第1120話 【現世チームVS皇宮・その1】「ワシの創った喜三太ランドが……。リメイクされとるで……」 ~陛下の息子がやりました~

 ついに相対した、ついに皇宮まで到達した、ここまで長かったような気がするものの、喜三太陛下の下知によって一斉侵攻が始まってから4日の出来事であり、現世チームがバルリテロリに強襲上陸作戦を敢行してからはだいたい1時間と少しくらいの出来事である。


 時間の流れを正しく観測する方法はどこか。

 アインシュタインパイセンの降霊が待たれる。


 お客様の中に恐山のイタコさんがいらっしゃいましたら、お声がけください。

 1口寄せ10000円までなら余裕で出します。


 接敵である。

 会敵かもしれない。


 開戦なのは間違いない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 皇宮サイドは結構な驚きをもってアタック・オン・みつ子の登場を受け止めており、その責任の所在は正すまでもなく、また独裁国家がゆえに責任の所在は明らかでも追及する訳にもいかず、テレホマンが次の策について思案していた。


「ねー。あれってさー。キサンタが創った、喜三太ランドの1つじゃん?」



 ひ孫には皇帝陛下へ責任の追及ができた模様。

 さすが、バルリテロリ皇宮に残った皇位継承権を保持している唯一の皇族。


 クイント・チンクエ兄弟は皇族離脱しているので、継承権もなくなっている。



「……マジやんけ。あ゛! ちょっと! ちょまぁ!! オタマ! その玉杓子でオタマするのはおたんま!! なんつってー!! ワシ上手い事言っおぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ」


 オタマが皇帝陛下をお諫めした。

 これは皇宮秘書官に課せられた使命なので、仮にそれで陛下に罰せられたとしても本望なのである。


「はい。陛下。お許しを得て申し上げます」

「むっちゃ痛い……。クイントの乳鷲掴みパンチの10倍痛い……。早く仕上げにゃ、身内に新しくなった若い肉体削られとるで、ワシ……」


「はい。陛下。陛下の御創りあそばされた喜三太クソランドがどうして皇帝に牙を剥いているのでしょうか。私は浅慮なただの新卒女子ですので、分かりかねます。どうかこの愚かなオタマにお教えくださいませ。偉大なる叡智をもってすれば容易いはずです」

「よし。分かった。まずはその玉杓子を床に置いてくれ。話はそれからだ。クソって言わんといて」


 オタマが「はい。陛下」と武器を床に置いた。

 『24』でよく見たシーンである。


「多分な、ワシの息子がやってんな、あれ。四郎って言うんだけどさ。いやー。じじいになっててビビったわー! つっても、ワシ孕ませるだけ孕ませて転生周回者リピーター始めたから! 会うの初めてなんだけど!! やっぱ息子なだけあるわー! 煌気オーラ練るのうめぇー!! だから、まあ? 不運な偶然ってヤツやんな? オタマ、分かってくれた?」

「はい。陛下。失礼いたします」



「えっ。なんで振りかぶるん? あー! 分かったー! ワシが若くなってイケメン感増したから、抱きしめるんやな! 知っとるで! これ、おねショタ言うヤツやんけおぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 オタマは近接格闘タイプなので、得物がなくともグーパンでイケる。



「チンクエぇ!」

「兄者?」


「今よぉ。じじいにオタマがパンチした時、スカートすっげぇ捲れてた!! あの短い、なんつーの? パツパツのスカート! いいな!!」

「……兄者も良い。ちなみにあれはタイトスカートと言う」


「チンクエは物知りだなぁ!!」

「兄者に褒められるのは良い……。兄者」


「なんだ?」

「日頃から兄者は、いきなり裸だと緊張すっからよぉ! 最初は服着たままがいいよな!! と言っているが、タイトスカートは裂けたりするので気を付けると良い……」


 クイントが飛んできた玉杓子を腹部に被弾。

 「ぶべらぁ」と血を吐いて倒れた。



 皇宮でもこいつら誰と戦っとるんや状態が発生中。

 さすがは六駆くんの曾祖父。同じ属性をお持ちである。



「ああ……。頭痛い。よし! ワシが指示を出す!! オタマは皇宮に突入された場合に備えて色々準備! クイントとチンクエは敵が入って来そうになったり、なんか良い感じの隙を見つけたら背後から襲って数減らしたら戻って来い!! テレホマンは良い作戦考えて! 六宇ちゃんは睨まないの!! ワシは仕上げながら短パンを創り出す!! いいな!!」


 ついに喜三太陛下が自ら指揮をお執りになられれる。

 テレホマンがご忠言申し上げた。


「陛下。1つよろしいでしょうか」

「ええで」


「では、7つよろしいでしょうか」

「ごめんやで。1つに絞って?」


「はっ。先ほどから降っていた火矢がピタリと止みました。好機は既に到来している可能性がございます。反転攻勢はいかがなさいますか? 陛下の下知によると、攻勢に打って出る者が1人もおりませんでしたので、具申させて頂きましてございます」

「………………」


「電脳ラボに『太陽がいっぱいアラン・ドロン』をあるだけ撃たせましてよろしゅうございますか」

「それや!!」


 テレホマンが「貴官ら。全部撃ったらもう退避して構わん」と同期で指示を飛ばした。

 参謀本部がなくなったらいよいよ終焉の気配を身近に感じるが、果たして。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 アタック・オン・みつ子の陰に移動済みの現世チーム。


