第555話 【日本探索員協会・その8】古龍の戦士・ナグモ&久坂剣友監察官の戦場を駆ける師弟!!

 久坂剣友監察官。数々の伝説を持つ、探索員の生き字引。

 本日2度目の戦場へ赴く。


「ふっ。君は以前、力を隠していたようだね。まさかここまでとは」

「それはお主とて同じこと。以前の手合わせでは、これほどの使い手とは思えなかった」


 ナグモは一度、アトミルカ殲滅作戦にて姫島幽星と戦っている。

 その際の彼は古龍化解放率50パーセント。


 同じく姫島も当時とは事情が異なる。

 アトミルカ殲滅作戦ののち、ウォーロストへと護送された姫島はすぐにサービスの手引きによって出獄。


 そののちデトモルトで若返りの処置を受け、続けて急速な加齢の術式により42歳まで戻った。

 若返ってから加齢を繰り返すことで煌気の練度は劇的に増していき、出力や威力も飛躍的に上昇する。


 やっている事は逆神家の異世界転生周回リピーター者システムに酷似している。


 が、『デトモルト式・年齢上下運動鍛錬アップダウンビルド』は精神にかかる負荷が激しく、何度も繰り返す過程で廃人化するケースが多く確認されている危険プレイ。

 よって、精神力が極めてヤベー者しか適応しない。


 姫島幽星は反社会的活動に精を出す男であり、人生を賭けている。

 結構な勢いでヤベーため、どうやら2周目も耐えられた様子。


 その理屈で考えると、6周している六駆くんがいかにヤベーのかよく分かるが、彼のヤバさを掘り下げると収拾がつかなくなるためここでは省略させて頂く。


「くくくっ。まだしばらく刃を交えていたいのだが。お主。そろそろ時間的な限界が訪れそうであるな?」

「ふっ。そこまでお見通しとは。うぉぉぉぉっ!! 『古龍真空破ドラグブラスト』!!」


 煌気オーラ弾で姫島と距離を取るナグモ。

 援軍の気配を察知したためである。


「やりよるのぉ。修一。しっかし、お主のそりゃあ……。何度見ても馴染まんのぉ。京華ちゃんは何も言わんのんかい?」

「久坂さん。私のプリティエンジュウェェルは、むしろ喜んでくれますが? たまに夜戦で使っています!!」


「おお、そうじゃったか。ええ……。なんか嫌なこと聞いたわい。修一。お主、その姿でナニしよるんか? 嘘じゃろ……? それお前、スカレグラーナの秘奥義じゃろ? 竜人たち、泣きよるで?」

「ふっ」


「いや。ふっ、じゃなかろうが。ちょいちょい思春期の小僧みたいになるのはなんでなんじゃ?」

「久坂さん。哀しい事実を知らせなければなりません。ふっ。師匠に残酷なセレナーデを奏でなければならないなんて。本当に哀しいな、この世界は」


「……おお。で? セレナーデをはよ奏でてくれぇや」

「ふっ」


 久坂監察官。

 イラっとして、ちょっとだけ血圧が上がる。


 ナグモは言った。



「私がチャオっていられる時間はあと3分が限界なのです。これでは、世界を愛で照らすことは不可能。哀しいですよ、こんなに無力な自分がね」

「チャオって!? チャオるってなんじゃい!? しっかりせぇ!! 修一! お前、その形態はあんまり使わん方がええな! なんか、大事なもん失くし続けよるで!?」



 血液属性を使う姫島のスキルには血圧にちなんだ名前のものも多い。

 久坂剣友監察官は軽度だが高血圧の持病があり、投薬治療中。

 その師匠の血圧を上げているのが古龍の戦士・ナグモ。


 あー。もうめちゃくちゃだよ。


「……まあ、なんちゅうか。とりあえず、お主の活動時間の限界が迫っちょる事は分かった。ほいじゃあ、2人がかりで一気に敵さん制圧するかいのぉ」

「ふっ」



「修一。お前、あとで説教じゃからな」

「哀しいな」



 久坂監察官、適当に持って来た槍をクルクルと回転させて戦闘準備完了。

 ナグモはジキラントを構える。

 姫島も愛刀の血染め一文字に煌気オーラを充填させて、バッチコーイなご様子。


 残り時間を考えても、恐らく次の交錯で勝負は決するだろう。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらは本部建物を修復中の六駆くん。

 隣にはくっ付いているだけの莉子ちゃん。


 煌気オーラの上限解放を済ませているものの、その転用には未熟な部分がまだ多くあり、未だに逆神流の一部基礎スキルと苺シリーズしか使えないと言う欠点もあるのがこの乙女。

 スキルは長い時間をかけて習得するのが一般的であり、その点においては莉子ちゃんも一般乙女。


 そろそろ六駆くんに次のスキルを習えば良いのにと思わずにはいられない。


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!! ああ、風呂上りにこれは嫌だなぁ。すっごい汗かいてる。けれど!! 1億!! 数字にすると100000000!! ゼロがいくつあるのか分からないや!! うふふふふふっ!!」


