異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1138話 【芽衣が頑張るです(頑張ったです)・その5】たくさん創った短パン、役に立つ ~万物に無意味な事はないと知る~
第1138話 【芽衣が頑張るです(頑張ったです)・その5】たくさん創った短パン、役に立つ ~万物に無意味な事はないと知る~
莉子ちゃんがあられもねぇ姿で動きを停止させられた。
薄い本でよく見るシチュエーション。
だが、時間停止をキメたはずのサービスさんは「ふひひ。可愛いねぇ。動けないねぇ」とか言いながら舌なめずりをするでもなく、ただ無言で額から汗を数滴こぼしており、こんな神妙な表情は六駆くんと戦った時にも見せていなかった事実がだいたい全ての説明を省略してくれる。
「みみっ……」
「ふん。芽衣ちゃま。すぐに遠くへ逃げろ。俺の……俺のスキルが初めて……。破られるかもしれん。逆神を相手にした時も……あの男の智謀には……くっ……。確かに屈した。しかし……俺のスキルはヤツにも効いた。だが……逆神(嫁)には……!!」
「みみみみみみっ! サービスさんがなんか良くないです! 芽衣、詳しくないけど分かるです! これ、危険が危ないフラグです!! みみみみみみみっ!!」
莉子ちゃんに使ったのは『サービス・ジャック』であり、対象の時間をピンポイントで停止させるスキル。
氏は死の気配を感じながら自分以外の時間を停止する『サービス・タイム』をチョイスするべきだったと後悔するが、こちらは発現に時間がかかるため咄嗟に繰り出せるものではなかった。
「ふん。……俺は相対した瞬間に。……負けていたか」
あろうことか援軍の莉子ちゃんにサービスさんが負けそう。
「みっ……。……みみみっ。……み゛っ!! 莉子さんが小刻みにプルプルし始めてるです!! っていうかさっきまでお喋りしてたのに今は無言なのが怖いです! みみみみみみみっ!!」
「ふん。俺の時間停止を自力で解除するつもりらしい。凍った時の中で動く方法は唯一。壮絶な
クライマックスみたいな空気を出し始めたサービスさん。
でも、莉子ちゃんだって恥ずかしい恰好で時間停められてるので必死で
サービスさんがもう一度だけ言う。
「芽衣ちゃま……。逃げろ……」
「みっ! 嫌です! 芽衣! 服を莉子さんにあげるです!!」
「ダメだ。芽衣ちゃまのあられもない姿は世界を狂わせる」
「みみっ! 芽衣はそれでも! やるです!!」
クライマックスの気配であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
地上でそのクライマックスを見守るチンクエ。
「……良い。悪くない人生だった」
こっちもクライマックス。
莉子ちゃんに特攻して自爆する気満々である。
『電脳ラボ! 私は総参謀長などと分不相応な役職に就くべきではなかったと後悔している。現場を見ながら、打開策の1つも思いつかない愚物を嘲笑してくれて構わん! その上で頼む! バルリテロリを救う手立てはないか!?』
アルマゲドンの終盤みたいな空気だが、まだ攻城戦の最中であり、皇宮には喜三太陛下が仕上がっているかどうか分からない状態で鎮座されているし、オタマも六宇もクイントもいるし、突入した南雲隊だって。
みんな、頑張れ。
テレホマンの懇願を聞いた電脳ラボの職員たちからの返答はない。
もう避難したのだろうか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そんな電脳ラボでは。
「テレホマン様が泣いてんぞ」
「泣いてるって言うか、悲鳴だろ。あれ」
「みんなー。コーラ持って来たよー」
「とにかく情報出せ、情報! あのちびっ子、シャ地区でドンパチやってんだろ!」
「各地のテレホーダイのデータを集積中! むちゃくちゃな
逃げるでもなく悲観するでもなく絶望すらせず、ただ粛々と職務にあたっていた。
得難き職員の揃った電脳ラボ。
絶対に働きたい職場ではないが、自国に存在していたら税金使ってパーティーサイズのコーラを差し入れてあげるのは一向に構わないくらいに頑張っていた。
「ん? 頭の中に」
「貴官もか?」
「これ、アレだよな」
「Nテェテェさんの『インターネッツ』だ!」
職員たちの脳内に同じ情報が詳細に送られた。
莉子ちゃんがあられもねぇ姿で停止している、サービスシーンなのに恐怖を覚えるのは何故か分からない情報が。
「あの人……! 死んじまったのに……!! なんでだよ……!!」
「死んでも目の能力でオレたちを助けてくれるってのか!?」
「いなせじゃねぇかよ!!」
Nテェテェは皇宮の外壁から落下して、今は内側で死んだふりをしている。
つまり、爆心地になる予定の追手門からほど近い場所に転がっている。
死ぬ気だったが死ななかったので、今更死ぬのはちょっと嫌だ。
職員たちに視覚情報の共有を『インターネッツ』によって試みていた。
「分かったぞ!! アレだ! ちびっこ! 服忘れて恥ずかしいんだ!」
「……バカみたいな予測だが。あながち的外れでもないかもしれん。陛下も以前、加熱用のホタテを生でイカれた際に2日ほどトイレから出て来られず、あの時は凄まじい
「要するに、羞恥心で暴走してるってことですか?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。だが、我々が出せる結論としてはこれくらいしかない。テレホマン様に同期するぞ」
「今回は誰か代表を決めてからにしようぜ。あの人の四角い頭が吹っ飛ぶって。オレがやるわ。みんなは待ってて」
「え。ごめん、私もう同期してる」
「自分もやってますけど」
「……私も」
「コーラ持って来たよー」
電脳ラボからは精一杯の情報による援護射撃が行われた。
ほとんど全ラボメンによって同時に。
大きな火事を見かけると最寄りの消防署の通信センターに通報が殺到して消防車が山ほど駆けつけるヤツ、再び。
◆◇◆◇◆◇◆◇
奥座敷にいるテレホマンの本体が悲鳴を上げた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
オタマ以外のメンバー全員がビクッと身体を震わせる。
「なになになに!?」
「おいおい! テレホマン! お前、なんかキメてんのか!」
「あっぶねー。ワシ、
テレホマンが目を見開くと、すぐに動く。
その辺に散らばっている陛下が散々御創りあそばされた六宇のための短パン。
這いつくばってかき集めると、電脳戦士が
「失礼します! 緊急時にて、ご説明は事後報告とさせて頂きます!! 『
テレホマンが転移して行った。
「なんで短パンをかき集めて行ったん? テレホンは紳士だと思ってたのにさ」
「へへっ。六宇。男はみんな、紳士という名の野獣なんだぜ?」
「オタマ! なんで何も言ってくれんのや! はい、陛下って説明してええんやで!」
「はい。陛下。さっさとお仕上がりくださいませ」
まだ仕上がっておられませんでしたか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
再び城門前。
「チンクエ様ぁ!!」
転移して来たテレホマンが大量の短パンを持参した。
チンクエは短パン製造現場を見ていた記憶はあるものの、それが今の状況を打開できるとは考えられなかったので総参謀長に指示を仰ぐ。
「良い……。テレホマン。お前の言う通りにしよう。テレホマンは良い……。間違った事を間違っているとは言えないが、間違った事を少しでも良くしようと頑張れる男。それは良い……」
「恐縮です! チンクエ様!
チンクエは「歯に衣着せぬ物言いをし始めたテレホマンは良い……」と応じてから『
色とりどり、多種多様な短パンを掴んだ腕が上空へと伸びていく。
◆◇◆◇◆◇◆◇
莉子ちゃん、時間停止解除5秒前。
場合によっては解除された瞬間に爆発する。
「ぐーっははは!! 吾輩の役目ですな!! 芽衣殿! サービス殿!! 楽しゅうございましたぞ!! 吾輩にお任せくださいませ!!」
「トラ。お前は高みに立ちすぎる。どうしてあれを喰らって生きている。……ふん。また攻撃されているぞ」
ちょうどチンクエの腕が伸びて来ていた。
「みみみっ! 『太刀風』です!! みぃぃぃぃぃ!!」
チンクエの腕がスパッと切れる。
今回の兄者の腕は具現化スキルだったため、短パンを届ける目的を果たせばもう用はない。
「みっ!!! 敵さんが協力してくれてる……です? 莉子さん! 新しい服をゲットしたです!! これはパンツじゃないです! みっ!!」
「ふぇ!? ホント!?」
「ふん。普通にスキルが破られた。特に爆発すらせずに。異次元に立つか。逆神(嫁)。チュッチュチュッチュチュッチュ」
サービスさんは天を仰いだ。
変な色の空がそこにはあったという。
莉子ちゃん、早速短パンを受け取ってもぞもぞと穿く。
オレンジ色のヤツをチョイスした。
「んしょ……ふぁっ!! すごい!! これ! わたしのお尻にすっごいフィットするよ!! オーダーメイドみたい!! なんでだろ!? 良かったぁー! これで恥ずかしくないっ!!」
ダズモンガーくんが「莉子殿。上着は吾輩のエプロンで間に合わせてくだされ」と申し出るが「あ。大丈夫です。なんか裸エプロンみたいになっちゃうので」とそれを固辞。
莉子ちゃんの装備がパステルグリーンのキャミソールにオレンジの短パンへとアップグレードされる。
パイセンの部屋着かな。
地上に目をやると、もうそこにはチンクエとテレホマンの姿はなかった。
「みー。結果的に門番さん、いなくなってくれたです? ……さすが莉子さんです!! みみぃ!!」
「ほえ? わたし? ……じゃあ、わたしたちも中に入ろー! それで、この短パンの持ち主さんにね! 服を借りるの! 絶対にわたしと同じサイズだもん! 芽衣ちゃん、お着替え持ってきてないなら仕方ないよ!! 行くぞー! おー!!」
莉子ちゃんのマッチアップ相手が決まった気がした。
そんな瞬間。
攻城戦。
現世チームが制する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます