異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第121話 南雲修一VS犬伏雪香 絶対に言いたくなかったけど「ここは任せて先に行け」
第121話 南雲修一VS犬伏雪香 絶対に言いたくなかったけど「ここは任せて先に行け」
食事の最中を襲うのはマナー違反。
そんなマナーなど戦争にないのは周知の事実。
例えば戦国時代の合戦でも、敵が食事休憩をしていると見るや奇襲に打って出て勝利を掴んだと言う逸話は結構残されている。
そんな訳で、別に犬伏のマナーについてあれこれ言うつもりはない。
ただ1人を除いて。
「あなたねぇ! 女の子がご飯食べてるんですよ! そこでおじさんの首がいきなり落とされてみなさいよ! 一面が血の海になって、ご飯が台無しですよ! 返り血をオカズにご飯が食べられるのは、この中でも僕と南雲さんとダズモンガーくんくらいなんですからね!! マナーがなってないんじゃないですか!? お母さんは小さい頃に教えてくれなかったんですか!? 食事中に人の首を斬り落とそうとしないって!!」
残ったスープを飲みながら、六駆おじさんのありがたいお説教が始まる。
六駆くん。言ってなかったけど、それ、グアル草入ってるぞ。
「いや、六駆殿。吾輩、このような見てくれでございまするが、さすがに人の死を見ながら食事は致しませんぞ?」
「うん。私もだよ。何なら、ここにいる数万人、みんなそうだと思う」
六駆は「うんうん。なるほど」と納得した。
改めて、犬伏に向かってスプーンを指す。
「返り血を浴びて食事が続けられる人がいる訳ないでしょう! あなた! 時と場合を選びなさいよ!! ホントに、近頃の若い娘はどうしてこう!!」
六駆おじさん、自分の異常さをなかった事にする。
あと、犬伏は暗殺しようとしたので、時と場合は完璧に計算されている。
「あーあー! うっざ!! もういいわー! とりあえず、南雲を殺しときゃ、浄汰も笑ってくれんでしょー!! 『ダブルスパーダ』!! その首ちょうだい!!」
南雲はすぐに『
「全員、下がって! 私をご指名のようだ! 500メートルは距離を取って、防御スキルの使える者は速やかに展開を!!」
「大丈夫です、南雲さん! 僕が既に『
「ちょっ、六駆殿ぉ!? 吾輩を盾にするのですか!? それはあんまりですぞ!!」
犬伏は大騒ぎになる場をものともしない。
と言うよりも、騒ぎに乗じて敵将の首を取るのが彼女の仕事。
「『フライングスパーダ』!! そらそらぁ! 受け流してばかりだと、周りのお仲間に被害が出ちゃうじゃないのぉ!? ええ? 監察官さぁん!!」
「くっ! なんと卑怯な! しまった! 逆神くん、一太刀そちらに行ったぞ!!」
「了解です!」
「ぐぁあぁぁぁぁぁぁっ!! 六駆殿ぉ……」
「見ましたか、犬の人! これがミンスティラリアに伝わる、『
ダズモンガーが強靭な肉体を持つ鳥獣人の中でも特に鍛えられた鋼の身体を持っていたことが幸いして、彼の防具である胸当てが割れただけで済んだ。
六駆に盾扱いされたのがそもそも幸いでないじゃないかとお思いの諸君は、戦場がよく見えておられる。
「莉子! とりあえず下がって、『
「あ、うん! 分かった! せぇぇぇい! 広域展開!!」
「莉子ちゃんの盾なら安心だにゃー」
「みみみっ! 芽衣は『
六駆は考えていた。
もちろん、どのタイミングでこの戦闘に割って入ろうかについてである。
戦いたくてウズウズしていた六駆くんには理想の展開だった。
そんな中、彼にとってはさらなる吉報、南雲にとっては凶報が監察官室の山根からもたらされる。
『こちら山根です。南雲さん、あなたがそっちで死んだら、自分が監察官に昇格ってことでいいですか? ちょっと言質もらえます?』
「いいことあるか! 意外と彼女が厄介なの見て分かるだろう!? 周りに被害を出さないように暗殺者の相手するのって大変なんだぞ!!」
『自分は現世で良かったー! ところで、お知らせです。帝都から中隊が脱出しようとしてますね。目視で確認したところ、キャンポムさんの資料にあった、将軍ですよ。エッカミルさんでしたっけ?』
南雲が軽い
それが事実だとすれば、もはや取り得る選択肢が1つしかない。
重ねて、山根くんの情報に誤りがあった事など、彼を採用してから1度としてない。
「『
「はぁ? あーしが浄汰を裏切るってガチで思ってんの? おっさん、それ笑えねーんだけど。『グランドスパーダ』!!」
犬伏の両腕で地面を叩けば、そこには地割れが発生する。
周囲に気を配りながら戦う南雲と、周囲を巻き込めるだけ巻き込もうとする犬伏。
戦法の相性は最悪であり、南雲に決断の時が迫る。
六駆に助太刀を頼むか。
それが愚策だと彼は知っている。
今この瞬間にも、ルベルバック軍の将軍が敗走しようとしている。
この機を逃せば、仮に阿久津を倒したとしても、後顧の憂いが残る。
ならば、もはや是非もない。
「チーム莉子の諸君! それからキャンポム隊! 今すぐに帝都へと突入せよ!!」
満面の笑みを浮かべる者が1名。
名前を言う必要性すら感じない。
「えっ!? 南雲さん! それって僕に対する出撃命令ですね!? やだー! 困るー!! 出撃しちゃって良いんですね!? やだー!! もう、困るぅー!!」
南雲はダメージを受けた訳でもないのに、片腕一本斬られたような苦悶の表情を浮かべて、ほとんど叫ぶように言った。
「本当に言いたくなかったけど、ああああ!! ここは私に任せて、先に行け!!」
南雲は禁断の言葉を口にしてしまった。
もう後には退けない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「シミリートさん、ここの指揮をお願いします! ダズモンガーくんは場合によっては南雲さんの援護を! まあ、多分必要ないと思うけど! あと、飛竜借りていい!?」
六駆の戦闘脳が高速回転する。
この男、現世では未だに独りで電車にも乗れない癖に。
「承知した。英雄殿、お気をつけて」
「吾輩、出番が全然ないのですが。お供する訳には? ……ああ、分かり申した」
「六駆殿! 莉子! クララ! 芽衣! 頑張るのじゃ!!
莉子が意思疎通を済ませている紅龍に一同は乗り込むと、すぐに飛び立つ。
目指すは帝都。
残る敵は、将軍エッカミルと、皇宮にいる阿久津のみ。
「逆神くん! 絶対にやり過ぎないでよ!? 私、ここが片付いたらすぐに追いかけるからね!? いいかい、絶対にやり過ぎないでよ!? ちょっと、なんで返事しないの!? なんで半笑いなの!? ああ、私としたことが! こんな事なら、彼に適当な出番を与えておくんだった!! 私ってホントバカ!!」
「あははっ! 慌てふためいちゃって、みっともないねぇ! あーしが怖いっしょ!?」
「ええい、うるさい! 本気で行かせてもらうぞ! 相手が女性と言えど、緊急事態につき悪いが手加減はできないから、そのつもりで来たまえ!」
南雲の悲壮な戦いが始まる前に、飛竜は飛び去っていた。
ここまで散々我慢して来た逆神六駆、ついに戦場へと降臨する。
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