第327話 開幕、速攻! 『苺光閃』!! 軍事拠点・デスター
軍事拠点・デスター。
その広さは東京ドーム3つ分ほどの面積を誇り、巨大軍事要塞として恥ずかしくない程の武装を施された堅牢な壁が侵入者を阻む。
なお、広さを喩える時によく使われる「東京ドーム〇個分」と言う表現だが、「地方に住んでるとまったくピンと来ませんよね!!」と六駆が言っていた。
「野球に興味ないともはや喩えとしても絶望的ですよね!!」と六駆が言っていた。
繰り返すが、逆神六駆が言っていた。
「諸君。ついに眼前には我々が目的地と定めていた、軍事拠点がある。正直、こっちの動きは全部筒抜けだと思われるので、何を今さら急襲かと私自身、思わないでもない。だが、我々にも優位がまるでなくなった訳ではない。山根くん。モニターに例のものを」
しばし、沈黙がアタック・オン・リコの中を支配した。
「おおい! やーまぁーねぇー!! 例のものを! って言ってんじゃん!! 私が滑ったみたいな空気にするなよ!! 突入前のブリーフィングだぞ!?」
『あっ、すみません。今、春香さんの作ってくれたお弁当食べてました! こっちお昼なんですよ!! 南雲さんは時間の感覚おかしいから分かんないでしょうけど!!』
「なんで昼夜逆転生活してるニートに対して冷たい言葉を吐くお母さんみたいな言い方なんだよ!! 仕方ないだろう、こっちは国境を2つも超えてるんだから!!」
急襲部隊は日本とイギリスと言う国の境を越え、現世とキュロドスと言う国の境も超えている。
こうなると、日本との時差がどの程度あるのか把握しろと言う方が無理である。
「おおい! 山根くん!! なんで君はちょいちょい黙るの!?」
『あっ、すみません。今、春香さんに卵焼きの感想言ってました!!』
「それ後で良いだろう!?」
『ヤダなぁ! 鉄は熱いうちに打て。お弁当の感想は早いうちに言えって知らないんですか? だから南雲さんは独身なんすよ』
「な、なんだよ! 言っとくけど、私だって女性と食事したりするんだからな!」
『あー。はいはい。五楼さん乙。五楼さん言ってましたよ? 食事に誘われてお好み焼き屋に連れていかれたのは面食らったって』
「情報共有するなよぉ! 良いじゃないか、お好み焼き! 美味しいじゃないか!!」
『いやー。南雲さん。自分はお好み焼きを責めてるんじゃないっす。事前にお好み焼きを食べに行く事を相手に伝えていなかった南雲さんを責めてるんす。五楼さん、その時は白い服着てたらしいじゃないっすかー。それはないっす。ないなー』
南雲の背後から、乙女たちの声がする。
「にゃっははー。確かに、オシャレ着でラーメンとかお好み焼きとかは嫌だにゃー」
「ですわよね。事前に教えて下されば良いですのに。女子の準備を考えてくれないお排泄物な男性がやりそうな事ですわ」
「わたしはお好み焼き屋さんでも嬉しいですけどぉー?」
「みみっ。莉子さんは六駆師匠とならどこでも嬉しいはずです。みみみっ」
「私、白い服着てるのを見てから染みが出来る可能性のある場所に連れていかれたら、失望します。屋払隊長、聞いてます? お好み焼きともんじゃ焼き、そんなに違わないですからね? 聞いてます? 屋払隊長? もんじゃ焼き」
「とばっちりなんで、よろしくぅ……。南雲の旦那、ひでぇんだわ……」
『はい! これがデスターの上空から撮った写真っすよ!』
「早く出せよ!! 君ぃ! 私がひとしきり火だるまになるのを待ってただろう!?」
モニターに表示されたのは、軍事拠点・デスターの航空写真とそこから想定される見取り図であった。
なお、加賀美政宗は価値ある沈黙を貫き、逆神六駆はそれを真似していたので、この2名はノーダメージである事を付言しておく。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「デスターって、見たところ外壁に防御を振ってますね。逆に言うと、外壁を突破される想定がされていない構造になっていると言うか。ねえ、山根さん」
