第546話 【あっくん遊撃隊・その2】相変わらず戦力乏しい国協本部! けれども、あっさり情報ゲットでき過ぎな件! ~あっくん無双もあるよ~

 日引春香オペレーターにより、敵の戦力を把握したあっくん遊撃隊。


「くははっ。想定通りどころかよぉ。こいつぁ、相当にペラッペラな防御だなぁ? Sランクが3人かぁ? 国協さんのSランクねぇ? 俺の記憶が正しけりゃ、アトミルカのナンバー7だったか8だったかがよぉ。今の敵になってる理事様を拉致った時にもいたよなぁ? Sランクが何人か。油断も慢心もするつもりはねぇが……」

『阿久津。ずいぶんと喋るではないか。意外と仕事する時には鼻歌でご機嫌になるタイプか? 貴様』


「あぁ。五楼さんよぉ。あんた、暇なのかぁ? 手が離せねぇって言って俺らをこんなとこまで派遣してんのによぉ?」

『暇なものか。ただな、阿久津。これだけは伝えておきたい。……逆神六駆の父親を、私の旦那が拾って来た。教えてくれ。私はどうしたらいい?』



 南雲修一監察官。無事にお排泄物を本部に持ち帰ったご様子。



「マジかよ。なんつーか、そりゃあご愁傷様としか言えねぇが……。まあ、俺らに絡んで現実逃避ができるんならよぉ。ゆっくりして行けや」

『阿久津……。貴様、やっぱり結構いいヤツだな。塚地との結婚式には是非呼んでくれ。何なら、祝辞のスピーチを担当してやってもいい』


 あっくんは「ちっ。この上官も小坂の菌を喰らってやがんなぁ? てめぇのプライベートでも1番上司に知られたくねぇ部分が筒抜けなんだがよぉ?」と顔をしかめた。


 五楼京華上級監察官。作戦終了までサーベイランス端末の前に居座る事が決定。


「阿久津さん。そろそろ参りましょう。敵もさすがに戻ってきます」

「あぁ。そうだなぁ。本部。これより、理事の部屋を目指して突入するぜぇ。とりあえずサービスの部屋からだな。最高権力者から潰してくのがベターだろ。和泉さんよぉ。あんたは端末から情報抜きだす仕事を頼むぜぇ?」


「いえ。小生が敵を引きつけますが」

「あんたよぉ。その後に俺がなんて言うか、分かってて言ってんなぁ?」


「これは申し訳ありません。友人の真心を少しからかいたくなりまして」

「ちっ。俺ぁ性格が最悪だって自覚があるけどよ。あんたも結構アレだぜぇ? おらぁ! 行くぜ! 走れ、走れ!! 倒れんなよぉ!! 『結晶シルヴィス』展開!! 『拡散熱線アルテミス』!!」



『おい。日引。あいつら、なんかイチャイチャしてるぞ。薄い本が厚くなると言うヤツか?』

『キマシタワー!! と思いましたけど、性別が違いました。とりあえず、女子探索員の会の定例ミーティングの議題として提出してみます!!』

「あんたらはよぉ。大概なんだよなぁ。うちの協会、まともなヤツの方が少ねぇぜ」



 あっくん遊撃隊。

 国協本部建物へ、いざ突入。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 本部建物1階にも多くの探索員が駐留していた。

 が、彼らの階級は高くてもAランク。


 国協の探索員は名ばかりで、そもそも探索をしないため各国の探索員協会基準に照らし合わせると、その階級は1段階ずつ評価が下がる。

 つまり、あっくんの敵ではないのである。


「おらぁ!! 『結晶大横刃シルヴィスエピセスィ』!! てめぇら、怪我したくねぇだろ? 下がってろぃ。こっちもよぉ。てめぇらなんぞ狩って功を誇る気はねぇんでなぁ!!」


 雑魚狩りスキルを発現させて、文字通り雑魚を狩る阿久津特務探索員。

 その間に、和泉Sランク探索員は目標の部屋へと突入する。


「こちらの端子を挿入でしたね。日引さん。こちら準備できました」

『はい! ご苦労様です! すぐにデータを吸い出します!!』


「くははっ。案外楽な仕事だったなぁ?」

「阿久津さん。あなたらしくもない。フラグを立てておられますが」



『ダメです! そちらの部屋の端末には、何も情報が残っていません!! って! しまった!! まずいです! 現場のお二人!! 今の接触で、こちらのサーバーにウイルスが!! これ、敵の手のひらの上です!!』

「俺が悪ぃのかぁ? あぁ。認めるよ。今回、親父と接触しなかった幸運にちょっと浮かれてたぜぇ。けどよぉ、仕方ねぇよなぁ? 俺が親父とエンカウント防いだんだぜぇ? そりゃ、浮かれるだろうがよぉ?」



