第547話 【日本探索員協会・その3】情報ゲット! 敵の戦力、解析中!! ~逆神大吾さん、ついに出番を迎える~

 あっくん遊撃隊、日本探索員協会本部へと帰還する。


「では、小生がこちらのデータをオペレーター室に持って行きまげふっ」

「あぁ? 平気かよ、和泉さんよぉ。別に俺が持って行くからよぉ。あんたは医務室行った方が良いんじゃねぇかぁ?」


「お気になさらず。小生、体は弱いですがコンディションは悪くありませんので。お気づきでしたか? 今日の吐血は鮮やかで、これはかなり調子の良い証拠です」

「さすがによぉ。吐血で調子の把握まではできねぇんだよなぁ。分かったぜぇ。じゃ、俺ぁ上官様に報告してくらぁ」


 ここで遊撃隊は一旦解散。

 阿久津特務探索員、五楼京華上級監察官に連絡を取るべくスマホを取り出した。


「あぁ。五楼さんかぁ? 今、戻ったんだがよぉ。どこに行きゃいい? まだ監察官室にいんのかぁ?」

『あ、ああ。いるぞ? よし、すまんがすぐに来てくれ。すまんが。すまんな』


 あっくんは「了解」と言って、スマホをポケットに。

 その足でエレベーターに乗って速やかに上官の元へと向かう。


 扉を開けるとそこには五楼上級監察官も日引オペレーターもいなかった。

 代わりにいたのは、こちら。



「あらー! あっくん! あっくぅん!! オレだよ、オレオレ!! ワリオ! じゃねぇや!! みんな大好き! 逆神大吾さんやで!!」

「……やろう。ハメやがったな。やたらとすまん連呼して来ると思ったんだよなぁ」



 あっくん。どう足掻いても逃れられないクソ親父の沼にハマる。


「なんかさぁ! やべぇのよ、オレ!! 聞いた? あっくん! ダブルピースとか言うヤツらがさー。このオレの有能さに嫉妬して、癇癪起こしてんだって!!」

「勝手にピース増やすんじゃねぇ。……ちっ。俺ぁ自分が急に独りにされた異変に気付くべきだったぜ。平和ボケしてやがる……」


「ねぇ! あっくん! あっくんはオレと一緒に戦ってくれるよね!? もうさー。やっぱね、ソロはきっついんよー。あっくんとなら、アレやん? ツーカーのコンビプレイも可能じゃん? さあ! オレと一緒にスリーピース倒そうぜ!!」

「最悪の中でも結構上位の最悪なんだよなぁ。親父よぉ。俺を巻き込むんじゃねぇ。……あぁ? 悪ぃが電話だ」


 ディスプレイには近頃彼の周りを甲斐甲斐しく飛び回っている乙女の名前が。

 ちなみに、名前のみでアドレス登録されているためカップル感が増している。


「こちら阿久津だぁ」

『あっくんさん! 申し訳ありませんわ、急にご連絡差し上げてしまい! あの、任務は終わりまして? あ、ええと。お忙しいのでしたらかけ直しますが』


 小鳩お姉さん。異世界から電話で参戦。


「いや、忙しくはねぇなぁ。つーかよ、俺ぁ忙しい時にゃ、電話を無視するってお前も知ってんだろうがぁ」

『あら? あっくんさんがわたくしのお電話を無視されたこと、ありませんけれど』


「ちっ。小鳩も言うようになったなぁ、おい。そんなら、俺がいつも暇してんだろうなぁ」

『うふふっ。あのですね、わたくし今、ミンスティラリアにおりまして』


「あぁ。だいたいの事情は聞いてんぜぇ。つーか、そっちの異世界からなんで電話できんだぁ? おかしいだろうがよぉ」

『魔技師のシミリートさんと言う方のおかげですわ!! こちら、主要キャリアの電波は全部届きますのよ!!』


「そうかよ。すげぇ、すげぇ。で? なんだぁ?」

『そうでしたわ! あの、わたくし今日は現世に戻れそうにありませんので。お夕飯は冷凍庫に保存してあるものを食べてくださいまし。申し訳ありませんわ』


「いや。別に構わねぇが。そもそも俺ぁずっと独りで飯食ってたしなぁ」

『そんな事を申されてはいけませんわよ! 誰かとお喋りしながらお食事を召し上がるだけでも、1日の疲れの取れ方は違いますのよ!! 明日はできるだけ戻りますので!!  あ、それから! ベランダのトマトと二十日大根にお水をあげてくださいまし! 明日はクリーニングの受け取りですわよ! お独りで大丈夫ですか? わたくし、先方にお電話差し上げておきましょうか?』


「あーあー。分かった、俺が全部やっとくからよぉ。……まぁ、怪我しねぇようにしろや。逆神家なんて異常者集団は放っといても平気だけどよぉ。小鳩ぉ。おめーは一般人だからなぁ?」

『かしこまりましたわ! 何かございましたらご連絡くださいませ!!』


 通話が終わった。



 割と進んでいたあっくん&小鳩お姉さん。

 もうほとんど同棲しとるやん。なんで何もしとらんの、君ら。



「うふふふふふふっ」

「……親父よぉ。その気色悪ぃ笑顔を今すぐ引っ込めやがれぃ」


「あーっくん!!」

「……ぶっ飛ばすぞぉ?」


「ねぇねぇ! あっくん! なに!? 彼女できたん!? って言うか、小鳩って言った? 言ったよね? あっくん! 小鳩ちゃんと付き合ってんの!? やるぅー!! マジかー!! 確かに小鳩ちゃん可愛いもんなぁ!! スタイル良いし、気立ても良いし、家庭的だしなぁ!! ちょっと性格キツいけどさ! マジかぁ!! よっしゃ!! 京華ちゃんと南雲さんに教えてくるわ!! あっくん、任務報告する前に彼女とイチャイチャしてましたって!! へへへっ!!」


「……こいつ。ここで殺すかぁ? 何となくだがよぉ。多方面が俺を庇ってくれる気がすんだよなぁ」


 阿久津浄汰特務探索員。

 呪いの装備をゲットする。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃、オペレーター室では。


「よし! 順調に解析が進んでいるな! 貴様ら、普段の訓練が活きているぞ! 夕飯は私に任せろ!! 急な解析作業をさせた分、好きなものを食べて構わんぞ!! ……ん? 着信か。……阿久津。………。もうひと頑張りしてくれ!! 貴様らの踏ん張りで先の展開が変わると心得ろ!!」


 五楼京華さん。

 無事にあっくんに全てを押し付けて安全地帯へと退避完了。



 貧乏神擦り付けた先から彼女に電話があったが無視されました。



「うっす! 上級監察官! いいっすか!!」

「どうした山根。それから、貴様は敢えて五楼と私を呼ばんな? よし。その心意気に応えよう。晩御飯は焼肉弁当で構わんか? 一人前3000円のヤツを注文するぞ」


 山根オペレーター。焼肉弁当をゲットする。


「あざっす! ご報告っす! こっちが担当してたデータですが、ハーパー理事とポートマンとか言う人のデータはガッツリあるんすけど、それ以外のデータがビックリするくらいないっすね! 多分、他の解析も似たようなもんじゃないかと」


 反対側の端末を操作している山根夫人予定の春香さんも同調する。


「健斗さんの言う通りです! こちらも同様の2名以外の情報は発見できません!!」

「あー。やっぱりっすか。上級監察官。これ、どう見てもスケープゴートっすよ。どうします? サーバーの情報手に入ったんで、国協のデータベースにハッキングしてみましょうか?」


 五楼上級監察官は「いや」と首を横に振る。


「貴様らの能力で欠片単位でも情報が得られんと言う事は、山根と日引の言う通りなのだろう。現状、国協の持つ情報に深入りするのも危険だ。まあ、スケープゴートでもデータがないよりはマシだ。とりあえず、そちらの吸い上げに全力を注げ。それから、日引。お前、職務中にも関わらず普通に旦那を名前で呼ぶな。羨ましいだろうが。私は我慢してるのに」


 そこにやって来たのは、上官にハズレくじ引かされた気の毒な男。


「おいおい、五楼さんよぉ。俺らに太平洋横断させといてそりゃねぇだろうがよぉ。んな、ダメ元の案件に就かされてたのかぁ?」

「そうだぞ! 京華ちゃん! あっくんをいじめんとって!! オレ、君をそんな風に育てた覚えはないぞ!! ないゾ!!」



「敵襲だ!! 全員、身を低くしろ!! これから私が敵を殲滅する!!」

「あんたなぁ。この状況下でよぉ。全力でコメディに逃げてんじゃねぇよ。せめて俺も連れてけよなぁ。おら。重要人物の親父、ここに置いとくぜぇ?」



 逆神大吾の押し付け合いによって、協会本部の情報機関がややパフォーマンスを低下させていた。

 そんな中、このお排泄物を狙ってお排泄物な悪手が伸びようとしている。


 どこの誰が伸ばす手が悪なのか、その点が分からない方はしばしお待ちいただきたい。

 現在、その件についてもオペレーターたちが必死で判断している最中である。


 分かっている方はどうぞそのまま待機して欲しい。

 既に出口はないので、諦めてください。あなたは知り過ぎました。

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