへへ!! って笑顔になって終わると思います」
「……仁香? そなた、莉子のモノマネのクオリティが高すぎるのでは?」と、アリナさんの心配事がどっかに行った。
ミンスティラリアは依然として平和そのもの。
よそで戦争してくれている時が最も平和という、あってはならないけれどもそれが真実という二律背反な国家。
◆◇◆◇◆◇◆◇
リャンちゃんがくっ付いているザールくんがバッツくんと、こっちはこっちで少し深刻な状況を察していた。
「バッツ様」
「照り焼きをどうぞ」
「了! リャン・リーピン! 頂きます!! お腹いっぱいですが!」
「え゛。リャンさん、ご無理はなさらずとも!」
「いえ! 旦那様の同僚の方がくださるお裾分け! 私はお腹がパンパンになっても頂戴します!!」
ひまわり系乙女の笑顔に救われるザールくん。
心が少し軽くなったので、重い話題もスッと出る。
「バニング様の
「私にはそのような精密な感知ができません!!」
バニングさんがなんか死にかけている事が判明。
ついさっき死にかけたのに。
よく考えるとアトミルカチームで
アリナさんはスキルが2種類しか使えない
バッツくんは照り焼き作ってる期間が長いのと、自分の得手不得手を把握しているため、苦手な事を無視して得意な分野を伸ばす方針。
結果として、ミンスティラリア残留組の中でザールくんだけが遠方の異世界で死にかけているであろう師の死期を悟ってしまう。
「ザールさん! あの……。やっぱり照り焼き、半分こしても良いですか? 私、ちんちくりんで食も細い方なので……。すみません!!」
「…………。いえ。では、半分こ致しましょう! 私はちょうど食べたいと思っていたところです!」
「良かったです!! これって私たち、相性が良いってヤツでしょうか!! えへへ!」
「ええ。きっとそうだと思います」
ザールくんは誓った。
「我が師、バニング様。万が一の時は私が生涯を賭してアリナ様とご子息をお守りいたします。現世に悔いは残させませんので……。どうぞ、道をお進みください」と。
続けて「多分ですが、アリナ様が身籠っておられた場合。バニング様。あなたの致死率が上がるかと愚考いたしますれば。私も家族を増やし、ミンガイル家の助けになる所存です」とも決意した。
「リャンさん」
「はい!!」
「あちらで仁香様にご教授願いましょう。本籍地について」
「了! そうですね! お引越ししなくちゃでした!! 仁香先輩は物知りですから、きっと私たちにも分かりやすく教えてくださいます!!」
仁香さんはどこに行っても仕事が増える宿命から逃れられないのならば、後輩カップルの世話を焼いているのが一番幸せなのかもしれない。
ミンスティラリアは引き続き、芽衣ちゃま隊を中心にバルリテロリの戦局をパブリックビューイングにて全土で応援していく。
一足早く平和が訪れている異世界である。
ゴリラのキメラは未だに
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