第523話 【祝疲祝祝祝祝祝疲・その8】結婚式プロジェクトチームの打ち上げ【もうぜってぇ結婚式編なんて書かないんだからっ!!】

 新郎新婦が見送られて、参列者も思い出と引出物を抱えて退出し、静かになった『桜の教会』では、実行委員会の解散式と打ち上げが始まろうとしていた。

 テーブルにはケータリングサービスで注文した料理が並び、各々が飲み物の注がれたグラスを持つ。


 成人しているメンバーは当然飲酒も許可されており、「何なら酔い潰れてもいいっすよー!!」と山根健斗リーダーが胸を張る。

 そのあとで「逆神くんが『ゲート』で家まで送り届けてくれるっすから! 女子も安全っす!!」と、この上ない安心安全をアピール。


「ではでは! 皆さん、お疲れっした!! ほんと、優秀なメンバーが集まってくれたおかげで自分は超楽が出来たっすよー!! まあ、長い挨拶は式で散々聞いたっすからね! そーゆうのはなしで!! んじゃ、かんぱーい!!」


 プロジェクトチームに途中参加の助っ人たちも加えた、総勢50人ほどの若者たちが大仕事を終えて乾杯をした。

 彼らは1週間の有給休暇取得が約束されており、ならば今宵は無礼講。

 大いに食べて、大いに飲み明かす権利があるかと思われた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 六駆くんはコーラを片手にピザから攻める。

 「冷めたらクオリティ落ちちゃうとこから攻略していくのは戦いの基本だよね!!」と、戦巧者っぷりを披露。


 隣には、当然のようにピザを旦那の口にあーんしてあげる嫁。


「六駆くん、六駆くん!! はいっ! 六駆くんの好きな照り焼きチキンだよっ!!」

「うわぁ! ありがとう、莉子! もう僕の好みは完全に把握されちゃったなぁ! 戦士として、情報を知られると戦いが不利になるんだよね!」


「ふぇっ!? 六駆くん!? わたしと戦うの!?」

「あ、ごめんごめん! 山根さんが、今頃南雲さんたちは夜戦の真っ最中っすよ!! とか言ってたから、つい!! なんちゃって!!」



「も、もぉぉぉぉぉ!! 六駆くんのエッチぃ!! そ、そーゆうのは、高校卒業してからだよって六駆くんが言ったんだよぉ!? ……わたしは今夜でも準備できてるけどっ!!! できてるけどぉぉっ!!!!」


 莉子さん、おっさんの下ネタを真正面からレシーブして、打ち返さずに抱きしめる。



 そこで六駆くんが気付く。


「あれ? 莉子、そのドレスさ」

「ほえ? なんだろ? どこか変かなぁ?」


「いや。下着してないんだなぁって!」

「あ、うん。だって、肩が出てるから。ブラしてたら見えちゃってみっともな……ふぇっ!? なんでぇぇ!? なんで今、そんな事言うのぉぉぉ!?」


「あ、ごめん! 遠回しに言って気付いてくれたらいいなって思ったんだけど! 莉子のドレスさ、さっきから結構な勢いでずり下がっててね! うん! 見えてるなって!!」

「ふぇっ!? 見えてるってなに……が……。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 莉子さんはこの後、顔を真っ赤にして倒れました。

 ゆえに、彼女の出番はここまでです。


 敢えて言及は避けますが、キーワードを残しておきます。


 オフショルダー。薄い胸部装甲。あーんをするために背伸びをした。ドレスを着続けていたため、やや着こなしがルーズになっていた。薄い胸部装甲なので、引っ掛かるところがない。


 これ以上は命の危険があるため、諸君の豊かな想像力にお任せいたします。

 豊かの対義語? それって今、関係ありますか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「にゃっふっふー。莉子ちゃんがやられたにゃー。しかぁし! 莉子ちゃんはチーム莉子四天王の中でも最弱……!! にゃはー!!」

「みみみっ! クララ先輩が既に酔ってるです!! みみみっ!! 芽衣に無言で胸を押しつけて来るです!! 意図は分からないけど、こんなに大きいと嫌味とか全然感じないです!! 何ならご褒美です!! みみみみみっ!!」


 クララパイセンのパイセンをまだ幼さの残る後輩に押し付けていくどら猫さん。

 ついにパイセンのドレスについて言及されなかった事実から目を逸らしてはいけない。


 椎名クララ。彼女の霊圧が着実に弱まっていた。


 現に、打ち上げの出番がもう終わろうとしている。

 このあと、パイセンは芽衣ちゃまに胸を押しつけながら、高いお酒を思う存分楽しみました。


 酔い潰れたパイセンを文句も言わずに介抱する芽衣ちゃんの姿を見た大人たちは「あれは間違いなくこれからの日本探索員協会を背負って立つアイドルだ!!」と確信したと言う。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちら、会場の隅でしっぽりとお酒を嗜むチームはぐれ者。


