第347話 超(スーパー)古龍の戦士・ナグモ、誕生する

 六駆の送りつけた古龍の煌気オーラが南雲修一に宿る。


「えっ、えっ!? うわぁぁぁぁ!? なんか回数を重ねるごとにうわぁぁぁぁぁ!! インフレしてうわぁぁぁぁぁ!! だ、ダメだ、力を抑えきれうわぁぁぁぁ!!」


 煌気オーラは特別なもの以外は無色であるが、1つの属性が濃いものには色が付く。

 古龍の煌気オーラは緑色。

 六駆いわく「だって竜人さんたちって基本緑じゃないですか」との事である。



 お前が着色を担当したんかい。



「な、なんだ!? 一体、何が起きた!? ナグモの煌気オーラを感じない……!? まさか、今の衝撃は……自爆したのか!?」


 6番ヒャルッツ・ハーラントは、一切感知できなくなった煌気オーラの行方を考える。

 彼は「南雲には何かトラブルがあり、本来の力を使えなくなったのだろう」と推理する。


 割と惜しいところまでいっている。


 そんな中、粉塵を払いのけ、緑の煌気オーラが立ち上る。

 加賀美の体も緑の煌気オーラで包まれていた。


「な、南雲さん!? どうなったのですか!?」

「……加賀美くん。下がっていてくれ。私の煌気オーラで防御膜を作ったが、それでもできるだけ距離を取るんだ」


 視界が開けた先には、体から湧き出る超パワーを制御し切れない様子の南雲が立っていた。


「な、ナグモ……なのか? これまで感じていた煌気オーラとはまるで異質な……!」

「……ああ。すまない。君たちはモニター越しでしか古龍の力を見ていないから、無理もない。……これでお分かりいただけるだろうか? ……はぁぁっ!!」


 南雲が煌気オーラを高めるだけで、氷の地下1階は壁が歪む。

 押し寄せていた天井は溶けてなくなり、そこにただ南雲が立っていた。


「あ、あああ!! なんだ、これは……!? 人間が放つ煌気オーラなのか!? こんな、こんなにも禍々しいものを!? くぅ、立っているだけでも体力が……!!」

「……すまないな。君に個人的な恨みはないが。やり過ぎてしまうかもしれん。この力は強大過ぎるのだ」


 南雲修一、なんか覚醒した戦士みたいになる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 4番グレオ・エロニエルは真実に肉迫しようとしていた。

