異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第936話 【時系列の乱れる日常回・その7】青山仁香お姉さんの穏やかな休日! ~【朗報】水戸くんが一切出てきません【本当です】~
第936話 【時系列の乱れる日常回・その7】青山仁香お姉さんの穏やかな休日! ~【朗報】水戸くんが一切出てきません【本当です】~
青山仁香さんの朝は早い。
彼女は午前6時ぴったりに起床する。
そしてまずスマホを確認。
上官からクソみたいなラインが来ていないかをチェックする。
しかし、この日は津軽ダンジョンの任務を終えてから設けられた休養日の3日目。
つまり水戸くんは集中治療進行形であり、本部の医務室から出てきていない。
「……あれ。なんだろ。こんな自由な朝があっても良いのかな?」
一時的にストレスから解放された仁香さん。
この後、再度津軽ダンジョンへ派兵されたのち、おっぱい帝国ストウェアに強制転移させれる未来が待っていると誰が彼女に言えようか。
「お休み……。お休みって私、どう過ごしてたっけ!?」
ちょっとだけウキウキしていた。
思えばこの感情、この解放感がのちに『人道的兵器・水戸信介ミサイル』発案の原動力になったような気がしないでもない。
仁香さんの本当の意味での日常回がついに幕を開ける。
むしろこれまでは常に水戸くんが呪いのハッピーセットになっていたのかと思うと、なんだかとてもいたたまれなくなる。
世界って酷いヤツが動かしているんだなとしんみり感じずにはいられない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
仁香さんのマンションは日本本部の運営する女子寮の1つであり、近くにはプール付きのジムがあるスポーツ系乙女に人気の物件。
多分記憶にないだろう。
全部いつもくっ付いてる呪いのハッピーセットが悪い。
呪いとハッピーは二律背反しているように思われるかもしれないが、呪われているのが仁香さんでハッピーになるのがおっぱいクソ野郎。残念、合っている。
「はぁ……はぁ……! どうしよう……! テンションが上がって10キロもランニングして来ちゃった……!! 気持ちいい!!」
仁香お姉さんは運動によってストレスを発散するタイプ。
実に健康的である。
莉子ちゃんは運動がストレスになってご飯食べてストレスを発散して、結果的にまた運動が必要になるタイプ。
不健康の永久機関かな。
トレーニングウェアを脱ぎ捨ててシャワーを浴びたら新鮮な野菜とハムで作ったサンドイッチとスムージーで朝食。
いつもはこの段階で監察官室の事務を1人でこなし、任務の要請が届いている場合は対応を済ませている。
酷い時は上官を起こすためにモーニング定型メールを送る事もある。
水戸監察官室は水戸くんと仁香さんの2人体制。
なお監察官としての資質なしと判断され終わった水戸くんが戦力にならないので、実質仁香さんのワンオペ。
仁香お姉さん室なのだ。
でも、今日はそんなストレスから解放されている。
解放され過ぎているため、「何しよう! もうやる事がない!!」とテンション高めで午前8時に1日の予定を消化し終える。
少しだけボーっとしていたが、潜伏機動隊の所属期間が最も長い仁香さんはじっとしているのがあまり得意ではない。
おもむろに部屋のカーペットにコロコロをかけるが、掃除は1日の最後を締めくくるルーティンワークとして毎日やっているので埃どころか髪の毛すら付着しない。
ならばとクローゼットを開けたところ、そこにはなんかあった。
「うっ……。そうだった……。さっき届いたんだ……」
チャイナ服ちゃんが「おはよう!」と白い生地を見せてご挨拶。
普段ならば特殊装備が上官を連想させて不愉快になり臭い物に蓋をする感覚でクローゼットとさよならバイバイなのだが、この日の仁香さんはご機嫌。
「……着てみようかな。うん。試着はしておかないと! 任務に支障が出たら困るから! 別に喜んでないし、率先して着たいとかそういうのじゃないけど。うん。せっかくだし」
仁香さんがハンガーに手を伸ばした。
5分後。
「……やっぱり意外と可愛い。いや、ううん。私のキャラじゃないって分かってるけど。これ、ゲームの女の子が着てるヤツだもんね。そりゃ可愛いよ。似合って……ないない! そんな事言うのはあの人だけだから! 真に受けたらダメ! マルチの勧誘とか3時間くらい断り切れないし、新聞も契約更新したくないのにずっと同じところの取り続けてるんだからね、私。強い意志を持たないと!! ……けど、けど。意外と似合ってたり!」
なぜかヤエノムテキちゃんの勝負服を身に纏った仁香さんがそこにはいた。
姿見の前でポーズなんか取ってみちゃったりしている。
これまで新人時代の配給装備と潜伏機動隊の装備しか身に付けて来なかった彼女。
装備は機能性のみを求めるものと考えており、そもそも希望を出した事もない。
それが可愛い装備を急に着せられて、着せられた当時は呪いのハッピーセットがいたため冷静な判断の邪魔をしていたが、改めて身に付けてみたところ。