『さっすが逆神くん! そうなんすよ! この外壁に使われてる鉱物、調べたところラキシンシってイドクロアなんすよ。こいつが
「なるほど。つまり、その外壁さえ突破してしまえば、我々の新たな優位性が生まれると言う事ですか」
『さっすが加賀美さん! よっ、Sランク!! ご指摘の通りっす! ここを一気に突破できれば、敵さんは慌てるっすよー。ほら、ナグモ! 元気出して! 作戦の概要を説明しないと! スタンドアップ、ナグモ!!』
女性陣に叩かれまくると言う、豚肉の下処理みたいな仕打ちをされた我らが南雲監察官は「うむ」と返事をした。
打たれ強いのが南雲修一の強みの1つ。
「そこで、我々は最強の一撃を初っ端に持って来る事にした。既に五楼さんの許可も取っている。時を同じくして、和泉くんと竜人さんたちによる陽動作戦が始まる予定だ」
「あははっ! その言い方だと、要塞砲じゃないですね? ふふふっ」
「雲谷くん。君の言う通りだけど、ちょっといいかな? 君、完全に気配を消す事が出来るよね? さっきのお好み焼きの件の時、どこに行ってたの?」
「外で偵察してましたよ! ははっ! 一流のスナイパーは危機回避を第一に考えますからね! 危ないとこには近寄らない!! ぷ、ふふっ」
なお、雲谷陽介は意外とモテる。
雨宮上級監察官室に所属していながらイギリス遠征に連れていかれなかった理由は、雨宮が「だって私よりモテるんだもん、あの子ー」とごねたからだと言われている。
「……まあ、結論を言おう。小坂くん。君の出番だ」
「ふぇ? わたしですか?」
「そうだ。我々は小坂くんの『
「おおー! 莉子ちゃん、大役だぞなー!!」
『
アトミルカ側にも、これに初見で対応できる猛者は少ないだろう。
だが、一度撃ってしまえば当然のことながら警戒される。
警戒されるあまり、莉子の身に危険が迫る可能性も高い。
つまり、このような急襲作戦において『
急襲の初手に『
これにより、場合によっては「最後」の局面でもう一度『
さらに、ラキシンシの頑丈な城壁を1度の砲火で破壊できる火力が間違いなく見込めるため、「空振りによるチョンボ」の可能性をほぼゼロに抑えられる。
これも非常に大きなアドバンテージになるだろう。
「やってくれるか。小坂くん」
「ふぇぇ……。なんだかプレッシャーが……。ど、どうしよぉ」
「大丈夫! 莉子ならできるよ! 僕も隣についているからさ!!」
「うんっ! わたし、頑張るね!!」
「ねえ、この温度差はなんだろう? 私、指揮官なんだけどなぁ」
『南雲さん。女子高生に恋人の言葉と指揮官と言う名のおっさんの言葉。どっちが響くと思ってんすか? バカだなぁ!』
南雲は「逆神くんだっておっさんじゃないか!!」と思ったが、紳士らしく口に出さずに我慢した。
そんな訳で、チーム莉子が先陣を飾る事と相成った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
今回は護衛に六駆が付いているため、本来ならば他のチーム莉子のメンバーは車内待機で問題ない。
だが、彼女たちは「チームはいつも1つ!!」と言う晴れやかな、気持ちのいい乙女たち。
リーダーだけに責任を与えないのである。
「やぁぁぁぁぁっ! ……うんっ! いけます!!」
莉子さんのチャージが完了。
溜めを用いた『
アタック・オン・リコの中にいる南雲は、真剣な表情で莉子に告げる。
『では……。小坂くん、撃てっ!!』
「はいっ! たぁぁぁぁっ!! 『
ガォォォンと轟音をお供に連れて、苺色の熱線がデスターに襲い掛かる。
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