「おおー! これは映えますね!! 月刊探索員の特別号にカラーページで掲載しましょう!! スマホちゃんが吠えてます! ふんすっ!!」

「ノアさん……。余力が随分とおありのようですけれど……」


「小鳩先輩! ボクは単騎じゃななにもデキない後輩です!! 小鳩先輩も現状、単騎じゃ特にデキる事ないので、ボクたちお揃いです!!」

「ぐぬぬですわよ! クララさん! 瑠香にゃんさん!! 遠距離攻撃するんですわよ!!」


 小鳩さんが指揮官みたいになっていた。


 六駆くんは未だに『時間超越陣オクロック』で治療中。

 もう治療なんか放っておいて、単騎特攻すれば良いのになどという素人はこの階層にいないだろう。


 南雲さんがいない状況で単騎特攻して、うっかり判断をミスった場合に予測される被害総額と機会損失は計り知れず、そうなると六駆くんは借りてきた猫。

 猫コンビが猫トリオになる。


 部隊指揮官を復活させなければならないというのが六駆くんの至上命題。

 こんな時にこそ輝く、困ったら『苺光閃いちごこうせん』で敵の要塞を半壊させてくれる莉子ちゃんがいないのも痛恨。


 彼女の超弩級砲は1度撃つだけで初見殺しの性能ゆえ甚大な被害を与えられる点も大きいが、それで敵が現存をしていたとしても第2射が怖すぎてしばらく動きが鈍くなるのは必定。

 敵に初撃で泣きたくなるくらいのダメージを与え、恐怖のデバフも付与できる莉子ちゃんがいない。



 まだ国道でチャリ漕いでる。

 チャリで来たはいつになるのか。



 中距離から遠距離を得意とするライアン・ゲイブラム氏が勝手に解説席へと異動をキメて、ピンチの時には真っ先に死にそうになりながらも一定の戦果を挙げてくれるバニング・ミンガイル氏が最初からほぼ死んでいる状況。

 動けるのはチーム莉子のメンバーのみとなるが、この子たちは遠距離攻撃に長けている乙女が少ない。


「ぽこ。呼ばれてます」

「うにゃー。あたしのぽこ矢でどんどこ飛んで来る太陽さんにどうやって対応すりゃいいんだぞなー? 答えを教えてくれたらやるぞなー」


「ステータス『こいつ推理小説を解説ページから読むタイプか』を獲得。いらないのであげます」

「そうは言うけどにゃー。瑠香にゃんこそだぞな? スーパー瑠香にゃん砲撃っちゃえばいいぞなー。莉子ちゃんのデストロイ光線ほどじゃないにしても、そこそこ殺戮可能な兵器だにゃー?」


「ぽこがこれまで散々瑠香にゃんは兵器じゃないって言ってくれていたのに、ここに来て兵器扱いして来ました。瑠香にゃん、傷ついたのでおうちに帰ります」

「にゃはー! 冗談だぞなー! マイケルジョーダンだぞなー!!」


「ぽこのしょうもない冗談のおかげで瑠香にゃんも告白できます。ぽこにおっぱい揉み散らかされたせいで、瑠香にゃん砲を撃てるだけの煌気オーラが足りません」

「……あたしのせいかにゃー?」



「ぽこ。ご主人マスターが怖いので、この話はヤメましょう」

「賛成だにゃー」


 猫コンビ+ボクッ子が最適解なのに、3人ともやる気がない哀しみ。



 この構図こそ、あるべきチーム莉子の姿。

 小鳩さんが1人で頑張っていた頃の、最もバランスに優れていたフォーメーションである。


「もう! 本当にもうですわよ!! 瑠香にゃんさん!! 何か武器出してくださいまし!! 数があって、投げられるヤツですわ!!」

「はい。ご主人マスター。兵装出すくらいならおっぱい出せと命令してくるぽこの1万倍優しいです。煌気オーラ槍なら瑠香にゃんの右の太ももからいっぱい出せます。ぽこにおっぱい揉まれない限りは、と付言しますが」


「クララさん!」

「にゃー!!」


「ステイですわ!!」

「うにゃー!! 得意だにゃー!!」


 小鳩さんは久坂流槍術の免許皆伝。

 さらにあっくんとのデートついでにラブラブトレーニングも重ねているので、遠距離攻撃に対しても知識は増えている。



 なんか飛んで来るならよぉ。こっちもなんか飛ばしゃ良いんだよなぁ。

 あっくんの言葉がたわわな胸に去来する。



「バニングさん!! ……もう治ってますわね?」

「左足の感覚がないのだが」


「じゃあ、利き手は治ってますわね!? 左足が取れたくらい、誤差ですわ!!」

「いや、感覚がないだけで足はくっ付いているのだが」


「だったらもう完全体ですわよ! 斧出してくださいまし! おーの!! 投げますわよ!!」

「ふっ。どこに行っても女には勝てん、か」


 砲門のついていないアタック・オン・みつ子を見ながら「あれに莉子さん乗せたら完璧なのにと思うのは……あまりにもアレですわよね……」と、せっかく来てくれた壁にこれ以上を求める事は良しとしない小鳩さん。


 原始的な砲撃戦が始まる。


 敵は小さいけれども、太陽。


 原始から存在しているでぇベテラン。

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