「……か、かわ。可愛い、かな? いや! こんな浮ついた格好で真剣勝負の任務に臨むなんて! でも、モチベーションが上がるとスキルの精度もアップするし。か、可愛い? 私、意外と……」
嫌いじゃなかったという事実と対面していた。
「ミニスカートの装備とか、みんな結構選んでるもんね。そう考えると、機能性にも問題はないような気もしてk」
仁香さんのスマホが震えた。
「ひゃぁぁぁ!? ごめんなさい!! 身の程を弁えてませんでした!!」
そして反射的に通話状態にしてしまうのが世話焼きお姉さんの宿命。
お相手は。
『おはようございます! 仁香先輩! 先ほど装備が本部から届きまして! 先輩に確認して頂こうと思い……。あれ!? 先輩、その格好!! 可愛いですね!!』
「リャン……。おはよう……。いつもの癖でビデオ通話にした私が悪いんだけど。1回殺してもらう事ってできる?」
リャン・リーピンちゃんであった。
諸君。今回は本当に水戸くんが出てこない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
チャイナ服の話をする気分になれなかったので、仁香さんはリャンちゃんをトレーニングに誘った。
愛すべき後輩は本部敷地内の女子寮に住んでいるため距離がある。
だが、仁香さんには監察官室に貸与されている【
職権乱用なんて、後輩にヤエノムテキちゃんの勝負服着て、しかも下着に直で着てお楽しみだったところを見られた後の彼女にはそんなの関係ねぇ。
ここでチャイナ服の確認を怠ったせいで、翌日、仁香さんは秘密機関のリモート空間にて「後輩を巻き込んでしまいました」と相談する事になるのだが、それは別のお話。
リャンちゃんを迎えに本部へ転移して、回収したらすぐに再転位。
【
迷わず「監察官の私用」とメールで済ませた。
今日の仁香さんに迷いはない。
2人はすぐ近くにあるジムへ向かった。
潜伏機動隊員は体を動かす事を鍛錬と娯楽を兼た趣味にしている者が多く、彼女たちも多分に漏れず。
「わぁ! 仁香先輩、さすがのスタイルですね!! んー。私のお手本です!!」
「リャンも充分引き締まってると思うけど」
「競泳水着だとハッキリ差が見えてしまうので、お気遣いは結構です!! うむむ……。このバランスの良い体が男の人を惑わせるんですね。脚は長いですし、二の腕とかシュッとしていて! あと胸も!」
「リャン?」
「はい?」
「最近、チーム莉子の女の子の誰かとお話した?」
「はい!」
「うん。誰かな? 多分、お正月にミンスティラリアの海でちょっと遊んだ時が怪しいな」
「昨日カフェテリアで芽衣さんとまさにその海のお話をしました! 今度はリャンさんもぜひ来てほしいです! と言って頂けて!! ……先輩?」
「……くっ!! 唯一怒れない子だった!! じゃあ白状するね! シミリートさんって言うけものフレンズさんが用意してくれた白いビキニを結構ノリノリで着てしまいました!! 芽衣ちゃんがフリフリのビキニ着てるんだから! 断れなかったの!! ノアちゃんがすっごく写真撮ってるなって気付いてたのに!! どうせ、そのうち流出するんだよ!!!」
芽衣ちゃんの名前が出ると隠し事ができなくなってしまう仁香お姉さん。
なお、現場には珍しく小鳩さんもいたので多分デコイになってくれています。
「芽衣さん、すごく楽しそうに話しておられましたよ? 仁香先輩は身長も高くて、胸やお尻も芽衣の理想のスタイルです、みみっ! って!」
「……そうなの!? リャン? それ、嘘だったら私、あなたが相手でも何するか分からないよ?」
リャンちゃんの肩がガッチリ掴まれた。
多分ここで「嘘です!!」とか言っていたら、水着の肩紐が引きちぎられていただろう。
「本当ですってば! 私もそう思うって答えて、仁香先輩の磨き上げられたボディの話題だけで1時間も話し込んじゃいました!」
「うぅ……。それは恥ずかしい。けど……嬉しい……!! リャン! 恥ずかしいなんて思っちゃダメなの! 装備はどんなものでもちゃんと意味があるんだから!! 堂々として、何なら喜ばしいくらいの気持ちで身に付けて! そのためにトレーニングするよ!! 鍛えた体になら何を着せたって誇らしい!!」
リャンちゃんが瞳を輝かせて復唱した。
「すごくステキな言葉です! 鍛えた体なら何を着ても誇らしく思え!! リャン・リーピン! 実践します!!」
「よし! それでこそ私の後輩! さあ、25メートルをまずは10セット!! ついて来られる!?」
「もちろんです! それは準備運動ですよね!!」
「あっ! 言ったなー? 今日はとことんトレーニングするからね!!」
「了!!」
リャンちゃんの素直な心に救われた仁香さんであった。
なお、翌日の朝にチャイナ服をインナーなしで身に付けて満面の笑みでY字バランスをキメた写真が後輩から送られて来て、「私ってばなんて無責任な言葉を……!!」と、一瞬で心が曇った仁香お姉さん。
その足で瑠香にゃんリモートへ駆け込むのであった。
現在時空の仁香さんは水戸くんミサイルをぶっ放して屈託のない笑顔で敵拠点に突入する準備を整えています。
あいつがいないだけで仁香さんはこんなに笑ってくれるんだ。
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