第361話 逆神六駆講師による「チーム莉子(六駆抜き)の戦い方」
今日はチーム莉子が勢ぞろい。
南雲監察官室に併設されている仮想戦闘空間に乙女たちが集まっていた。
4人とも探索員装備を着ており、それは全て六駆の指示だった。
「逆神くん。もう一度だけ確認するけど、君はスキルを使わないんだね? 防御システムのレベルを2にしてるけど、これ、君が『
「嫌だなぁ、南雲さん! 僕の恰好を見て下さいよ! これで分かりますよね!」
「背中にブルドッグが付いた汚いジャージを着ているね。そこから何かを感じ取れと言うのなら、私は最初に不安を覚えるかな」
「服を全部洗濯しちゃってたので、今日は仕方がなく親父のジャージを借りてきました!!」
こうして、逆神家伝統の戦装束に身を包んだ六駆は、チーム莉子のメンバーの前に立った。
南雲は不測の事態に備えつつ、管理責任者としてその様子を見学する。
「さて、みんなも知っていると思うけど、僕はハイパーボーナスチャンスによって監獄ダンジョン・カルケルに収監されることになりました! で、僕がいない間は当然だけど僕抜きで活動してもらう事になるので、今日はそのフォーメーションと、各々の課題について確認しようと思います!!」
「うにゃー。六駆くんがいつになくマジメな事を言ってるにゃー」
「でも、六駆さんがいらっしゃらない状況で活動した実績はないんですわよね? でしたら、色々と準備をしておく事には賛成ですわ」
「みみっ。六駆師匠が危険な任務に行くのなら、芽衣たちだって甘えてはいられないのです! みみみっ!」
「だよねっ! みんな、頑張ろー! おー!!」
最初に六駆は言った。
「正直、新しいスキルを覚える段階は莉子も芽衣も既に過ぎてるんだよね。現状の習得済みスキルを元にアレンジして派生させてる様子は僕も確認しているから。それはクララ先輩と小鳩さんも同じで、4人とも現状あるスキルを伸ばす方向に修行していくのが良いと思います」
小坂莉子は、風属性の基礎スキルと上級スキルをマスター済み。
『
『
既に一線級の探索員としてほとんど完成している。
椎名クララは元からほとんど全ての属性を扱える器用さを武器に、多種多様なスキルで後方支援の磨きがかかる。
遠距離に偏っている点はいささか気にはなるものの、チーム単位で活動するのであれば現状焦って近接スキルを習得する必要もない。
敵はぼっちになるシチュエーションのみ。
木原芽衣は何を置いても、まずそのメンタルが強化された点が大きい。
かつて逃げの一手だった彼女からは想像できないほど積極的な戦法を用いる事が出来るようになったため、近接戦闘特化として明確な役割を受け持っている。
不安要素は『
塚地小鳩は久坂剣友の愛弟子として培われた確かな戦闘経験とセンスが光る。
そこに六駆、南雲、久坂の3人が考えたスキル『
近距離から中距離までこなせるのも強みである。
基礎を重視するため、柔軟な思考を咄嗟にできないところがウィークポイント。
「南雲さんが作ってくれた装備のおかげで、スキル使ってなくても攻撃力、防御力ともに不安はないからね。……まあ、欲を言うと誰かが『
「はいっ! はいはい、はーい! わたしが覚えるよぉ!!」
「にゃははー。どうぞどうぞにゃー」
「みみっ。どうぞどうぞです」
「この件、順番が間違っていませんこと?」
六駆は「うん。まあ、煌気総量に余裕のある莉子が適役なんだけどね」と言って、久しぶりの登場、逆神家秘伝の【トロレイリング】を取り出した。
昨日のうちに四郎が作って、六駆が仕上げた出来立てホカホカのリングである。
「じゃあ、これ。莉子は『
「も、もぉぉぉ! 薬指にリングしろなんて、もぉぉぉ!! 六駆くんてばぁ!!」
「南雲さーん! コーヒーくださいにゃー!」
「みみっ! 芽衣も欲しいです! 苦いヤツがいいです!!」
「き、君たち!! 私のコーヒーを自発的に求めてくれるなんて……!!」
「南雲さんの色恋に対するお排泄物的な鈍さには、五楼さんの事を考えると同情を禁じ得ませんわね……」
余談だが、五楼京華上級監察官と南雲修一筆頭監察官がどうやら付き合っているらしいと言う噂が現在協会本部を中心に広がっている。
その出発地点は山根健斗Aランク探索員とも、逆神六駆Dランク探索員とも言われているが、真相は不明である。
多分、どっちもやってる。
コーヒーブレイクを経て、六駆は戦闘フォーメーションについての座学に移る事にした。
「逆神六駆が座学の講師をする」と言う事実は、「天変地異の前触れのような雰囲気を思わせるのでなんかヤダ」とは、南雲の弁である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「基本的には今まで通り。芽衣が前衛、クララ先輩が後衛。ここは固定で良いと思うんだ。それで、莉子は近距離から遠距離までどこでもこなせるから、戦況に応じて指示を出しやすいポジションを自分でキープしてね。これが隊長としての役割だから。小鳩さんは莉子の指示に応じて、攻撃と防御で前と中を移動してください」
続けて、いくつかのベターな戦闘パターンをホワイトポードに書いていく六駆。
その様子を「奇跡も魔法もあるんだねぇ」と眺めていた南雲。
「南雲さん! マジメに聞いてもらわないと困るんだよなぁ! 僕がいない時には南雲さんが緊急時の対応するんですからね!!」
「ええっ!? ご、ごめんなさい!?」
南雲修一が逆神六駆に怒られると言う異常事態。
のちに、「なんか逆神くんに怒られると、ものすごくへこみました……」と南雲は五楼に愚痴ったと言う。
「最後に、これは多分ね、南雲さんが五楼さんに怒られると思うんだけど。『
「ほえ? そうなの?」
「これは僕が隠居するまで内緒にする予定だったんだけど、まあいいかなって! 理屈は簡単! 『
「おおおい! ダメだよ!? チーム莉子が潜る予定のドノティダンジョンが万が一崩れたりしたら大事だからね!? ダメだからね!? ちょっと! 逆神くんが返事しないのはいつもの事だけど、小坂くんまで無視するのはヤメて!? ねぇ!?」
こうして、フォーメーションのパターン確認と、『
それからしばらく、4人はスキルを発現させてみたり、
その時間は実に有意義であり、「普通の探索員が5回ダンジョン攻略するより経験値貯まるよ、これ……」と、南雲はため息をついた。
「ないとは思うけど、万が一の時には莉子の装備に『
こうして、チーム莉子の1日だけの特訓は終了した。
「自分の彼女にマーキングを付けるって、すごいセリフだなぁ」と南雲が呟いたものの、賛同してくれる者はもうチーム莉子には存在しなかった。
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