 彼は、先ほど六駆が凄まじいスピードで南雲に向けて煌気オーラの塊のようなものを飛ばす様子を確認している。


 それが何だったのかは彼にも分からない。

 だが、目の前にいる少年の動きがきっかけとなって、南雲修一がちょっと調子に乗ったイキりキャラみたいになった。

 この事実は消す事が出来ない。


 4番は自分の実力を過剰に評価しないが、過小に申告もしない。

 自分の目で見たものが全てであり、それが真実であると彼は知っている。


「……よお。そこの南雲の甥よ。てめぇ、なんか隠してるな?」

「……バレましたか。ええ。実はさっき、最後のカロリーメイトをみんなに内緒でポケットに入れました。見破られているとは!!」



「お前はバカなのか? それとも、オレをバカにしているのか?」

「カロリーメイトはあげませんよ? ご自分で買ってください。あっ! 1万円でならお譲りしますけど!?」



 4番の予感は確信に変わり、真実は姿を現し始める。

 「この小僧、もしかすると全ての元凶なのではないのか」と彼は考える。


 下柳則夫が言っていた事を彼は思い出していた。

 「協会本部に得体のしれない高校生がいるんですよねぇ」と。


 4番は「しょうもねぇ言い訳しやがって。ブタが」と相手にしなかったが、今になってそれは事実だったのだと気付く。


「お前、ナグモより強いな?」

「やだなぁ! 南雲さん、じゃなかった、おじさんの方が強いですよ!」


「……試してやろうか?」

「ええ……。なんで戦う流れになってるんですか? ちょっと待ってください。まだ、ギャラの交渉が済んでいないので! 困るんだよなぁ、段取り考えてくれないと!!」


 六駆を無視して、4番は構える。

 彼は6番の手助けはしない。

 それが、最終決戦に挑む2人の間で交わされた取り決めだったからである。


 「1人でも多くのアトミルカに対する脅威を排除する」と言う理念のみが彼らの戦う理由。

 どうしてそこまでアトミルカに肩入れするのかは、まだ誰にも分からない。


「みんな! とりあえず戦闘に巻き込まれないように心構えを! 芽衣を特に気を付けてあげて! 消耗が激しいから!」


 六駆もギャラが決まっていないので不承不承ではあるが、急に戦闘が始まった場合に備えて、仲間たちに危機管理の徹底を促す。


「わたくしは防御に徹しますわね! 『銀華ぎんか』! 三十二枚咲き!! 『自動衛星周回オートフォーメーション』!!」

「あたしも攻撃すると邪魔になりそうだから、芽衣ちゃんお尻にくっ付けとくにゃー」


「みみみっ。芽衣はクララ先輩にくっ付いておくです。みみっ」

「六駆くん、六駆くん! わたしも一緒に戦いたいなぁ?」


 六駆は少しだけ考えて、莉子に手を差し伸べる。


「そうだね! 莉子はもう僕と一緒に戦っても問題ない段階に修行も進んでいるから、実戦で色々と学ぼうか!」

「やったぁ! 六駆くんと一緒に手を取り合って戦えるなんて、感動だよぉ!」


 4番は思った。

 「マジかよ。オレら、こんなガキどもに潰されたのか?」と。


 マジなのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「もう一度! どうにか一撃を……!! かぁぁぁ!! 『ハイドロフロストワイバーン』!!」


 6番の極大スキル。

 氷の翼竜が南雲に襲い掛かる。


「……それはもう見た。『古龍手刀ドラグブレイド』!!」

「ば、バカな……! 冗談にしてもデキが悪いではないか。私の全煌気オーラを込めた一撃が、手刀で裂かれた……だと……」


「すまない。私は強くなり過ぎてしまったようだ。せめて、投降してくれ。これ以上、君を傷つけたくはない」


 南雲さん、そのキャラどこまで続けるんですか。


 6番は懐に手を入れる。

 そこには『圧縮玉クライム』が忍ばせてあった。


 アトミルカ名物『困った時の幻獣玉イリーガル』である。

 だが、今の南雲修一を目の前にしてそれを飲み込むのは至難の業であった。



「ええい! ままよ!」

「……『古龍波動撃ドラグフラッシュ』!!」



「ぐぁっ!? し、しまった! 『幻獣玉イリーガル』が!!」

「仕方がない。しばらく眠っていてもらおう。……はぁぁ!! 『幻竜げんりゅうジェロードほう』!! ……せめて、安らかに」


 6番は倒れた。

 断末魔の叫びを上げる事も許されず、圧倒的な煌気オーラの暴力によって。


「……力と言うものは、虚しいものだ」


 南雲さん、帰って来てください。



「あ、終わりました? じゃあ、回収しまーす!! 『受取古龍力ゲッタードラグニティ』!!」

「えっ、えっ!? んああああああい!! 力が抜けていく!! あああああああ!!!」



 逆神六駆、南雲修一から貸した分をきっちり取り立てる。


「わ、私は何を言っていたんだ!? ま、まるで何かを拗らせた中学生みたいなセリフを口にしていた気がする……!!」

「それはですね、南雲さん! 『古龍上々ドラグアゲアゲ』を付与しておいたからです! このスキルは対象のテンションを痛い感じにカスタマイズできるんです!!」


「おおおい! なんでそんなスキル付与すんの!? それ、必要なかったじゃないか!!」


 サーベイランスが飛んで来た。

 モニターには、山根健斗Aランク探索員。



『……力と言うものは、ぷっ! 虚しいものだ……くくっ! ぷーくすくす!!』

「やーまぁーねぇー!! 君ぃ! やりやがったな!? さては、協会本部で今のやり取り全部見てただろ!? やーめーろーよぉー!! 嫌だぁ! 死にたい、私、死にたい!!」



 これにて、古龍の戦士・ナグモの出番は終了。

 彼は強大な力を得たかわりに、ちょっとテンションが上がってはっちゃけてしまった。


 過ぎた力には、代償がつきものなのはこの世の常。

 彼が再び古龍の戦士になる日は来るのだろうか。



 安心してください。なりますよ。

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