異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1136話 【芽衣が頑張るです・その3】木原芽衣Bランク探索員の極大スキル ~Q・ところで新たな敵の気配が近くにありますか? A・いいえ、それは味方です。~
第1136話 【芽衣が頑張るです・その3】木原芽衣Bランク探索員の極大スキル ~Q・ところで新たな敵の気配が近くにありますか? A・いいえ、それは味方です。~
城門では依然として激闘が繰り広げられていた。
「相性が良いのは本当にとても良い……。『
「み゛っ!! 目からビーム出たです!!」
目からビームが出るのはちょっともうスキルかどうか判断がつかない。
「ふん。トラ」
「かしこまりましてございまする!!」
「勘違いするな。下がっていろ。『
目から出たビームを切り払うサービスさん。
敵じゃなくなってから時間停止スキルばかり使っているが、この白髪練乳チュッチュは本来、時間停止スキルと研ぎ澄まされた基礎スキルを併用するのが得意な戦型。
「ぐあああああああああああああああああああああああ!!」
「ふん。1つ払い損なったか。敵もなかなか……悪くない」
ニィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。
サービスさんは単騎で真価を発揮して、団体戦だと半分くらいの価値になるのは既知の通り。
『
これはサービスさんの性格が影響している。
この練乳チュッチュは「己を高めるため」というドМな理由を原点にして加齢と若返りを繰り返す凄まじい苦痛の伴う荒行を何往復もした男。
ライアンさんも辻堂さんも1往復しかしていない事を考えると、志の性質はその辺に置いておくとして、精神力はちゃんと高みに立っている。
己が1番、他者は最下位がモットーなので、それはもうタッグマッチですら「この方を分析するのは骨が折れる」と嘆いていたライアンさんしか応じられない難物。
だが、待って欲しい。
今、この練乳チュッチュマンはダズモンガーくんに「下がっていろ」と言った。
あろうことか、ラッキー・サービス氏が他者を気遣ったのである。
「ぐああああああ……。このビームはかなり堪えまするぞ……。芽衣殿、お気を付けください。通常であれば貫通している威力でございまする」
「ふん。高みに立つトラ。お前は稀有なトラだ」
ダズモンガーくんの良い所は結構あるが、最たるものはその性格かもしれない。
理不尽に攻撃される事、数多。
ぐあった後で「さて。お料理いたしまするかな」と、攻撃を憎まず、人も憎まず。
この世界では古参の中の古参。
やさぐれていた頃の
以降、ルベルバック戦争に駆り出され、アトミルカとの戦いでは支援の先頭に立ち、ピース侵攻に際しては本国が空襲されて魔王城が消し飛びかけた。
にもかかわらず、それぞれの首謀者である阿久津浄汰、バニング・ミンガイル、そしてラッキー・サービス。
気付けば良好な関係どころか、常に敬う姿勢で接している。
サービスさんに関してはミンスティラリアにゴリラの群を放ったピースの首領。
つい1ヶ月前の事なのに、ノーサイドが早すぎやしないだろうか。
そんな心優しきエプロン装備モフモフ冬毛タイガーにサービスさんがなにやら友誼を抱き始めている。
仲良きことは美しき。
「みみみっ! ダズモンガーさんはカッコいいです! 頼りになるです! みぃー!!」
「ぐーっはは! そうでございまするか? 芽衣殿に褒められると照れまするな!!」
「トラ」
「いかがされましたかな? サービス殿」
「調子に乗るなよ」
「ええ……」
芽衣ちゃまが1番、トラは2番。
芽衣ちゃまを取られるくらいなら友情などいらぬ。
「みみみみっ! また来るです!! 今度はビームです? み゛ー!! 全然予測できないです!! みみみみみみみみみみみみみみみみっ!!」
芽衣ちゃんの鳴き声が増えると、
彼女は天賦の才に恵まれた訳ではないが、非凡なものを持っている。
それを持ち前の頑張り屋さんなみみみ精神で鍛え上げた結果、立派に一線級の使い手に成長したのである。
「みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみっ!!」
芽衣ちゃんの
新しい装備は緑の膝丈スカート。
当然、下にはパイセン印のスパッツを装備しているが、それでもスカートがぶわーってなるだけで男子的にはなんか言い表せないアレがナニする。
「トラ!!」
サービスさんが声を荒げた。
初めての事かも知れない。
「かしこまりましてございまする!! 持参して来たかいがありましたぞ!! 『
