第1119話 【アタック・オン・みつ子、爆走す・その3】六駆や、新しい拠点じゃて!! ~我ら、アンパンマン号の偉大さを知る~

 クイント宮墜落現場では。


「もう、まったく本当にもうですわよ!! やぁっ! たぁ!! はっ! こんなのスキルじゃないですわ! どうして太陽が飛んで来るんですの!?」

「ふっ。小鳩。文句を言いながら槍捌きだけでその太陽をいなすお前も実に強くなったな……」


「バニングさんはまだ回復しないんですの!? わたくしだけで飛んで来る攻撃に対応するのって絶対に間違ってますわ!! うちの猫たち、どこ行きましたの!?」

「ふっ。あっちでノアと何か相談しているようだが、私にはどうにもできん」


 久しぶりに登場した量産型『太陽がいっぱいアラン・ドロン』が降り注いでいた。


 そらそうよ、である。

 もう皇宮のすぐそこ、徒歩5分圏内に敵が集まっているのだから無視する道理を知りたいし、とりあえず攻撃しとけば足は止まるし、上手く行けば誰か死ぬかもしれない。


 攻撃しないはずがない。


 たまに玉杓子おたまも飛んできているが、アレは誰の何なのか。

 まったく分からない。


 玉杓子とは、我々が一般的にオタマと呼んでいる、味噌汁からカレーのルーまでなんでも掬える万能調理器具。

 ビジネスホテルの朝食バイキングなどでお世話になりっぱなしである。


「ではでは、ふんすでお願いします!」

「ボクマスターの提案を瑠香にゃんは拝受します」

「あたしは嫌だにゃー!! 2人でやってぞなー!!」


 ノアちゃんが動きを活発化させ始めており、どうやら「先輩たちが傷ついてきたので、ボクにフォーカスが当たる判定ゆるゆるになってますね!!」と歴史に名を残すチャンスを捕捉した模様。

 とりあえずここのところ出番が多かった猫コンビと業務提携。


 これで取れ高が一気に上がる。


「クララ先輩! ボクの知ってるクララ先輩はもっと出番に貪欲だったはずです!! 探索員でもオシャレしなきゃだよ!! とか言ってた時代のクララ先輩ファンを裏切るんですか!!」

「そんなもんとっくにおらんぞなー。あの頃はあたしも若かったにゃー。なにせ大学生だったもんにゃー」


「瑠香にゃんは悔しいです。こんなしょうもない事に発声機能を使いたくないのに……。言わなければならないという使命感が……。ステータス『お前ずっと大学生やんけ。学年は1しか増えとらんやんけ。歳はなんぼ増えたんや』が出てしまいました。これも皇宮に投げ込みます」


 ノアちゃんの計画はシンプル。


 まず、ノアちゃんが皇宮の上空に『ホール』を発現します。ふんす。

 そこに瑠香にゃん先輩が溜めているおっぱい動力炉から、クララ先輩が煌気オーラをゲットして矢をどんどこ撃ち込みます。ふんす。


 穴ちゃんの性質に気付かれて反撃されたとしても、穴ちゃんの真ん前に立っているのはクララ先輩なので安全マージンはゲットしてますし、上手く行くとクララ先輩のチアコス装備の上の方がピリッとやられてふんすするかもしれません。ふんす。



 自分の手は最小限に汚して、最大限の興奮をゲットするのです。ふんすっ。



「ノア! 急いでくれる!? 小鳩さんがなんか怖いんだよ!! バニングさんはあとちょっとで治るけど、ナグモさんはね! ほら、『時間超越陣オクロック』だからさ! 南雲さんにまで戻るから!! 正直ね!! いつものオシャレな二刀流ですらないし!! ねっ!!」


 バニングさんが回復したとて氏は小鳩さんと同じく近接タイプ、ミドルレンジまでが得意距離。

 敵の砲撃に対しての迎撃任務には不向き。

 それでも一定の仕事はこなせるだろうが戦力は温存しておきたいと考えている、10億の賞金首を狙う最強の男。


 もうとっくにお金ドーピングがキマって、クレバー戦闘脳が起動済み。


「とおー!! 『大量のいっぱい穴インフィニティ・ホール』!!」

「ボクマスターは煌気オーラ総量だけ見るとぽこの足元にも及ばないにも関わらず、どうして穴をポコポコ空けられるのか。瑠香にゃんは疑問です。ぽこ。こっちに。ぽこぽこ」


「に゛ゃ゛ぁ゛ー!! 瑠香にゃんに羽交い絞めにされとるぞなー!! あ゛。すっごい煌気オーラが溢れて来るにゃー。柔らか柔らかだにゃー」

「これは『瑠香にゃんあててんのよ』です。不本意ながら、瑠香にゃんの兵装では奇襲攻撃に不向きですので、ぽこに煌気オーラを分けてあげます」


「あ゛。これ知っとるぞな……。スキル使わないと煌気オーラが増え過ぎて、最終的にあたしのおっぱいがパーンってなるヤツだにゃー。ノアちゃん、そこまで計算済みなのかにゃ……。うにゃー。『フレイムアロー』ぞなー」

