第932話 【時系列の乱れる日常回・その3】椎名クララの「ルベルバックに移住するのありだにゃー!! ……あれ? なんか空気がおかしいぞなー?」 ~1匹だけ過去に遡らないどら猫、日常回させてもらえず~

 進行形で戦時中の現世とバルリテロリ。

 そこに穏やかな日常など存在しない。


 そのはずなのに、いつもと同じ感じで過ごしているどら猫がルベルバックにいた。

 このどら猫は時を駆けない。


 過去を振り返る感じでやっていくのかと見せかけて、普通に現在時空で過ごしている椎名クララ。

 どうせ平山ノア隊員もむちゃくちゃやるので、こうなってくるとベテラン探索員の諸君に適応して頂く他ない。


 ルベルバックの離宮、通信室からお送りします。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ルベルバックではバルリテロリのクーデター組。


 氷鬼のガリガリクソ。

 逆神玉誤。

 逆神誤字羅。


 以上3名による襲撃を退けてから数時間が経過しており、キャンポム少佐の指揮のもとで事後処理が行われていた。

 ガブルス中尉が温存されていたので、今は代理総督直属部隊が現場の保存と生存者の捜索を行っており、干乾びた玉誤と誤字羅が発見されたと報告が入ったのはつい30分前。


 防衛戦に参陣したチーム猫とウフフン小隊は疲労を考慮され休養が与えられており、食事はもちろん飲酒も許可される大盤振る舞い。

 そうなれば当然だが。


「にゃはー!! ルベルバックのお酒もイケるぞなー!! 相変わらず空調もバッチリだしー。あたしもうここに移住するのもありなんじゃないかにゃー?」



 どら猫がどら猫する。

 装備を脱ぎ捨て、インナーのみでソファに寝転がり酒を片手にスナック菓子を嗜んでおり、もうそれ本当に日常じゃないかという戦時中を無視した姿を見せつける。


 これがどの日常回でもやってる事は基本ずっと不変な椎名クララという乙女。



 なお、先ほどスカレグラーナにいるナグモさんから南雲さんに戻された筆頭監察官殿に召集令状的な通信を済ませた後であり、それが「これ完全に出番終わったにゃー!!」とパイセンの解放感に拍車をかけていた。

 いつもならば首にリードを巻きつけて引っ張る小鳩お姉さんも今は戦場。


 武力と恋愛の二正面作戦中なので、飼い猫の世話も放置しがち。


 しかし、ここにはパイセンの新しい相棒がいる。


「ぽこ。せめて服装を正してからだらけてください。描写できない姿で寝転がらないでください。ぽこ。聞いていますか、ぽこ」


 跡見瑠香にゃんである。

 うっかりクララパイセンとルベルバックに派兵されたばっかりにずーっとどら猫とコンビを組まされ、今ではメカ猫の立ち位置を確たるものにさせられつつある。


「うにゃー。瑠香にゃん、瑠香にゃん。猫は服を着ないぞなー?」

「ぽこは猫ではありません」


「じゃあ今日から猫になるぞなー。ゴロゴロしながらゴロゴロにゃーって鳴くぞなー! にゃっふっふー!! 瑠香にゃん! マスターの指示だぞなー?」


 チーム猫の作戦行動でクララパイセンにうっかりマスター権限を再奪取されてしまったため、瑠香にゃんはぽこますたぁに逆らえない。



 と、思っているから隙だらけなのである。



 瑠香にゃんがパイセンの首根っこを掴む。


「に゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ー」

「検索完了。一般的にこのような掴み方を猫に行うのは推奨されていません。これは創作による誤った行為です。猫の体を痛める可能性があります」


「待って、待ってにゃー!! 首が締まるぞなー!! ほら! インナーが引っ張られておっぱいぽろりしちゃうぞなー? これはマスターの人権がヤバいぞなー!!」

「ぽこ」


 パイセン、気付く。

 そういえば作戦から戻って「マスター」と1度も呼ばれていない事に。


「にゃー……。嫌な予感がするぞなー」

「先ほど、グランドマスターより通信士としての任務を受けました。その際にルベルバックでの作戦行動についてご報告。グランドマスターが仰いました。じゃあもう瑠香はそこにいなくていいね! クララ先輩とこっちに戻ってもらおうかな! と。これはつまり、グランドマスターに命令権が戻った事を意味します」


「ちょっと何言ってるか分からんにゃー!」

「拝承しました。端的モードに移行」


 珍しく瑠香にゃんが微かに笑った。

 そして言った。



「ぽこ。お正月は終わりだ。ぽこの命令権は消失済み。これより瑠香にゃんはぽこの出立の準備を整え、速やかに新たな戦場へと赴くためのシークエンスに移行。年貢を納める準備はできたか、ぽこ」


 瑠香にゃん、クララパイセンの支配から解放される。



「に゛ゃ゛ー。……あたし、実力が足りてないぞな? はっきり言ってこの戦いについていけないぞな? あと、自爆もしないぞな?」

「ぽこますたぁ。貴女は遠距離特化タイプという極めて稀なスキル使いです」


「……それはソロでやってくための安全マージン確保のためだったと言うか。にゃー?」

「一般的なスキル使いで近接攻撃どころか中距離でもろくな攻撃方法を持たない者は稀の中の稀です。ステータス『頭おかしいぼっち』を検出。ゆえにその稀少性は戦力の差が出ても効果を発揮します。そもそも牽制役が必要なので、ぽこに必殺は求めていません」