 お馴染み、便利な極大スキル。『時間超越陣オクロック』で時間を巻き戻し中。

 今回はまったく煌気オーラを消費していないため、割と余裕がありそうな六駆くん。


「逆神六駆! もしよければ、質問しても良いだろうか!!」

「あ、はいはい! なんですか、55番さん!」


「先ほど見ていたのだが! あの姫島が使った『煉煌気パーガトリー』なるものは一体なんだろうか!? 是非、逆神六駆のご教授を受けたい!!」

「んー? 聞いた事ないですねー。なんですか? それ」


 55番くんは、録れたてほやほやの動画データを六駆くんに差し出した。

 彼は元から器用だが、今では久坂監察官室をほとんど独りで回している万能な男。

 情報の取り扱いも山根オペレーターに習って幅広く身に付けている。


「ほほー。あー。なるほど。なんか見た事ありますねー。何周目だったかな? これ、異世界由来のスキルですよ。『貸付レンタラ煌気オーラ』に近いです。あれですよ、強制的に活性化させた煌気オーラを持ち運んでて、自分のタイミングで発動させてるんじゃないかな」

「なるほど!!」


 まったくなるほどではないと思われるため、補足説明のお時間。


 『煉煌気パーガトリー』とは、煌気オーラそのものにデトモルトの名産技術である年齢操作処理を行ったもの。

 煌気オーラを強制的に熟成させて年取らせて活性化させることで、莫大な威力を得ることができる。

 煉っているのである。ネリネリと。


 デメリットも存在しており、『煉煌気パーガトリー』を運用するためには使用者が自分の煌気オーラを持ち出して使う必要がある。


 本来の4倍に活性化されていれば、その4倍分の煌気オーラを自前で用意しなければならない。

 煌気オーラ総量が多い者にしか扱えないため、使用者を選ぶ。

 さらに、そんな量の煌気オーラを1度に放出してしまうため、猛者でも2発、3発使えば煌気オーラが枯渇する。つまり連用に向かない。


 姫島が今回使用している『煉煌気パーガトリー』は5倍。

 彼の煌気オーラ総量だと、あと1発ほど使えばほとんど煌気オーラ枯渇状態に陥る。


「要するに、貯金切り崩してギャンブルするようなものですからねー。僕は使いたくないなー。身の丈に合わない煌気オーラの運用は体壊しますし。やっぱり、できる範囲でスキル撃つのが健全ですよ」

「勉強になった! やはりあなたの知識は素晴らしい!!」


「いやだなぁ! そんな褒めたって僕、あっ、意外と嬉しい!! どうしよう!!」

「えへへへっ。六駆くん、結構素直になったよねっ! 素直なおじさんって、わたし好きだなぁー!!」


 六駆くんの修復作業は続く。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「参るぞ。伝説とナグモ!!」

「ふっ。来たまえ。欲に溺れる侍よ」

「いや。ワシが伝説言うのはちぃと恥ずかしいが、分かるで? ナグモってなんじゃ。もうナグモが固有名詞で通じるんか? すごいのぉ、今の時代って」


 3人の猛者が同時に地面を蹴った。


「ここは修一に花ぁ持たせるけぇのぉ!! 陽動は任せぇ!! 久坂流槍術じゃ! 『無尽槍むじんぞう梅花千祭プラムスピア』!!」


 大きな梅花が無数に展開され、タイミングを合わせて煌気オーラの槍が「やあ」と出現。

 手に持った槍を囮にする、相変わらずの老獪さを見せた久坂監察官。


「くくくっ!! やはり搦め手で来たか! 『煉煌気パーガトリー』!! こちらは覇道よ!! 『大往生血走りドミネーションバウル』!!」


 姫島が選んだのは、放出系の斬撃。

 ただし、件の『煉煌気パーガトリー』でドーピング済み。


 これには久坂監察官の搦め手も塗りつぶされる。


「ぬぅ! なんじゃい、まだ使えたんか、そのインチキスキル!! 修一!!」

「ふっ。ストレートな悪意には、ストレートな愛で応えよう!! 『古龍ドラグ愛大洪水ラブジュース』!!」


 なんか嫌な名前のフィニッシュブローを放ったナグモ。

 姫島の斬撃と押し合いの形になるが、少しずつナグモの煌気オーラが競り勝っていく。


「くくっ。これほどか。某もまだ、調整が足らんと見える。次こそは。……ぐっ!!」


 姫島は愛の光に呑まれた。


「おお! やったかいのぉ!!」

「ふっ。これが世界を照らす愛。チャオ! これに懲りたら……あれ!? 私は何を!!」


 ナグモ、唐突に訪れる営業時間終了のお知らせ。


 初めて『古龍化ドラグニティ』の効果が制限時間で切れるところを見たが、割と普通に戻るらしい。

 最期は自分がチャオる事になろうとは。


「あ。すまん。いらんことを言うたわ、ワシ」

「あだだだ!! ちょ、えええ!? 私、こんなのに押し勝ったんですか!? あああっ!!」


 スキル使用者の両方が呑まれると言う大波乱。

 協会本部襲撃の夜はそろそろ終わるが、この煙が晴れた時、誰が無事で誰が倒れているのか。

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