第617話 【チーム莉子に新人が!・その2】マジメ後輩キャラと言う新属性! そしてボクっ子女子高生!! ~その正体は「逆神六駆ガチ勢」と言うすぐ分かるポンコツ!!~

 平山ノアDランク探索員。

 16歳の高校2年生。


 逆神六駆ファンであると言う時点でかなりのレアなのに、逆神六駆ファンが高じて転移スキルを身に付けてしまった、既にちょっと頭のおかしい乙女である。

 性格は今のところ礼儀正しく、素直で度胸もある。


 が、好き嫌いの激しい傾向あり。

 被害に遭ったクララパイセンと莉子ちゃんが、並んでカーペットの上に転がっている。


「ええと、ノアさんは結局、何をしにいらしたのかまだ聞いていないのですが」

「あ! すみません! 憧れのチーム莉子の皆さんにお会いできた感激で、ボクとしたことが言葉足らずになっていました! 目的はシンプルです!! ボクをチーム莉子に加えてください!! 頑張ります! よろしくお願いします!!」


 魚河岸で売れ残った後の魚みたいな瞳の莉子ちゃんとクララパイセンがひそひそと、内緒話を始めていた。


「あの、クララ先輩?」

「うにゃー。莉子ちゃんとの付き合いも長いぞなー。何が言いたいか分かるにゃー。ノアちゃんからは、初期の六駆くんみを感じるのにゃー。返事聞く前からやる気満々なとことか、お金前にした時の六駆くんそっくりだにゃー」



「そうなんです! わたし! ノアちゃんが既に女の子版六駆くんみたいに思えて、可愛くて仕方ないんですけど!! ……なんで嫌われちゃったんでしょう。くすんっ」

「ぼっちのパイセンには分かっちゃったのにゃー。ポイントは六駆くんと過ごした時間だと思うのにゃー。あたしたち、古参メンバーだぞなー」



 ぼっちパイセンの推理はズバピタで当たっていた。

 こちらのノアちゃん、六駆くんガチ勢である。


 ガチ恋勢ではなく、ガチ推し勢なのである。


 現状、小鳩さんに対して最も心を開いており、芽衣ちゃんに対してもかなり従順。

 六駆くんは言うまでもなく、クララパイセンには辛辣。

 莉子ちゃんに対してはもう嫌いまである。


 チーム莉子の加入時期の遅い方から順に、綺麗な整列を見せていた。


「どうするんですの、六駆さん! 責任をお取りあそばせ!!」

「みみっ。六駆師匠は最近になって、急にラブコメの主人公みたいな空気を纏いだしたのです。みみみっ」


「んー。僕は別に良いと思いますよ? 正直、実力的には全然ですけど。独学でうちのスキルの構築術式を理解するとか、面白いですよね! すっごく育てたい!!」

「ぼ、ボク、逆神先輩に育ててもらえるんですか!? わぁ! わぁ!! 服脱いだ方が良いですか!? 何でもします!! 先輩の言う事、何でも聞きます!!」


 おや。漂うポンコツの香り。


「みみみみみっ。小鳩さん、小鳩さん。みみみです。みみみっ」

「ですわね……。ノアさんからは莉子さん感も感じますわ。六駆さんと莉子さん両方の属性持ってるとか、お排泄物的どちゃくそ面倒ですわよ。何なんですの、2人の娘ですの? 胃が痛いですわ」


「ただ、条件があるよ? ええと。ノアって呼んで良いかな?」

「ほああああ! 名前呼びぃ!! 先輩から!! こんな事があっても良いんですか!? どんな条件でも飲みます! エッチなヤツですか!? 勉強します!!」



「うちのリーダーは莉子だからね。莉子の許可をもらうように。あと、古株のクララ先輩とも上手くやってくれないと。パーティーで活動するんだったら、それが絶対条件かな。できる?」

「えっ!?」


 完全に初期から中期にかけての六駆くんのリアクションである。



 平山ノア仮メンバーは「ぐぬぬぬっ」と唸った。

 耳をすませば聞こえて来る、「逆神先輩、逆神先輩、逆神先輩」と言う念仏。


 ダメになりたての頃の莉子ちゃんのそれである。


 ノア仮メンバーは歩き出すと、カーペットに転がっている二人のところへ。

 ビシッと敬礼をした。


「ふぇぇぇ。クララ先輩、わたし怖いですよぉ」

「ノアちゃん、がっつりパンツ見えてるにゃー。これはなかなか絶景だぞなー」


「椎名さん!! 質問があります!!」

「はいはいにゃー」


「あなたは、逆神先輩から何を学びましたか!?」

「…………? 特に何も学んでないぞな? あたし、逆神流使えないしにゃー」


「えっ!? そうなんですか!? じゃあ、逆神先輩の尊敬するところ10個言えます!?」

「うにゃー? すぐにはちょっとだにゃー。んー。頼りになる。意外と面倒見がいい。麻雀の相手してくれる。誘ったら一緒にサボってくれる。んにゃー?」



「ボク、椎名先輩と上手くやっていけそうです!! ボクもクララ先輩って呼んで良いですか!? そのスタイル、噂以上です!! わぁ! すごい! ムチムチ!!」

「にゃはー! なんかよく分かんないけど、六駆くんの良いとこあんま言えなかったら、ノアちゃんと仲良くなれたぞなー!!」


 クララパイセン、後輩が1人増える。



「あの。芽衣? 小鳩さん? 僕って良いところ、4つ出たら限界になるおっさんですか? ははっ。ですよね。50近いおっさんなんて、女子大生から見たらNPCですもんね。はははっ……」


