異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第1009話 【ストウェアチームの集大成・その3】一気に人が増えた介護ルーム ~介護ルームでの戦闘は本来禁じられております~
第1009話 【ストウェアチームの集大成・その3】一気に人が増えた介護ルーム ~介護ルームでの戦闘は本来禁じられております~
辻堂さんがド派手に「かかってこいや」と刀を抜く。
続けて
伝説のハゲもさすがに
仕合大好き辻堂さんだが、今回はブラフ。
注意を引き付けて戦場を少しでも自軍の優位なフィールドに整えるのである。
「とおー。『
「ついにあたしのアイデンティティが……。ナディアさ? あんた修業したとか、パワーアップイベントあったとかじゃないのにさ? なに? その器用さと何でもできるけどやって来なかった的な強者ムーブ。あ。口動かしてるだけだと怒られる。『
ナディアさんとライラさんがせっせと、こっそりと、芝を生い茂らせていた。
8割がナディアさんの仕事。
実はスキルの模倣まで可能という努力しない天才タイプだった事が判明。
彼女は20代後半でフランスの退役できないばあちゃん、ミリエネ・クレルドー上級監察官から次期上級監察官への就任を打診された逸材。
ただ、やる気が決定的に欠如していたため、それを固辞。
クレルドー上級監察官はめげずに「そこを何とか」と説得を続けたところ、あろうことか「もー。仕事しなくて良いって誘われてますしー。わたし、ピースに入りますからー」と出奔をキメられる。
当時のクレルドー上級監察官は既に御年75歳。
さぞかし「これはやっちまいましたね」と絶望しただろう。
現在は御年79歳。
ようやくナディアさんから「あのー。怒られないなら戻ってもいいですよー?」と自堕落な返事が来て、それを叱責するでもなく「お帰りなさい!! 週休4日! いえ、5日の用意があります!!」とピースに所属している間もこっそり残していた彼女の籍を何事もなかったかのように復旧させた。
道理や仁義をひん曲げるくらいの価値がナディア・ルクレールにはあると判断されたのである。
「ふぃぃぃー。疲れて来ましたねー。あとはライラさんやっといてくれますかー?」
「無理だわ!! 芝敷くまではできるけど!! ここからあんた!
「えっ。ライラさん……。中身は結構なばばあなのに?」
「見た目は22じゃい!! ばばあなら知恵袋標準装備してると思うなよ! 知恵袋にだって積載制限はあんの!!」
かなりの劣勢に立たされているストウェア無国籍軍。
減った
ザールくんの持って来た【
水戸くんに使ってしまったのは痛恨だが、なくなったものを「あいつがよー。マジでよー」といつまでも嘆いているのは建設的じゃない。
戦いが終わった後で向こう10年くらい言い続けよう。
そんな最短ルートを直進できる者は少なく、それができるのであれば圧倒的な力をもって敵を殲滅した方が速いので回りくどい戦法を選ぶ者はいなかった。
が、生来のやる気なし乙女。
ナディア・ルクレールさん。
どら猫と時々対比されるが、クララパイセンは現世でダメなだけ。
ダンジョン、異世界と探索するにつれて賢くなったりカリスマ性をゲットしたりするため、彼女は現世から追い出しておけば頑張れる猫。
ナディアさんは何もしなくて良いと言われたら一生何もしない乙女。
のんびり何もしないのが好きなのである。
お金に満たされた六駆くんと話が合いそう。
そのために定期的な収入は必要だし、世話を焼いてくれる人が傍にいればより捗る。
手を伸ばせばどっちも掴めるところにいるのならば、ちょっとくらい頑張って手を伸ばすのもやぶさかではなかった。
「良い感じに芝が生えましたねー。ではー。ちょっぴり頑張ってー!! とおー!! 『
デカい
そこで
その場にいる全員が影響を受けるが、潤沢な
「任務完了ですねー」
「えっ。あんた戦わないの!?」
「ちょっと休憩したら頑張りますよー」
「力のある者が働かないって世界の損失だわ。ピースの選民思想がなんかまた正しい気もして来るからヤメてよ……」
介護ルームの戦局がまた少し動いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ガンコさん!! やられました!! 術者をすぐに殺しなさい!!」
シャモジ母さんは
すぐにガンコへ物騒な指示を飛ばす。
