第1017話 【現場に来ましたみみみみ・その2】芽衣ちゃま軍団さらに拡大! ~この時空の1分は体感時間だとだいたい10分になります~

 その頃の孫六ランド。

 依然として暗闇を航行中だが、山根くんのサーベイランスがやって来た事で情報通信網を確立するに至り、視界も真っ暗、お先も知れず状態からは解消されていた。


『南雲さん。ナグモさん。こちら山根っす』

「……君、久しぶりにスカレグラーナ訛りを使い分けて来たな? 絶対に良くない知らせだろ。コーヒーを置こう。バニングさんが目の前で雑巾構えてくれてるんだよ」


『なんすか、ナグモさん。つれないっすねー。自分、腰やっちまった重傷者っすよ? それなのに頑張ってナビしてるってのに、冷たいっすねー。上官が冷たいと報告もおざなりになっちゃいますけど、いいんすね?』

「なによ。どうせ敵の見積もりミスってたっすー。とか、そういうのでしょ? 悪いけどね、山根くん。こっちには逆神くんが戻ってるんだよ! おばあ様もいる! 四郎さんもいらっしゃる! 小坂くんもいちゃってる! でも椎名くんと瑠香にゃんくんと塚地くんがいる!! 盤石なんだよ!! ふっふっふっふっふ!」


 山根くんが「あ。そっすか?」と軽い感じで報告を続けた。



『南極海で浮島が落下寸前なんすよ。大陸消えるかもっす。それで、緊急対応策として芽衣さんがアリナ・クロイツェルさんとラッキー・サービス氏を連れてストウェアに向かったらしいっす。アトミルカ関連の事後処理担当はナグモさんで、ピースの重要容疑者たちの管理責任は逆神くんなんで、特務探索員の監督責任者は南雲さんっすね。以上っす』

「やぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁねぇぇぇぇぇぇぇ!! 頬っぺたビンタされると思って身構えてるとこにお腹殴るのは酷いでしょうよぉぉ!? なにそれぇ!! 私、現世に戻ったら何から手を付けたら良いの!? もう帰りたくなくなって来た!! そうだ! 家族でミンスティラリアに移民する!!」


 南雲さんが余りのストレスに耐えかねて、久しぶりの「やぁぁぁぁぁまぁぁぁぁぁねぇぇぇぇぇぇぇ」を発現してくれました。



 「ややっ! 南雲先生の一大事ですとな!?」と、佳純さんよりずっと短いツインテールの先端をアンテナのようにぴこんと立てたボクッ子がこちら。


「これはふんすの気配です! ふんすっ!! 日本本部の穴ちゃんを引き上げさせて!! とおおー!! あ! サービス先輩が本当に南極にいます! 煌気オーラを掴んで! とおおおー!! 『野次馬穴ミノガシハイシン』!! これはボクも賑やか士として参加しなければ!! 皆さん! ボクが待機中の緊張した空間にエンターテインメントをお届けします! ふんすすすー!!」


 賑やか士ってなんだろう。

 南雲さんは消えゆく意識の中、そんな事を考えた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ノアちゃん通信士、実は南極海も何度か穴で覗いているので発現もスムーズ。

 ひっそりと空間を歪ませる。


「み゛っ! サービスさん! 穴を塞ぐです!!」

「ふん。すまんな、ノアちゃん。ストウェアにノアちゃんの席はない」


 もうパパラッチされるのにも慣れた芽衣ちゃま、秒で気付く。


『うあああー!! ちょまっ、ちょまーです! 芽衣先輩!! これはアレです! ボクが覗いて記録の生き証人となる事で! 芽衣先輩の正当性を主張するための措置です!! あ゛! 芽衣先輩が装備の上にコート羽織ってます! これはイケません! 長いヤツなのはもっと良くないです! 芽衣先輩はショートパンツから見える太ももしかセクスィー要素がないので! サービスお願いします!!』



「み゛っ! サービスさん! 呼ばれたです!!」

「ふん。呼ばれたか。『不用品イランモン・サービス・ショット』!!」


 サービスさん、ずっと管で捕まえ続けていた西野ハットリを穴に向かってぶん投げた。



 ぐにゃっと穴が大きくなってハットリを吸い取った後で抗議の声が響く。


『うあー!! なんてことをするんですかー!! ほらー!! 今飛んできたロリっ子大好きな兄弟の多分弟さんの方! もう逆神先輩たちに捕まりましたよ!! ひどいことします! 興奮しますね! ふんすっ!!』


 なんか捕虜が本国行きの拠点に転送された。

 これは事故なのか。意味はあるのか。


『さささっ! 芽衣先輩! 『発破紅蓮拳ダイナマイトレッド』使ってくーださい!! あれは足をググっと踏ん張るヤツですから! 芽衣先輩の太ももを前から見てもよし! 後ろから見てもよし!!』

「み゛っ! アリナさん、助けて欲しいです!!」


「すまない、ノア。これは致し方ないのだ。そなたにも実に多くの借りがあるが。……『絶花エンデ』!!」


 アリナさんも攻撃に参加。

 やはりサービスさんとアリナさんのスキルは一線を画すものであり、発現までの予備動作もなければスキル名を告げた次の瞬間には効果が及んでいる。


 ただ、十四男ランドを無視してノアちゃん穴を相手にしている事が少しばかり問題ではある。


『うああああー!! アリナ先輩まで!! 今のスキルがこっちに入っちゃいましたよ! みつ子先輩が『万物流転の構え』でどうにかしてくれました!! ……あれ。芽衣先輩? そちらの跪いておられる先輩方はニューカマーですね?』

