第1121話 【現世チームVS皇宮・その2】太陽が本当にいっぱい ~ルビ挿入する作業もいっぱい~

 バルリテロリの基本砲撃兵器は量産型『太陽がいっぱいアラン・ドロン』である。

 かつて喜三太陛下が発電事業にご興味を持たれた際、太陽光発電システムのパネルとかよりも先に人工的な太陽を量産あそばされた結果、臣民たちから「暑い!!」と苦情が殺到し「ええ……。じゃあヤメるね」と計画を一瞬で凍結。


 この柔軟さは独裁国家にしか出せない特色。

 議会制民主主義だと計画を凍結するかどうかの議論に8年かかって、凍結するための法令を立案する分科会とかなんかそんなヤツが組織されるまで半年かかって、計画を凍結し始めるのに1年かかって、計画が凍結されるのはさらに5年後くらい。


 その間に政権が変わったりすると計画の凍結を凍結してもう1度ホカホカに温め直すのに5年とかかかる。


 バルリテロリの話に戻ろう。

 計画は凍結したが、どんどこ創った『太陽がいっぱいアラン・ドロン』が文字通りいっぱい。

 どうしたものかと考えるまでもなく専用の保管庫をいくつか陛下が御創りあそばされ、バルリテロリの山岳地帯に設置して『太陽がいっぱいアラン・ドロン』をいっぱい詰め込んで放置しておいた。


 インフラをミスったら放置するのはどこも一緒。

 とある惑星の近所にある道路は工事が始まって20年くらい工事し続けている。



 ジオフロント造ってんのかな。



 そんな『太陽がいっぱいアラン・ドロン』を最初に再利用したのは八鬼衆が1人、哀愁のムリポ。

 彼は八鬼衆の中でもかなり善戦しており、六駆くんがいて、竜人トリオもいたスカレグラーナに当てられなければ勝っていたかもしれない。

 幻竜人ジェロードと冥竜人ナポルジュロをほぼ殺しているし、帝竜人バルナルド様はせっかくコンパクトになったのに古龍に戻る事を強いられ、それでようやく勝ったという八鬼衆による一斉侵攻の中でも屈指の好カードであった。


 そんなムリポも今ではスカレグラーナで「これはもうムリポ」と投降しているが、彼が太陽を投げまくった事がテレホマンに解析されて「これは使える」と判断された結果、実力がそれほどなくとも使用可能なミニ『太陽がいっぱいアラン・ドロン』を開発し、現世侵攻に際して何度か使用している。


 今、この世界でアラン・ドロンの圧が凄い。


 テレホマンが指示を出したという事は、アットホームな職場ばかりのバルリテロリでも屈指の和気あいあいとした参謀本部電脳ラボが開発に携わっているという事。

 Nテェテェが指示を出す。


「貴官ら。我々に最後の指令が下された。これより、電脳ラボは放棄。一斉に『太陽がいっぱいアラン・ドロン』の砲撃へと移行する」


 職員たちが応じる。


「何言ってんすか、Nテェテェさん! 私たちがここ放棄したら終わるでしょ!! それ、誰の指示っすか!?」

「テレホマン!? あの人、優しすぎんだよ!! 部下を慮り過ぎ!! 皇国のために死ね! くらい言えよ!! オレらだって家族がいるんだよ!! 参謀本部放棄なんかしたら勝っても最悪じゃん!!」


「マジでそういうとこあるよな、あの人。だから呼び捨てされるんだよ。全部の責任を1人で背負い込むからさ」

「な。それはある。人として尊敬してるけど、上官としてはな。我らだって遊びで電脳ラボに勤めてるんじゃないんだからな」


 職員たちが急にボイコットを始める。


「テレホマン様が何を言おうと、我々、命令無視しますよ」

「最期まで情報システムは殺しませんから。文句あるなら、戦後に処罰しろってんですよ。テレホマン様が!! オレらを直々に! こっちは本望だわ!!」


「あの人、どうせ自分が残って管制システムまで担当するつもりでしょう。私たちを舐めとるんですか」

「お人好しに戦争は向かないんですよ」


 意外と慕われていたテレホマン。

 Nテェテェが熱い気持ちを受け止めた。



「貴官らの訴え、よく分かった!! 私、Nテェテェが責任を取ろう!!」

「あんたじゃ責任取れねぇよ! Nテェテェさん!! そんなの良いから指示出して!!」


 「おめぇの首ひとつじゃ事は納められねぇから!!」と言われた時の管理職の気持ちを500文字以内で答えなさい。

 完璧に答えられたら一瞬で出世しそうな難問である。



「よし。職員は半数が『太陽がいっぱいアラン・ドロン』の制御システムへ! 残りは引き続き敵の情報取得とデータ分析!! 私は外に出て、直接見た情報を貴官らに送る!! この眼を使う日が来るとは……!! 『インターネッツ』の力を貴官ら、役立ててくれよ!!」