「かしこまりました! シャモジ様!! どの者が使っているのか私には分かりません!」
「黙りなさい! わたくしにも分かりません!!」
戦場で気配を消す能力は身に付けようと思って習得できるものではない。
ある程度は物にできるだろうが、生まれ持った資質が大きい。
「わー。怖いこと言ってるー」
「堂々としてんな。ナディア……」
2人して草に埋まっているので、これでは
草スキルは
「かっかっか! やるじゃねぇか! ダンク!!」
続けて辻堂さんが情報攪乱に打って出る。
天井で「あの世にFANZAあるかな……」と絶望していたダンク・ポートマンに向かって「おめぇさん! 意外と多芸じゃねぇのよ!!」と大声で称える。
シャモジ母さんの鋭い視線もそちらへ向けられた。
「おのれ……太った害虫!! まだこのような小賢しいスキルを! 殺します!!」
「なんでぇぇぇぇ!? 吾輩、転移スキル特化とかいうこの場で最も役立たずなのに!? ああああ!! これ、吾輩って囮にされてるぅ!?」
囮にされていた。
転移スキル使いは治癒スキル使いほどではないが、かなり数が少ない。
六駆くんや喜三太陛下クラスの使い手になれば片手間で発現できるが、そこまで傑出した実力者の場合は転移スキルを使うまでもなく敵を葬り去れる。
よって、転移スキル使いは何かしらもう1つくらいトリッキーなスキルを覚えている場合が多く、そんな事情からダンクくんは「あいつ。姑息なことばっかりしやがって。殺そう」と
「ガンコさん!! 30秒で結構です! あの剣士を足止めなさい!!」
「イエス、マム!!」
シャモジ母さんの両手に杓文字が生成された。
何やら先が尖っており、貫かれたら絶命しそうにも見える。
杓文字とは。
「姫島ぁ!! 助けてぇ!!」
「くくっ。助けたい気持ちはあるが、某の得物は辻堂に譲ったゆえ。……素手で剣士に何ができようか!!」
十四男ランドに突入してから何もしていない2人が今わの際を迎えていた。
「なんと! この十四男・剣、皇国の矛となるべく刃を放つつもりであったが!! 出遅れたわ!!」
ついでに十四男・剣もスキル発現。
もうダンクくんの命脈は断たれた。
姫島さんはラインのちょうど真上くらいなので、線審の胸先三寸で下手すると死ぬ。
「間に合ったか!!」
どんどん入室して来るので、誰がどうやって何のために来たのかの説明が追い付かない。
ここは介護ルームです。
静かにしてください。
「よし! ナディアさん! ご無事だな! ライラさんも!! つぁ!! 『
駆けつけ乳液。
お肌の保湿を終えたのは十四男・拳との戦いであまり良いところがなかった川端一真おっぱい男爵。
しかし彼はおっぱいに忠誠を誓う騎士でもある。
守るべき者を視界に捉えれば強くなる。
草スキル発現中だろうとおっぱいがあれば心で視えるのが爵位持ち。
「つぁぁぁぁ!! 『
「次から次へと! 不敬極まりないですね!! 若い方の十四男様!!」
「良かろう! 心得た!! 『
川端さんの横に走る真空脚と
手数が少しばかり足りていない。
これではダンクくんにシャモジ母さんの杓文字が届く。
やったか。
「そうかい。信介、そいつはな。仁香の照れ隠しってもんよ。男が一旗あげる前に女が手柄を取っちまったらおめぇさん、どう思うね? 仁香は優しいだろ? つまり、おめぇさんがもっとデカい金星挙げれば。後は分かるな?」
「辻堂さん……! あなたはやはり人生の師ですね!! 全て理解しました!!」
ハゲが全裸の童貞クソ野郎に何か入れ知恵していた。
水戸くんが動く。
「仁香すわぁん! 自分はここで男になります! そして! あなたと!! ウェディングドレスと白無垢はどっちが似合うかな!! 『
糸を高速で拳に巻き付けグローブのように構築。
それを思い切り振りぬくと、グローブだけが飛んでいく。
なら
「……皇敵どもめ!! 皆殺しですよ!!」
「はははっ! お年を召した方が興奮すると体に良くないですよ! 自分、あなたの健康に興味ないですけど!!」
「あなたから殺しましょう。神聖なる十四男様の御所にあろうことか全裸で。その粗末なものを消し炭にして差し上げます!!」
水戸くんは仁香さんから離してデコイとして運用するのが最も効率的。
こちら、本日の豆でございます。
じっくりとご覧になってからお召し上がりください。
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