「阿久津さん。お疲れさまでした。今回も人知れず大活躍でしたね」

「あぁ? そりゃああんただろ、和泉さんよぉ。俺ぁ割と目立つ仕事もやらされてたがよぉ。あんたぁ、地味な裏方を体調不良おして頑張ってたじゃねぇか」


「小生としたことが、友人と一緒に仕事をこなせる喜びで少しばかり張り切ってしまったようです。お恥ずかしい」

「まぁ、いいんじゃねぇかぁ? つーか、和泉さんよぉ。あんた、血ぃ吐かねぇな? 調子悪ぃのか? ……いや、待て待て。俺ぁなに言ってんだぁ? 血ぃ吐かねえ方が調子良いだろうがよぉ。疲れてんのかねぇ?」


 そこに乙女が2人やって来た。


「あー! こんなところにいましたね!! 阿久津さん!! あっくんさん!!」

「まったく、困ったあっくんさんですわ!! 皆さんで盛り上がろうと言っておりますのに!! 目を離すとすぐにいなくなられるのですから!! 世話が焼けますわね! あっくんさん!!」


 土門佳純Aランク探索員と、塚地小鳩Aランクどら猫飼育員である。

 ちなみに、2人とも既に相当な量を飲酒しているらしく、足元はおぼつかないし、顔は真っ赤に染まっていた。


「おいおい。大丈夫かよ、あんたらよぉ。女がそんな無防備になるまで飲むのは感心しねぇぜぇ? なぁ、和泉さんよぉ」

「げふぁぁぁっ!!」


「あぁ? おい、どうしたぁ? つーかあんた、見間違えじゃなけりゃ、今てめぇでてめぇの胸をぶん殴らなかったかぁ?」

「ごふぁ……。はて、小生には何のことやら。血を吐いてしまいましたので、少しばかり失礼します。げふぁっ」



「和泉さんよぉ。何考えてんのかだいたい分かるけどなぁ? 血ぃ吐いて気ぃ遣った演出するバカは、世界であんただけだぜぇ?」


 和泉正春Sランク探索員。

 恋愛の煌気オーラを探知するのもお手の物である。



「さあ! 飲みましょう! あっくんさん!!」

「ふふっ! わたくし、テキーラをお持ちしましたわよ!! あっくんさんもこれでベロベロですわ!!」


「あーあー。面倒な事になりやがったぜぇ。土門さんよぉ。あんたはとりあえずそこ座れぃ。スカートが捲れてんだよなぁ。美人の自覚持ちなぁ。塚地ぃ。お前ぇはより重症だなぁ? そのドレス、どうしたぁ? お前さんはよぉ。小坂と違って、ちゃんと肩に紐があったろうがよぉ」


 南雲監察官が悲願を達成した今。ラブコメを統べる悪魔のターゲットはあっくんに。


「クララさんにやって頂いたのですわ!! こうすれば、あっくんさんがお喜びになられると聞きまして!! ……嬉しくないんですの?」

「……あぁ。椎名ね。あいつはあぶねぇ。思えば、ルベルバックで見かけた時から常に妙な余裕があったもんなぁ。おい、塚地ぃ。いいからお前ぇ……。あぁ、もういい。俺の上着やるからよぉ。これ羽織っとけぃ」


「すやぁ……。すやぁ……」


 土門選手、アルコールによって無念の戦線離脱。


「まあ! あっくんさん! ジェントルマンですわね!! お師匠様が言っておられましたわ!! 隙のある女を見て手を出さない殿方を婿に選びなさいと!!」

「久坂さんよぉ……。ちっ。あんたぁ、伝説になるくれぇなんだからよぉ。しょうもねぇこと弟子に教えてんじゃねぇよ。あと、てめぇら。ナチュラルにあっくんって呼ぶんじゃねぇ」


「でもでも、ですわ! 六駆さんのお父様がそうお呼びしておられましたもの!! とても親密そうでしたわ!! わたくしだって! あっくんさんと親密になりたいですわ!!」

「……逆神のヤツらに関わると、マジでろくなことがねぇ」


 ちなみに、小鳩さんはアルコールによって暴走気味です。

 記憶は残るタイプのため、翌日から当分の間、自室のベッドの上でジタバタする事になると付言しておきます。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらの攻防は一瞬で決着が着いた。


「健斗さぁん!!」

「あ、はいっす。どうしたっすか? 春香さん。やー。飲んでるっすねー」


「いい加減! 結婚してください!! って言うか、しろぉー!! 私ずっと待ってるんですから!! してくれないなら、探索員辞めますからぁ!! しろぉー!!!」

「ええ……。それは困るっすねー。じゃあ、結婚しましょっか! 有給の間にご実家行ってもいいっすか?」


「うぇ!? むぎゅぁぁぅぅぅっ」

「おわっ! ちょ、春香さん!! 誰かー! 治癒スキル使える人ー!! 助けて欲しいっすー!!」


 彼らの宴席は明け方まで続き、何人かの乙女がアルコールの力を借りて何歩も前進する動きを見せた。

 結婚式がきっかけで、新しい結婚式の種がまかれ、芽吹き、育っていく。


 これもまた、結婚式の醍醐味であった。


 これにてナグモ結婚式編は終幕。

 ナグモの夜の古龍化はどうなったか?


 諸君。それを求めるとこの世界が唐突に終焉を迎える恐れがある。

 各々、脳内のシミュレーションで補完願いたい。


 長い戦いであった。

 もうアレである。そろそろ本当に独身にはキツい。


 ゼクシィは読んだが、ハッキリ言ってこの戦いにはもうついていけそうにない。

 皆様、チャオズは置いて行ってください。

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