 そう言うとNテェテェが飛び出して行った。



 職員たちが雄々しきチーフを見送って少しだけ感想を口にする。

 もちろん、作業をこなしながら。


「Nテェテェさんってスキル使いだっけ?」

「そうだよ。貴官、知らんのか? あと『インターネッツ』は眼の能力な。視覚情報をデータ化して共有できる能力だ。こういう時に便利なんだよ」


「……同期でよくね?」

「ヤメろよ! Nテェテェさんだぞ!!」


 『インターネッツ』は同期よりも優れている。

 同期はその発信元の人間の主観による情報が流れて来るため、上流がポンコツだと一瞬で下流までダメな情報が鉄砲水。最後は海洋汚染される。


 対してNテェテェの『インターネッツ』は視覚情報をデータ化して共有するため、電脳ラボで使用されている演算システムと同等のものが瞬時に脳内へと送られてくる。

 最近だと芽衣ちゃま殿下の発育を暴いた事で物議をかもしたスカウティングスキャナーを開発したのもNテェテェ。


 Nテェテェは演算能力に長けているのだ。

 できないのは操縦。


 モビルスーツも、部下たちも。上手く扱えない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな訳で、アタック・オン・みつ子の周囲に太陽が降って来た。


「瑠香にゃんさん! 早く色々とお出しになられるんですわよ!!」

「はい。ご主人マスター。瑠香にゃんランスです。ここにはプリンセスマスターのために千歳飴を入れていましたが、全部プリンセスマスターに食べられた事で本来の太ももの仕事をしています。50本は出せます」


 瑠香にゃんの太ももから産出される瑠香にゃんランス。

 煌気オーラ構築物のため、ぶん投げても次がすぐに出て来るわんこそばスタイル。


「とても素敵ですわよ!! 参りますわ!! 久坂流!! 『葬投そうとう』!!」

「にゃー。それ、六駆くんのお父さんがやってた『柄流つかながれ』と同じじゃないかと……思ったけど! にゃんか気のせいだったぞな!!」


 ほとんど同じである。

 逆神流剣術の『柄流つかながれ』は煌気オーラ刀が出せなくなった際に柄だけ発現してぶん投げる投擲スキル。


 『葬投そうとう』は槍ごとぶん投げる投擲スキル。

 敵を葬り去るという意味と、外したらこっちが葬られるという2つの意味で色々と投げる、流派を興した久坂さんも「こがいなもん使う状況になったら逃げるけどのぉ。ひょっひょっひょ」と自著に記している。


 今回は弾数が1ではなく50もあるので、小鳩さんが槍使いから槍投げ選手にジョブチェンジ。

 元から煌気オーラの塊な槍を、煌気オーラを付与して投げつける。


 捨て身技が捨て身にならないというのはかなり強力であり、実際太陽を1つ貫いても瑠香にゃんランスは健在。

 『銀華ぎんか』の操作で煌気オーラコントロールも鍛えてある小鳩さんが2枚抜き、3枚抜きで太陽を貫いていく。


「ふっ。私も働かねば、後で何を言われるか分からん、か。ぬぅん! 『魔斧ベルテ』!!」


 バニングさんは左足が痺れているので、膝をついた状態で発現した『魔斧ベルテ』を投擲。

 こちらは元から使っていたスキルなので少々コンディションが悪くても影響はなく、バニングさん本来の戦型である「斧を具現化してなんやかんや」にも当てはまるため、連射も可能。


「……瑠香にゃんランスに威力が負けているのは非常に辛い」

「バニング様。瑠香にゃんは申し上げます。瑠香にゃんボディは01番時代の記録などハナクソみたいな進化を遂げています。ステータス『元気出して』を付与。バニング様は自前の鍛錬によるスキルですが、瑠香にゃんは与えられた兵器です」



「瑠香にゃん! そんな事ないぞな!! 瑠香にゃんは兵器だとしても! あたしは瑠香にゃんと一緒にいるにゃー!!」

「端的モード。ヤメろ、ポコ野郎。セカイ系の空気をこの展開で出されると、瑠香にゃんには選択肢がなくなります。せめてぽこが兵器の役やれ。瑠香にゃんが選ぶ」



 猫たちがじゃれながら、小鳩さんとバニングさんの本来は迎撃任務なんか向いてねぇコンビが太陽とかいう意味不明な砲撃に対して拮抗した状態を作り出す。

 しかし、それも続かない。


「たぁぁ! あ゛! 避けますわよ! クララさん!」

「に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛!! 小鳩さんが避けたら太陽が地面に落ちて来るぞなぁ!!」


「妙だな。私と小鳩にだけ太陽が集中し始めたぞ」

「瑠香にゃんも肯定します。ステータス『太陽が集中するってなんやねん』を獲得。これはグランドマスターにお届けします」


 ステータスが届いた六駆くん、すぐに謎を解く。


「これはアレだ。どこかで砲撃手が指示出してるヤツ。探してその人を叩いとかないと、こっちのばあちゃん戦車が壊される!! ノア!!」


 いつの間にか師匠の隣に移動していた、出番ゲット業務再開傾向のボクっ子。


「ふんすです! これは興奮する任務が来てしまいました!! つまり、ボクの穴ちゃんで探せば良い訳ですね!!」

「ノアは頭いいなぁ!! 隠居したあとも時々、ノアと組んでどこかダンジョンでも荒らしに行こうか! うふふふふふ!!」


「うあああー。それは非公式なオファーでお願いします、逆神先輩!!」


 ノアちゃんが『ホール』を大量に発現して、ばら撒いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃、どっかその辺。


「ふぇぇ……。なんか! 浮気の気配を感じたよぉ!!」


 リコバイクが速度を上げていた。

 もうノアちゃんかどら猫辺りが六駆くんにチューしたら良いのに。


 さらに禁術『六駆×喜三太おっさんずラブ』という裏メニューもございます。

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