第436話 長き戦いに終焉を! アトミルカ殲滅作戦、始動!!

 アトミルカ殲滅作戦。

 決行日の朝がやって来た。


 逆神家では普段通りに朝ご飯を食べている。

 いい仕事のためにはしっかりとした朝食が必要であると逆神六駆は語る。


「いやー! 莉子が持って来てくれたきんぴら、絶品だね! れんこんと豚肉が入っててものすごく美味しいよ!!」

「えへへへ! お母さんに教えてもらったんだぁ! 男の子が好きそうなアレンジレシピを最近は2人で考えてるの!!」


「マジでうめぇよ! 莉子ちゃんが嫁いで来てくれりゃ、このクオリティの朝飯食い放題かよ! 天国じゃん!」

「もぉぉ! お義父さん、気が早いですよぉ!!」


 焼き鮭をご飯に乗せながら、六駆が呟いた。

 四郎は味噌汁を啜りながら同意する。



「親父はさ! なんか今日の作戦で死にそうだよね!!」

「確かにの。みつ子とアナスタシアさんが出て来た以上、大吾の役割は終わった気がするぞい」


「えっ!? なんでそんなこと言うの!? なに、役割って!? 2人とも言ってる意味が分かんねぇんだけど!! あとオレの鮭は!? これ、しらすじゃん! それが2匹って!!」



 デザートに桃の缶詰を開けて、ヨーグルトと一緒に食べたら腸内環境の準備も万全。

 30分の準備時間を設けてから、六駆は庭に門を生やした。


「じゃあ、行こうか!! 莉子、じいちゃん!!」

「うんっ! がんばろー! おー!!」

「今日は荷物が多くて大変じゃわい」


「よっしゃあ! 逆神家の結束力を見せてやろうぜ! みんな!! なんで無視すんの!? ねぇ、もしかして昨日、ガールズバーに行った事を怒ってる!? それとも、パチンコで5万負けた事!? あ、分かった! 風呂上りに六駆のタオルで身体拭いたヤツ!? バレちまってたとは思わなくておぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ」


 逆神六駆。

 出撃前に早速スキルで社会の敵を1人ほど退治するのであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 日本探索員協会の本部建物前では、続々と作戦に参加するメンバーが集まり始めていた。

 そこに生えて来る門。


「おはようございます! 逆神家、全員万全の状態でやって来ました!!」


 彼らを南雲が出迎えた。


「ああ。おはよう、逆神くん。小坂くん。四郎さん。だいごさ……大吾さん? 気のせいじゃなかったら、なんか焦げ臭いんですけど」

「親父なら、僕が軽く炙っておきました!!」



「なにその、お刺身にひと手間加えました! みたいな言い方!! ダメだよ、どんなに嫌いでもお父さん炙ったら!!」

「平気ですよ! ほら、なんか距離を取ってる五楼さんも無言で親指立ててくれてますし!!」



 実際、大吾は平気なのでこの件に関しての追及は行われなかった。


「あとは、ストウェアの3人。それから久坂さんたちだな」


 すぐに設置しておいた転移座標に飛んで来たのが、久坂剣友監察官と55番。

 そして彼の家にお泊りしていたチーム莉子の乙女たち。


「うにゃー! 莉子ちゃん! おっはーだにゃー!!」

「みみっ! 昨日はお楽しみだったです? みみみっ!!」

「ダメですわよ、芽衣さん! そんなはしたない事を!! 莉子さんは慎みのある女子ですもの!」



「……あ。はい。わたし体が慎ましくて、夜も六駆くんは2秒で普通に寝ました。……なんかごめんなさい」


 莉子さん、心にそこそこなダメージを受ける。



 クララと芽衣と小鳩が総出で励ましていると、座標地点に転移して来た最後のグループ。

 ストウェア組も到着して、全メンバーが出揃った。


「う、ゔほぁ……。雨宮さん、転移が乱暴すぎですよ……ヴォエ……」

「だ、だらしがないぞ、水戸くん。この程度の事で体調を乱すなど……」


 南雲は敢えてストウェア組が死にそうな件をスルーした。

 「多分、雨宮さんがむちゃくちゃ飲ませたんだろうなぁ」と察しているからである。


 監察官きっての知恵者もコンディションは万全なようで何より。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 作戦決行の前は五楼京華上級監察官の号令が定例となっている。

