第1130話 【皇宮の門番・その2】求む。メドローアを反射された時の正しい対処法。 ~メドローアをもう1発撃つしかない~

 バルリテロリ皇宮の追手門へと戻って参りました。


 現在、六駆くんの『雄鹿角大極突ディアルーン・ディバル』が城門に向かってぶっ放され、きっちり反射されて現世チームに襲い掛かっているところ。

 今回は祖父の必殺スキルをリスペクト。

 売りは尖った煌気オーラ角を具現化する性質上、放出タイプのスキルよりも防御が困難であり不意打ちされたら対応に苦慮する点。


 それをテレホマンと電脳ラボに対策されていた結果、特にスキルも使われずに反射された。


「あっ! うわぁー!!」

「ほら出た!! もうね、逆神くんの言う、あっ! が想定外ですねって意味! で! 次にうわぁって言ったら、大変なことになったなぁって意味!! 最後にどうせ笑うんだよ、この子!!」



「うふふふふふふふふふふふふふふ!! 僕、また何かやっちゃいましてね!!」

「ほらご覧なさい!! 私、頑張って防壁張るけど絶対に防げない!! 誰かー!! 極大スキル撃って相殺してください!! あ。バニングさんが1番近いですね?」


 バニング・ミンガイル氏は思った。

 「南雲殿。六駆の毒素を弱めた感じな発言の回数が増えて来たな」と。



 命を賭けて味方を守るなら任せとけ。

 こちとら何十年とアリナ・クロイツェルを守ってきたんじゃ、舐めんなよ。

 そんな感じで死にかけるまでがお馴染み、罪を背負って生きる男。

 ミンガイルさんちの旦那さん。


「ふっ。しかし考えようだ。ここで煌気オーラ供給器官を暴走させてあれを相殺しておけば……。まあ、しばらく死ぬかもしれんが。次に生き返ったら妻の膝の上。そう悪くもない勘定……!! ぬぅぅん!!」


 バニングさんが煌気オーラ爆発バースト

 やっと治った利き手にそれを集約させて、拳を握りしめる。


「ふっ。……慣れたものだ。皆! 先に逝く!!」


 バニングさんの十八番が登場するのか。

 そうはさせねぇと背後から矢が飛んできた。


「うにゃー!! バニングさん!! 新しい煌気オーラだぞなー!!」

「ぽこ。瑠香にゃんのおっぱい揉んでゲットした煌気オーラをバタコさんっぽく投げるのはいささか腹が立ちます。瑠香にゃん、憤慨の感情をゲットしました」


 先ほどライアンさんの手を取ったクララパイセンが瑠香にゃんの胸にそれをアテンド。

 なんか柔らかいと分析したライアンさん。

 ちょっとだけ煌気オーラが回復した。


 回転するどら猫脳。


「瑠香にゃん、瑠香にゃん!」

「瑠香にゃんは返答を拒否します」


「さては瑠香にゃん! 自分の意思とは関係なく、おっぱいタッチされると煌気オーラがお漏らしするぞな?」

「煽りモード。違います。やーい。ぽこの頭、ぽーこぽーこ」


 そこに参戦したボクっ子。


「ふんすです!! 穴ちゃん回収してたら出遅れそうになりました! 危なかったです! ボク、煌気オーラ総量がハナクソなので! 使った穴ちゃんは拾っておかないと次に出す量減っちゃうんです!」

「瑠香にゃんは警告します。ボクマスター。余計な事は言わないでください」


「ボクが察するにですね! マスター認定されている命令権を保持したクララ先輩が瑠香にゃん先輩おっぱいに干渉する事で瑠香にゃん先輩煌気オーラを取り出せるのではないかと思います!!」

「憤慨モード。このボク野郎。瑠香にゃん、黙れって言ったのに」


 パイセンのほんのり分析スキルが発動した。


「にゃるほどにゃー。つまりだぞな? あたしが瑠香にゃんのおっぱいを適量揉んで? それを矢に変換して味方を後ろから射貫けば? ひょっとして回復役になって安全地帯確保できるんとちゃいますかにゃー?」

「人工知能に異常発生。おっぱいを適量とは」


「瑠香にゃん! あたしはマスターだぞな! みんなのピンチ!! ……分かってくれるよにゃ? 瑠香にゃん……?」

「ぽこ。いい顔をしながら手をわさわさしつつ近寄って来ないでください。瑠香にゃんウイングを発動。…………? 動けません。ステータスが更新されました。『これマスター権限発動されとるから瑠香にゃんに人権なくなるヤツ』を獲得。辱めを受ける以外の選択肢、存在せず。瑠香にゃんは戦争が嫌いです」


 こうしておっぱいを適量揉んだパイセン。

 瑠香にゃんは放っておくと無限動力炉が煌気オーラを生成するので、いざという時のために一定値の煌気オーラは満たしておきたい。


 おっぱいの事なら任せとけ。

 無駄にでけぇ脂肪をつけていないクララパイセン。


 きっちり適量揉みしだいて煌気オーラをゲット。

 さらにこのどら猫は器用なので、煌気オーラの変換くらいは朝ねこまんまめし前。


「にゃはー! 『瑠香にゃんアロー』だぞなー!!」

「……瑠香にゃんはモバイルバッテリーではありません」

「元気出してください! 瑠香にゃん先輩!! とりあえず今のシーン、撮ったりました!! ふんすっ!!」


 猫コンビ+ボクっ子のファインプレーによって、バニングさんに煌気オーラが上乗せされた。


「……ぬかったか。これでは極大スキルどころか、究極スキル規模の発現が可能。……なにより瑠香にゃんのおっぱいの余力が私の煌気オーラ供給器官の破壊よりも大きい事が哀しい。おっぱいとは……偉大なのですな。アリナ様……」


 空を見上げるミンガイルさんちの旦那さん。

 この戦争が終わったら、おっぱいをもう少し尊ぼうと思った。


「ぬぅぅぅん!! 『一迅の隼豪拳ブラスト・フェリーレ』!!!」


 バニングさんの究極スキルが六駆くんの極大スキルを相殺した。

 氏は自分の拳を確認する。


「恐ろしい事が起きた。ぷらんぷらんになっていない……」

「うわぁ! バニングさん、すごいや!! 僕、かなりガチで撃ったんですよ!! そんな事ができるならもっと早く教えてくださいよ!! これで戦いが楽になるぞ!! うふふふふふ!!」


 攻城戦は始まったばかりだが、もう新しい回復方法とバニングさんが死にかけなくても究極スキルを放てるようになった。

 色々と出してしまった場合、この世界の仕組みを加味すると次に起きる事態は。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 行方不明になったと現場には勝手に判断されているサーベイランス。

 皇宮の外で待機中であった。


「まん丸のメカは山根さんが動かしよるんかいねぇ! さぁぁぁぁぁぁ!!」

『うっす。みつ子さん。さすがっすね。サーベイランスに飛んできた砲弾は片手で吹き飛ばしてくれながらお喋り余裕とか。いやー。逆神くんのご家族は皆さん底知れないっすねー。助かります』


 肉弾餓狼砲撃戦が続く現場でサーベイランスは待っていた。

 ほんの少し前、ミンスティラリア魔王城から本部に連絡があったのである。


 『こちらは後方司令官代理を拝命しました。青山仁香です。装備についての報告書への記載をお許し頂けませんか。芽衣ちゃんがバルリテロリへと向かいました。彼女には本部への伝達は無用と言われましたが、指揮権を委譲されましたので。青山Aランクの独断でお伝えします。バルリテロリにて芽衣ちゃんのサポート願います。あと、装備の記載欄をなくす事は本当にできませんか? 以上です』と、世話焼きお姉さんかつ、芽衣ちゃまファンクラブ1桁ナンバー会員かつ、白ビキニの仁香さんが仕事を済ませていた。


 芽衣ちゃんの出現ポイントは『太った男の転移術ポートマンジャンプ』の特性上、皇宮の奥座敷。

 皇帝陛下の御前になってしまう。



 芽衣ちゃまをいきなりクライマックスへと叩き込む事は是とされなかった。

 ナニかの意思による運命への介入があった模様。



 連絡を受けた山根オペレーターはすぐに動く。

 とりあえず南雲さんのサポートを放棄。


「南雲さんの周りにはヤバい人が集まってるっすからね。自分には自分のやれる事を、やれる場所でって事っすよ」


 処罰を恐れずに臨機応変な対応が取れる部下はなかなか稀有な存在。

 これは「南雲さんなら大丈夫っすよ」という副官の考えと「まあ山根くんの判断なら仕方ないか」と言うであろう上官による、強い信頼関係の為せる業。


 一言だけでも「ちょっと行くっすね」と伝達してあげればと思わないでもないが、このやり方で南雲監察官室はやって来たのでまあ良しとしよう。


『では! みつ子さん! 四郎さん! お願いするっす!!』


 みつ子ばあちゃんは現在、煌気オーラが消失している。

 四郎じいちゃんは煌気オーラが全回復しているが、もう高次元の戦いについて行けないと自己分析が完了済み。


 つまり、四郎じいちゃんの煌気オーラが余剰電力みたいに浮いている。

 買ってくれる電力会社がないのなら、現場で活用しなければ。


「ほっほっほ。みつ子や。愛しとりますぞ」

「お父さん!! そねぇな歯の浮くような事、どこで覚えたんかねぇ!! あたしら2人とも入れ歯にならんかったもんねぇ! 歯が浮きまくったおかげかねぇ!! さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 四郎じいちゃんの煌気オーラが塊になってみつ子ばあちゃんの眼前に出現。

 それを『みつ子コンバット・愛殺あいさつ』で追手門に向かってぶん殴り飛ばした。


『オッケーっす。自分たちオペレーターにも確認できないっすけど、四郎さんの煌気オーラが一気に増幅して爆発しそうな様子はキャッチできたっす。これが敵さんの能力っすね?』

「そうみたいじゃねぇ!! なんかねぇ! 殺意の置き忘れがある思うちょったんよ!!」


 テレホマンが遺して逝った『超過料金オーバーペイ』の空間。

 忘れた訳ではなく「地雷として残しておけば、太子妃様が何かの間違いで、気の迷いで、喰らってくださるかもしれない」と置きトラップをしておいたのだが、きっちりと逆用される。


 逆神煌気オーラを目印に飛ぶ『太った男の転移術ポートマンジャンプ』の目標はバルリテロリで最も強い逆神喜三太陛下の元へ。

 ただ、道すがら似た感じの逆神煌気オーラが急に爆発バーストしたら、寄り道するかもしれない。


 六駆くんには頼んでも「ええ……。最終決戦の前に僕がそれを?」とか普通に難色を示すだろうから打診しなかった。


 空間が歪んだ。

 城門の前で大爆発が起きた近辺の空間が。


 この作戦は誰にも伝えられていないので、現場で戦う突入部隊は背後から味方に撃たれた形となった。

 フレンドリーファイアである。


 友達なんだし、1回くらいはミスに目を瞑っても良いじゃないと考えるのはいけないことだろうか。

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