紙に
ダズモンガーくんがチラシを大量に持って来ていたのである。
それが芽衣ちゃんの周囲に布陣された。
そのフレンドリーファイアはトラですら殺すが。
大丈夫か。
「ふん。悪くない。のゅるょぬぇみぅ!! 『ピンポイント・サービス・ガーディアン・タイム』!!!」
「みっ!? 紙の矢が芽衣の周りで停まったです!!」
説明しよう。
『ピンポイント・サービス・ガーディアン・タイム』とは、飛んでる『
昔のバラエティで女の子が「生着替え!!」とか言われて、心許ないこと極まりないフィッティングルーム的な筒の中でお着替えをしていた時代があった。
あの筒が今、令和の時に復活したのだ。
芽衣ちゃん、別に生着替えしてないのに。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「良い……。よく分からんから良い……」
思念体でデータ収集中のテレホマンもこれには苦言を呈さざるを得ない。
『チンクエ様。よく分からんものを放置されるとまた腕が吹き飛ばされるかと』
「テレホマン。それもまた良い……。私の腕は吹き飛んでも生える。敵の
『……チンクエ様も再生スキルで
「テレホマンは賢くて良い……。兄者のラブコメの助けになってやってくれると良い……」
『いえ。今は敵部隊のデータを集める事に専念しております』
「正直なところも良い……」
チンクエは元より勝つ気がまったくないので、なんか知らんけどデカいスキル使ってくれるならウェルカム。
完全に待ちの姿勢で、さらに見に徹する。
「みみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみみっ!! 行くです!!」
芽衣ちゃん、
スカートがとてもぶわーってなっている。
「ふん。トラ。スキルを解除する」
「かしこまりましてございまする!! 『
『
陛下が現世で生きておられた頃は紙が貴重な時代だったので。
「良い……。なんか綺麗で良い……」
結果として、チンクエには「まったく弱々しい
スキル使いも聖闘士も初見の攻撃はだいたい喰らうのがマナー。
「みみみみぃ!! 『
『
それを出してすぐに自分の身体に重ねると、瞬間的だがスキルも倍へ進化する。
「み゛っ……。おじ様の合体を見て思い付いたのがとてもみみみです……。みぃ……」
「ふん。トラ。芽衣ちゃまのメンタルが悪い。対応しろ」
「かしこまりましてございまする!! 芽衣殿!! 吾輩、冬場は換毛期でございまする!! 尻尾は夏場よりもモフモフしてございますれば!!」
芽衣ちゃま、ダズモンガーくんの尻尾にタッチ。
とてもフカフカしていたらしい。
「みみみみみみぃぃぃぃ!! 芽衣はクララ先輩リスペクトにするです! 『
説明しよう。
芽衣ちゃんの最も嫌いな大人はもちろん木原久光監察官。
では、最も強い大人は。
椎名クララパイセンなのである。
大学に入って大学に通わない理外の発想。
呼べばすぐに来てくれるフットワークの軽さ。
それなのに大学に行かないためならば大地に根を張る腰の重さ。
「学費払って大学に行かないとか意味が分からなくてすごいです」と、芽衣ちゃまはなんだか尊敬していた。
早くこの憧れを止めなければ、芽衣ちゃま大学生ニートの未来がやって来るかもしれない。
そんな飲んだくれどら猫と芽衣ちゃんは出会った頃からズッ友。
友情パワーは強い。
キン肉マンが言ってた。
「……ぐぅぅ。これはなかなか良い……」
『チンクエ様ぁ!! やっぱり腕が吹き飛んでおられますが!?』
芽衣ちゃまの一撃、兄者ガチ勢を穿つ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、ちょっと近くの空。
「ほえー。なんだか大変なことになってるよ……。でもでも! このどさくさに紛れて! 芽衣ちゃんに予備の服を借りられる!! はっ! じゃあ、もっと大変なことになれー!! おー!!」
セリフが非行少女のそれである。
太ももから苺色の悪夢を噴射して、空飛ぶ乙女が接近中。
もう
流れは追いはぎ系乙女にあるのか。
爆炎渦巻く戦場まではあとわずか。
一体この乙女はナニ坂ナニ子ちゃんなのか。
きっと心強い援軍であることは間違いない。
間違いないという断定調が既にフラグであることは広く知られているし、広く使用されている。
常識や定説に抗いたい。
そんな気構えをいつも持ちたい。
誰だか分からないけどきっと可愛い乙女がついに戦線復帰する時はもうすぐ。
あと数十秒ほど先の未来である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます