第1007話 【ストウェアチームの集大成・その1】ストウェアから増援出動するってよ! ~野郎とババアしかいないので水着乙女が急遽参戦しました~

 ストウェアの甲板に動きアリ。


「ぐああああああああ!!」

「おお! トラの!! 生き返ったんか! 助かるのぉー。もうワシ、こやつら移動せるのもしんどくて楠木の辺りは放置しようか迷いよったんじゃわい」


「ぐああああゔぉえゔぉ……!! なにゆえ吾輩の顔の前に大量の魚が!?」

「量が足りんから意識戻らんのかと思うて、ナディアちゃんにようけ獲ってもろうたんじゃ。食うてええで?」


「久坂殿。吾輩、生魚を食べると高確率でお腹を壊しまする。加熱したいのですが、厨房をお借りしてもよろしいか?」

「お主、トラの割にデリケートなんじゃのぉ? 刺身食えんのか。気の毒にのぉ。今の時期、ブリとか美味いで。ワシもようけ食べるとなんか胃が悪うなるけど。五十五がブリしゃぶにしてくれるんじゃけど、あれが美味うてのぉ。腹減ってきたのぉ」


 ダズモンガーくんが生臭い異形の化け物に追いかけられる悪夢から目を覚ますと、鼻先に深海魚が山積みになっていた。

 「わあ! 吾輩、お魚大好きでございまする!!」みたいな復活するのかと思ったら、生臭さに耐えかねるという残酷な気付でおかえりなさいをキメる。



 シミリート技師に売られた感のあるダズモンガーくん。

 ひとまず復活。



 さらにミンスティラリア側の門から禍々しい人型の兵器。

 ミンスティラリア製プロトタイプアンドロイド7号。型式・みつコップBBAが送り込まれた。


「バンバンの。お主、機械はイケる口か?」

「うぇーい! スマホが限界でうぇーい!!」


「若いのにだらしがないのぉ。よっしゃ。ワシがちぃとやってみるか! リモコンで動く言う話じゃったもんのぉ! プレステ派のワシじゃが、switchみたいなもんじゃろ! やった事ないけどのぉ!! シャモジの除去始めるかい!!」


 なお、みつコップBBAは『万物流転の構え』の煌気オーラ吸収に特化したマスィーン。

 これを使用するという事は、周囲の煌気オーラをガンガン吸い込むという事。


 ストウェアの動力も大半が煌気オーラなので要塞機能が失われて文字通りの人工島へとダウングレードする。

 久坂さんがみつコップBBAを起動させた瞬間。


「ひー。寒いー。ライラさん、寒いんですけどー。どうにかしてくださいよー」

「あたしも寒いんだけど!! あ! 草生やそう!! 『草の蓑虫おハーブモフモフ』!!」


「あー。ズルいー。ズルいー。ひどいなー。ライラさん、フランスに連れて行くのヤメようかなー。チラッ。チラッ」

「うん。ナディアにも使ってあげたいけどさ。これ、難点があるの。煌気オーラがガンガン吸われていくよ! 草に!! 草生えるって事は養分の煌気オーラが必要だから!!」



「もー。ライラさんがバカだったー。久坂さーん。これってどのくらいで終わりますかー?」

「ワシにもサッパリ分からんのぉ。そもそもこりゃあ動きよるんか? もうちぃとシャモジに近づけてみるか。あ。しもうた。ボタン強う押しすぎた。……海に落ちたわ」


 防水加工されているみつコップBBAは無事だが、久坂さんの操縦ではかなりの時間がかかりそうな気配であった。



「うぇーい。久坂さん。私の感触だとこのシャモジ、そろそろ爆発しそうです」

「早いのぉ。そがいな事言うても、急いては事を仕損じる言うての? 急いちょらんのに仕損じよる事を踏まえると、急かされても仕事は進まんで? あ。まーた海に落ちたわい。こりゃ操作性に難ありじゃのぉ。当たり判定おかしいで。マイコントローラーじゃないと調子出んのぉ」


 甲板では楠木さんとワチエくんが未だに死にかけている。

 バンバンくんはぶっ刺さったシャモジの煌気オーラを削って爆発の遅延対策に勤しみ、久坂さんは死んでる2人の救命活動をしながらみつコップBBAのコントロールに苦戦。


 ダズモンガーくんは厨房で「やはり吾輩はここが落ち着きまするな!!」と深海魚の内臓処理に忙しい。


 ナディアさんが包括的な判断を下した。


「わー。これ、爆発するんじゃないですかねー」


 爆発しそうであった。

 ゆえに、彼女は動く。


「わたし、ちょっと浮島の援軍に立候補しますねー。寒いですしー。ひょっとしたら浮島の中って空調きいてるかもですしー。川端さんが心配ですしー? んー。ただ、服着たら川端さんが投身自殺しちゃうかもなんですよねー」


 ナディアさんの中で川端さんの優先順位が結構高い件。

 頑張って捕虜からストウェアおっぱい提督まで上り詰めて粉骨砕身おっぱいに尽くして来たこれまでの努力が実を結びつつあった。


 本人の知らないところで。


「どうしようかなー。ホントは長袖長ズボン希望なんですけどー。川端さんが死んじゃうからなー。んんー。下は短パン穿きますかー。水着のヒモをちょっと見せとけば納得してくれそうですねー」

「ナディアさ? 川端はそんな事で死なないんじゃない?」


「ライラさんがすぐバカになるー。思い出してくださいよー。川端さんと過ごした日々をー。わたしの水着が見られなくなったら戦意喪失して甲板で仰向けに寝転んでー。死を待つ構え見せてましたよー? コピー戦士奪取しようとした辺りとかでー」