 これは仕方がなかった。


 気を取り直して、次の理事の部屋を目指す2人。

 そこでアドバイスを飛ばすのは、五楼京華野次馬監察官さん。


『阿久津。4つ先の部屋にしろ。そこがフェルナンド・ハーパーの部屋だ。理事の中でも際立っての痴れ者。ほころびがあるなら、そこだろう』


 ここでも大活躍のハーパー氏。

 早速2人は指示に従う。


「これ以上好きにやらせるか!! 『リング・ラング・ソング』!!」

「あぁ? おらぁ! 『空盾エアバックル』!! ちっとだけましな攻撃が来たなぁ? Sランクかぁ? ただなぁ、スキルの名前が意味不明なんだよなぁ。スキル名は分かりやすく効果が想起できるものが好ましいってのはよぉ、おたくら国協が言い出したことだろうがぁ。せめて輪とか歌とか絡ませろぃ。普通の煌気オーラ弾じゃねぇか」


『おい。阿久津。どうして逆神流のスキルが使える? さては貴様。あの痴れ者と結託しているな? 汚らわしい。もううちの部屋に戻って来るな』

「五楼さんよぉ。既に情緒が怪しくなってきてんぜぇ? こりゃ陽動だ。逆神流のモノマネなんだよなぁ。こうやってあいつらのスキルっぽい痕跡残しときゃよぉ? 襲撃犯も逆神家って事になるかもしれねぇだろ?」



『阿久津。貴様、結構賢いな!! 帰ってきたら大福やるぞ!! 旦那が買って来た!!』

「あんたは手のひらがクルックルだなぁ? 早く正気に戻ってくれっかぁ? なんかアホの子臭がすげぇんだが。年を考えろぃ」



 そんなしょうもないやり取りをしている間に、和泉Sランク探索員はハーパー理事室へと突入。

 速やかに端末の操作を始める。


「日引さん。ご指示を頂けますか。小生が手動でデータを抜きますゆえ」

『すみません。助かります。では、手順を説明しますね。まず、バッグにあるUSBを端末に差し込んでください』


 先ほどサービス部屋でウイルスによる攻撃を受けたサーベイランスは、ハッキング機能が停止中。

 和泉正春Sランク探索員はフリーのため、端末操作もそれなりにできる。


 攻撃、防御、回復、情報。

 全ての分野に秀でているのがフリー探索員の求められる資質。


 その頃、廊下では3人に増えた国協Sランク探索員とあっくんが交戦中であった。


「おいおい。まさか、全員揃ってもその程度かぁ? こりゃ、今回の敵は当たり外れが大きいと見たぜぇ? 俺ぁ当たりだったなぁ! おらぁ! こんな感じかぁ!? 『太刀風たちかぜ』!! つっても、『結晶シルヴィス』で発現したパチもんだがなぁ!! 聞いとけ、雑魚どもぉ! 俺ぁ逆神大吾!! この名前、覚えとくんだなぁ!!」



『貴様。そんなクソみたいな名前だったのか? 騙された。もう部屋に戻って来るな』

「五楼さんよぉ。あんた今日は早退したらどうだぁ? いちいちリアクションに対応させてくんの、結構邪魔なんだよなぁ」



 和泉Sランク探索員、無事に情報抜き出しに成功。

 ただし、彼は懸念を述べる。


「あまりにもあっさり情報が奪取できましたが……。罠の可能性はありませんか?」

『そうですね。ただ、現状国協に残っていたデータはそれが全てのようですから、後は本部のオペレーターにお任せください。解析します!』


 「了解しました」と言って、部屋を出た和泉Sランク探索員。

 そこにタイミング悪く、敵の煌気オーラ弾が迫る。


「これはいけません。『異空間吸収圧縮トラクタービーム』!! げふぁっ!!」

「……てめぇ。なにうちの和泉さんに血ぃ吐かせてんだぁ!? せっかく! 無吐血で完走できそうだったのによぉ!! くたばれぇ!! 『結晶爆発エクスプロード』!!!」


 最後はズッ友に血を吐かせた敵を腹立ちまぎれにあっくんが片付け、彼らが担当した最初の任務が終了する。

 本部に帰還するべく【稀有転移黒石ブラックストーン】を発現させた2人だけの遊撃隊は、太平洋の人工島から姿を消した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃。ピースの本拠地である異世界・デトモルトでは。


「しまった!! サービス殿! 私、国協本部の旅行で土産に買った、音に反応して踊るサボテンを忘れて来ました!! 取りに戻っても!?」


 ハーパーが自分の評価を下げるべく、必要のない発言をしていた。

 サービスは何も答えずに、姫島に向かってハンドサインを送る。


 親指を立てると、それをグッと下に向けて舌打ちをした。


「まったく。貴殿はご自分で動かぬ方だ。ハーパー殿。こちらを」

「なんだこれは。姫島」



「下着だが? 安心せよ。通販で買った新品だ。これは某の修練のためのもの。1セットやろう。多少心が落ち着く」

「いや。いらない。私は踊るサボテンが良い」



 早く上位の調律人バランサーを出さないと、ピースの価値が下限をぶち抜くのも時間の問題である。

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