「うにゃー……。あ゛! おっぱい痛いぞな!! これはさっきの戦いで痛めたに違いないぞな!!」

「ぽこの生体スキャンを開始。無駄にデカい脂肪の塊に異常なしと判断。ステータス『叩けば治る』を獲得しましたので、行使します」


「おかしいぞなぁ!! 瑠香にゃんロボ子なのに! なんでそんな昭和のテレビみたいな対処するんだにゃー!?」

「検索中……。発見しました。ステータス『そーゆう流れだから』を確認。復唱します。ぽこ。今はそーゆう流れです。右と左、好きなおっぱいを選んでください。瑠香にゃんクラッシャーで処置を試みます」



「ええ……。おっぱいクラッシャーするのは莉子ちゃんだけで充分だぞな?」

「ぽこ。これから恐らく合流するそーゆうながれというのに。その度胸だけは尊敬に値します。おっぱいと度胸のサイズの因果関係について考察開始」


 瑠香にゃんが冷静さを取り戻したのに、パイセンから得てしまった属性は捨てきれず。

 なんか冷静にポンコツな発言をするようになってしまった。



 通信室のドアがノックされる。

 どら猫の耳がピコンと立った。


 「救世主キタコレにゃー」と期待に胸を膨らませる。

 それ以上膨らませると現在の莉子ちゃんメンタル的に最初におっぱい貫かれかねないので推奨しませんが、ぽこ。良いんですね。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「やあやあ! キャンポム少佐に食事を分けて頂いてね。椎名さんたちもどうかなって!」


 雷門クソ監察官だった。

 どら猫が鳴く。



「に゛ゃ゛ー。雷門さんってクソだにゃー」

「ぽこ。雷門さんがクソなのではなく、雷門クソさんがクソだと訂正を求めます」


 訂正しても何一つ改善されていない件。



「私ぃぃ! 好きで合体した訳やないのにぃぃぃ!!」

「にゃー! 来たぞなー!! そのまま最後まで号泣してくださいにゃー!! 尺足りなくなれば良いぞなー!! あたしはインナー姿を死守するにゃー!! 完&璧だぞなー!!」


「雷門クソ監察官」

「いっぐぶぅぅぅん……! 瑠香にゃんさんは声が可愛いのに抑揚がないからァァァ!! なんか余計に心にクルんやぁぁぁ!!」


「椎名クララAランク探索員があられもない姿をしています。これはぽこにも非があるのは明らかですが。瑠香にゃんは合理的な判断により、毒を以て毒を制す事も厭いません。……雷門クソ監察官。ぽこは22歳の女子大生。クソはいくつですか?」

「……失礼しました!! 私は木原さんと一緒に謎のトカゲのソテーを食べます!! 椎名さん! 頑張って!! 戦場でゆっくりしていってね!!」


 雷門クソ監察官、敬礼して退室。

 淀みのない動きとキレのある言動。


 中年男性にとってセクハラ案件は怖いのである。

 乙女が不快と感じたらそれはもうハラスメント。



「にゃん……だと……。出番大好き雷門クソさんが……消えた……?」

「ぽこ。南雲監察官から伝令がありました。今こっちはショートパンツが爆弾になってるから、椎名くんの装備どうにか変えて来てね! 全滅するよ!! との事です」


 ルベルバックの女性下士官が使う装備を改造した短パン&タンクトップ。

 これはいけない。



 幸いな事にインナーとプレートは山ほどある。

 ルベルバックの女性下士官もスパッツと長袖タイプのインナーを身に付けて、その上にプレート型の鎧を装備するのが基本。


 ただ、サイズがない。

 これぞ好機と「しまったにゃー!! おっぱいが邪魔して戦いに行けんぞなー!!」とハツラツに鳴くどら猫。


「ぽこ。ウフフン准将より預かっています。我が全力をもってご用意しました。大きい事は良い事ですので、こちらで存分に戦われよ。戦姫!! との事です」


 差し出されたのは胸部装甲が大きい女子用の装備。

 ウフフン准将は偉い。

 将官級の軍人が軒並みかつての荒ぶるあっくん政権に加担していたため、少将以上はほとんど軍に残っていない。


 ゆえに、数時間でルベルバックの軍事技術を使いクララパイセンのパイセンぺぇぺぇに合わせた装備を急ピッチで作らせる事も可能。


「……なんでチアリーダーみたいになっとるんだにゃー? スナイパーがこんなに目立ったら絶好の的だぞなー。戦場はコスプレするとこじゃないぞなー」

「准将から伝言です。月刊探索員のグラビアで拝見してから、この衣装が好きで好きで仕方がありませんでした!! ぜひ、このお召し物で戦姫として駆けてくだされ!! との事です」


 昨年の月刊探索員9月号の表紙はチア芽衣ちゃま。

 芽衣ちゃまに興味を持たず、チアの方だけに興味を持ったのがウフフン准将。


 パイセンは言った。



「性癖押し付けてくるおじさんってクソだにゃー」


 水戸くん。言われとるんやぞ。

 あとパイセンだってソシャゲで推しキャラの可愛い衣装違いが実装されたら天井まで全ツッパするくせに。



 瑠香にゃんに無理やり着替えさせられて、どら猫とメカ猫の準備が完了。

 よもや日常回でだらけさせてもらえないとは。


 こんな事なら適当に大学生活とかを回想すれば良かったのに。

 回想するほど大学生活をしていないパイセンは、ちょっとだけこれまでの4年間を悔やんだ。


 パイセンは大学三年生です。

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