第554話 【日本探索員協会・その7】最強の男、割と早い現世への一時帰還!! ~お金に釣られて異世界からホイホイ出て来た逆神六駆ともう1人~

 ミンスティラリア魔王城では。


「落ち着け! 六駆!! お前、ここに来た理由を忘れたのか!? 敵の狙いから自分を外すためだっただろう? 久坂殿の要請は当然だ。が、もう一度よく考えろ。お前は隠匿スキルや潜伏スキルも使えるだろうに。その存在を消してから行かんか。煌気オーラをチャージして行くな!!」


 バニング・ミンガイル。

 急激に減少していく常識人の中でひときわ輝きを放つ、かつての強敵。

 長らく戦って来た敵のあるべき姿はこれだと我々に教えてくれる、得難き男。


『おお! それじゃ、それぇ!! ワシ、それ言いたかったんじゃわ!! バニングの! お主流石じゃのぉ! 戦いのいろはがよう分かっちょるわ! 今度うちに遊びに来んか? 美味い日本酒あるで!!』

「まだ通信が繋がっていたか。ご無沙汰している、久坂殿。その節は私と多くの者が世話になった。是非、近いうちに一献。おい! 六駆!! お前、聞いていたか!?」


 バニングさんが久坂監察官と「お久しぶりです」「こちらこそ」なご挨拶をしている間に、六駆くんは探索員装備へとお召し換えが完了。

 背中のマントもバッチリ装備。

 そこには金色の文字で、周りにはラメが散りばめられながらキラキラと光る「莉子」の文字。


 ピースに莉子ちゃんの存在を植え付ける準備が整っていた。


 「もはやこの男を止められぬ!!」と悟ったバニング氏。

 せめて莉子ちゃんの身を守ろうと発言をシフトさせた。


「よし、分かった! 六駆! お前がどんなスタイルで行こうと、もう止めん!! だが、莉子のマントは置いていけ!! 莉子の存在はまだ、敵の本陣に気取られてはいまい? 恋人の名前を堂々とアピールしていく事はなかろう!! 莉子が不憫だ!!」

「確かに! バニングさん、さすがアトミルカの長老ポジション! 良いことを言うなぁ!! じゃあ、マントは置いて行きます!!」


「ああ! そうか!! 聞き入れてくれて良かった!!」


 バニングさんの真心、六駆くんに伝わる。

 そんな常識人にも身の危険が迫っていた。


「バニング。ちょっとこっちへ参れ。ふふふふふっ」

「あ、アリナ様!? ぐっ、酒くさい!! アリナ様!! あなた、アルコールの耐性は高くないのに!! どれだけ飲まれたのですか!?」


「少しだ。ほんのしゅこし。ふふふっ。それよりも、一緒に風呂に入ろう」

「いや、ダメでございます!! 飲酒した状態での入浴は体に良くありませぬ!! そして、呂律が回っておられぬではありませんか!!」


「良いではにゃいかー。妾は学んだのにゃ。酒の力を借りると、気遣いを旨とするバニングは逃げぬとにゃ。ふふふふっ。さあ、風呂へ参るぞ。そして妾は良い感じでのぼせるゆえ、後はそにゃたの好きにせよ」

「……お言葉のそこかしこからクララの香りがする。アナスタシアさ……ダメだ!! 元凶ではないか!! ダズモンガー殿!! アリナ様をお任せいたします!!」


 エプロンの似合う虎の武人、久しぶりに出番をゲット。


「かしこまりましてございまするが……。バニング殿はどちらへ行かれるので?」

「ど、どちら!? わ、私は……その……」


 迷えるバニングさん。

 珍しく逃げ道を明確に見定める。


「ろ、六駆!! お前だけでは何かと大変だろうから!! 私も同行しよう!! よし、そうしよう!! お前たちには返しきれん恩がある!! さあ、連れて行ってくれ!!」



 バニング・ミンガイル、緊急参戦。

 見た目が女子大生な嫁さんの圧に耐えきれなくなり、戦場へと逃亡する。



「いいんですか!? バニングさん、姿を見られると色々まずいんじゃないですか?」

「ぐっ……。それは確かに!! どうにか、身を隠すものがあれば……!!」


「くくっ。話は聞かせて頂いたのだよ。これをお持ちになると良い」

「シミリート殿!! かたじけない!! よし、六駆! 準備はできた!! 参ろう!!」


 最強格がさらに増える日本探索員協会本部。

 もはや、ピースの撤退戦がどこまで上手くいくのか。

 注目すべきはそこしかない。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 協会本部では。


 ナグモと姫島幽星が高速で闇夜を飛び交いながら剣戟を振るう。

 それを「ガルルルル」と唸りながら、隙を見て苺色の大砲ぶっ放そうとしている莉子ちゃんが狙う。


 その様子を見ながら「どがいしてこんな事になるじゃ。朝になってこの惨状見たらのぉ。京華ちゃんガチで仕事辞めるで?」とため息をつきながら、どうにか本部建物の崩壊を食い止めている久坂監察官。