「み゛ー。バレてしまったです。もう隠すの無理です。サービスさん。アリナさん。ノアさんは放置でおkです。みみみみみみっ」


 芽衣ちゃまの御前にはバルリテロリでは忠誠を誓うポーズとしてお馴染み、膝をつき祈るように首を垂れるシャモジ母さんたちがいた。


「芽衣様……! 我らバルリテロリの民をお許しくださると仰せですか!? わたくしたちは貴女様の国へ侵攻したにも関わらず!?」

「みー。芽衣に権限はないし、難しい事はよく分かんないです。ただ、ペンギンさんもアザラシさんも芽衣は大好きです。クジラさんも好きです。みんなで協力しないと大変なことになるです。今は罪とか罰とかじゃないです。あと、一緒に頑張ったらご飯が魔王城にあるから、とりあえず来て欲しいです! 芽衣は子供だから、多分間違ったことしても許されるです! みーみーみー!! あと芽衣の国じゃないです!!!」


 シャモジ母さんが顔を伏せたまま心からの御礼を申し上げた。


「芽衣様!! 我ら十四男ランドの乗員!! この身を貴女様にお預けいたします!! そして! そして皇帝陛下がお隠れあそばされた時は! どうか芽衣様! 貴女様のお力で! バルリテロリの皇位に!! 皇国の行く末をお導きください!!」


 芽衣ちゃまがいよいよ権力、武力、名声の集約を完了させつつあった。

 みみみと鳴く可愛い生き物はにっこり笑ってから答えた。



「みっ! 嫌です!!」

「ははっ! ではヤメましょう! 皆さん! 次にふざけた事を芽衣様に申し上げましたら! わたくしが殺しますよ!!」


 シャモジ母さんとガンコ、東野家が芽衣ちゃま軍団の傘下に加わりました。

 十四男は考え中の様子。



 川端さんが控えめに近寄ってきて敬礼をする。


「芽衣ちゃ……いや、芽衣様」

「み゛っ。川端さん! 困るです! 芽衣、特別扱いは嫌です!!」


「そ、そうか。では、芽衣ちゃん」


 男爵。

 特別扱いしないと言う事は、等しくおっぱいについて言及する事ではありませんよ。



 そこを間違えると死にます。



「浮島がもう目と鼻の先まで迫っているのだが。力を借りても良いだろうか。ストウェアには建造以来ずっと縁があってだな。私としても壊れてしまうのは惜しい。可能ならば浮島を消失させて南極もストウェアも守りたい」

「みみみっ! 立派です!! 芽衣、川端さんみたいにマジメな人は尊敬するです!!」


 川端さん、セーフ。


「どうもー。ナディア・ルクレールですー。はじめましてー」

「みっ! 木原芽衣Bランク探索員です! エヴァさん以来のクララ先輩クラスの人です!! これは芽衣も頑張って敬礼するです!! みぃ!!」


「わー。どもどもですー。それでですねー。先ほどから芽衣さんのお連れしたフレンズさんたちのご活躍を見てましてー。これならイケるかなーって言う作戦をですねー。わたしがちょーっぴり思い付いたんですけどー」

「みみっ! 胸のサイズとやる気が比例してる人だったです! 芽衣、なんだか失礼な事を考えてしまったです! 反省するです! み゛み゛み゛っ」


 多分それは合っています。


 今はやる気を出す必要性に駆られているため、覚醒ナディアさん。

 彼女はスキル使いとしても一線級だが、軍略家としての素質もある。


 上級監察官はその国の探索員協会において最高意思決定機関であるからして、いざという時に正しい判断を素早く下せる能力は不可欠。

 出してないだけで持っているナディアさん。


 おっぱい出したついでにそっちもポロリする。


「ストウェアにですねー。主砲があるんですよー。これ、まだ生きてるのでー。先ほどの美人さんの使っておられた抹消スキルっぽいヤツをチャージして大きな砲弾を造ってー。それって我らがボスだったサービスさんにも協力してもらえば可能だと思うんですよー」


 ナディアさんの案はこうなる。


 第一段階。

 アリナさんが抹消スキルを弾にするため『絶花エンデ』を発現。


 第二段階。

 抹消スキルはその場に留めるのが難しい性質を、サービスさんの時間停止スキルで解消。

 『絶花エンデ』を『ピンポイント・サービス・タイム』で停止させて発現を続け巨大化させる。


 第三段階。

 グレートビッグボインバズーカに装填して、十四男ランドにぶち込む。


 第四段階。

 十四男ランドが消滅して、南極海の平和が保たれる。

 ストウェアも健在。

 ついでに十四男ランドがいきなり消えるというアンタッチャブルに各国の探索員協会が「なんやこれ」と戸惑っている隙を見てミンスティラリアへ脱出するチームはドロンする。


 実にスムージー。

 これにはグリーンスムージーがちょっぴり苦手な芽衣ちゃまもにっこり。


「みっ。ナディアさんに質問があるです!」

「わー。名前で呼んでもらえたー。胸がドキドキですねー。なんでしょー?」



「みみっ。グレートビッグボインバズーカってなんです?」

「あー。川端さーん」

「え゛っ!? あ゛!? いや、これは! ……誤解だ!!」


 川端さんのおっぱいロードが一瞬で陰った。



 ゴールまでの道筋は光を放つ。

 あとは準備をして撃つだけである。


 十四男ランド墜落まであと2分。(ナメック星算)

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