第286話 模擬戦闘訓練! 急襲部隊VS監察官選抜
探索員協会本部。
対抗戦の行われた屋外アリーナにて、急襲部隊が集合していた。
さらに、主だった監察官も全員が集合。
これはただ事ではないと、観戦に訪れる探索員たちで会場は溢れていた。
「あの、五楼さん? よろしいでしょうか?」
「ふむ。どうした、南雲」
「いえ。この演習は機密性の高い事でもないので別にいいかなとは思うのですが。どうして観客をこんなに集めているのでしょう?」
「私もこのような大事にしたくなかったのだがな。うちの日引が意見具申をして来たのだ。本部襲撃事件以降、協会内に閉塞感があるため、息抜きもかねて演習を公開してはどうかとな。……まあ、悪くないと思った訳だ」
五楼は続けた。
この演習で急襲部隊の実力を見れば、今後の探索員協会にも明るい展望を抱きやすいのではないかと。
なお、情報漏洩の可能性があるため、あくまでも精鋭による模擬戦闘訓練であることを周知していると、上級監察官は結んだ。
「ってことで、今回はサーベイランスによる放送はなしっすよ」
「山根くん。珍しいじゃないか、君が率先して他の監察官室の手伝いなんて」
「いやー。だってその意見、自分が日引さんに提案してんすから! そりゃあお手伝いくらいするっすよ」
「南雲。こいつがアトミルカに寝返らんように注視しておけ。この男、下柳よりも暗躍に長けている気がする」
山根は鼻歌交じりに実況ブースを設営していく。
そうとも、今回の演習は実況解説付き。
一般探索員たちにとってはレクリエーションも兼ねているのだ。
急襲部隊には見られる事で実力を発揮するメンバーもいるので、割と得しかない企画になっている。
「えっとぉ、じゃあチーム分けを発表しますね」
「よっ! 待ってました! 小坂リーダー! オレは一番手でよろしくぅ!!」
今回は急襲部隊を半分に分けて、AチームとBチームを構成する。
連携強化を図る目的なので、なるべく組み合わせが悪そうな編制にせよとは、五楼京華の指示だった。
「Aチームは、屋払さん。雲谷さん。クララ先輩。芽衣ちゃん。わたしです!」
「おっしゃあ! 特攻野郎Aチーム来たぁ!! よろしくぅ!!」
「ふ、ははっ、俺は普段から日陰に潜んでいたいのになぁー。こんな衆目の前で、ふふ、監察官の頭をぶち抜くなんて……あははっ」
「雲谷さんは相変わらずですにゃー。どうせあたしは目立たないので、それなりに頑張りますにゃー」
「とんでもないメンツに囲まれて、芽衣は家に帰りたいです。でも、向かいにおじ様がいるです。おじ様以外だったら、もう誰が相手でも良いです。みみっ」
「残った皆さんはBチームです! どうかなぁ、六駆くん?」
「すごく良いと思うよ! さすが莉子だなぁ!!」
「多分六駆くんは将来、なに作っても美味い! しか言わない亭主になるにゃー」
まずはAチームと監察官選抜が模擬戦闘訓練に突入する。
なお、監察官選抜の人員、人数等は試合開始まで明かされない。
アトミルカを急襲するのだから、ネタの割れた相手と戦っているようではその大役は務まらないのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『さあ! 会場にお集まりの皆様!! いよいよ始まります! 探索員の精鋭と監察官がガチンコバトルをする、模擬戦闘訓練!! ご来場の皆様には、是非この戦いを見て、その実力を盗んで頂きたいと思います! 実況はわたし、五楼上級監察官室所属の日引春香Aランク探索員です!! そして解説は!!』
『どうも、こんにちは! お昼食べ過ぎて動きたくないと言ったら連れて来られました! 逆神です! 皆さん、本部襲撃事件以来ですね!!』
なぜそこに逆神六駆。
だが、最近では「南雲監察官室のヤベーヤツ」として六駆の認知度も少しずつ上昇しており、一部の物好きな探索員には彼の言動も刺さるらしく、カルト的な人気を博している。