「……そんな気がしてきた!! 川端がこのタイミングで死ぬのはあたしも嫌だな!!」


 川端さんがピクミンより弱くなりつつあった。



「と言う訳でー。ですよー。寒いー。寒いですけどー。上はパーカー羽織るだけで頑張りますかー。水着は見えてるし、おっぱいも見えてるし。川端さんの出力7割は確保できる露出ですよー。早くしないと風邪引いちゃいそうですから、わたし行って来ますねー」

「おお。了解したで。ストウェアはワシが預かろう。しかし、上までどがいして行くんじゃ? 宙走るにしてもまだまだ高いで?」


「ライラさんに草生やしてもらいまーす」

「え゛っ!? いや! 無理無理!! あの高さまで!? ジャックと豆の木じゃん!!」


「冗談ですよー。わたしが転移スキル使いますからー」

「え゛っ!? あんた、転移スキル使えたの!?」


「ダンクさんのヤツ見てて覚えましたー。ダンクさん目標にしたらイケるかなーって」

「……ナディアってガチったら天才だよね。あたし、この子に対してよくリーダー風吹かせてたわ。本当にごめんなさい」


 ナディアさんは「気にしないでいいですよー。じゃ、行きましょー!!」と言って、ライラさんの肩を抱いたらすぐに飛んで行った。

 「あたしも行くのかよ! 嘘だろ! 水着のまんまなんだけど!! せめて服着させて!! ねぇ!?」と抗議の声ごと抱きしめて。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 十四男ランドの介護ルームかんきょうでは。


「おーっほほほ!! 動きが鈍くなってきましたね! 皇国に楯突く害虫さん!!」

「かっかっか! 多勢に無勢ってのもなかなか乙だねえ! そっちのどどめ色なおばちゃんのスキルが厄介ったらねえやな!!」


 辻堂甲陽の奮戦に業を煮やしたシャモジ母さんは総力をもってまずこのハゲてないけど本来はハゲているハゲを潰す事にした。

 ガンコが十四男の介護を一時放棄して参戦。


「シャモジ様!! 敵の煌気オーラが強く、私の『増える高齢者問題ヘビーウェイトアタック』では長く押さえつけていられません!!」


 ガンコは重力属性が得意。対象を重くするのはもちろん軽くする事も可能。

 なんか深刻そうな名前のスキルで辻堂さんの周囲にガンガン負荷をかけて動きを鈍らせていた。


「よろしいですよ! 今の状態をあと1分で結構です! 維持しなさい!! いやっさぁぁぁ!! 『杓文字煉獄地獄薙ぎシャモジインフェルヌス』!!!」

「おっととと! ぐっ!! がぁぁ!! こいつぁ……キクねえ……!!」


 シャモジ母さんの炎熱を帯びた薙ぎ払いが辻堂さんの構えた刀ごと彼を介護ルームの壁まで吹き飛ばす。

 ここまで連戦続きの辻堂甲陽。


 さすがに疲れが見え始め、津軽ダンジョンで見せていたキレも陰る。


「おーっほっほ! 貴方は良く戦いました! わたくしの記憶の中で2日くらい生き続けると良いでしょう! これは大変な褒美ですよ! 皇国以外の事をわたくしが2日も覚えているなど! 誉れに思い、お死になさい!!」


 迫るシャモジ母さん。

 初手で降伏勧告すらせずに主砲をぶっ放す用兵術を迷いなく選ぶ彼女は、まず面倒な男を無力化する事のみに専念する。


 殺すのが手っ取り早いので、無に帰する方向で無力化させるらしい。


 天井では磔にされた役立たずコンビが見守る。


「姫島。侍として侍のピンチに駆けつけたりしないのかよ。吾輩の知ってるブシドーはどこ行ったんだ」

「くくっ。それはロッカーに預けた! 鍵を失くしたゆえ、係員が来るまでは開かぬ!!」



 孤軍という言葉がこれほどフィットする戦局もなかなかない感じに仕上がりつつあった。



「んん? こりゃあ……! 姉ちゃんたち、来てくれたのかい?」

「ついに幻覚が始まりましたか。一思いに殺して差し上げましょう!!」


 シャモジ母さんの杓文字が辻堂さんに向かって投げられた。

 杓文字は具現化武器なのでいくらでも出て来る。

 殴って良し、斬って良し、投げて良し、ご飯をよそっても良し。


「わー。すごいとこに出ちゃいましたよー。あー。ダンクさんがあんなとこにいるからだー。あの人、ホントにダメですねー。ライラさん! お願いしまーす!!」

「いやぁぁぁ!! 実力差あり過ぎるのはあたしだって分かるのにぃ!! 『お芝おターフ』!! ヤケクソだよ、こんなもん!!」


 ナディアさんとライラさんが介護ルームに現着。

 ダンクくんが磔になっていた都合上、転移、即ボスの部屋というちょっと前に川端さんたちが喰らったのと同じ轍を踏む。


 芝が伸びると杓文字が消えた。


「おーっほっほ。殺しますよ!!」

「ぎゃあああ!! なんか怖い人が怖いこと言って来る!! 仕方ないじゃん!! 具現化武器だと思わなかったんだから!! 草スキルは煌気オーラに対してだけちょっと日の目を浴びるんだよぉ!!」


 乱戦では邪魔になると思われた草スキル。

 窮地では思いのほか輝くことが判明する。


「かっかっか! なんでえ、お姉ちゃんたち! 色のねぇとこ乳で賑やかしながら、きっちり戦力にもなってくれんのかい! なるほどねえ! ……こいつぁ、一真が戻って来るな!!」


 恐らく戻って来ます。


 十四男ランドもクライマックスバトルへ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る