 そして落ち込む六駆おじさん。


「ものっすごく面倒ですわよ、これ。ノアさんが何かするたびに、誰かしらのテンションが下がるんですけれど!?」

「みみみっ! きっと芽衣たちも遠からず被害者になるです! 覚悟しておくです!!」


 いよいよ、莉子リーダーとノア仮メンバーの入団交渉が始まる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「小坂莉子Aランク探索員殿! 改めて、お初にお目にかかります!!」


 ビシッと敬礼をキメるノアちゃん。

 莉子ちゃんも転がっているので、アングル的にアレである。


「ふ、ふぇぇぇ? ほんとにパンツがチラどころかモロだよぉ? 堂々とし過ぎで怖いよぉ!?」


 六駆くんを前にした莉子ちゃん奇行の比ではないので、恐れる事は何もない。


「小坂隊長にお聞きします! 逆神先輩の長所、いくつ言えますか!? ボク100は余裕です!! ふふんっ!!」

「あ、それならわたしね! 2000は言えるっ!! そだ、今度一晩中語り合いたいなっ!!」



「くぅぅっ!! ……やっぱりボク、あなたの事、嫌いです!!」

「ふぇぇぇ。なんでぇ……?」



 ガチ恋勢とガチ推し勢は似て非なる存在。

 どうやら、分かり合えないらしい。


 そこに忍び寄る、どら猫。

 拒絶されるとぼっち拗らせるくせに、1度仲良くなるとコミュ強になる良く分からない生き物が剛腕とおっぱいを振るう。


「ノアちゃん、ノアちゃん!」

「なんですか!? クララ先輩!!」


「莉子ちゃん、六駆くんの彼女だにゃー! と言うか、ほぼ嫁だにゃー!!」

「え゛っ!? そうなんですか!? 逆神先輩の!? と言う事は……!? あの、ボクは愛人枠で全然気にしないので! そう言う事でしたら、正妻を立てるのが逆神先輩に対する礼儀ですよね!?」



「にゃはー! あたしが振っといてなんだけど、何言ってるのか分かんないにゃー!!」

「小坂先輩!! 失礼な事を言ってすみませんでした!! ボク、小坂先輩の動きをしっかりと見て修行して! 立派な2号になります!! ご指導ご鞭撻のほどを!!」

「ふぇぇぇ。クララ先輩のばかぁ……! なんか変な事になってるよぉ!!」



 こうして、平山ノアDランク探索員が六駆くんの条件をクリアした。

 莉子ちゃんは基本的に優しい乙女なので、慕われると無下にはできない。


 慕われ方が極めてナニしていてもである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「逆神先輩! ボク、やりました!!」

「うん。おめでとう! ところでノアはさ。髪をツインテールにしてみない?」


「えっ!? 逆神先輩! ツインテールがお好きなんですか!?」

「えっ!? ……うん! そうなんだよ!!」


 今の間で、チーム莉子の乙女たちは全員が察した。


「みみっ。芽衣はセミロング。莉子さんはボブ。クララ先輩はポニーテール。小鳩さんはストレートのロング。みみみっ!」

「芽衣さんと莉子さんに長さがやや被って、ヘアースタイルはわたくしと被りますわね。クララさんも髪をほどくと危ないですわ」


「おじさんあるあるだにゃー。若い子を凝視すると気まずいから、髪型で判断するんだにゃー。楠木さんが言ってたぞなー」

「えへへへへへっ! そーゆう気を遣ってくれるとこ、いいですよねっ! もぉ、好きだなぁ!! 女の子の事を1番に考えてるんだもん!! えへへへへへへっ!!」


 六駆おじさん。

 最近はセクハラが怖いので、あまり仲良くない乙女とは目を見て話さないし、胸を見ても話さない。


 髪型で乙女の判別をしていたのだ。


 体型が莉子ちゃんと芽衣ちゃんにかなり近いノア新メンバー。

 後ろ姿クイズが三択になると、おっさん的にはアウト。


 ゆえにクレバーな先手を打った。

 既にノアちゃんはツインテールデビューをしている。


 これで大丈夫。


「ところでノアさん? 監察官室に所属されてますの?」

「はい! しています!」


「え゛っ!? あの、許可って取っておられ……?」

「いえ! 無許可です!!」


 小鳩さんが頭を抱えた。

 莉子ちゃんが代表して質問する。


「えと、どこの所属かなぁ?」

「雷門監察官室です!!」


 六駆くんも含めた全員が思った。

 「あ。号泣シーンが来るぞ、これ」と。

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