異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第975話 【肩車でランデブー・その2】ひょっこり兵伍、やれるのか! ~治癒スキルVS再生スキル~
第975話 【肩車でランデブー・その2】ひょっこり兵伍、やれるのか! ~治癒スキルVS再生スキル~
治癒スキルは再生スキルの1区分に過ぎず、属性としては確立されていない。
千のスキルを習得済みの逆神六駆はどちらも「回復スキル」と呼んでいるように、日本本部独自の名称である。
きっかけは雨宮さんの発言。
今は色々と過去の発言がどうしようもないピンチになって発現しているが、その話はしばらくその辺に置いておこう。
「和泉くんのスキルって再生スキルじゃないよねー。私が回復させるよりも精度は高いし、速度もすごいし。もう治癒スキルって呼ぼうよー。そして日本本部に治癒スキル使い増やそうよー。おじさん回復役させられる機会減るしー」と監察官会議で発議したのは4年ほど前の事。
当時、既に頭角を現してSランクに昇進していた和泉正春氏を見つけた雨宮おじさん、「これはもうすごい! オンリーワンだよ! 名前つけなきゃ!! あの日見つけた才能の名前を私、知ってる!!」と、そもそも使い手が育たない再生スキルの第一人者から脱出キメるために区分けを行った。
特に異論は出ず、和泉正春Sランク探索員は治癒スキル使いとして地位を確立、させられた。
以降はフリーのSランクとして戦局に応じた投入に文句も言わず、返事の代わりに血を吐きながら転戦を続けた。
再生スキルの中でも回復に特化している和泉さん。
相対するは逆神兵伍。
「おい。モヒカン」
「ヒャッハー!」
「あのお姉ちゃん、よく見たらすっげぇエロい恰好してんな!? なにあれ!! 令和ってホント奥深いわ!! 写真撮って画像検索したら、あれレースクイーンなんだってよ!? バルリテロリではレースクイーンってレオタードみたいなヤツしかないのに!! すごいな、おい!! 興奮して来た!! ……コスプレものの候補に入れておこう。ちょっと敵見てろ。私、タブレット操作するから」
AV大好きマンとして定着が完了しており、戦績は一斉侵攻時の久坂邸を襲った際にキシリトールの胸を貫いた1勝のみ。
裏切りが確定する前に自国の隊長クラスの胸をぶっ刺すとかいうはっちゃけを勝ちにしないと0勝になってしまう男。
だが、以降も津軽ダンジョンに出現してやっぱり久坂さん率いる部隊を南極海に集団左遷したり、皇宮でしょうもない話をしたりと比較的活躍の場が多いバル皇族逆神家の第二世代。
そして絶対みんな忘れてるけれど、彼は再生スキル使い。
本部にやって来たのも、喜三太陛下に「ちょっと田吾作を再生して、予備兵力として五十鈴のフィーバーに参加しておいで」と指示されたため。
バルリテロリでも再生スキル使いは数が少なく、それがAV大好きアラフォーおじさんだったとしても重用せざるを得ない。
ここに同じ属性の男たちが出会った。
「和泉さん! ご指示を頂けますか!! 私はあなたの手足となります!! 私は和泉さんのウマです!! あっ! ウマ娘よりもマキバオー世代ですか!? ちゃんと勉強しておきました! んああー!! 負けません!!」
「うゔゔゔ……ゔぉえ……ごるふぅぅぅぁぁぁぁ」
片方は生来の虚弱体質に乗り物酔いというデバフがかかっている。
女性を乗り物呼ばわりするのはどうかと思うが、本人が自称している以上それはもう性別を超えた性癖かナニか、よく分からないもの。
「おい!! おい、モヒカン!! 聞いたか!? あのボイン姉ちゃん、馬らしいぞ!? ……すごいな日本本部とやら。私はかつてないほどこの任務にやる気がみなぎって来た。これ、勝ったらあのボイン姉ちゃんの馬主になれるんだろう!?」
「ヒャッハー! 兵伍様、ポケモンバトルではありませんので。そのような言い回しはどうかと存じます」
「うるさい! そんな髪型で頭良さそうなことを言うな!! 舌ベロベロさせながら、ひっひひー! いいオンナだぜぇー!! とか言ってろ!!」
「はっ。ヒャッハー!! いいオンナだぜー!! こちらでよろしいでしょうか?」
片方は性癖そのもの。
肉眼で確認できる拗らせた癖である。
屋払さんと加賀美さんの死闘が相対的にすごく綺麗になっていくんでよろしくぅ。
逆神五十鈴戦と比べてしまうとスケールダウンが凄くて逆に目がくらみそうな対戦カード。
だが、兵伍を生かして1号館に近づけるとゾンビみたいに死んでる戦力が復活し始める。
アトミルカ編でゾンビネタやったやろと思われたベテラン探索員の方には「覚えて頂き恐縮の誉れ」と膝をついたのち、申し上げたい。
あれは違う。
これとは違う。
いずれにしてもここで倒しておかないと尺が伸びていい加減にしろと怒られる。
絶対に負けられないという一点に関しては、他の戦局と同様なのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