いよいよ社会的地位まで確保できそうな逆神六駆。
社会適合性さえ身に付けばと思わずにはいられない。
『謎の事情通の逆神Dランク探索員! Aチームの見どころを教えて頂けますか!?』
『はい。まず僕と同じパーティーの木原芽衣と小坂莉子ですが、2人が強いのは皆さんご存じですよね? あ、言い方が違うな! ご存じですよねー!?』
何故かライブパフォーマンス風に観客に呼びかける六駆。
意外と観客とのテンションがジャズったらしく「うぉぉぉぉ!!」と声が上がる。
『そこに加わるのが、屋払さん! この人はアレです! 強いのに頭が悪いと言う残念なタイプです! なのに、潜伏機動部隊の隊長をしています!』
『なるほど! 逆神Dランク探索員と若干キャラが被りますね!』
『えっ!?』
『あっとぉ! ここで意外な顔をされるー!! 自覚はないようです!!』
『雲谷さんは一緒にいて気付きましたが、何考えてるのか全然わかりません! 敵を欺くにはまず味方からと言いますが、味方をガチで欺いてくるので正直一緒に戦っていると背中が不安で仕方がありません!』
『なるほど! こちらも逆神Dランク探索員と少しばかりキャラが被ると!』
『えっ!?』
『世界よ、会場の皆様よ! これが無自覚鈍感主人公の在り方だぁー!!』
『まあ、みんな強いのできっといい勝負しますよ!』
『すみません、逆神Dランク探索員! 椎名Aランク探索員については何もないのでしょうか?』
『いっけね! ……クララ先輩はほら、スタイルが良いから!』
『忘れた事を悪びれもせず、女性についての特記事項でまず体型に触れるー!! なにやら、そこはかとなく嫌な中年男性の香りが漂います!』
日引と六駆のコンビは噛み合わないものの、そこが観客にはウケているようであった。
「やれやれ。六駆の小僧め、はしゃぎよって。腰痛を堪えて出張って来たワシの紹介もせんかい。気が利かんのぉ」
「いえ、久坂さん。私たちは誰が出るのか発表したらまずいですよ」
「雷門の。お主、ちぃと号泣せんか? かしこまって自称を私にされると、もう誰なんか分からんのよ。個性がちぃとの? 足りちょらんけぇ」
「そんな、酷いじゃないですか……」
監察官選抜はまず、この2人。
久坂剣友監察官。
雷門善吉監察官。
「久坂剣友! わたしがここにいても良いのだろうか!? わたしはかつての敵であるが!?」
「ええんじゃ、気にせんでええ。ワシがええっちゅうたら、お主も納得じゃろう?」
「確かにそうかもしれん!!」
久坂監察官室から55番。
「ら、雷門さん。あの、俺、緊張で死にそうなんですけど」
「自信を持つんだ、山嵐くん! スキルの相性で考えると、うちからは君しか選択肢がなかった!! 一緒に頑張ろう!!」
雷門監察官室から連れて来られた、山嵐助三郎Bランク探索員。
「いいか、貴様ら。模擬戦とは言え、そして客がいるとは言え、一切の忖度はなしだ! 本気で潰しにかかれよ! 監察官としての面目を保て! 強さは正義ではないが、強さのない正義ほど無意味なものもない!!」
そして、4人を纏めるのは上級監察官。
五楼京華である。
相手にとって不足なしどころか、ちょっと本気を出し過ぎている感のある監察官選抜。
だが、繰り返し言おう。
アトミルカと戦うのであれば、この試練を越えられないでは困るのだ。
『さあ、探索員チームは所定の位置についた!! 今回はバトルアリーナに岩を配置し、木を生やしております! 高低差もついておりますので、より実戦的な応用力が求められます!! ちなみに、雷門監察官室が一晩でやってくれました!!』
戦いの鐘を鳴らすのは、我らが逆神六駆。
『いやー。こんなしょうもないスキルでも覚えておくものですね。『
具現化された銅鑼の音が鳴り響き、戦闘開始である。
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