 今回も多分に漏れず。

 人数が多いためサーベイランスで拡大投影される事となった。


 担当者は山根健斗Aランク探索員。


「よし、山根くん。準備は良いからやってくれ」

「うっす! カタカタターンと! サーベイランス、起動!!」



『修一! お母さんたい! こないだは顔見せに帰って来てくれてありがとうねぇ。修一がお嫁さん貰うって急に言うけんが、お母さん、まだ整理がつかんとよ。けど、よか人ば見つけてねぇ、お母さん嬉しかばい! 次は孫の顔がはよ見たいばってん』

「うぉおぉぉぉぉぉ!! やーまぁーねぇー!! ヤメろよぉ!! 君ぃ! また実家にサーベイランス送ったな!? くそぅ! なんで母さんも前よりサーベイランスの扱いが上手くなってるんだ!! ち、違うんです、皆さん!! これは違うんです!!」



 山根とサーベイランスで「これは何かあるな」と予見できた方は、南雲監察官が「是非うちに来てください。山根くんはクビにします」と言っているので、一度面接を受けられるのはいかがか。


『……何と言うか。まあ、死なない程度に頑張ってくれ。私も頑張る。死にそうになったら助けを呼べ。多分、その辺の誰かが駆けつける。以上だ。解散』

「ご、五楼さん!? しっかりしてください!! 演説がものっすごいおざなりになっています!! 皆さん、誤解だから!! 違うんですよ!!」


 五楼がげっそりしているのを見て、気を利かせるナイスガイがいた。


『どうも! 逆神六駆です! これから僕の『ゲート』で担当するダンジョンの数キロ離れた地点に皆さんを送りますね! 安心してください! カルケルで『ゲート』の対策をされたので、煌気オーラの構築の段階からスキルそのものを作り直しました! アトミルカさんにはバレていません! 念には念を入れて、01番さんにも同行してもらいました! 彼女の内部に残っていたデータから、アトミルカの適当な構成員にスキルで変身して作業して来たので! 残っている煌気オーラを感知されても、それが僕のものとは思われません!!』


 なお、この逆神六駆の完璧な仕事は1件につき100万円ほど協会本部より支払われている。

 100万円を貰ったからには、プロフェッショナルなサービスでお応えするのが逆神流。


『それじゃあ、皆さん! 頑張りましょう!! この戦いが終わったら結婚する南雲さんのためにも!! はい! いきますよー! 僕に続いてー!! 南雲さんの結婚式に、行きたいかー!?』


 雨宮、久坂がすぐに「おおー!!」と応じた。

 ちなみに莉子さんとどら猫クララもきっちり対応している。


 こうなると、なんだか自分だけ参加していないのはいかにもノリが悪いような気がして来るのが集団心理。


『はい! もっと大きな声でー!! 南雲さんの結婚式に、行きたいかー!!』

「「お、おおー!!!」」


『もっと愛を込めて! 力強く! はい、これで締めますよー!! 南雲さんの結婚式に行きたいかー!!!』

「「うぉぉぉぉぉ!!!!」」


『どうもありがとうございましたー!!』


 ちなみに、この映像は山根オペレーターの機転により協会本部の全モニターにて中継されていた事を付言しておく。

 ついに日本探索員協会を乗っ取りそうな立場まで上り詰めた逆神六駆であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 雨宮隊と久坂隊が『ゲート』によって転移し、五楼隊も隊長が体調悪そうだったがどうにか転移して行った。


「じゃあ、みんなー! がんばろー!! おー!!」


「やっぱりあたしたちは莉子ちゃんの号令が馴染むにゃー」

「みみみぃっ! やるです!!」

「わたくしも、気付けば莉子さんの号令なしだと気合が入らなくなっておりましたわ」


「さあ、やったりましょう! 南雲さん!!」

「そうっすよ! オペレーターは自分に任せてくださいっす!!」



「私、この作戦が終わったらさ、監察官の職を辞する事にしようか本気で悩んでるよ?」

「冗談じゃない! そんなこと、僕がさせませんよ!! いやだなぁ、もう!!」



 最後に南雲隊も転移していき、いよいよアトミルカとの最終決戦の幕が上がる。

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