先に動いたのは佳純さん。
失礼、佳純ランデブー。
「敵の制圧に向かいます!! 和泉さん! 接近しますが、よろしいですか?」
「……ごっふぁぁ! 結構です。相手の情報がサーベイランスに表示されています。彼は久坂さんのお宅を襲撃した2人組の片割れのようですね。再生属性も使えるようですが、他にもオールラウンドにスキルを発現した記録が。ならば、我々の戦法を知られる前に先制攻撃を仕掛けるのが上策です。さすがですね、佳純さん」
柔らかい光が和泉さんの体を覆うと、言語能力が回復。
自分の三半規管を治癒してセルフ復活をキメた病弱な戦士。
彼はこれまでもこうして生き残って来た。
自分も癒せる点が和泉正春の治癒スキル最大の利点。
雨宮さんは再生スキルを自分に使用する事もあるし、六駆くんも怪我をしたら自分で回復を試みるが、自前の
和泉さんはひ弱な身体と向き合った上で「そんな小生がお役に立つには」という前提でスキルを習得しているので、自己回復も他者の回復も極めて高性能なものを備えている。
ゆえに、この佳純ランデブーでの戦闘はフィジカルの佳純さんが下半身を、自動回復バフを常時発現している和泉さんが上半身を担当する、結構優れた戦型。
下半身とか上半身でいやらしさを感じて良いのは中学生まで。
ただし、大人になっても少年の感性を持ち続けるのはとても良い事だと思う。
なんかいやらしい響きであった。
「おい! ボイン姉ちゃんがこっちに突っ込んで来るぞ!! 捕まえよう!!」
「兵伍様。もう発言の全てがナニかに抵触されておられますが」
「バカかお前は。戦いのモチベーションを上げるために相手を良い感じに眺めてペロペロするのは効果的だと喜三太陛下記念幼年学校で学んでいないのか? 見ろ! ……あれ絶対にノーブラだ。揺れ方が違う」
「はっ。私は一般の学校に通っておりましたので。ヒャッハー」
兵伍は受けて立つ構え。
というか、とりあえずボインのテイスティング希望。
双方の攻防が初手で綺麗に絡み合う。
「行きます!! たぁぁぁ! 『
「べぇぇぇぇ!?」
佳純さんの得意とする攻撃はツインテールを硬質化させて繰り出す範囲攻撃。
だが、現在彼女のツインテールは和泉さん専用。
よって、事前に用意しておいた武器が火を噴いた。
「……ゔぉォォ。佳純……さん……? 小生、出撃前にその小箱に持続性の治癒スキルを使いましたがげふっ。それは何でしょうか?」
「あ、これですか? そうだ、すみません! 新装備を見て頂きたくてご説明を忘れてました! これはですね! ミミちゃんにもらった滋養液に私の髪の毛をちょっと切って漬けこみまして! それに和泉さんの治癒が持続して効果を発現しているので、伸びるんです! 髪が!! 持ち運び用ワンテールですね!!」
芽衣ちゃんの妹、ミミちゃん。
「みみみみみみみっ。土門さんのお役に立てるです。頑張るです。みみみみみみみみみっ」と依頼を受けたらすぐに作業して、今朝方には完成していた滋養強壮剤。
なお、現在はシェルターに退避済みです。
そこにちょっとだけ前髪を切って漬けておいた佳純さん。
和泉さんの治癒スキルは極めて有能なため、肉体から離れたものでも短時間であれば癒着させられる。
本来は切断された手足など、重傷を負った者に対する処置として大活躍する能力だが、今は自分を肩車している乙女の髪の毛を異常な速度で治癒し続けている。
聡明な諸君はお気付きだろう。
過再生の下位互換である。
結果として、「髪の毛を収納した小箱から髪の毛が伸びて来て、それがスッポンに変化したのち嚙みつく」という猟奇的な装備が誕生する。
だが、待って欲しい。
佳純さんは本来、頭からヘビ生やしていた乙女。
六駆くんと南雲さんが「やだっ。怖い。見てらんない」と目を逸らすほど恐ろしいスキルだった。
それがポータブルスッポン発射髪の毛になったのは、むしろビジュアル的に好転していると言えないだろうか。
ちょっとした呪いの市松人形みたいなものである。
なお、グーグル先生に確認したらウィキペディアの画像が怖かった。
まさかチャイルドプレイから日を置かずに再度ウィキペディアに攻撃されるとは。
「兵伍様!?」
「ちっさいスッポンが伸びて来て顔を齧られた!! ボイン姉ちゃん、さてはドSか!? ふふふっ。私と相性が良さそうだな!!」
「兵伍様!?」
「そうだ! 私はドМだ!!」
「あ。困りました、和泉さん。相手の方が変態です。クララちゃんに対処法を聞いておくべきでした。仁香さんに聞くと悲しい顔されるので」
仁香さんはお相手が変態なので、ヤメて差し上げてください。
闇堕ちします。
「ゔぉえ……」
和泉さんは佳純ランデブーの吶喊に耐えられず三半規管がまたしてもやられる。
誰が何と戦っているのか分からなくなるいつものヤツの気配を感じる。
そうなる前に、誰かが突破口を開いてくれる。
そんな展開を強く望むのが世界の意志である。
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