 割と地獄であった。



 そこに門が生えてくると、フル装備の六駆くんが出現。

 すぐにチーム莉子の乙女たちが駆け寄る。


「みみみみっ!! 師匠!! 助かったです!! 助けてです!! もう無茶苦茶なのです!!」

「本当によく来てくださいましたわ! 六駆さん!! 信じておりましたのよ!!」



「あらぁー!! オレのプリティベイベーな六駆じゃないのぉ!! なんだよぉ! 結局パパが心配で来てくれたん? そーゆうとこあるよなー!! 我が自慢の息子!!」

「ふぅぅぅぅぅぅんっ!! 『大竜砲ドラグーン』!!!」



 とりあえず、親父を滅する最強の男。


 その背後から虎の被り物を装着した男がやって来た。

 誰であるかは説明不要であるが、彼の弁明を聞いてあげて欲しい。


「……私は、マスクド・タイガー!! 故あって、日本探索員協会に助太刀する!!」



「にゃはー!! マスクド・バニングさんが来たー!! にゃー!!」

「ヤメてくれんか、クララ。私は日本探索員協会に色々と借りがあるのだ。とりあえず、身バレはまずい」


 マスクド・タイガーさんだそうです。新キャラです。仲良くしてあげてください。



 ちなみに、この場の敵側最高戦力は姫島幽星。

 彼は元アトミルカナンバー6でもある。


 目の利くバニ……マスクド・タイガーさん、すぐに悟った。


「がっ!! あれは姫島ではないか!? ま、まずい!! マスクで顔を隠しても、さすがにあの男ほどの使い手になると、煌気オーラでバレるぞ!! というか、元同僚だ!!」


 バニングさん、煌気オーラを完全に消し去る。

 身バレは防いだが、この瞬間、虎のマスク被ったおじさんに成り下がった事で面白要員に参加せざるを得なくなった。


「久坂さん! 来ましたよー!! 1億貰えるとか聞いては、黙っていられません!! 任せてください!!」

「おお。助かったわい。……1億のぉ。おお。京華ちゃんに送ったメールが返って来んが。まあ、大丈夫じゃろ!! 任せられるかいのぉ?」


 六駆くん、既に両手にチャージした煌気オーラを充填完了。

 仕事のデキる男に望外の報酬を提示すると、それはもうこうなる。


「あっ。その前に! 莉子!!」

「ふぇ!? あ、あれ!? 六駆くん! いつ来たの!?」


「ついさっきだよ! 莉子がピンチだって聞いて! 居ても立ってもいられなくて!!」

「そ、そうなの!? えへへへへっ。……でも、六駆くん。あの変態、殺さなくちゃ」


 お金につられて来たのに甘い言葉を操る旦那と、旦那に釣り上げられながらも変態をこの世から始末したい嫁。

 世界の均衡破壊カップル、数時間の疎開でもう現世に登場する。


「ダメだよ! 莉子! 莉子の手はいつも綺麗で温かくて、スベスベしたヤツがいいな!! 変態の血で染めるなんてもったいない!!」

「ふぇぇっ!? ……も、もぉぉぉぉぉ! 六駆くんってば!! 誤魔化されるの、今日だけだからねっ!!」


 今日だけで誤魔化されるのは2度目なのだが、無粋な事を言ってはいけない。


 空を見上げた六駆くんの視界には、良い感じに盛り上がっているナグモの姿が。

 「ふむふむ」と頷く古龍スキルの発案者。


「ナグモさん、上手いこと煌気オーラを運用できてますねー。ただ、全力状態だとやっぱり持続時間に問題ありですか。あと3から5分ってとこですね。久坂さん! ナグモさんのサポートお願いできます? バニングさんが役立たずになったので!!」

「おお! 任せちょ……けぇって、ちぃと待てぃ!! 六駆の!! バニングのを連れて来たんか!? そりゃまずいで!! ワシとか雨宮のの首が飛ぶ!! じっとさせちょけ!! ええな!? ……おい。……返事せぇよ」


 しかも、連れて来たのに特に活躍する場もないため、今のところリスクが上がっただけである。


「平気ですよ! バレませんって!! あの変態侍さんにさえ気を付けとけば!!」

「55の。ワシ、ちぃと本気出すわ。六駆のの手伝い、任せるで」

「久坂剣友! あなたはもう就寝前の血圧の薬を飲んでいるので、心穏やかに戦って欲しい!! 主治医の先生には念のため電話しておく!!」


 古龍の戦士・ナグモ。

 久坂剣友と師弟共闘へ。

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