「ステータス『こいつ基礎スキル使いおった』を獲得。ぽこ。なぜベストを尽くさないのか」


 どら猫が「どうせノアちゃんの穴でわんさか増えるなら何撃ったって一緒だぞなー」と鳴きながら、皇宮に火矢を放つ。


 本能寺かな。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その皇宮では。


「陛下。お許しを得て申し上げます。いい加減になさってください」

「せやかて!! 六宇ちゃんの短パンが!!」


「陛下。私は玉杓子おたまを具現化して投擲しておりますが。陛下はその間にナニをされておいでですか?」

「え゛。FANZAで六宇ちゃんの気に入る短パン探してました……。待って! 今は違うの見てるから!!」


「六宇様」

「だってー!! オタマぁー!! 敵の前にクイントがもうあたし見てんだよ!? 嫌じゃん!!」


「クソガキ……!! オレを名前で呼んでくれた……? クソガキとはもう呼べねぇな。おめぇは立派な女だ! 六宇! もうちょいこっち来て!!」

「ほらぁー!! 絶対に無理!!」


 チンクエ辺りが攻撃の一番槍を務めるのかと思いきや、意外な事に担当しているのはテレホマンとオタマの初期皇宮傍仕えコンビ。

 テレホマンが量産型『太陽がいっぱいアラン・ドロン』を電脳ラボの職員に命じて発射させつつ、オタマは『弑逆玉杓子キル・オタマ』を具現化して振りかぶっては投げる。


 オタマは近接格闘タイプだが、彼女の母親を思い出して頂きたい。

 シャモジ母さんである。



 強くないはずがなかった。



「オタマさんや? その物騒なスキルの名前はなぁに? 弑逆って付いてんだけど。そしてそれをキルって読むの? ワシ、もしかして危ない?」

「はい。陛下」


「…………あれ!? いつもはその後にセリフが続くやんか!?」

「はい。陛下。私もバカではないのです。はい。陛下。はい。とお答えすると、一瞬でお間抜けさんチームに入れられてしまいます」


「皇帝に対して肯定しとるだけやった!! 六宇ちゃん! これは!?」

「おー! 可愛い!! ……これナイトウェアじゃん!! スカートからはみ出る!!」


「ええやんか!!」

「隙間がすごい!! キックしたら隙間チラする!!」


「おいおいおいおい! 六宇ぅ!! おめぇ! 蹴り主体なのかよ!? よし、オレと組むか!! ……知ってっか? 4親等以上離れてりゃ、結婚……できんだぜ? でぇじょうぶだ。乳は小せぇがオレが育てる!!」

「キサンター。あたしの敵がすっごい近くにいるんだけどー」


 やんややんやしている皇宮。

 人員が増えて、戦局も一時的に有利になって、ちょっと心にゆとりが生まれていた。


「……なに!? Nテェテェ!! すぐ対応しろ!!」

「テレホマンがそういう反応する時ってさ。何かが起きるで!! じゃなくて、何かが起きたんや!! なんだわ。どうしたん?」



「皇宮の上空に時空の歪が発生しましてございます! そして火矢が放たれております!!」

「火矢!? 同期前のワシらでもそこまで原始的な兵器使ってなかったのに!? 戦国時代やんけ!! すぐに上空に向けて凍結スキル撃たせろ!!」


 ここでノアちゃんの策が冴える。



「陛下。それをやりますと、『太陽がいっぱいアラン・ドロン』による攻撃の手が緩みますが。敵に間隙を突かれる恐れがございまして」

「平気、平気! 敵は拠点も失くしとるんやぞ! ちょっと攻撃ヤメたとこでどうにもならんて!!」


 チンクエが「この展開は……。慢心、環境の違い……。良い……」と呟いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ドドドドドドドドドと爆音と轟音を友に、頼れるじいちゃんが無免許運転キメてイカした戦車と突っ込んで来たのは、ちょうど喜三太陛下がフラグをお立てあそばされたタイミング。


「六駆や! 待たせてすまん! 新しい拠点じゃて!!」

「うわぁ! じいちゃん、すごいや!! 僕、何も頼んでないのに!! どうしたの、それ!! ばあちゃんの名前書いてあるじゃん! ちょっと趣味は悪いね!!」



 自分がやった事は比較的早く忘れて、人がやった事にとりあえず難癖をつける。

 おっさんが使う108の必殺技の1つである。



「四郎先輩!! お待ちしてました!! とってもふんすな見た目でステキです!! ボク、撮影するので! 穴ちゃんはこれ以上増えません! あとはお任せしますね! 瑠香にゃん先輩!!」


 ノアちゃんのジャーナリズムに火が付いたので、トリックスターが休業へ。

 「お昼の部と夜の部の間に長めのお休みを取るのがボクのスタイルです!! ランチとディナーでお出しするメニューは変わりません!!」と、危険が危ない発言で締めくくる。


 お酒出したりとか色々準備があるんです。

 仕込みもしなきゃならんのです。


「ほっほっほ。アタック・オン・みつ子の外壁はちょっとやそっとじゃ壊れませんぞ!! 皆様方! どうぞ盾として使ってご利用くださいませじゃて!!」

「にゃはー!! おじいちゃん好きだにゃー!!」


「このポコ野郎。現状、攻撃の要なバタコさんポジションぽこますたぁが真っ先にアンパンマン号に戻るな。ポコ野郎。瑠香にゃんも入れてください」


 アンパンマン号を企画開発製造、そして操縦、砲撃、パン焼きまでほぼワンオペでこなすジャムのおじき。

 かの御仁はとてもすごい。


 なにせパン作ってる工房に犬が参加しているのである。

 食品衛生法なんか知るか。チーズは綺麗なんじゃ。


 かつてチーズはバイキンマンの手下で、故あって謀反、以降アンパンマン軍に参戦した。

 こちら、本日の豆でございます。

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